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ボルボXC60 T5 AWDインスクリプション(4WD/8AT)

人のよさがにじみ出る 2017.10.16 試乗記 下野 康史 ボルボのミドルクラスSUV「XC60」が、新たなプラットフォームを得て第2世代へと進化。同社の世界販売を支えるベストセラーモデルは、どんなクルマに仕上がったのか。初秋の蓼科で開催された試乗会での印象をリポートする。

ボルボの屋台骨を支えるクルマ

ボルボのミドルクラスSUV、XC60が刷新された。2008年に登場して以来、初のフルチェンジである。

日本では1割程度だが、世界販売では3割を占めるというベストセラーボルボ。それだけに絶対に落とせないXC60の新型は、簡単にいうとミドルクラス化した「XC90」である。ボディーサイズの大小に柔軟に対応できる新型プラットフォームをXC60用にアジャストし、XC90ですでにおなじみの新世代2リッター4気筒ターボ系パワートレインを組み合わせている。

旧型との比較では、ホイールベースが9cm延び、全長が5cm大きくなり、全高は5cm低くなった。フルサイズのXC90と比べると、全長は26cm短く、車重は170~230kg軽い。そこにXC90と同じパワーユニットが載ると聞けば、乗る前から期待は高まる。

新型XC60の第1弾は、ガソリンの「T5 AWD」と、最上級モデルであるプラグインハイブリッド「T8」の2車種。長野県の蓼科で開かれた今回の試乗会では、「T5 AWDインスクリプション」(679万円)のみが用意された。ディーゼルの「D4」や高性能ガソリンモデルの「T6」は、少し遅れて2018年2月以降の導入になるという。

2008年のデビュー以来、初のフルモデルチェンジを受けた「ボルボXC60」。ボルボの世界販売の3割を占める基幹モデルだ。
2008年のデビュー以来、初のフルモデルチェンジを受けた「ボルボXC60」。ボルボの世界販売の3割を占める基幹モデルだ。拡大
ボディーサイズは全長×全幅×全高=4690×1900×1660mmで、ホイールベースは2865mm。初代よりも5cm長く、5cm低く、ホイールベースは9cm延ばされている。
ボディーサイズは全長×全幅×全高=4690×1900×1660mmで、ホイールベースは2865mm。初代よりも5cm長く、5cm低く、ホイールベースは9cm延ばされている。拡大
今回の試乗車「T5 AWDインスクリプション」は、ヘッドアップディスプレイやリアシートヒーターなどを備えた上級モデル。装備を簡素化した「T5 AWDモメンタム」も設定される。
今回の試乗車「T5 AWDインスクリプション」は、ヘッドアップディスプレイやリアシートヒーターなどを備えた上級モデル。装備を簡素化した「T5 AWDモメンタム」も設定される。拡大
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見覚えのあるインテリア

旧型よりロングノーズになり、エッジがシャープになって目鼻立ちがくっきりした。ボディー側面には、彫刻刀で削り取ったような深いプレスが入る。垂直に切り立ったノーズはXC90に似ているが、のびのび大きくなりました、という感じのXC90よりカッコイイ、というか、カッコをつけているのが新型XC60だ。

乗り込むと、内装も見覚えがある。それもそのはず、フロントシート、ステアリングホイール、ATセレクター、ミラー、ドアハンドル、その他、細かなスイッチ類の多くは、XC90と共通部品である。トップグレードだと1000万円を超える「上位モデルと同じ」なのだからおトクといえるが、なによりこのインテリア、“イイカンジ”だ。上質でクリーンだが、冷たくない。工夫や贅(ぜい)を尽くしてあっても、威張りではなく、なごみを感じさせるところもボルボらしい。

試乗車のダッシュボードには、ドリフトウッド(流木)というシルバーグレーの加飾プレートが使われている。質感も色も、個性的で美しい。プロ野球のバットでおなじみアッシュ(あおだも)を使ったリアルウッドパネルで、スウェーデンの西海岸に打ち上げられる流木をイメージしているという。「内装、いいよねえ」と感じさせるのは、新型XC60の魅力のひとつだと思う。

ステアリングホイールやATセレクターなどは、上級モデルである「XC90」と共通のものを装備する。ダッシュボードと、センターコンソールの収納のふたは、流木をイメージしたという木材で飾られている。
ステアリングホイールやATセレクターなどは、上級モデルである「XC90」と共通のものを装備する。ダッシュボードと、センターコンソールの収納のふたは、流木をイメージしたという木材で飾られている。拡大
ステアリングホイールには、アダプティブクルーズコントロールや、インフォテインメントシステムの操作ボタンが備わる。奥にのぞくメーターパネルはフル液晶タイプ。
ステアリングホイールには、アダプティブクルーズコントロールや、インフォテインメントシステムの操作ボタンが備わる。奥にのぞくメーターパネルはフル液晶タイプ。拡大
センターコンソールのスイッチも「XC90」譲り。写真中央がスタータースイッチで、その左がドライブモードの切り替えスイッチ。
センターコンソールのスイッチも「XC90」譲り。写真中央がスタータースイッチで、その左がドライブモードの切り替えスイッチ。拡大

身のこなしの軽さに驚く

オプションのエアサスペンション(30万円)を装着した試乗車で走り始める。ファーストタッチの瞬間から感じたのは、“走りの軽さ”である。

2リッター4気筒ターボは254ps。車重は、車検証記載値で1880kg。同じエンジンを積むXC90より180kg軽いが、絶対的には1.9t近い重量級SUVである。なのに、身のこなしはライトウェイトスポーツカーのように軽い。ステアリングも軽い。たぶん軽すぎると感じる人もいるはずだが、この軽い操舵力が走りの軽さに貢献しているのは間違いない。

