今年はマツダのSUVがワン・ツー
JNCAPに見る“安全なジドーシャ”の今
2018.06.11
デイリーコラム
今年の主役はすっかりマツダ
「今年はマツダ祭だね」
これが、平成29年度の自動車アセスメント(JNCAP)の発表会を取材した感想だ。
2018年5月31日、東京・有楽町にある東京国際フォーラムにおいて、「平成29年度自動車アセスメント 結果発表会」が開催された。自動車アセスメントは「NCAP」とも呼ばれるもので、自動車メーカーとは関係性のない第三者(日本の場合は独立行政法人自動車事故対策機構、通称NASVA)が、販売されているクルマの安全性能を評価するというもの。各メーカーのクルマを横並びで比較できる制度で、日本だけでなく欧州や北米、アジアなど世界各国で実施されている。日本のものは「日本(JAPAN)で実施されるNCAP」ということで、「JNCAP」の呼称が使われる。
今回の発表会におけるメインイベントは、「衝突安全性能評価」(衝突時の乗員や歩行者の安全性を評価)の結果発表と表彰だ。表彰されるのは、最高評価の5つ星を獲得したクルマなのだが、今年はなんと、15台の評価対象車のうち、実に9台がこの5つ星に輝いた。
ところで、表彰式では総合点数の低い方から高い方へという順で表彰が行われるのだが、今回はそこで面白いことが起きた。9台の“5つ星”のうち、2番目に点数が良かったのは「マツダCX-5」だった。表彰を受けたのは開発担当主査の松岡英樹氏だ。あいさつを終えて舞台を降りると、次のクルマ(つまり今年の1位)として「マツダCX-8」の名が発表される。総合評価の獲得点数は208満点中の193.9点、今年唯一の190点台である。そして壇上に現れた開発担当は、またも松岡氏だった。さらに表彰の後の受賞者プレゼンテーションにも松岡氏は登場。式の後半は、ずっと「マツダの松岡氏が出ずっぱり」というイベントとなったのだ。
また、20車種を対象に行われた「予防安全性能評価」(自動ブレーキのような事故を未然に防ぐ技術を評価)でも、上位3台は「マツダCX-8」(79.0点)、「日産ノート」(79.0点)、「マツダCX-5」(78.5点)と、こちらもマツダの2モデルがランクイン。これも「マツダ祭」の印象をさらに強める一因となった。
一朝一夕では結果は出せない
マツダの安全性能向上の努力は、今に始まったものではない。想像すれば分かるとおり、「衝突安全性能評価」はボディーそのものの性能がカギだ。もとの資質が良くなければ、いくら後から工夫しても、トップクラスの性能を実現することは難しい。CX-8やCX-5は新型モデルではあるが、シャシーが新世代というわけではない。マツダのなかではいわゆる“第6世代”と呼ばれるもので、すでに世代としては末期のもの。すなわち、もともとマツダはポテンシャルの高いプラットフォームを持っていたのだ(実際、同じシャシーの初代CX-5もJNCAPで5つ星を獲得している)。
先日の「ロードスター」のマイナーチェンジでは、同車にも自動緊急ブレーキが標準装備された。「トヨタ86」「スバルBRZ」に装備されていないことからも分かるとおり、販売台数が少なく、形状の特殊なスポーツカーに自動緊急ブレーキを装着するのは難しい。このことからも、マツダは安全に対して意識の高いメーカーといえるだろう。
また、今回のマツダの躍進は、スバルという“強敵”の不在も理由のひとつとして挙げられる。昨年は「スバル・インプレッサ/XV」が総合評価199.7点を獲得。過去最高の評価を得たクルマに贈られる「JNCAP大賞」を受賞するなど、前回は「マツダ祭」ではなく「スバル祭」だったのだ。本年度もスバルという強敵に新型車があれば、結果はまた違ったものになったのかもしれない。
ちなみに、2014年に始まったばかりの「予防安全性能評価」については、本年度に試験を受けた20台のうち、2台が満点を獲得。あまりに早すぎる“満点車”の登場に、早速試験内容見直しが行われることに。来年以降は評価対象に「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」が追加されるという。この変更も含め、今後の試験内容は、予防安全装置の進化にフレキシブルに対応することになるとのことだった。
平成29年度自動車アセスメントの結果
最後に、今回のJNCAPにおける対象車種の成績を記しておこう。今クルマを探している人は、ぜひ参考にしてほしい。
【衝突安全性能評価】
- マツダCX-8……193.9点
- マツダCX-5……187.3点
- トヨタC-HR……185.8点
- ホンダN-BOX/ホンダN-BOXカスタム……184.1点
- トヨタJPN TAXI……182.9点
- ホンダ・ステップワゴン……180.9点
- ホンダ・シビック……180.8点
- トヨタ・ルーミー/トヨタ・タンク/ダイハツ・トール/スバル・ジャスティ(サイドカーテンエアバッグ付き)……180.3点
- 日産リーフ……179.4点
- スズキ・スイフト……178.3点
- トヨタ・ルーミー/トヨタ・タンク/ダイハツ・トール/スバル・ジャスティ……169.6点
- ダイハツ・ミライース/スバル・プレオ プラス/トヨタ・ピクシス エポック……165.7点
- スズキ・ワゴンR/スズキ・ワゴンRスティングレー/マツダ・フレア……163.0点
- ダイハツ・ムーヴ キャンバス……160.5点
- スズキ・スペーシア/スズキ・スペーシアカスタム/マツダ・フレアワゴン/マツダ・フレアワゴン カスタムスタイル……157.6点
【予防安全性能評価】
- 日産ノート……79.0点
- マツダCX-8……79.0点
- マツダCX-5……78.5点
- ホンダ・シビック……78.4点
- ホンダN-BOX/ホンダN-BOXカスタム……76.6点
- スバル・レヴォーグ……76.5
