トヨタ車の走りが変わる!?
新パワートレインに注目せよ
2018.03.09
デイリーコラム
中核的存在になるエンジン
2018年3月6日に開幕したジュネーブモーターショーで、レクサスのコンパクトSUV「UX」が初公開された。「NX」より小さいUXの登場は、日本市場にとってもうれしいニュースだが、今回のお題は、UXそのものではなく、そのパワートレイン。このUXには、2018年2月末にトヨタが発表した新パワートレインが搭載されるのだ。
同社は、同年2月26日に行った技術説明会において、“クルマづくりの構造改革”「TNGA(Toyota New Global Architecture)」の新パワートレイン戦略で新たに開発した、ガソリン仕様の2リッター「Dynamic Force Engine」およびそのハイブリッドシステム、FF車用トランスミッション、4WDシステムを発表した。
TNGA第1弾の「プリウス」に搭載される1.8リッターのハイブリッドユニットが存在する中、排気量の近いシステムをどのような車種に搭載するのか注目されたが、今回、前述のとおりレクサスUXへの採用が明らかになった。ハイブリッドについては3代目の「オーリス」に搭載されるという。
これら新パワートレイン戦略の大きな役目としては、環境負荷の低減、燃料多様化への対応、開発生産効率の向上が挙げられる。世界中のメーカーが電動化へのシフトを表明しているが、この電動化には電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)はもちろんのこと、ハイブリッド車も含まれる。エンジンの進化は、今後も絶対条件なのだ。
新エンジンは、他社と同様にモジュール化したうえで展開される。トヨタでは現状のエンジンの種類を40%削減しつつ、2021年までに19種類37バリエーションを導入する予定だ。その中で、2リッターエンジンのラインナップは中核的存在となると見られる。組み合わされるトランスミッションについては、トヨタは自動変速機の選択基準として、最大トルクが200Nm前半以下のパワーユニットにはCVT、それ以上のものはATとする方針を示している。
CVTのイメージが変わる?
新たな2リッターガソリンエンジンでは、CVTが選択される。現状も大トルクのターボエンジンを除きCVTが組み合わされる点は同じだが、CVTそのものの作りはがらりと変わり、世界初のローギア付き「Direct Shift-CVT」となる。
新CVTの考え方は、「CVTの苦手とする発進についてはギアに任せてしまおう」というもの。ローギアの追加で、CVTは変速レンジを高めに振ることが可能となり、ワイドレンジ化が実現できる。さらにベルトへの負荷の低減により、ユニットの軽量化とより素早い変速も可能に。結果、デュアルクラッチ式のDCTとわたりあえる効率と走りの良さが得られるというから楽しみだ。ギアとベルトの切り替えもかなりスムーズらしい。(筆者を含む)CVT嫌いの人にとっては、まさに朗報といえる。
トランスミッションに関しては、もうひとつニュースがある。FF車向けMTの新設だ。しかも変速時に自動的にエンジン回転数を制御する「i-MT制御」付き。他社では既に採用されている「レブコントロール」をこのタイミングに入れてきた理由については、もとから採用したいという思いはあったものの、MTはなかなか新設できず、この機会となったとのこと。こちらも気になる存在だが、現時点では日本導入については不明。ただ、最大トルク200Nm後半までのエンジンに対応し、ギア比は数種類あるという。
主な活躍の場は、欧州や新興国とみられるが、日本でもこのMTを使ったモデルを味わってみたいと思う人は多いはずだ。
拡大 |
FRライクな走りが可能に
昨今のSUV人気によりニーズが高まる4WDシステムについても、FFベースの新システムが発表された。エンジン車向けの電子制御4WDは、「ダイナミックトルクベクタリングAWD+AIM(AWDインテグレーテッドマネジメント)に進化。これは、後輪に分配するトルクを左右独立して自動制御できるトルクベクタリング機構、FFと4WDの自動切り替えにより燃費を向上させるディスコネクト機能、そして「AIM」と呼ばれるエンジン、ブレーキ、トランスミッション、4WDの統合制御システムを備えるものだ。
モーターを使ったハイブリッド車用の4WDシステム「E-Four」も、リア側のトルクを約1.3倍にまで高め、AIMも導入。ハイブリッド4WDでも、前後モーターのトルクコントロールにより、トルクベクタリング的な効果を与えるとのこと。FRライクなコーナリングが楽しめる点も新たな魅力となりそうだ。
TNGAの新パワートレイン戦略は、あらゆる面での効率の向上と大幅な環境負荷低減が主なねらいである。しかしトヨタは、TNGAが同時に掲げる「もっといいクルマづくり」という面もしっかりと考慮しているとも明言している。
