トヨタ・カローラ スポーツG(FF/CVT)/カローラ スポーツ ハイブリッドG“Z”(FF/CVT)
ビッグルーキーあらわる 2018.07.16 試乗記 「トヨタ・オーリス」がフルモデルチェンジを受け、日本では新型車「カローラ スポーツ」としてデビュー。最新の“つながる機能”を備えた、トヨタが世界で勝負するグローバルモデルの出来栄えは? 千葉の一般道で1.2リッターターボ車とハイブリッド車をテストした。最近のトヨタ車で最も好みのデザイン
カローラ スポーツをデザインしたのはCALTY(アメリカにあるトヨタのデザインスタジオ)だそうだ。カッコいいトヨタはたいていCALTYだ……と書くと語弊があるので表現を変えよう。僕がいいデザインだなと思うトヨタ車はたいていCALTYデザインだ。英語のKeenというか、鋭く強いフロントマスクは最近のトヨタに共通する傾向だが、いろいろなサイズのひらがなの「く」が、さまざまな角度で複雑に絡み合ったようなカローラ スポーツの顔つきは、力強く精悍(せいかん)で、ここのところのトヨタ車で最もうまくいっていると思う。
リアも同じノリでデザインされていて、前後をつなぐ全体のシルエットもよくまとまっている。年寄り向けとは思わないが、わざわざ若者向けと限定するのももったいないデザインだ。リアバンパーにボリュームをもたせてあるが、好みを言わせてもらえば、ここはなんというか、切れ上がっていてほしかった。祖先である「トヨタ2000GT」(に影響を与えたに違いない「ジャガーEタイプ」)のように。ハイブリッド車にそれを求めるのは酷だろうか。
“つながる機能”は自動運転時代に本領発揮!?
カローラ スポーツと同じ日に試乗会が開かれた新型「クラウン」同様、カローラ スポーツもつながる。例えばカローラを「LINE」の友達に加え、目的地を友達たるカローラへ書いて送ると、乗り込んだ時には目的地がカーナビにセットされている。日本ではLINEだが、アメリカではAmazonの「Alexa」が相手となるそうだ。詳しくはクラウンのところで書いたので、そちらをあわせて読んでいただきたい。
トヨタが、高価格車のみならずカローラにもこうした機能を盛り込んだからには、今後、他のトヨタ車はもちろん、他メーカーの多くのモデルにも同様のものが採用され、数年で当たり前の機能になるのだろう。入力がオペレーター相手ということになったらカーナビのインターフェイスは変わる。物理スイッチの数が減り、センターパネルのデザインが変わる。ディスプレイとマイクだけになるかもしれない。
ここまで書いた時、自動運転に関して漠然と抱いていた疑問が解決した。自動運転が実現したら、どんなに近くても、道順を完全に知っていても毎回必ず目的地を設定することになるが、これって面倒くさいなと考えていた。だがその頃にはとっくに(相手がAIか人間かはわからないが)会話で伝えれば済むことになっているのだ。
足まわりのレベルは相当に高い
さて、カローラ スポーツはTNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)にのっとったGA-Cプラットフォームを用いて開発された。つまり「プリウス」や「C-HR」と土台を共有するクルマということだ。現行プリウスに初めて乗った際、その前の世代のプリウスとの、シャシーの出来の違いにびっくりしたのを覚えている。TNGAやるなと思った。C-HRに乗ってもその印象は変わらなかった。そして今回カローラ スポーツに乗って、トヨタが完全にTNGAをものにしたなと感じた。山道をビュンビュン走らせた時のみならず、ボディー剛性の高さをタウンスピードでも感じさせる。
そしてこのボディーに高い方(オプション)と安い方(標準)の2種類のダンパーが組み合わせられるのだが、どちらも相当にレベルが高い。高い方はダンパーのピストン脇にあるリニアソレノイドバルブがオイル量をコントロールすることで、4輪それぞれの減衰力を瞬時に変更させる「AVS(アダプティブバリアブルサスペンション)」が付く。AVSは、足まわりのみならず、エンジン、ステアリング、エアコンの特性を統合的に変更できるドライブモードセレクトとセットの装備で、ドライバーは「エコ」「コンフォート」「ノーマル」「スポーツS」「スポーツS+」から状況に応じてドライブモードを選ぶのだが、このうち足まわりはドライブモードが「エコ」「ノーマル」「スポーツS」のときに標準、「コンフォート」のときにソフト、「スポーツS+」のときにハードとなる。
ただし、モードごとの振れ幅は大きくなく、これなら標準の硬さですべてのシーンをまかなえると感じた。買って数カ月もすれば、ドライブモードを頻繁に変えることもなくなるのではないだろうか。
より感心したのは安いほうのダンパーだ。このダンパーはKYBとの共同開発で、ダンパーに上下の力がかかったときにはソフトに、横向きの力がかかったときにはハードになる特性のオイルを使うことで、不整路をソフトにやり過ごしつつコーナリングではしっかりと車体を支えてロールを抑えるダンパーとなった。乗ると、これが10万円以上高いAVSと比べても遜色のない出来で、実はカローラのスタイリングよりも、つながることよりも驚かされた。乗り心地とハンドリングのバランスがとれている。つくり慣れてきたTNGAがカローラにしゃきっとした挙動を与える。よりロールが少ないのはAVSの方だろうが、買うならこっちのダンパーで十分だと思った。
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事前の想像を上回る出来栄え
パワートレインは2種類。C-HRにも搭載される1.2リッター直4ターボと、おなじみの1.8リッター直4エンジン+電気モーター+バッテリーのハイブリッドだ。1.2リッターのスペックは最高出力116ps/5200-5600rpm、最大トルク185Nm/1500-4000rpmと数値上は大したことないが、CVTの伝達効率がよく、またCVT特有の不自然さがなるべく目立たない特性になっていることもあって、そこそこよく走る。CVTは10段の疑似ステップが設けられ、マニュアル変速をすることもできるが、ほとんど試していない。CVTよりも実際にステップのあるATのほうが自然だし、フィーリングもよくて好みだが、せっかくCVTなのであれば、自分で変速めいたことをするよりもシステム任せにして効率を追求したい。
