レクサスUX300h“バージョンL”(4WD/CVT)
1年生と6年生 2024.04.01 試乗記 “Always On”の考えのもと、各車にたゆまぬ改良を積み重ねているレクサス。2024年の初頭にリリースした「UX」の最新モデルは、これぞ完成形と呼べるほどの仕上がりだ。パワートレインが刷新された「UX300h」の仕上がりをリポートする。相次ぐ大規模改良
UXはトヨタでいうと「プリウス」「カローラ」「ノア/ヴォクシー」、そして「C-HR」などと共通の「GA-C」プラットフォームを土台とするレクサスだ。つい先日まではレクサスのエントリーモデルでもあったが、日本ではその座を「LBX」にゆずった。
ただ、LBXはあくまで日本と欧州がメインであり、北米や中国などの主力市場でのエントリーレクサスは今もUXだ。また、UXには100%電気自動車(BEV)の「300e」も用意される。世界的な販売規模や電動化戦略といった観点で見ると、レクサス全体における重要度はいまだにLBXよりUXのほうが高いのでは……と思えるくらいだ。
そんな存在のUXは発売から丸5年が経過した現在でも、改良の手が止まらない。2022年夏に、新しい「トヨタテクニカルセンター下山」での走り込みによる車体の大胆な強化(スポット溶接の打点増し)とそれに合わせたパワステやダンパーのリチューン、“Fスポーツ”グレードの内容充実、12.3インチの大型センターディスプレイの標準化……といった大規模な手直しを受けたばかりだった。なのに、翌2023年12月にはさらに大きな改良が実施されたのだ。それが今回の試乗車である。
その過去最大ともいえる改良内容については、渡辺敏史さんのプロトタイプ試乗記にも詳しい。とくに純エンジン車の「UX200」が廃止されただけでなく、今回の試乗車でもあるハイブリッド車(HEV)が車名も新たにUX300hとなり(従来は「UX250h」)、センターディスプレイに続いて運転席前のメーターパネルも12.3インチの大型フル液晶化された。しかも、なんと約1年前に強化されたばかりの車体構造は、“下山”でのさらなる走り込みの結果として、新たに前後に強化ブレースが追加されているのだ。最近のトヨタ/レクサスらしく、担当者が嬉々としてマニアな開発を続けている様子が、UXからも見て取れる。
デザインよりも走りを優先
今回の試乗車はUX300hの“バージョンL”で、駆動方式は4WDだったが、これが最新のUXの改良ポイントをもっとも体感しやすい仕様のひとつといえそうだ。というのも、“Fスポーツ”のような可変ダンパーや「パフォーマンスダンパー」が備わらないぶん、素の車体剛性強化の恩恵を感じやすい。また、最新世代のハイブリッドシステムに換装されたパワートレインはシステム出力が従来の184PSから199PSに高まったが、それ以上に4WDのリアモーターの性能アップが如実(7PS/55N・m→41PS/84N・m)だからだ。
新しいUXの運転席におさまると、まず目前に、いかにも最新の高精細TFT液晶が全面に広がっていることに気づく。さらに、2022年の改良から採用されている12.3インチのセンターディスプレイも、最新のレクサスに共通するディテールだ。加えて、シフトセレクターも大きく変わっている。従来のメカニカルなレバーから、BEVのUX300e同様の電子式となったことに加えて、UX300eもろとも、セレクターノブ自体が小型化された。
このように主要なインターフェイスが積極的にアップデートされたいっぽうで、内外装の基本デザインは2018年秋の発売当初から大きくは変わっていない。ドライブモードセレクターとトラクションコントロールスイッチが左右に突き出したメーターフードも、ひと世代前のレクサスが好んだデザインモチーフである。個人的にドライブモードセレクターがこの位置にある機能的意義はまるで感じないし、見た目にもすでに古さを感じざるをえない。これはつまり、UXの開発チームはデザイン以上に、インターフェイスや先進運転支援システムのアップデート、走りの熟成にパワーを割いたということか? デザインより走り優先(?)とは、いかにもマニアックだ。
上級版フランス車のような乗り味
UXの現開発責任者の江本光輝さんは、この最新UXについて「とにかく走りはきわまった」と胸を張る。江本さんは初期段階からチーフエンジニアの右腕役として開発にたずさわってきた“UXを知り尽くした男”であり、その彼がやりきったような笑顔を見せる。
UXはもともと、その背低パッケージや斬新なデザインに似合わず(?)、姿勢変化が大きめで、ゆったりと柔らかな物腰を身上としてきた。ただ、デビュー当初のUXは“癒やし系”の乗り心地の代償として、ステアリング反応にズレやオーバーシュート感があり、その手応えもどこか曖昧だったのは否めない。
しかし、2度にわたる車体強化と、その都度熟成されてきたシャシーによって、最新のUX300hの走りは、江本さんの発言に十二分な説得力を感じる仕上がりとなっている。もともとの柔らかで豊かな乗り心地が健在であるいっぽうで、姿勢変化はより小さく、旋回時にも内輪がしっとりと接地した安心感が色濃くなった。直進性も、矢のごとし……とまではいわないが、十二分に良好だ。
