ホンダの新サービス「EveryGo」開業で
日本のカーシェアリングに思うこと
2017.11.17
デイリーコラム
主なニーズは「クルマの試乗」?
ホンダが2017年11月9日に新しいサービス「EveryGo(エブリ・ゴー)」をスタートした。都市部を中心に誰でも気軽にホンダのクルマを利用できる会員制のレンタカーサービスで、まず東京と横浜でスタートし、来月は大阪でも展開を開始するという。
ホンダは同様のトライを2013年11月から東京で実証実験していた。そのときの名前は「ホンダカーズ・スムーズレンタカー」だった。実験の結果、「いける」という判断に至り、名前も一新してサービス開始となったようだ。
EveryGoの新しさについてホンダは、長時間利用が前提のレンタカーでありながら、好きなときにウェブサイトでクルマを予約し、無人のステーションから借り出せるという、カーシェアリングの利便性を組み合わせたことを挙げている。
会員証代わりにICカード運転免許証を活用し、予約したクルマの認証機器にICカード運転免許証をタッチするだけで解錠できるところも新鮮だ。利用時間は8時間が基本で、ウェブサイト上で延長手続きもできる。
車種は「フィット」や「フリード」などの上級グレードを中心としており、2017年9月に発売したばかりの新型「N-BOX」もラインナップに加えている。先進安全運転支援機能「Honda SENSING(ホンダ センシング)」の搭載車も導入することで、最新のホンダ車を体感してもらおうという気持ちがあるようだ。
以前、レンタルバイク大手の「レンタル819」に聞いたところでは、利用者の多くは購入を考えている車種の試乗が目的だそうで、退会の理由で最も多いのは「実際にバイクを買ったから」とのことだった。スマートでカーシェアリングを展開するダイムラーの「CAR2GO(カートゥーゴー)」の関係者にサービスについて尋ねると、「車両を購入する前にスマートの魅力を体感してほしい」という答えが返ってきた。
目指すはワンウェイ式カーシェアリング
クルマのある生活はどんなメリットをもたらすか、体感してみなければ分からない。でも大都市でクルマを所有するには、駐車場の確保などさまざまな制約がある。そこでまずは、借りてもらうことでクルマやバイクの魅力を体験し、所有したいと思ったら購入へという考え方が、最近のレンタカーやカーシェアリングには込められているようだ。
つまりEveryGo、ICカード免許証が会員証として使えること、レンタカーでありながら無人ステーションで借り出しや返却ができることを除けば、目新しいサービスではない。しかも筆者が体験したCAR2GOやパリのEVシェアリング「オートリブ」と比べると、遅れている部分もある。
決定的なのは、借りた場所とは異なる場所に返却できる「ワンウェイ式」ではなく、借りた場所に返さなければならない「ラウンドトリップ方式」になっていることだ。「通常のレンタカーでは乗り捨てができるのに、なぜ?」という気持ちになる。
移動というのは本来、異なる場所へと動くこと。借りた場所にクルマを返さなければならない方式では、例えば東京の中野から三軒茶屋に行きたいという用途には使えない。自宅や会社の近くでクルマを借りて、目的地で用事を済ませて再び戻ってくるような使い方ならいいけれど、目的地での滞在時間まで料金に加算されてしまう。
パリでは、オートリブのほかに自転車シェアリングの「ヴェリブ」もあるため、これらを地下鉄やバスと組み合わせて臨機応変な移動ができた。自分の意思で自由に移動できるのがクルマの魅力のひとつ。その魅力をよく知るメーカーだからこそ、1日も早くワンウェイ式を実現してほしい。
(文=森口将之/写真=本田技研工業、webCG/編集=関 顕也)
![]() |

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
-
