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トヨタ・カローラ スポーツG(FF/CVT)

じんわりといい 2018.08.15 試乗記 下野 康史 歴史ある「カローラ」の名が与えられた、トヨタの新型ハッチバック「カローラ スポーツ」。先進の装備がセリングポイントであるものの、試乗して何より感心したのは、クルマとしての基本的な作りのよさだった。
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見るからに若向き

「オーリス」あらため、カローラ スポーツ。「ランクス」以来、12年ぶりに復活したカローラのハッチバックモデルが“スポーツ”である。

国産ハッチバックでスポーツといえば、いまのクルマ好きならまず「スイフトスポーツ」を連想するだろうが、考えてみると、スバルは「インプレッサ」のハッチバック系に以前から“スポーツ”のシリーズ名を使っている。ハッチバックはスポーツでいこう、というグループ戦略なのかもしれない。

新世代プラットフォーム(車台)を適用した5ドアボディーは、たしかにスポーティーで若向きだ。「ヴィッツ」を大きくして、オーブンに入れて溶かしたようなフォルムだが、顔つきとお尻はかなりアグレッシブだ。そのあたりの“強さ”は欧州仕込みである。ボディーの幅と高さは「フォルクスワーゲン・ゴルフ」とほぼ同じ。全長は11cm長い。

パワーユニットは、人気SUV「C-HR」と同じ布陣で、1.2リッター4気筒ターボと、1.8リッター4気筒ハイブリッド(THSII)の2種類。いずれも出力、トルクなどのチューンはC-HR用とまったく同じだが、カローラ スポーツの1.2リッターにはCVTのほかに6段MTも用意される。

今回、試乗したのは1.2リッター+CVTの「G」(225万7200円)。数の上では中核モデルになりそうな大衆カローラ スポーツである。

2018年6月に発売された「トヨタ・カローラ スポーツ」。欧州では新型「オーリス」として販売されている。
2018年6月に発売された「トヨタ・カローラ スポーツ」。欧州では新型「オーリス」として販売されている。拡大
アグレッシブな造形のフロントまわり。エッジの効いたヘッドランプやグリルが個性を主張する。
アグレッシブな造形のフロントまわり。エッジの効いたヘッドランプやグリルが個性を主張する。拡大
インテリアの開発テーマは「シンプルでゆったり」。シルバーの加飾やブラックのパネル類でドレスアップされている。
インテリアの開発テーマは「シンプルでゆったり」。シルバーの加飾やブラックのパネル類でドレスアップされている。拡大
大きくラウンドしたリアまわりも、エクステリアの特徴のひとつ。ラグビーボールをイメージしてデザインされている。
大きくラウンドしたリアまわりも、エクステリアの特徴のひとつ。ラグビーボールをイメージしてデザインされている。拡大
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本格スポーツも欲しくなる

webCG編集部でクルマをピックアップして走りだす。第一印象は「大人のハッチバック」である。

明治通りに出ると、その近くにかつてプジョー・シトロエン・ジャポンの本社があったことを思い出した。そのせいか、新しいプジョーで走っているような錯覚にとらわれる。ただし、スポーツモデルではない、フツーのプジョーだ。

1.2リッター4気筒ターボは最高出力116ps。車重は1310kgと、意外に重いが、それでも四駆のC-HRよりは160kgも軽い。当然、快速が期待されたが、それほどでもなかった。軽快だが、パンチは乏しい。エンジンそのものも、自己主張は薄い。無口なエンジン、という感じ。実際、フルスロットルでタコメーターの針がトップエンドに張り付いているとき以外は、とても静かである。

足まわりはなかなかいい。荒れた舗装路や高速道路の継ぎ目など、悪路でのショックの収め方はもうひとつだが、平滑な路面での乗り心地は上質だ。これまでのカローラ系にはなかったストローク感がある。

ワイドトレッドで低重心を実感させる乗り味も好印象だ。SUVじゃない、低床車はやっぱりいいなあと思わせてくれる。足まわりのポテンシャルを考えると、グレードとしての本格的スポーツモデルがあってもいいと思う。「レビン」の復活を期待したい。

ターボで過給される1.2リッター直4エンジン。1500rpmの低回転域から最大トルク185Nmを発生する。
ターボで過給される1.2リッター直4エンジン。1500rpmの低回転域から最大トルク185Nmを発生する。拡大
サスペンションは、フロントがマクファーソンストラット式でリアがダブルウイッシュボーン式。新開発のショックアブソーバーが採用されている。
サスペンションは、フロントがマクファーソンストラット式でリアがダブルウイッシュボーン式。新開発のショックアブソーバーが採用されている。拡大

