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第517回:マクラーレンのキーマンが語る
新型車「600LT」の魅力とこれからの日本戦略

2018.08.10 エディターから一言 生方 聡
「マクラーレン600LT」と、今回話を伺った英マクラーレン・オートモーティブのアレックス・ロング氏(右)、マクラーレン・オートモーティブ・アジアの正本嘉宏氏(左)。
「マクラーレン600LT」と、今回話を伺った英マクラーレン・オートモーティブのアレックス・ロング氏(右)、マクラーレン・オートモーティブ・アジアの正本嘉宏氏(左)。拡大

2018年7月30日、英グッドウッドで発表されたばかりの「マクラーレン600LT」が東京・渋谷でアジア初公開された。ニューモデルの600LTとはどんなクルマで、マクラーレンは日本をどのような市場と捉えているのか? 2人のキーマンに聞いた。

「540C」や「570S」などが属する“スポーツシリーズ”のなかでも、特に動力性能に特化したモデルとして登場した「600LT」。2018年の「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」で世界初公開された。
「540C」や「570S」などが属する“スポーツシリーズ”のなかでも、特に動力性能に特化したモデルとして登場した「600LT」。2018年の「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」で世界初公開された。拡大
インテリアで特に目を引くカーボンファイバー製のシート。「600LT」はエンジンの出力アップに加え、大幅な軽量化と空力性能の向上によってパフォーマンスを高めたモデルなのだ。
インテリアで特に目を引くカーボンファイバー製のシート。「600LT」はエンジンの出力アップに加え、大幅な軽量化と空力性能の向上によってパフォーマンスを高めたモデルなのだ。拡大
マクラーレン・オートモーティブのアレックス・ロング コマーシャルオペレーションズダイレクター。コマーシャルとプロダクトの両方に関わる人物で、商品戦略から商品開発の監修、発表にいたる広範な分野において責任者を担っている。
マクラーレン・オートモーティブのアレックス・ロング コマーシャルオペレーションズダイレクター。コマーシャルとプロダクトの両方に関わる人物で、商品戦略から商品開発の監修、発表にいたる広範な分野において責任者を担っている。拡大

“LT”が示した新しいマクラーレンの魅力

――アレックス・ロングさんに伺います。600LTを世に送り出すうえで、アレックスさんはどんな役割を果たしたのですか?

アレックス・ロング氏(以下、ロング):弊社には7人で構成される「ジュリーパネル」(評価委員会)があり、私はセールス&マーケティングの立場でこの委員会に参加しています。他の商品もそうですが、600LTが最初の企画書どおりに開発が進められているかどうかを常に検証するのがジュリーパネルの役割です。

――600LTの構想はいつごろ持ち上がったのですか?

ロング:「570S」を発売した2015年に、ロングテールの「675LT」を発表しました。この675LTは発表からわずか2週間で完売する成功作になりました。と同時に、マクラーレンの新たな一面を示すことになったのです。LTの特徴であるよりパワフルなエンジンや優れたエアロダイナミクス、そして軽量化が、もともとマクラーレンが誇る精緻さ、正確さに加えて、運転する楽しさ、ドライバーの高揚感を浮き彫りにしたのです。そこで、570Sのモデルサイクルの終わりに、新たなLTモデルを発売しようと考えました。そしていま、この600LTの発売にこぎ着けたというわけです。

――車両開発におけるマクラーレンらしさはどこにありますか?

ロング:それは開発のスピードです。少人数のテストドライブチーム、エンジニアのチームで開発を行っているため、最新技術を素早く次の開発車両に取り入れることができます。実際、昨年発売した「720S」や今年発売した「セナ」で培った技術をこの600LTに盛り込むことができました。

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600LTが最もエキサイティング

――ロングさんはテストドライバーでもあると伺いましたが、その立場から見た600LTはどんなクルマですか?

ロング:あくまで個人的な意見ですが、この600LTが最も高揚感が得られるエキサイティングなクルマだと思います。エンジンをかけた瞬間から、その音や振動に期待が高まります。そして走りだせば、“スポーツシリーズ”ならではのピュアな走り、直接キャビンに届くエンジンの息づかいがドライバーに高揚感をもたらしてくれるのです。そのエキサイティングなフィーリングは、マクラーレンでは随一です。しかも“トップエキゾースト”のおかげでエキゾーズトノートがより間近ですし、ルームミラーに映る炎もエキサイティングですからね。

――本当にトップエキゾーストは火を噴くんですね。

ロング:これは想定外でした。意図して作ったわけではないのですが、ダウンシフトの際に火が見えます。「P1」や675LTでも火を噴きますが、低い位置にあるのでドライバーからは見えなかった。600LTは他のテストドライバーやレーシングドライバーも一番のお気に入りです。皆、火を噴くところが見たいんです(笑)。意のままに操れる、とてもよくバランスがとれたクルマです。

――今後もロングテールをつくりますか?

