メルセデス・ベンツE63 AMG/E63 AMGステーションワゴン【海外試乗記】
ひとつのお手本 2011.07.17 試乗記 メルセデス・ベンツE63 AMG(FR/7AT)/E63 AMGステーションワゴン(FR/7AT)メルセデス・ベンツEクラスのトップグレード「E63 AMG」が新エンジンを搭載しリニューアル。南仏の道で、その実力を試した。
大トルク、さらに増量
最新の5.5リッターV型8気筒「BlueDIRECT」ツインターボエンジンを搭載する「メルセデス・ベンツE63 AMG」がデビューした。これは、AMGが高性能と低燃費の両立を目標に昨年発表した「AMG パフォーマンス2015 モデル戦略」に従ったもので、“M157”と名付けられた同型エンジンを積むAMGは、「S63 AMG」、「CL63 AMG」、「CLS63 AMG」に続いて4モデル目にあたる。
もっとも、同じM157といっても基本となるパフォーマンスには2種類あって、ハイパワーバージョンとなるS63 AMGとCL63 AMGでは最高出力と最大トルクが544ps/5250-5750rpmと81.6kgm/2000-4500rpmになるのに対し、上記2台よりもやや“小ぶり”なCLS63 AMGでは524ps/5250-5750rpmと71.3kgm/1750-5000rpmとなる。
今回発表された資料によると、E63 AMGの最高出力は525hpとなっている。本国ではCLS63 AMGも525hpと表記されているので、両者のパフォーマンスは基本的に同じと見ていい。
なお、CLS63 AMG同様、E63 AMGにもAMGパフォーマンスパッケージがオプションで用意されており、これを装着すると、それぞれ557ps/5250-5750rpmと81.6kgm/2000-4500rpmに跳ね上がる(S63 AMGとCL63 AMGのAMGパフォーマンスパッケージ版は571ps/5500rpmと91.8kgm/2250-3750rpm)。
現行型E63 AMGと比較すると、最高出力はイーブンだが、最大トルクは64.2kgm/5200rpmから実に11%も増強された計算になる。
時代に即した改善も
それ以上に印象的なのが燃費の向上である。ヨーロッパ式のNEDC複合モードでいうと、新型のセダンは現行型に比べて22%も良好な10.2km/リッター。ワゴンは10.0km/リッターを達成しているのだ。
M157の燃焼効率が優れているのは、ピエゾインジェクターを用いたスプレーガイド式燃焼システム、マルチスパークイグニッション、ツインターボチャージャーなど、メルセデスが誇る最新技術が惜しげもなく投入されているからと説明されるが、それとともに、アイドリングストップ機能や高効率なAMGスピードシフトMCTを採用した効果も見逃せない。特に、湿式多板クラッチと遊星ギアを組み合わせたAMGスピードシフトは、シングルクラッチ方式ながら素早くスムーズなギアチェンジを実現している点が注目される。
以上は新世代AMGにほぼ共通のスペックだが、E63 AMGでは5.5リッターエンジンの搭載にあわせてパワーステアリングが従来の油圧式から電動油圧式に変更された。ステアリングホイールそのものも、4スポーク型から3スポーク型に改められ、上下をフラットにした、よりスポーティなデザインに生まれ変わっている。
シフトレバーのグリップ部はレザー巻きで、その上面にはAMGの紋章が誇らしく刻み込まれている。
もうひとつ忘れてはならないのが、E63 AMGではセダンに加えてワゴンボディも選べる点だ。新型エンジンを積むAMGのワゴンは、これが初登場となる。その印象はセダンとは微妙に異なっていたが、これについては後述することにしよう。
扱いやすいハイパワー
フランス南部のレーシングコース「ポールリカール」周辺で行われた国際試乗会は、周辺の一般道を走行するセッションで幕を開けた。この地域の山道は、舗装はさほど傷んでいないものの、道幅が狭く、タイトコーナーが連続することで知られる。
まずはAMGパフォーマンスパッケージが装着されたセダンに乗り込む。スロットルを踏めばたちどころにトルクがわき上がるエンジンフィーリングは他のM157搭載モデルと同じ。もっといえば、過給機がついたダウンサイジング・コンセプト・エンジンに共通した特性といえる。このため、タイトなワインディングロードでも大柄なボディを持て余すことなく、意のままにスピードをコントロールできる。
AMGスピードシフトMCTは、パドルで操作してから実際にシフトが行われるまでにわずかな“間”があくが、ギアチェンジそのものは瞬時に終わり、途中の“トルク抜け”を意識させられることはない。この“間”さえつかんでしまえば、ワインディングロードを駆け抜ける際にも戸惑わずに済むだろう。また、クラッチ制御が精妙なため、発進時にガクガクしたりシフトショックに悩まされたりすることもない。完成度の高いスポーツATだ。
走りで選ぶならセダン
AMGパフォーマンスパッケージを装着しているため、テスト車のタイヤは19インチの「コンチネンタル・コンチスポーツコンタクト5P」となっていたが、オーバーサイズとの印象はなく、乗り心地はしなやか。AMGライドコントロールのスイッチによりダンピングレートを「コンフォート」「スポーツ」「スポーツプラス」と切り替えても、この印象は大きくは変わらなかった。
ただし、セダンの後で試乗したワゴンは、ボディ剛性が異なるからなのか、荒れた路面ではセダンよりも微振動がわずかに多いと感じられることがあった。注意して観察するとボディ後方から響くエグゾーストノートもワゴンのほうが微妙に大きい。多用途性で勝るワゴンか、それとも動的性能がより洗練されたセダンか、判断の迷うところだ。
一般道の試乗に続いてはポールリカールでのサーキット走行に臨んだ。わずか5周だけ、しかも先導車つきの走行とあって多くは語れないが、低速コーナーの立ち上がりで乱暴にスロットルを踏み込むと、強大なパワーがリアグリップを容易に打ち負かすジャジャ馬振りを発揮した。ESPの「スポーツモード」を選んでおけば、かなりのスリップアングルを許容してくれる。限界的なドライビングをストレス抜きで楽しむには好適だろう。
新しいE63 AMGは、次世代エンジンの搭載によりさらにパフォーマンスが向上し、優れた環境性能を手に入れることに成功した。新時代のスーパーラグジュアリー・ハイパフォーマンスカーのあり方を示す、ベンチマークのひとつとなるだろう。
本国での発売時期は今年9月。日本での価格はまだ明らかにされていないが、ヨーロッパでは据え置きとされているので国内発表が楽しみである。
(文=大谷達也(Little Wing)/写真=メルセデス・ベンツ日本)

大谷 達也
自動車ライター。大学卒業後、電機メーカーの研究所にエンジニアとして勤務。1990年に自動車雑誌『CAR GRAPHIC』の編集部員へと転身。同誌副編集長に就任した後、2010年に退職し、フリーランスの自動車ライターとなる。現在はラグジュアリーカーを中心に軽自動車まで幅広く取材。先端技術やモータースポーツ関連の原稿執筆も数多く手がける。2022-2023 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考員、日本自動車ジャーナリスト協会会員、日本モータースポーツ記者会会員。
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