ハイブリッドの方はいつものTHS(トヨタハイブリッドシステム)ワールドだった。今回学んだのは、ハイブリッドシステムは、よいボディーと組み合わせられるとよいシステムに思え、ダメなボディーと組み合わせられるとシステムまでダメに思えてくるということ。カローラのしっかりしたボディーと組み合わせられたハイブリッドシステムはイキイキとしていてある程度の速さも感じさせる。1.2リッター仕様との価格差は27万円。悩ましいところだが、どちらを選んでも「しまった!」と思うことはないはず。4WDやMTを選びたいなら1.2リッターしかない。
2018年も半分を過ぎ、今年も力の入った新車を多数テストした。現時点ではカローラ スポーツの走りのよさ、クルマとしての完成度の高さに最も驚かされた。よいと思っていたクルマが想像通りよかった例はあるが、事前の予想を上回ってよかったのはカローラ スポーツだ。中条あやみを起用した時点でテレビCMも相当レベルの高いものに仕上がっている。カローラ スポーツに死角なし! 欲しい。
(文=塩見 智/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)
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テスト車のデータ
トヨタ・カローラ スポーツG
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4375×1790×1460mm
ホイールベース:2640mm
車重:1310kg
駆動方式:FF
エンジン:1.2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:116ps(85kW)/5200-5600rpm
エンジン最大トルク:185Nm(18.9kgm)/1500-4000rpm
タイヤ:(前)205/55R16 91V/(後)205/55R16 91V(ブリヂストン・エコピアEP150)
燃費:19.6km/リッター(JC08モード)、16.4km/リッター(WLTCモード)
価格:225万7200円/テスト車=282万3833円
オプション装備:ボディーカラー<スカーレットメタリック>(3万2400円)/イルミネーテッドエントリーシステム<フロントドアトリム、フロントコンソールトレイ、フロントカップホルダー>(1万0800円)/4:2:4アジャスタブルデッキボード(8640円)/サイドターンランプ付きカラードドアミラー<ヒーター付き>+オート電動格納式リモコン<ブラインドスポットモニター付き>+リアクロストラフィックオートブレーキ<パーキングサポートブレーキ付き[後方接近車両]>+ブラインドスポットモニター<BSM>+バックカメラ(12万5280円)/フロントシートヒーター<運転席+助手席>(1万6200円) 以下、販売店オプション T-Connectナビ9インチモデル DCMパッケージ(26万0280円)/iPod対応USB/HDMI入力端子(9720円)/ETC2.0ユニット ビルトインナビ連動タイプ<光ビーコン機能付き>(3万2573円)/フロアマット<ラグジュアリータイプ>(2万8080円)/ドライブレコーダー(4万2660円)
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:763km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
トヨタ・カローラ スポーツ ハイブリッドG“Z”
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4375×1790×1460mm
ホイールベース:2640mm
車重:1400kg
駆動方式:FF
エンジン:1.8リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:98ps(72kW)/5200rpm
エンジン最大トルク:142Nm(14.5kgm)/3600rpm
モーター最高出力:72ps(53kW)
モーター最大トルク:163Nm(16.6kgm)
システム総合出力:122ps(90kW)
タイヤ:(前)225/40R18 88W/(後)225/40R18 88W(ダンロップSP SPORT MAXX 050)
燃費:30.0km/リッター(JC08モード)、25.6km/リッター(WLTCモード)
価格:268万9200円/テスト車=350万1533円
オプション装備:ボディーカラー<ホワイトパールクリスタルシャイン>(3万2400円)/シート表皮 本革+ウルトラスエード<センシャルレッド/サテンメッキ加飾付き>+電動ランバーサポート+シートヒーター<運転席+助手席>+シートバックポケット<運転席>(17万5500円)/カラーヘッドアップディスプレイ(4万3200円)/イルミネーテッドエントリーシステム<フロントドアトリム、フロントコンソールトレイ、フロントカップホルダー>(1万0800円)/4:2:4アジャスタブルデッキボード+アクセサリーコンセント<AC100V・1500W、コンセント2個、非常時給電システム付き>(5万1840円)/サイドターンランプ付きカラードドアミラー<ヒーター付き>+オート電動格納式リモコン<ブラインドスポットモニター付き>+リアクロストラフィックオートブレーキ<パーキングサポートブレーキ付き[後方接近車両]>+ブラインドスポットモニター<BSM>+バックカメラ(12万5280円) 以下、販売店オプション T-Connectナビ9インチモデル DCMパッケージ(26万0280円)/iPod対応USB/HDMI入力端子(9720円)/ETC2.0ユニット ビルトインナビ連動タイプ<光ビーコン機能付き>(3万2573円)/フロアマット<ラグジュアリータイプ>(2万8080円)/ドライブレコーダー(4万2660円)
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:618km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