ロング:LTブランドが非常に好評ですので、限定モデルになりますが、“スポーツシリーズ”“スーパーシリーズ”のレガシーとして、今後も続けていく考えです。セグメント最軽量からさらに100kgも軽量化を図り、よりエキサイティングなドライビングを提供できるのは、われわれマクラーレンだけですからね。

空力性能を向上させるため、各所に専用のパーツが装着された「600LT」。これにより、全長は74mmも伸びているという。
空力性能を向上させるため、各所に専用のパーツが装着された「600LT」。これにより、全長は74mmも伸びているという。拡大
「600LT」のエンジンフード。噴火口を思わせる2つの穴がロング氏の言う“トップエキゾースト”で、ダウンシフト時などには盛大にここから火を吹く。
「600LT」のエンジンフード。噴火口を思わせる2つの穴がロング氏の言う“トップエキゾースト”で、ダウンシフト時などには盛大にここから火を吹く。拡大
今回発表された「600LT」(左)と、2015年に登場した「675LT」(右)。
今回発表された「600LT」(左)と、2015年に登場した「675LT」(右)。拡大
テストドライバーとして「720S」や「セナ」などの開発も監修してきたロング氏。今回の「600LT」を、「マクラーレンで最も高揚感が得られるエキサイティングなクルマ」と評した。
テストドライバーとして「720S」や「セナ」などの開発も監修してきたロング氏。今回の「600LT」を、「マクラーレンで最も高揚感が得られるエキサイティングなクルマ」と評した。拡大

日本市場はまだまだ伸びる

――正本嘉宏さんに伺います。日本はスポーツシリーズの販売で世界第3位ということですね。

正本嘉宏氏(以下、正本):スポーツシリーズだけでなく、全モデルを含めた販売台数でも、ドイツ、中国と常に3位を競っています。当然、アジアパシフィックのなかではダントツでナンバーワンです。

――日本でマクラーレンが人気なのは、どんな理由でしょうか?

正本:ひとつは自動車文化が根ざしているからでしょうね。いま販売しているマクラーレンのスーパーカーがどんなものなのかを知らなくても、クルマ好きならマクラーレンは皆ご存じでしょう。また、日本人は技術力、素材、ディテールにこだわります。スーパーカーのような究極のプロダクトというのは、どれだけ思いとこだわりをもって造っているかに価値があります。加えて、過去のレースの栄光やカーボンモノコックといった記号があるから、マクラーレンが支持されているのだと思います。

――正本さんが、マクラーレン・オートモーティブ・アジア 日本支社代表に就任して1年になりますが、日本市場でまだまだ伸びしろはあると思いますか?

正本:日本市場では、まだまだ伸びる余地は十分あると思います。ディーラーネットワークを充実させることやファイナンスの仕組みを整備することなどに日々取り組んでいますが、それと並行して、日本の皆さんにわかりやすいかたちでマクラーレンというブランドをプレゼンテーションしていくことに力を注いできました。

今はあらゆる部分を見直し、お客さまに安心してお乗りいただく環境をつくっていこうと思います。そういう努力を積み重ねることが、日本市場での成長につながるのではないでしょうか。

(インタビューとまとめ=生方 聡/写真=webCG/編集=堀田剛資)

発表会の冒頭にて、あいさつに立つマクラーレン・オートモーティブ・アジア 日本支社代表の正本嘉宏氏。
発表会の冒頭にて、あいさつに立つマクラーレン・オートモーティブ・アジア 日本支社代表の正本嘉宏氏。拡大
東京・増上寺の境内に飾られた“スポーツシリーズ”と“スーパーシリーズ”のラインナップ。マクラーレンにとって日本は、ドイツや中国と販売台数3位を競う市場となっている。
東京・増上寺の境内に飾られた“スポーツシリーズ”と“スーパーシリーズ”のラインナップ。マクラーレンにとって日本は、ドイツや中国と販売台数3位を競う市場となっている。拡大
「600LT」の“アジアプレミア”の場所に日本を選んだことからも、マクラーレンがこの国の市場を重要視し、期待を寄せていることがうかがえるだろう。
「600LT」の“アジアプレミア”の場所に日本を選んだことからも、マクラーレンがこの国の市場を重要視し、期待を寄せていることがうかがえるだろう。拡大
「日本ではまだマクラーレンは伸びしろがある」と言う正本氏。「これからはディーラー網の拡充やファイナンスの仕組みの整理などを進め、顧客がより安心してクルマを帰る環境を整えたい」と語った。
「日本ではまだマクラーレンは伸びしろがある」と言う正本氏。「これからはディーラー網の拡充やファイナンスの仕組みの整理などを進め、顧客がより安心してクルマを帰る環境を整えたい」と語った。拡大
生方 聡

生方 聡

モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースレポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。

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