ボルボS60/V60/XC60 T6 AWD R-DESIGN(4WD/6AT)【試乗記】
ボルボのスポーツ魂 2011.08.01 試乗記 ボルボS60/V60/XC60 T6 AWD R-DESIGN(4WD/6AT)……579万円/599万円/669万円
ボルボの最新「60シリーズ」のスポーティグレード「R-DESIGN」に乗り比べ。あらためて気づいた、各モデルの特徴とは?
「R-DESIGN」を選ぶなら
「R-DESIGN」のRとはリファインメントの意。ボルボが各モデルの最上級に設定しているスポーティグレード「R-DESIGN」は、ただ足まわりを固めてスポーツ性能を洗練させただけでなく、スタイリングの洗練も重要なテーマになっている。今回は「S60」「V60」「XC60」という、ボルボで最も躍動感のある「60シリーズ」のR-DESIGNに一気に乗り、そこに貫かれたスポーツ魂を浮き彫りにしてみたい。
まずは、60シリーズの中心的存在であるS60から試してみる。迫力が増した前後バンパー、光沢のあるブラックグリル、繊細な5本スポークデザインの18インチホイール(「T6 AWD」の標準は17インチ)などが外観上の識別点。サスペンションはスプリングが先代型と比べて15%固められているほか、前後のブッシュが強化され、リアダンパーがモノチューブタイプに変更され、さらにストラットタワーバーが追加されている。
いきなり結論めいた話になってしまうが、R-DESIGNならではの運動性能を味わいたければ、S60がベストの選択だ。締め上げられた足まわりが示すシャープな回頭性とロールモーメントの小ささ、さらにはテールに大きなラゲッジルームを背負わないセダンならではの“お尻の軽さ”のおかげで、おそらく現行ボルボで最も痛快なフットワークを示す。今回はV60のR-DESIGNと乗り比べることができる環境だったのでわかったのだが、セダンとワゴンの運動性能の違いというのは、決して「大差なし」ではない。結構違うものなのだ。
ボディによる違い
S60とV60のサスペンション設定は、基本的には同じ方向性でしつらえてあるという。今回とは異なり、この2台を乗り換えるチャンスがなく、V60のR-DESIGNだけを試していれば、なんと気持ちのいいハンドリングなんだろう! と記していたことだろう。しかし違った。セダンとワゴンを交互に乗れば、ターンインで発生する車体の後部を振り出すような力の有無と、それに続くロールスピードのわずかな違い(もちろんセダンのS60の方が安定している)が、はっかりわかるのである。
ハンドリング以外の、S60とV60の共通の美点としては、やはり直6エンジンの、独特のスムーズさが印象的だ。最近はV6だって、いや直4だって、ずいぶんスムーズになった。しかし、それでも直6の構造に起因する無振動ぶりは、“その先にある世界”といえる。これは乗って、スロットルを踏み込めば、すぐに「ん?」とわかるはずだ。エンジンを搭載する方向の違いこそあるが、今や直6ならではの世界を味わおうと思ったら、ボルボとBMWぐらいしかない。貴重である。
S60にしろV60にしろ、これだけシャープで純度の高いハンドリングを実現していながら、乗り心地の悪化がこのレベルで済んでいるのは幸いである。さすがに標準型のT6 AWDに比べればコツコツとした硬さは目立つが、仮にR-DESIGNのスタイリングが気に入って購入したとしても、それほど我慢せずに済む硬さに収まっている。続いて、XC60に乗り換えてみる。
SUVらしからぬ走り
XC60 R-DESIGNのスタイリングのモディファイも、基本的なメニューは他の2台と同じ。前後のバンパーがよりスポーティさを強調したものとなり、光沢のあるブラックグリルが装着される。ホイールについては、一気に20インチまでステップされる(標準型XC60は18インチ)。サスペンションはスプリングレートがノーマルより10%固くなるほか、ダンパーとスタビライザーが併せて強化される。さらにステアリングのギア比も10%速められている。
よりオンロード志向が強められたXC60 R-DESIGNのフットワークは、これもまたファンなことに違いはない。しかし、さすがにS60やV60ほど追い込んだセッティングにはなっていない。足まわりはしなやかに動き、それなりにロールもし、快適性とのバランスを取りながらまとめられている。そうは言っても、格段に正確さを増したステアリングを駆使して走れば、およそSUVらしからぬ軽やかな足どりを見せる。
速さだけを突出させず、ツーリングに不可欠な快適性とのバランスに優れ、しかも他とはちょっと違うことをアピールできるスタイリングも備わっている。今までとはちょっと違う60シリーズの、さらにちょっと違うR-DESIGNは、ボルボで自己主張したい人にとって格好の選択肢である。まあ確かにボクシーなボルボは格好良かったけれども、それはもう相当昔の話になってしまっている。
(文=竹下元太郎/写真=郡大二郎)