「カローラ スポーツ」の1.2リッターターボモデルには、2種類のトランスミッション(CVTと6段MT)が用意される。今回の試乗車はCVT仕様。シフトレバーの前方には走行モードのセレクターがレイアウトされている。


	「カローラ スポーツ」の1.2リッターターボモデルには、2種類のトランスミッション(CVTと6段MT)が用意される。今回の試乗車はCVT仕様。シフトレバーの前方には走行モードのセレクターがレイアウトされている。
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センターオーナメント付きの16インチアルミホイール。試乗車にはダンロップの「エナセーブEC300+」タイヤが装着されていた。
センターオーナメント付きの16インチアルミホイール。試乗車にはダンロップの「エナセーブEC300+」タイヤが装着されていた。拡大

考えられた室内空間

Gは下から2番目のグレードだが、内装にはプレミアム感がある。助手席前方に斜めのステッチが入ったダッシュボードは、一瞬、レザー張りかと見まがう。プラスチッキーさはない。ファブリックのドライバーズシートもたっぷりしたサイズで座り心地にすぐれる。

一方、リアシートのおもてなしはそこそこだ。こういうデザインなので、特にヘッドルームに余裕がない。後席はこれから出るセダンやワゴンに任せているのだろう。

ハッチバックやステーションワゴンだと、かつては後席クッションを前方に90度めくって、フラットな荷室を広げることができたが、いまやそのダブルフォールディング機構はすっかり影をひそめた。クッション基部にISO-FIX対応チャイルドシートの堅固なアンカーを備えるようになったからだ。ゴルフも後席を倒すと、背もたれがそのまま段差になってしまう。

その点、カローラ スポーツは考えてある。トランク部分の床を2段式にして、高いほうにボードを付けておけば、フルフラット荷室がつくれる。今度もオーリスとして売られるヨーロッパでは、ライバルにない長所になっているはずだ。

「G」グレードの前席は、ブラックのファブリックで仕立てられた「スポーティーシート」となる。
「G」グレードの前席は、ブラックのファブリックで仕立てられた「スポーティーシート」となる。拡大

3人掛けの後席は6:4の分割可倒式。背もたれと座面の間には、ISO-FIX対応チャイルドシートのアンカーが設置されている。


	3人掛けの後席は6:4の分割可倒式。背もたれと座面の間には、ISO-FIX対応チャイルドシートのアンカーが設置されている。
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後席を前方に倒し、フルフラットにした状態のラゲッジスペース。「4:2:4分割アジャスタブルデッキボード」と名付けられたフロアボード(写真手前)は、横方向に開閉可能。
後席を前方に倒し、フルフラットにした状態のラゲッジスペース。「4:2:4分割アジャスタブルデッキボード」と名付けられたフロアボード(写真手前)は、横方向に開閉可能。拡大
今回の試乗では、高速道路を主体に約320kmの道のりを走行。燃費は満タン法で12.8km/リッター、車載の燃費計で12.7km/リッターを記録した。
今回の試乗では、高速道路を主体に約320kmの道のりを走行。燃費は満タン法で12.8km/リッター、車載の燃費計で12.7km/リッターを記録した。拡大

とにかくストレスフリー

ユーザーの大幅な若返りを図りたい新型カローラは、“コネクティッドカー”であることも大きな売りである。クルマ自体が通信機能を備え、さまざまなサービスが受けられる。当然、ビッグデータの“出し手”にもなる。

エアバッグが展開すると、自動的にオペレーターに接続する。それは試さなかったが、河口湖での取材中、オペレーターを呼び出してみた。5秒とかからずつながり、広報車の名義人である「トヨタ自動車さま」と呼び掛けてくれた。「近くにあるおいしい富士吉田うどんの店を教えて」と頼むと、すぐに調べてくれる。でも、キーボードをたたく音が30秒くらい続いたところで、申し訳なくなり、「スマホで調べますから」と言って失礼する。コミュニケーター(と言っていた)が何人いるかは教えてくれなかった。このサービスは新車から3年間は無料。その後は年間1万2960円かかる。

しかし、コネクティッドカーではなくても、カローラ スポーツは素のままでとても親切なクルマである。例えば、右側ドアミラーまわりにこれほど死角がないクルマも珍しい。サイドウィンドウに顔を近づけると、フェンダーの側面まで見えそうなほどだ。いわゆるボディーの“見切り”がいいから、車幅ほぼ1.8mでも、無駄に大きい感じはしない。とにかく、運転がしやすくて、ストレスがない。2日間をともにして、一番感心したのはそれだった。

