急速な電動化の流れには一歩距離を置く
マツダのパワートレインはどこへ向かう?
2018.09.05
デイリーコラム
トヨタからのハイブリッドシステム供給が終了
最近はパワートレインの種類が豊富だ。エンジンにはガソリンとクリーンディーゼル、モーターを併用するタイプにはハイブリッドと充電可能なプラグインハイブリッドがある。さらにエンジンを搭載しない純粋な電気自動車や、水素を充填して酸素と反応させ、電気を取り出して走る燃料電池車も実用化されている。
「マツダ・アクセラセダン」には、このうち、ガソリンとクリーンディーゼル、ハイブリッドの3種類がラインナップ。日本車の中では、1車種に搭載する種類が多い。
ところが次期アクセラについては、ハイブリッドを設定しないといううわさが聞かれる。アクセラのハイブリッドシステムはトヨタから供給を受けているから、両社の業務提携にも影響を与えそうだ。
このうわさは現実になる可能性が高い。理由は「アクセラハイブリッド」の売れ行きが伸びないからだ。スカイアクティブ技術と魂動(こどう)デザインで成り立つ今のマツダ車は、クリーンディーゼルの高い動力性能と低燃費が、欧州車風のクルマづくりと相まって高い人気を得た。したがってマツダ車のユーザーには「アンチ・ハイブリッド」「アンチ・トヨタ」という人が多い。そこにトヨタ製のハイブリッドを組み合わせても、性能以前の話として売れるワケがなかった。
ならばどうしてハイブリッドを導入したのか。この背景には、昨今の日本車メーカーに共通する、国内市場に対する読みの甘さがあった。2009年に先代「トヨタ・プリウス」が発売されると、4系列の全店(国内で約4900店舗)の扱いになって、売れ行きが急増した。2011年発売の「トヨタ・アクア」も堅調に売れたから、「アクセラにもハイブリッドが絶対に必要!」と判断されてしまったのだった。
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ハイブリッドに対する見通しの甘さ
現行のアクセラが発売された当時、開発者が「日本国内で売られるアクセラ全体の40%がハイブリッドになる」と言ったのには驚いた。5ドアハッチバックとセダンの比率がどの程度なのかを尋ねると「ハッチバックが60%、セダンが40%」と返答した。ハイブリッドを選べるのはセダンだけだから、セダンの販売台数の全車がハイブリッドになるのか? とあらためて尋ねると「それに近いと思う」とのことであった。グレード構成を見ても、発売当初のセダンは、ハイブリッド以外は安価な1.5リッターのガソリンエンジンだけしか搭載していなかった。
ただし、当時のマツダがハイブリッドを自社開発するのは難しかった。そこでトヨタから先代プリウスと同様のハイブリッドシステム(THS II)の供給を受け、マツダ製2リッターエンジンに組み合わせた。
開発者は「作業は困難をきわめた。自社で開発した方が、よほどラクだと感じるほどだった」と言う。その理由だが、まずトヨタのハイブリッドとマツダのエンジンを組み合わせること自体が難しい。しかもマツダにとって先代プリウスの運転感覚は不自然で、「走りをもっと自然に楽しく仕上げたい」という意見が根強かった。燃費を向上させるプリウスのエコドライブモードも、マツダの考え方に合わず切り換え機能を廃止した。
さらに現行のアクセラは、3代目プリウスに比べると2年以上遅れて発売されたから、カタログ燃費で上回りたいと考えた。そのためにJC08モード燃費は、先代プリウスが30.4km/リッターのところ、アクセラハイブリッドは30.8km/リッターに達した。
ここまで苦労したのに売れなかったから、マツダにとって電動車は、今でも嫌な思い出として残る。ビジネス面で成功せず、感情的にもネガティブだから、次期アクセラがハイブリッドを設定しないのは当然だ。
さらにいえば、ディーゼルの廃止や、廃止まではいかなくとも1.5リッターをやめて2.2リッターのみに絞る可能性がある。理由は「SKYACTIV-X(スカイアクティブX)」エンジンを導入するからだ。
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自前のマイルドハイブリッドの実用化は2019年以降
スカイアクティブXは火花着火と圧縮着火を併用する、開発者が「ガソリンとディーゼルのメリットを兼ね備えた」と言うエンジンだ。スーパーチャージャーも装着して価格は相応に高いから、安価な1.5リッターのノーマルガソリンエンジンは必要だが、1.5リッターのクリーンディーゼルと2リッターのガソリンはスカイアクティブXに置き換わる可能性が高い。
2.2リッターのクリーンディーゼルは動力性能が際立って高く、スカイアクティブXとは性格が異なるから残す可能性が高いが、今になって欧州ではディーゼルのイメージが下がってきた。トヨタは「オーリス」の欧州仕様に搭載するディーゼルをBMWから購入していたが、今はほぼ終了してハイブリッドを設定する。そうなると次期アクセラも成り行き次第では、ガソリンのスカイアクティブXのみになるかもしれない。
ただしこれは直近の話で、将来は状況が変わる。二酸化炭素の大幅な排出抑制が求められるからだ。マツダは地域によるインフラ格差も考慮して内燃機関を追求するが、2019年以降にはスカイアクティブXとともにマイルドハイブリッドを実用化する。トヨタのTHS IIなどに比べて燃費向上率は小さいが、環境技術のベースとして、幅広い車種に低価格で搭載できる。これにより二酸化炭素排出量を総合的に抑えることが可能だ。リチウムイオン電池を搭載した電気自動車も用意するが、この台数は少ない。
2020年以降には次世代型のクリーンディーゼルが、それ以降にはプラグインハイブリッドが計画されている。
いずれにしろ将来のマツダの環境技術で柱になるのは、ベースになるマイルドハイブリッドとガソリンエンジンでスーパーチャージャーを装着するスカイアクティブX、2リッターあるいはそれ以上の排気量に設定される次世代クリーンディーゼルターボだ。
トヨタ車との共通化は、必要に応じて行う。エンジン、ハイブリッド、プラットフォームという具合に共通化を進めていくと、高効率化を図れる半面、異なるメーカーとして存在する価値が薄れてしまう。それは縮小を意味するので、悪影響が生じない範囲で提携を進めていくだろう。
(文=渡辺陽一郎/写真=マツダ、トヨタ自動車/編集=藤沢 勝)

渡辺 陽一郎
1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆さまにけがを負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。特にクルマには、交通事故を発生させる甚大な欠点がある。今はボディーが大きく、後方視界の悪い車種も増えており、必ずしも安全性が向上したとは限らない。常にメーカーや行政と対峙(たいじ)する心を忘れず、お客さまの不利益になることは、迅速かつ正確に報道せねばならない。 従って執筆の対象も、試乗記をはじめとする車両の紹介、メカニズムや装備の解説、価格やグレード構成、買い得な車種やグレードの見分け方、リセールバリュー、値引き、保険、税金、取り締まりなど、カーライフに関する全般の事柄に及ぶ。 1985年に出版社に入社して、担当した雑誌が自動車の購入ガイド誌であった。そのために、価格やグレード構成、買い得な車種やグレードの見分け方、リセールバリュー、値引き、保険、税金、車買取、カーリースなどの取材・編集経験は、約40年間に及ぶ。また編集長を約10年間務めた自動車雑誌も、購入ガイド誌であった。その過程では新車販売店、中古車販売店などの取材も行っており、新車、中古車を問わず、自動車販売に関する沿革も把握している。 クルマ好きの視点から、ヒストリー関連の執筆も手がけている。
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