スズキGSX-R1000R ABS(MR/6MT)
想像以上の出来栄え 2017.10.26 試乗記 「The Top Performer」という潔いうたい文句とともに、「スズキGSX-R1000R」がいよいよ日本に正規導入された。世界耐久選手権やMotoGPの技術が取り入れられたという旗艦モデルの走りとは? 公道での試乗を通し、実力の一端を垣間見た。世界中のスピード狂が夢中になった一台
リッタークラスのスーパースポーツ人気が一気に高まったのは2000年あたりだったように思う。国内外のメーカーが次々に強力なモデルを投入。ストリートでもレースでも、どのマシンが最速か、なんて話題で盛り上がったものだ。
同じ時代に登場したマシンはどれも同じようなパフォーマンスであることが多いのだけれど、その頃から「GSX-R1000」はぶっ飛んでパワフルだった。なんたって、いっときはパワーウェイトレシオが0.93kg/psっていうレーシングカー並みの数値をたたき出していたくらい。世界中のスピードジャンキーを夢中にしてしまったマシンだった。
そんな猛烈なバイクの最新モデルがこいつだ。最高出力、なんと197ps!! webCGからストリートで、しかも都内でこのバイクに乗れと言われた時は「マジか」と思った。10分の1もスロットルを開けないで終わるかもしれない……。
実はオレのGSX-R1000に対する印象は決して良くない。数年前に何度か乗った時のイメージがなかなか消えない。高性能で猛烈に速いんだけど、スピードが出るステージじゃないとなかなか楽しく走ることができないのだ。これはオレの手に余るなと思った。
どうせ新型GSX-R1000Rも似たような感じだろうと思っていたのだ。ところがまったく逆。めちゃくちゃに乗りやすかった。ポジションもハンドルの位置がライダーに近いから前傾もきつくないし車体もコンパクト。
そしてなんといってもエンジンのフィーリングがとてもいい。
街中を流していても十分に楽しめる
普通に街を走るのなら5000rpmくらいまで使うのがせいぜいなんだけれど、(このバイクからすると)そんな低回転域を使って走るだけでも、とても乗りやすいし楽しい。これは予想外だった。エンジンの回り方がワイルドだし、トルクがあって車体をグイグイと押し出す。スーパースポーツというよりは、ちょっと古い空冷4気筒のような感じだ。これがたぶん可変バルブの威力なんだろう。
さらにびっくりしたのはハンドリング。なんたってこのままサーキットに持っていっても相当なレベルで走ってしまうバイクである。スピードが出ていない状態じゃ乗りにくいのが普通だ。サスだって動かないからバンクさせてもまともに曲がらないだろう。実際、以前乗った時のGSX-Rはそんな感じだった。
ところが、現行モデルは交差点を曲がるくらいの低速でも何の苦労もしない。まったく荷重なんてかかっていないのにサスはしなやかに動くしハンドリングも素直。正直なことを言うけれど、ここまで低速域が楽しく走ることができるスーパースポーツは初めてだ。197psよりもこっちの方がオレには驚きだった。
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本気になったら本当に速い
ちなみにこのマシン、フルパワーにすると恐ろしいまでの速さを発揮する(当然だけど)。トラコンの介入を一番弱くしてローで全開になんてしたらその瞬間、バイクは棹(さお)立ちウイリーになってその姿勢を維持したまま、公道では試せない車速域まで一気に加速していく。セカンドにシフトしても同じ状態。そして3速に入る前にスピードリミッターが利いてしまうのだ。あと4速も残っているのに……。
シフトアップなんてスロットルも戻さずクラッチも切らない。シフトペダルに足を伸ばせば一瞬でシフトアップが終わる。コーナーの進入でのシフトダウンもクラッチやスロットルは何も触れる必要なし。シフトペダルを爪先で押し下げるだけで完璧なシフトダウンをしてくれる。少し飛ばして走っている時は、無意味にシフトアップとシフトダウンをしたくなるくらいに楽しい。
うーん、GSX-R1000R、とても良かった。予想以上だった。これでサーキット走ったらどうなってしまうんだろう。webCGがサーキットでのインプレなんてしないことを祈る。これでサーキットでも極め付きに楽しい、なんてことになったら真剣に欲しくなってしまうかもしれない。
(文=後藤 武/写真=三浦孝明/編集=堀田剛資)
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2075×705×1145mm
ホイールベース:1420mm
シート高:825mm
重量:203kg
エンジン:999cc 水冷4ストローク 直列4気筒 DOHC 4バルブ
最高出力:197ps(145kW)/1万3200rpm
最大トルク:117Nm(11.9kgm)/1万0800rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:22.1km/リッター(国土交通省届出値 定地燃費値)/16.6km/リッター(WMTCモード)
価格:204万1200円

後藤 武
ライター/エディター。航空誌『シュナイダー』や二輪専門誌『CLUBMAN』『2ストマガジン』などの編集長を経てフリーランスに。エアロバティックスパイロットだった経験を生かしてエアレースの解説なども担当。二輪旧車、V8、複葉機をこよなく愛す。
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