食べ物でいえば、食べ応えよりも食べやすさを優先したキャラクターは、考えてみると12代続く国民的大衆車の“味”そのものである。新型の先兵、カローラ スポーツはそれに加えて、オーリスの知見で得た欧州車風味もところどころに感じさせる。試乗してから10日あまり、いま振り返ると、あのクルマ、かなりデキる和魂洋才のカローラだったのではないかと感じている。

(文=下野康史<かばたやすし>/写真=峰 昌宏/編集=関 顕也)

「カローラ スポーツ」は通信モジュールを標準装備。ドライブをサポートするさまざまな「コネクティッドサービス」が提供される。写真は、オペレーターと交信中のモニター画面。
「カローラ スポーツ」は通信モジュールを標準装備。ドライブをサポートするさまざまな「コネクティッドサービス」が提供される。写真は、オペレーターと交信中のモニター画面。拡大
急病や事故の際には、オペレーターが緊急車両の手配を行う「ヘルプネット」も利用できる。写真は、前席の頭上に備わる“呼び出し用ボタン”。
急病や事故の際には、オペレーターが緊急車両の手配を行う「ヘルプネット」も利用できる。写真は、前席の頭上に備わる“呼び出し用ボタン”。拡大
今回の試乗では、「視界のよさ」が印象的だった。Aピラーの付け根やドラミラー周辺の視野も良好といえる。
今回の試乗では、「視界のよさ」が印象的だった。Aピラーの付け根やドラミラー周辺の視野も良好といえる。拡大
速度計を中央に据えたメーターパネル。右側には4.2インチのカラーインフォメーションディスプレイが備わる。
速度計を中央に据えたメーターパネル。右側には4.2インチのカラーインフォメーションディスプレイが備わる。拡大
ボディーカラーは、試乗車の「シアンメタリック」を含む全8色が用意される。
ボディーカラーは、試乗車の「シアンメタリック」を含む全8色が用意される。拡大

テスト車のデータ

トヨタ・カローラ スポーツG

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4375×1790×1460mm
ホイールベース:2640mm
車重:1310kg
駆動方式:FF
エンジン:1.2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:116ps(85kW)/5200-5600rpm
エンジン最大トルク:185Nm(18.9kgm)/1500-4000rpm
タイヤ:(前)205/55R16 91V/(後)205/55R16 91V(ダンロップ・エナセーブEC300+)
燃費:19.6km/リッター(JC08モード)、16.4km/リッター(WLTCモード)
価格:225万7200円/テスト車=279万1433円
オプション装備:イルミネーテッドエントリーシステム<フロントドアトリム、フロントコンソールトレイ、フロントカップホルダー>(1万0800円)/4:2:4アジャスタブルデッキボード(8640円)/サイドターンランプ付きカラードドアミラー<ヒーター付き>+オート電動格納式リモコン<ブラインドスポットモニター付き>+リアクロストラフィックオートブレーキ<パーキングサポートブレーキ付き[後方接近車両]>+ブラインドスポットモニター<BSM>+バックカメラ(12万5280円)/フロントシートヒーター<運転席+助手席>(1万6200円) ※以下、販売店オプション T-Connectナビ9インチモデル DCMパッケージ(26万0280円)/iPod対応USB/HDMI入力端子(9720円)/ETC2.0ユニット ビルトインナビ連動タイプ<光ビーコン機能付き>(3万2573円)/フロアマット<ラグジュアリータイプ>(2万8080円)/ドライブレコーダー(4万2660円)

テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:1982km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(8)/山岳路(1)
テスト距離:324.5km
使用燃料:25.4リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:12.8km/リッター(満タン法)/12.7km/リッター(車載燃費計計測値)

トヨタ・カローラ スポーツG
トヨタ・カローラ スポーツG拡大
「コネクティッドサービス」は3年間無料で利用可能。ドライブに役立つ各種のアプリケーションが用意される。
「コネクティッドサービス」は3年間無料で利用可能。ドライブに役立つ各種のアプリケーションが用意される。拡大
荷室のフロアボードは、フロアレベルを2段階に調節できる。写真は、高さのある荷物を積載すべく床面を下げた状態。
荷室のフロアボードは、フロアレベルを2段階に調節できる。写真は、高さのある荷物を積載すべく床面を下げた状態。拡大
下野 康史

下野 康史

自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。

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