ステアリング反応もいい意味でのマイルドさは残しつつ、明らかに正確になったので、高機動状態でもねらったポイントにピタリと寄せやすい。誤解を恐れずにいえば、フランス車的なるものの上級版みたいな乗り味なのだ。分かりにくいかもしれないが、これは筆者的にはめちゃくちゃホメているつもりだ(笑)。
ただ、今回の試乗車が「快適なうえに、いかようにも振り回せる」と思わせてくれた背景には、リアモーターが強化されて、江本さんも「クルマを曲げるほうにも使えるようになった」と語る4WDの恩恵も大きそうだ。さすがにテールからグリグリ曲げるほどのパワーはないが、旋回中にアクセルペダルを積極的に踏み込んでも走行ラインは乱れず、後ろからグッと押し出す安心感がきちんと伝わってくる。
LBXに負けない魅力
こうした横方向=コーナリングに加えて、縦方向=加減速でもUXの進化は明らかである。ブレーキシステムも新しく、ペダルを踏んだときだけでなく、抜いたときのコントロール性が高いのがありがたい。ブレーキだけでなく、アクセルのオンオフによる速度の微調整が格段にやりやすくなっているのは、トヨタの最新世代ハイブリッドに共通する美点だ。
また、静粛性ももともと低くはなかったが、ルーフの接着剤に高減衰マスチックを新採用したり、ホイールハウスなどに制振材を追加したりといった手当てで、さらに引き上げられている。そういわれれば、個人的にはとくにロードノイズの小ささが今回は印象に残った。
それにしても、発売6年目のUXを、あえて従来デザインのままで、しかもこれほど大幅に進化させるとは意外だった。冒頭のようにUXはグローバルで今も重要な存在であり、ひとつ下にLBXが加わったことで、上級機種の面目を保つ必要もあったのだろう。
安楽系の上級グレードである“バージョンL”の4WDに、メーカーオプションをほぼフルトッピングした今回の試乗車はおよそ640万円。同じく4WD+フルトッピングのLBXより80万円ほど高い計算になるが、LBXとちがって静粛性アップには寄与しない「“マークレビンソン”プレミアムサラウンドシステム」(LBXにはアクティブノイズコントロールが同時装着される)を省けば20万円以上の節約となり、クルマ自体のグレードも吟味すれば価格差はさらに縮小する。
LBXより明らかに力強い動力性能や、それでいて大差ない燃費、上級の車格を感じさせる重厚でソフトな乗り心地、そして曲がりなりにも大人がしっかり過ごせるリアシート……などを考えると、UXの魅力は、真新しいLBXにまるで負けていない。いやはや、「UXって、こんないいクルマだった(あるいは、になった)んだ!」と今回はあらためて感心した。
(文=佐野弘宗/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
レクサスUX300h“バージョンL”
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4495×1840×1540mm
ホイールベース:2640mm
車重:1580kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:152PS(112kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:188N・m(19.2kgf・m)/4400-5200rpm
フロントモーター最高出力:113PS(83kW)
フロントモーター最大トルク:206N・m(21.0kgf・m)
リアモーター最高出力:41PS(30kW)
リアモーター最大トルク:84N・m(8.6kgf・m)
システム最高出力:199PS
タイヤ:(前)225/50RF18 95V/(後)225/50RF18 95V(ダンロップSP SPORT MAXX 050)※ランフラットタイヤ
燃費:25.0km/リッター(WLTCモード)
価格:565万7000円/テスト車=639万7300円
オプション装備:ボディーカラー<ソニックカッパー>(16万5000円)/ルーフレール(3万3000円)/デジタルキー(3万3000円)/パノラミックビューモニター<床下透過表示機能付き>+カラーヘッドアップディスプレイ(14万3000円)/“マークレビンソン”プレミアムサラウンドサウンドシステム(22万5500円)/おくだけ充電(2万4200円)/アクセサリーコンセント<AC100V・1500W、非常時給電システム付き[フロントセンターコンソールボックス後部、ラゲッジルーム内]、外部給電アタッチメント>(4万5100円)/寒冷地仕様<LEDリアフォグランプ、ウインドシールドデアイサー等>(2万8600円)/ドライブレコーダー<前後>(4万2900円)
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:728km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(7)/山岳路(2)
テスト距離:475.8km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:15.8km/リッター(車載燃費計計測値)

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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