スバルのBEV戦略を大解剖! 4台の次世代モデルの全容と日本導入予定を解説するNEW 2025.10.17 改良型「ソルテラ」に新型車「トレイルシーカー」と、ジャパンモビリティショーに2台の電気自動車(BEV)を出展すると発表したスバル。しかし、彼らの次世代BEVはこれだけではない。4台を数える将来のラインナップと、日本導入予定モデルの概要を解説する。
-
ミシュランもオールシーズンタイヤに本腰 全天候型タイヤは次代のスタンダードになるか? 2025.10.16 季節や天候を問わず、多くの道を走れるオールシーズンタイヤ。かつての「雪道も走れる」から、いまや快適性や低燃費性能がセリングポイントになるほどに進化を遂げている。注目のニューフェイスとオールシーズンタイヤの最新トレンドをリポートする。
-
マイルドハイブリッドとストロングハイブリッドはどこが違うのか? 2025.10.15 ハイブリッド車の多様化が進んでいる。システムは大きく「ストロングハイブリッド」と「マイルドハイブリッド」に分けられるわけだが、具体的にどんな違いがあり、機能的にはどんな差があるのだろうか。線引きできるポイントを考える。
-
ただいま鋭意開発中!? 次期「ダイハツ・コペン」を予想する 2025.10.13 ダイハツが軽スポーツカー「コペン」の生産終了を宣言。しかしその一方で、新たなコペンの開発にも取り組んでいるという。実現した際には、どんなクルマになるだろうか? 同モデルに詳しい工藤貴宏は、こう考える。
-
航続距離は702km! 新型「日産リーフ」はBYDやテスラに追いついたと言えるのか? 2025.10.10 満を持して登場した新型「日産リーフ」。3代目となるこの電気自動車(BEV)は、BYDやテスラに追いつき、追い越す存在となったと言えるのか? 電費や航続距離といった性能や、投入されている技術を参考に、競争厳しいBEVマーケットでの新型リーフの競争力を考えた。
-
NEW
ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】
2025.10.17試乗記「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。 -
NEW
スバルのBEV戦略を大解剖! 4台の次世代モデルの全容と日本導入予定を解説する
2025.10.17デイリーコラム改良型「ソルテラ」に新型車「トレイルシーカー」と、ジャパンモビリティショーに2台の電気自動車(BEV)を出展すると発表したスバル。しかし、彼らの次世代BEVはこれだけではない。4台を数える将来のラインナップと、日本導入予定モデルの概要を解説する。 -
アウディQ5 TDIクワトロ150kWアドバンスト(4WD/7AT)【試乗記】
2025.10.16試乗記今やアウディの基幹車種の一台となっているミドルサイズSUV「Q5」が、新型にフルモデルチェンジ。新たな車台と新たなハイブリッドシステムを得た3代目は、過去のモデルからいかなる進化を遂げているのか? 4WDのディーゼルエンジン搭載車で確かめた。 -
第932回:参加者9000人! レトロ自転車イベントが教えてくれるもの
2025.10.16マッキナ あらモーダ!イタリア・シエナで9000人もの愛好家が集うレトロ自転車の走行会「Eroica(エロイカ)」が開催された。未舗装路も走るこの過酷なイベントが、人々を引きつけてやまない理由とは? 最新のモデルにはないレトロな自転車の魅力とは? 大矢アキオがリポートする。 -
ミシュランもオールシーズンタイヤに本腰 全天候型タイヤは次代のスタンダードになるか?
2025.10.16デイリーコラム季節や天候を問わず、多くの道を走れるオールシーズンタイヤ。かつての「雪道も走れる」から、いまや快適性や低燃費性能がセリングポイントになるほどに進化を遂げている。注目のニューフェイスとオールシーズンタイヤの最新トレンドをリポートする。 -
BMW M2(後編)
2025.10.16谷口信輝の新車試乗もはや素人には手が出せないのではないかと思うほど、スペックが先鋭化された「M2」。その走りは、世のクルマ好きに受け入れられるだろうか? BMW自慢の高性能モデルの走りについて、谷口信輝が熱く語る。