いよいよ発売された「セレナe-POWER」
ガソリンモデルや「ノートe-POWER」とはどこが違う?
2018.03.07
デイリーコラム
まずはノーマルセレナとの違いを探る
2017年の東京モーターショーで初公開された、日産の電動パワートレイン「e-POWER」搭載車第2弾「セレナe-POWER」が、この3月にいよいよ発売された。その特徴や、第1弾である「ノートe-POWER」との違いを見ていこう。
ノーマルセレナとの見た目の違いはかなり限定的だ。最も分かりやすいのは、ブルーのアクセントカラーを加えたフロントグリルだろう。このほか空力性能向上のため、専用デザインの15インチアルミホイールや形状を変更したリアスポイラーなどを採用しているが、このあたりは並べて見比べないと、気が付かないレベルのもの。
一方で、室内には決定的な違いがある。通常8人乗車となるセレナの中で唯一、7人乗車の2列目キャプテンシート仕様となるのだ。ガソリン車に採用している、1列目と2列目の間を移動可能な「スマートマルチセンターシート」を省いた。その理由はリチウムイオンバッテリーの搭載スペース確保にあるようだ。シートレールが省かれた1列目シートの間には、ブルーのLED間接照明の付いたセンタートレイを装着している。
パワーユニットはガソリン車の2リッター直列4気筒エンジンに代えて、発電用エンジン+駆動モーターのe-POWERシステムを搭載。燃費性能はマイルドハイブリッド機構を備えたガソリン車の17.2km/リッターに対して、e-POWERでは26.2km/リッターにまで向上。ママにもうれしい経済性の高さを見せる。パワー面では、ガソリン車の最高出力150ps/最大トルク200Nmに対して、e-POWERは同136ps/同320Nm。最高出力は若干落ちるものの、最大トルクはガソリンモデルをはるかにしのぐどころか、3.5リッターV6自然吸気エンジン(344Nm)の「エルグランド」に迫るもの。車重はガソリンモデルよりe-POWERの方が100kgほど重いとはいえ、動力性能にはかなり余裕が出たといえるだろう。ただし、e-POWER車には4WD仕様が用意されない点には注意されたし。
エンジンの出力アップはなぜ必要?
では、そのe-POWERシステムはノートとセレナでどこが違うのだろうか。e-POWERは“シリーズハイブリッド”と呼ばれる、エンジンとモーターを切り離したタイプのハイブリッドシステムだ。日産はガソリン車のノートに搭載する1.2リッター直列3気筒DOHCエンジン「HR12DE」を、発電用エンジンとして改良。そこに発電用モーターとインバーター、「リーフ」用の駆動用モーターを組み合わせている。前述したとおりセレナの駆動用モーターの性能は136ps/320Nmで、ノートの109ps/254Nmから大幅に強化。発電用エンジンの最高出力もノートの79psから、セレナでは84psへとアップした(最大トルクは同じ)。さらに、リチウムイオンバッテリーも、ノートの1.5kWhに対してセレナでは1.8kWhとしている。大きく重いセレナのミニバンボディーに合わせて専用チューニングを施しているのだ。
その主な内容は、効率の高い新インバーターの採用と、発電用エンジンのプログラムマップ変更だ。さらに、エンジンにはオイルクーラーを追加したほか、オイルパンの容量もアップさせ、冷却性能を強化している。
しかし、いくら搭載するボディーが大きくなったからといって、エンジン性能の強化まで必要なのだろうか? 駆動用モーターの性能強化だけでは不十分なのだろうか? という疑問が生じる。
その答えは、エンジンを駆動に使わないシリーズハイブリッドの仕組みにある。通常走行時、エンジンが生み出す電気は駆動用バッテリーに充電され、そこから駆動用モーターに必要な電力を供給する。急加速時や登坂時など多くの電力を必要とする場合には、エンジンと駆動用バッテリーの両方から供給する。しかし、長い登り坂などで高負荷運転が続き、駆動用バッテリーの残量が極めて少なくなった場合には、電力の供給源がエンジンのみとなってしまう。そうなるとエンジンの最大発電量=駆動用モーターの力となるため、発電用エンジンの出力向上も必要だったのだ。ただし、セレナe-POWERは(当然ではあるが)日本のあらゆる道路事情に適応すべく開発されているため、エンジン頼みとなるシーンはかなり限られるようだ。
