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東京モーターショーで大人気
カワサキの新たな「Z」に思うこと

2017.11.03 デイリーコラム 後藤 武

単なる懐古趣味車じゃない

今回の東京モーターショーで大きな話題になっていたのが、カワサキの「Z900RS」だ。1970年代、世界的に人気だった「Z1」をオマージュとしたマシンである。

最近の旧車人気もあってZ1は今、大変な金額で取引されるようになっている。それにつられて「ゼファー1100」の価格も高騰した。けれど、バリバリ旧車趣味の人たちが今回のZに反応したわけではない。Z1に憧れはしても「旧車で苦労したくないなあ」とか「さすがにあの値段出して旧車は買わないけど」というような思いで見ていた普通のライダーたちのハートに響いたのである。

と書くと「そういうネイキッドは今までもあったじゃないか」と思うかもしれない。意外に思われるかもしれないが、国内メーカーでガッツリ70年代の名車をオマージュしたマシンというものは、それほど多くない。

世界的な人気となったZ1に関しても、同じ空冷のゼファーをZのカラーリングにしてみたり、まったく違うデザインのネイキッドにZという名前をつけてみたりした程度。言ってみれば20年以上にわたってカワサキの壮大な焦らし作戦が行われていたようなもの。

ちなみにこういうマシンを作る場合、今まではメカニズムもあえてノスタルジックさを求めてリア2本ショック、空冷エンジンなどにしていた。しかしZ900RSは水冷エンジンにリアはリンク式のサスペンションで17インチのラジアルタイヤと、最新スペックを詰め込んでいる。

このことを評価する声は多い。徹底的にレトロで行くのであればともかく、そうでないのなら中途半端に性能で劣る装備を持ってきても意味がないというのである。

東京モーターショー2017に出展された、カワサキの新型車「Z900RS」。会場では、多くの来場者に注目されていた。国内での発売日は2017年12月1日で、価格は、キャンディトーンブラウン×キャンディトーンオレンジのモデル(写真)が132万8400円、メタリックスパークブラックのものが129万6000円。
東京モーターショー2017に出展された、カワサキの新型車「Z900RS」。会場では、多くの来場者に注目されていた。国内での発売日は2017年12月1日で、価格は、キャンディトーンブラウン×キャンディトーンオレンジのモデル(写真)が132万8400円、メタリックスパークブラックのものが129万6000円。拡大
エンジンは、水冷の948cc直列4気筒。最高出力111ps、最大トルク98Nmを発生する。
エンジンは、水冷の948cc直列4気筒。最高出力111ps、最大トルク98Nmを発生する。拡大

実際のフィーリングに期待

反面、往年のZ1らしさは薄れてしまう。だが、カワサキには強い味方がいた。カスタムマシンのビルダーたちだ。Zは現在でも大変な人気で、パーツ開発をしているショップ、メーカーが、日本にはいくつもある。技術力は高く設備も整っていて、Zを誰よりも知り尽くしている。

カワサキはモーターショーにあわせ、事前にZ900RSをこういったショップ、パーツメーカーに渡してカスタムマシンを作らせていた。今、これらカスタムマシンの写真がスタンダードのZ900RSの話題を超えてしまいそうな勢いでSNSの中、拡散され続けている。

カワサキの作戦は当たった。しかし問題はこれからだ。水冷エンジンは「さまざまなチューニングを施され、迫力ある排気音や低速から力強い走りを実現している」とある。しかし、そのあたりが国産メーカーの最も苦手な部分。そんなうたい文句で登場しながら、実際に乗ってみたらまったく感じられるものがなかった、などというバイクは山ほどある。

ここ最近登場したトライアンフ、BMW、モト・グッツィなど輸入車勢はどれもエンジンのフィーリングが極めつけにいい。「新しいバイクはどうも味がなくて」なんて思って乗るとビックリするくらい面白い。ホンダの「CB1100EX」や「RS」も乗ってみると実に味わい深いエンジンフィーリングや排気音、ハンドリングになっている。つまり、ここ最近、バイクはそういうフィーリングの部分が一気に進化しているのだ。カスタムで外観はいくらでも変えることはできるけれど、根本的なエンジンのフィーリングやハンドリングを変えることは難しい。

果たしてZ900RSがこの部分でどの程度、ライダーの心に響くバイクになっているのか、そこが最も気になる点である。

(文=後藤 武/写真=webCG/編集=関 顕也)

モーターショーでは、「Z900RS」のカスタマイズモデルもいくつか展示された。写真はモトコルセが手がけたもので、オーリンズ製の倒立フロントフォークやカーボンパーツ、レザーシートなどがおごられている。
モーターショーでは、「Z900RS」のカスタマイズモデルもいくつか展示された。写真はモトコルセが手がけたもので、オーリンズ製の倒立フロントフォークやカーボンパーツ、レザーシートなどがおごられている。拡大
こちらはドレミコレクションがカスタマイズしたもの。ライムグリーンのカラーリングが目を引く。
こちらはドレミコレクションがカスタマイズしたもの。ライムグリーンのカラーリングが目を引く。拡大
後藤 武

後藤 武

ライター/エディター。航空誌『シュナイダー』や二輪専門誌『CLUBMAN』『2ストマガジン』などの編集長を経てフリーランスに。エアロバティックスパイロットだった経験を生かしてエアレースの解説なども担当。二輪旧車、V8、複葉機をこよなく愛す。

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