スバル・ステラカスタムR リミテッドS(FF/CVT)【ブリーフテスト】
スバル・ステラカスタムR リミテッドS(FF/CVT) 2011.07.12 試乗記 ……136万円総合評価……★★★
ダイハツからのOEM車として生まれ変わった「スバル・ステラ」シリーズ。その中身にスバルらしさは感じられるのか? スポーティグレードに試乗し、確かめた。
スバルらしさとは?
2009年秋の「ディアスワゴン」、2010年春の「プレオ」と「ルクラ」、そして今回の「ステラ」のモデルチェンジにより、いよいよスバル自製の乗用軽自動車の歴史にピリオドが打たれた。いずれもダイハツからのOEM供給となり、残るオリジナルは商用の「サンバー」のみという状況だ。
スバルの軽といえば、記憶に残る個性的なクルマが少なくない。それだけに、この合理化を惜しむ声は多いらしく、旧型ステラの販売終了に際して“駆け込み”と思われる需要があった。2011年4月の軽乗用車の販売ランキングでは、いつもより好調な9位(2072台)に入っている。
一方で、「ダイハツ・ムーヴ」のOEMである新型は、スロースターターのようである。発売(5月24日)の翌月となる6月の販売台数は1941台(前年同月比101.8%)と、新車にしては控えめな数字にとどまっている。ちなみこの数字は、スバルが掲げる月販目標の2250台に達していない。
軽乗用車におけるスバルらしさとは何だろうか? これは深いテーマだ。当のスバルは、自分たちらしさを「スポーティであること」と述べており、この新型ステラではフロントのデザインをわずかながらに変更したり(テスト車の「ステラカスタム」では、グリルの形状が逆台形とされ、ムーヴより迫力が増した)、フロントスタビライザーを全車で標準にしたりすることで表現されている。マジメで、好感の持てるスバルらしいやり方だが、はたしてそれが消費者にとって“価値ある違い”として認識されるだろうか。
軽乗用車という制約だらけの枠組みの中で、しかもOEMという条件下で独自色を打ち出していくために、スバルは従来の形にとらわれない、新しい付加価値を模索していく時期に入ったのではないだろうか。スバルにはモノづくりの実力も、輝かしい歴史もある。たとえばアルファ・ロメオやシトロエンのように、スバルはもっとしたたかで、しぶとくなってもいいのではないか。いずれにせよ、賽(さい)は投げられたのだ。