エンジンも軽く、そしてパワフルだ。8段ATのDレンジでも6500rpmまで引っ張れる。そこまでやらなくたって、望めばいつでも胸のすく加速が得られる。ツーンと速い。

小さな美顔ローラーのようなドライブモードセレクターを回して“ダイナミック”を選ぶと、車高が20mm下がり、パワートレインの制御もスポーティーになる。だが、変化量は大きくない。“エコ”でも“コンフォート”でも、身軽な印象は変わらない。

この直噴2リッターターボは、若干パワーの小さい(245ps)バージョンがすでに先代にも搭載されていた。1年前に試乗した「T5 AWDクラシック」を思い起こすと、新型車台の2代目XC60は別物である。先代のドテッとした重さがないのだ。

短時間ながら、エアサスなしの標準モデルにも乗ってみた。横置きリーフスプリングを使うノーマル足だと、乗り心地が多少ゴツゴツするかなと思ったくらいで、大きな差は感じなかった。付けると700万円を超えてしまうエアサスはmustではないと思う。

シート表皮にはパーフォレーテッド(穴あけ)加工が施されたナッパレザーを採用。ヒーターおよびベンチレーション機能、マッサージ機能を備えている。
シート表皮にはパーフォレーテッド(穴あけ)加工が施されたナッパレザーを採用。ヒーターおよびベンチレーション機能、マッサージ機能を備えている。拡大
「インスクリプション」では、リアにもシートヒーター機能が備わる。
「インスクリプション」では、リアにもシートヒーター機能が備わる。拡大
リアシートの座面下には、ノートパソコンやタブレット端末を収納できるスリットが設けられている。
リアシートの座面下には、ノートパソコンやタブレット端末を収納できるスリットが設けられている。拡大
荷室の容量は505~1432リッター。先代と比べると、最小値が10リッター増加、最大値は23リッター減少している。(写真をクリックすると、荷室のアレンジが見られます)
荷室の容量は505~1432リッター。先代と比べると、最小値が10リッター増加、最大値は23リッター減少している。(写真をクリックすると、荷室のアレンジが見られます)拡大

ACCの仕上がりにも満足

2009年8月に国内導入された先代XC60は、日本で初めて自動ブレーキの「シティーセーフティー」を備えたクルマだった。新型にはレベル2の運転支援システムが全車に標準装備される。今回はそれらを十分に確認することはできなかったが、一般道で全車速追従機能付きアダプティブ・クルーズコントロール(ACC)を試すことはできた。

ミリ波レーダーの照射距離が150mから200mに伸び、ますます前走車へのロックオン能力が上がった新システムは、この種のものとしては最も使える。加速も減速もメリハリがあり、やってくれてる感が強いから、任せられる。自動停止後3秒以内なら、なんの入力も不要で自動発進/加速する。うまい自動運転ドライバーである。その一方、自分で運転してもファン・トゥ・ドライブなのだから、ツッコミどころがない。

一般道のみの限られた経験だったが、その限りでは、XC90のよさを凝縮したようなミドルクラスSUVだと感じた。直接競合するのは、「アウディQ5」「メルセデス・ベンツGLC」「BMW X3」といったドイツ勢だろうが、重い四駆SUVを感じさせない走りの軽快感はずばぬけている。ボディーや足まわりの剛性感は、XC90をしのぐ。上位モデルとコンポーネントや部品を共用しながら、あとから出して、その上位モデルをかすませてしまう。それもボルボの人のよさだろうか。

(文=下野康史<かばたやすし>/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)

安全装備の強化にあたり、各種センサーの性能も強化が図られた。ミリ波レーダーの照射距離は150mから200mに伸長。カメラの解像度は初代の4倍に向上している。
安全装備の強化にあたり、各種センサーの性能も強化が図られた。ミリ波レーダーの照射距離は150mから200mに伸長。カメラの解像度は初代の4倍に向上している。拡大
フロント、リアともに、ランプ類は全車でLEDが標準装備となった。
フロント、リアともに、ランプ類は全車でLEDが標準装備となった。拡大
254psと350Nmを発生させる「T5 AWDインスクリプション」の2リッターターボエンジン。JC08モードの燃費は12.6km/リッター。
254psと350Nmを発生させる「T5 AWDインスクリプション」の2リッターターボエンジン。JC08モードの燃費は12.6km/リッター。拡大

テスト車のデータ

ボルボXC60 T5 AWDインスクリプション

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4690×1900×1660mm
ホイールベース:2865mm
車重:1860kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:254ps(187kW)/5500rpm
最大トルク:350Nm(35.7kgm)/1500-4800rpm
タイヤ:(前)235/55R19 105V/(後)235/55R19 105V(ミシュラン・ラティチュードスポーツ3)
燃費:12.6km/リッター(JC08モード)
価格:679万円/テスト車=771万6000円
オプション装備:電子制御式4輪エアサスペンション・ドライビングモード選択式FOUR-Cアクティブパフォーマンスシャシー(30万円)/Bowers&Wilkinsプレミアムサウンドオーディオシステム<1100W、15スピーカー、サブウーハー付き>(42万円)/チルトアップ機構付き電動パノラマガラスサンルーフ(20万6000円)

テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:1086km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

ボルボXC60 T5 AWDインスクリプション
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下野 康史

下野 康史

自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。

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