第509回:“二輪シロート”による三輪バイク体験記
「カンナム・スパイダー」のオーナーズミーティングに参加して
2018.06.23
エディターから一言
転ぶ、重い、大変……。大型オートバイを楽しむにあたって障壁となるそんな悩みを解決してくれるのが、前2輪、後ろ1輪の三輪オートバイ「カンナム・スパイダー」だ。原付きバイクに数回乗ったことがあるだけという“二輪シロート”記者は、果たして風を感じることができたのか!?
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原点はタイヤを付けたスノーモービル
カナダ生まれのユニークな3ホイーラー、カンナム・スパイダーの公式オーナーズミーティングが東京・お台場にて6月16日から17日にかけて行われた。全国から初日が63台、翌日が75台のスパイダー、そしてオーナーとファンが参加したのだが、天気予報が芳しくなかったこともあり、例年に比べると参加台数は少なめだったようだ。会場内では、ユーザー同士の交流に加え、新型車のお披露目やライブなども実施された。さらに、初日は東京・青山を、2日目は横浜を目的地としたプチツーリングも行われた。
まずは主役であるカンナム・スパイダーについて簡単に紹介したい。スパイダーは、BRPのバイク部門であるCan-Am(カンナム)が送り出したフロント2輪、後輪1輪の三輪バイク(トライク)だ。全車にロータックス製1330㏄の直列3気筒エンジンを搭載し、トランスミッションはバックギア付きの6段AMTのみ。バイクのようにスポーツ性を高めた「F3」とグランドツアラー的キャラクターの「RT」の2モデルを展開している。
その成り立ちも実にユニークだ。BRPは航空機まで製造する大企業、ボンバルディアグループの一員であり(エンジンを手がけるロータックスも同様)、原点は既に75年の歴史を持つスノーモービルにある。そのスノーモービルを開発するにあたり、冬季以外はタイヤを付けてテストを行っていたのだが、乗り味が思いのほか楽しかったことからスパイダーが製品化されたのだという。そういう意味では、オンロードを走るスノーモービル的な乗り物でもあるのだ。
ユーザーの声を聞いてみる
日本におけるユーザーは、なんとコア層が60代というから驚く。確かに会場を見回してみると、ライダースーツなどに身を包んだ若々しいスタイルだが、やはりシニアの方々が多いようだ。ただし、会場内を颯爽(さっそう)と歩く姿には、とても「お年寄り」なんて呼べないアクティブさが感じられる。
皆さんがなぜスパイダーを愛用しているのか、RTに乗る60代のオーナーに話を伺った。以前はハーレーダビッドソンのバイクに乗っていたという元ライダーである。
近ごろは大型バイクの重量を支えることが負担となり、不安に感じていたのだが、仲間と共にバイク生活を楽しみたいという気持ちを捨てることができなかった。そこで、転倒の心配も少なく、車重を支える必要もないトライクへの乗り換えを検討。その過程でスパイダーに出会ったという。乗り味も面白く、フロントが2輪のため、高速安定性が良好。長距離ドライブも楽チンだと教えてくれた。この日も自宅のある仙台市内から早朝に出発し、会場入りしたとのことだった。
一方で、少数ではあるが、30代の若いユーザーの姿も見受けられた。こちらの方にも話を伺うと、もともと乗り物好きだということで、クルマでは味わえない刺激を求めて手にしたようだ。しかも二輪の免許はなし(スパイダーは普通自動車免許で乗れる)。気軽にバイク感覚が味わえることに魅力を感じているそうだ。
と、ここまで書いておきながら、実は筆者はスパイダーにまだ触れたこともなかったことを白状させていただく。そこで、彼らの気持ちを少しでも理解すべく、会場周辺で試乗させてもらうことに。恥ずかしながら、二輪免許を持ち合わせていない上、原付きバイクすら数回しか乗ったことないバイクのド素人である。
気軽にライダー気分を味わえる
まずはツアラーのRTに乗ってみる。着座姿勢は大型バイクのように背筋を伸ばすスタイル。アクセルはグリップで、ブレーキはフットとなる。レバー式となる変速はセミオートマで、ギアアップはマニュアルだが、ダウンはオートで行われる。
最初は慣れないグリップ式のアクセル操作に戸惑い、ギクシャクとした加速となってしまったものの、しばらくすると操作にも慣れ、体にあたる心地よい風を楽しめるようになった。コーナーもバイクのように重心移動を強く意識する必要はなく、スパイダーの動きに合わせれば問題なし。乗り始めの緊張感はどこへやら、ひと時のライダー気分を味わうことができた。
もう1台のF3は、ノーズの見え方など、よりバイク的というよりもスノーモービルに近い感じがした(乗ったことはないが)。ライディングスタイルもスポーティーな前傾姿勢で、マシンの動きや操作もRTよりもかなりアクティブ。クルマでいえばスポーツカー的でマシンとの一体感が強く、ガンガン走りたくなる雰囲気を持っている
どちらのモデルにも共通しているのは、ドライバーの運転をサポートすべく「パワーステアリング」「ABS」「トランクションコントロール」「スタビリティーコントロール」を備えていること。イージーなドライブの陰には、高い車両制御機能があったのだ。自転車やクルマなど乗り物を操ることが好きな人なら抵抗なく乗れる。それが“二輪シロート”の正直な感想だ。
カンナム・スパイダーは今年で日本導入5年目。年間販売台数は大きな増減がない代わりに300台程度で安定しているという。乗り物としての魅力が高い割に伸び悩んでいる感じがするのは、価格と保管場所がハードルとなっているからではないだろうか。F3で237万円から、RTは308万円からと、ちょっといい国産乗用車が買えるほどの価格帯で、サイズも軽自動車ほどあるため家の軒先などには置いておけない。現時点では、気軽に所有できるものとは言いづらい。
ただし、2019年以降に価格面でのハードルを下げてくれるニュースがある。100万円台の新型モデル投入を予定しているというのだ。それでもバイクとしてみれば高価だが(保管場所の解決にはならないし)、先のシニアライダーのような転向組や安全面からバイクに二の足を踏む人たちを招く呼び水となるかもしれない。
(文と写真=大音安弘/編集=藤沢 勝)

大音 安弘
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