CVTは、燃費向上には貢献してきたが、ドライバビリティーの面では弱かった。TNGAを採用したハイブリッド車はどれも出来のいいクルマばかりだが、日常領域を含め、運転の楽しさという点では、いまひとつ魅力に乏しいと筆者は感じていた。その点、ユニークなギア付きCVTには大きな期待が持てる。加速感を向上させつつエンジンの回転をより自然に上昇させるという新システムは、新たなハイブリッドフィールを予感させる。今は、こうした技術が採用されるレクサスUXに乗れる日を、胸を膨らませて待つことにしたい。
(文=大音安弘/写真=トヨタ自動車、webCG/編集=関 顕也)
拡大 |

大音 安弘
-
日産は“再挑戦”でホンダは“終了” 新型「エルグランド」発売に見る、プレミアムミニバンの今 2026.7.20 トヨタが圧倒的なシェアを占める上級ミニバンの世界において、新型「エルグランド」で復権をねらう日産。しかし、なぜフルモデルチェンジは16年ぶりになったのか? ホンダはどうするのか? この市場の今を考察する。
-
新型「アルピーヌA110」はどんなクルマに? グッドウッドを駆けたテストカーから読み解く 2026.7.17 アルピーヌが次期型「A110」を示唆する「A110フューチャー」を初公開。グッドウッドで走る姿を披露した。そこから分かる未来のA110の姿とは? 電動化がアナウンスされているが、エンジン車の設定はあるのか? 公式発表とテストカーの姿から深掘りする。
-
九州・熊本で開催 「Lamborghini Summer Days 2026」で極上なる猛牛の世界観を知る 2026.7.16 ランボルギーニが1泊2日の無料招待制イベント「Lamborghini Summer Days 2026」を、九州・熊本で開催。上天草の自然とともに最新モデルの走りと独自の世界観を味わう特別なツアーの詳細を報告する。
-
スライドドアはいつから? 「日産エルグランド」登場前夜の国産ミニバン史 2026.7.14 間もなく「日産エルグランド」の新型が発売される。これに限らずわが国は多くのブランドが多くのモデルをラインナップするミニバン王国なわけだが、そもそも国産ミニバンはどのようなかたちで始まり、どのような進化を遂げてきたのだろうか。多人数乗車モデルの歴史を解説する。
-
みんなで乗れるアメリカンSUBARU 3列シートSUV「アセント」はどれだけ大きいのか? 2026.7.13 アメリカで生産されているスバルの3列シートSUV「アセント」が、日本でも2026年後半から販売される見込みだ。一体どんな魅力の詰まったクルマなのか、発売を前にその特徴を予習しておこう。
-
NEW
電気自動車の人工的な走行音はどうあるべきか?
2026.7.21あの多田哲哉のクルマQ&AEVの走行時に車内で聞こえてくる人工的な“音”は、本来、どうあるべきなのか? やはり、疑似エンジン音が最適なのか? トヨタでさまざまなクルマを開発してきた多田哲哉さんの考えを聞いてみた。 -
NEW
アストンマーティン・ヴァンテージS(FR/8AT)【試乗記】
2026.7.21試乗記アストンマーティンの擁するFRスポーツ「ヴァンテージ」が、より高性能な「ヴァンテージS」に進化。よりたくましいエンジンを獲得し、卓越したコーナリング性能に磨きをかけつつ、“優しさ”も身につけた最新モデルの走りを報告する。 -
第340回:一にエンジン、二にカッコ
2026.7.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。マツダ渾身(こんしん)のラージ商品群を応援するカーマニアのひとりとして、「CX-60」と「CX-80」の動向は常に気になっている。3列シートSUV、CX-80の最新モデルにあらためて試乗して感じたこととは? -
日産は“再挑戦”でホンダは“終了” 新型「エルグランド」発売に見る、プレミアムミニバンの今
2026.7.20デイリーコラムトヨタが圧倒的なシェアを占める上級ミニバンの世界において、新型「エルグランド」で復権をねらう日産。しかし、なぜフルモデルチェンジは16年ぶりになったのか? ホンダはどうするのか? この市場の今を考察する。 -
ホンダ・インサイト(FWD)【試乗記】
2026.7.20試乗記3000台の限定で販売される新型「インサイト」は、クロスオーバー風のフォルムと、これまでのホンダ車にはなかった内外装のデザインテイストが新鮮だ。中国で生産され、日本独自の名前が与えられた新型電気自動車の走りと仕上がりを、ロングドライブで確かめた。 -
ポルシェ911カレラT(後編)
2026.7.19ミスター・スバル 辰己英治の目利きスバルとSTIでクルマの走りを鍛え、モータースポーツにも積極的に取り組んできた辰己英治さん。彼の目に、“スポーツカーの水準器”こと「ポルシェ911」はどのように映ったのだろう? 走りの楽しさを追求した「カレラT」グレードに乗っての印象を聞いた。

