- トヨタ・ハリアー……75.9点
- トヨタC-HR……74.4点
- ホンダ・フィット……65.5点
- ホンダ・ステップワゴン……64.6点
- スズキ・スイフト……63.2点
- 三菱アウトランダーPHEV/三菱アウトランダー……63.2点
- スズキ・クロスビー……60.9点
- ホンダ・ヴェゼル……60.8点
- スズキ・ワゴンR/スズキ・ワゴンRスティングレー/マツダ・フレア……58.9点
- ダイハツ・ミライース/スバル・プレオ プラス/トヨタ・ピクシス エポック……57.2点
- ダイハツ・ムーヴ/ダイハツ・ムーヴ カスタム/スバル・ステラ/スバル・ステラ カスタム……57.2点
- スズキ・スペーシア/スズキ・スペーシアカスタム/マツダ・フレアワゴン/マツダ・フレアワゴン カスタムスタイル……56.7点
- ダイハツ・ムーヴ キャンバス……56.6点
- トヨタ・ルーミー/トヨタ・タンク/ダイハツ・トール/スバル・ジャスティ……30.6点
(文と写真=鈴木ケンイチ/編集=堀田剛資)

鈴木 ケンイチ
1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。
-
業績不振は想定内!? 名門ポルシェはこの先どうなってしまうのか?NEW 2026.5.4 2025年から思わしくない業績が続くポルシェ。BEVの不振やMRモデルの販売終了などがその一因といわれるが……。果たして、名門に未来はあるのか? 事情をよく知る西川 淳が、現状と今後の見通しについて解説する。
-
世紀の英断か 狂気の博打か 「日産サクラ」の値下げに踏み切った日産の決断を考える 2026.5.1 日産の軽乗用電気自動車「サクラ」が、180kmの航続距離はそのままに値下げを断行! デビューから4年がたつというのに、性能はそのままで大丈夫? お手ごろ価格というだけでお客は戻ってくるのか? 電気自動車のパイオニアが下した、決断の成否を考える。
-
BMWの新世代BEV「i3」の姿からエンジン搭載の次期「3シリーズ」を予想する 2026.4.30 「iX3」に続き、完全な電気自動車として登場した新型「i3」。BMWはノイエクラッセをプロジェクトの御旗に電動化を推進しているが、同社の伝統たる内燃機関搭載車「3シリーズ」のゆくえやいかに。 i3の成り立ちからその姿を予想する。
-
「シビック タイプR」は入手困難 北米生産の「インテグラ タイプS」はその需要を満たせるか? 2026.4.29 ホンダが北米生産の「アキュラ・インテグラ タイプS」の国内導入を発表した。エンジンなどのスペックから、それが「シビック タイプR」にほど近いクルマであることがうかがえる。果たしてタイプSは入手困難なタイプRの代替になるのだろうか。
-
頓挫してしまった次世代EV「アフィーラ」は、本来どうあるべきだったのか? 2026.4.27 ホンダの電動化戦略見直しに伴い、ソニー・ホンダの次世代EV「アフィーラ」の開発・販売も凍結されてしまった。その成功には、何が足りなかったのか? アフィーラプロジェクトの頓挫から今後のEVのあるべき姿を考える。
-
NEW
ランボルギーニ・テメラリオ(前編)
2026.5.3思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。「ウラカン」の後継にあたる“小さいほう”ではあるものの、プラグインハイブリッド車化によって最高出力920PSを手にしたミドシップスーパースポーツだ。箱根の山道での印象を聞いた。 -
シトロエンC5エアクロス マックス ハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】
2026.5.2試乗記シトロエンのコンセプトカー「OLI(オリ)」の思想を継承する新デザイン言語を用いた2代目「C5エアクロス」が上陸。ステランティスの最新プラットフォーム「STLAミディアム」や48Vマイルドハイブリッド機構によってどう進化したのか。その走りを報告する。 -
あの多田哲哉の自動車放談――フォルクスワーゲンID. Buzzプロ ロングホイールベース編
2026.5.1webCG Movies現在の自動車界では珍しい、100%電動ミニバン「フォルクスワーゲンID. Buzz」。トヨタでさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さんが、実車に初めて試乗した感想をお伝えします。 -
2026年7月に開催する1泊2日の特別なドライビング体験への参加者を募集
2026.5.1九州・熊本でランボルギーニとともに極上の夏を味わう<AD>ランボルギーニが無料招待制となる1泊2日の特別ツアー「Lamborghini Summer Days 2026」を、九州・熊本で開催する。上天草の美しい海を望み、豊かな自然とともに最新モデルの走りを味わう、45組90名に贈られる特別なドライビング体験とは? -
アストンマーティン・ヴァンテージS(FR/8AT)【試乗記】
2026.5.1試乗記英国の名門アストンマーティンのスポーツモデル「ヴァンテージ」が、「ヴァンテージS」に進化。より高出力なエンジンと進化した足まわりを得たことで、その走りはどのように変わったのか? パフォーマンスを存分に解放できる、クローズドコースで確かめた。 -
世紀の英断か 狂気の博打か 「日産サクラ」の値下げに踏み切った日産の決断を考える
2026.5.1デイリーコラム日産の軽乗用電気自動車「サクラ」が、180kmの航続距離はそのままに値下げを断行! デビューから4年がたつというのに、性能はそのままで大丈夫? お手ごろ価格というだけでお客は戻ってくるのか? 電気自動車のパイオニアが下した、決断の成否を考える。