街なかでのわずかな試乗でも、ノート以上の静かさを実感できたセレナe-POWER。高い静粛性の実現に当たっては、ノートと同様にエンジンルーム内に防音加工を施したほか、フロアカーペットの一部に厚みを持たせるなどの、吸音および遮音加工も実施している。ノートと同様、セレナe-POWERも人気を集めそうだ。
(文=大音安弘/編集=藤沢 勝)
![]() |

大音 安弘
-
スバルのBEV戦略を大解剖! 4台の次世代モデルの全容と日本導入予定を解説する 2025.10.17 改良型「ソルテラ」に新型車「トレイルシーカー」と、ジャパンモビリティショーに2台の電気自動車(BEV)を出展すると発表したスバル。しかし、彼らの次世代BEVはこれだけではない。4台を数える将来のラインナップと、日本導入予定モデルの概要を解説する。
-
ミシュランもオールシーズンタイヤに本腰 全天候型タイヤは次代のスタンダードになるか? 2025.10.16 季節や天候を問わず、多くの道を走れるオールシーズンタイヤ。かつての「雪道も走れる」から、いまや快適性や低燃費性能がセリングポイントになるほどに進化を遂げている。注目のニューフェイスとオールシーズンタイヤの最新トレンドをリポートする。
-
マイルドハイブリッドとストロングハイブリッドはどこが違うのか? 2025.10.15 ハイブリッド車の多様化が進んでいる。システムは大きく「ストロングハイブリッド」と「マイルドハイブリッド」に分けられるわけだが、具体的にどんな違いがあり、機能的にはどんな差があるのだろうか。線引きできるポイントを考える。
-
ただいま鋭意開発中!? 次期「ダイハツ・コペン」を予想する 2025.10.13 ダイハツが軽スポーツカー「コペン」の生産終了を宣言。しかしその一方で、新たなコペンの開発にも取り組んでいるという。実現した際には、どんなクルマになるだろうか? 同モデルに詳しい工藤貴宏は、こう考える。
-
航続距離は702km! 新型「日産リーフ」はBYDやテスラに追いついたと言えるのか? 2025.10.10 満を持して登場した新型「日産リーフ」。3代目となるこの電気自動車(BEV)は、BYDやテスラに追いつき、追い越す存在となったと言えるのか? 電費や航続距離といった性能や、投入されている技術を参考に、競争厳しいBEVマーケットでの新型リーフの競争力を考えた。
-
NEW
ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】
2025.10.17試乗記「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。 -
NEW
スバルのBEV戦略を大解剖! 4台の次世代モデルの全容と日本導入予定を解説する
2025.10.17デイリーコラム改良型「ソルテラ」に新型車「トレイルシーカー」と、ジャパンモビリティショーに2台の電気自動車(BEV)を出展すると発表したスバル。しかし、彼らの次世代BEVはこれだけではない。4台を数える将来のラインナップと、日本導入予定モデルの概要を解説する。 -
アウディQ5 TDIクワトロ150kWアドバンスト(4WD/7AT)【試乗記】
2025.10.16試乗記今やアウディの基幹車種の一台となっているミドルサイズSUV「Q5」が、新型にフルモデルチェンジ。新たな車台と新たなハイブリッドシステムを得た3代目は、過去のモデルからいかなる進化を遂げているのか? 4WDのディーゼルエンジン搭載車で確かめた。 -
第932回:参加者9000人! レトロ自転車イベントが教えてくれるもの
2025.10.16マッキナ あらモーダ!イタリア・シエナで9000人もの愛好家が集うレトロ自転車の走行会「Eroica(エロイカ)」が開催された。未舗装路も走るこの過酷なイベントが、人々を引きつけてやまない理由とは? 最新のモデルにはないレトロな自転車の魅力とは? 大矢アキオがリポートする。 -
ミシュランもオールシーズンタイヤに本腰 全天候型タイヤは次代のスタンダードになるか?
2025.10.16デイリーコラム季節や天候を問わず、多くの道を走れるオールシーズンタイヤ。かつての「雪道も走れる」から、いまや快適性や低燃費性能がセリングポイントになるほどに進化を遂げている。注目のニューフェイスとオールシーズンタイヤの最新トレンドをリポートする。 -
BMW M2(後編)
2025.10.16谷口信輝の新車試乗もはや素人には手が出せないのではないかと思うほど、スペックが先鋭化された「M2」。その走りは、世のクルマ好きに受け入れられるだろうか? BMW自慢の高性能モデルの走りについて、谷口信輝が熱く語る。