マツダ・アクセラスポーツ20S ツーリング Lパッケージ(FF/6AT)/アクセラスポーツ15S(FF/6AT)/アクセラハイブリッドHYBRID-S Lパッケージ(FF/CVT)
世界に誇れる日本車 2013.12.12 試乗記 フルモデルチェンジで3代目にバトンタッチした、マツダの世界戦略車「アクセラ」。果たして、どのような進化を遂げたのか? 2種類のガソリン車と、ハイブリッド車で確かめた。気迫の伝わるニューモデル
いまから10年前(2003年)に「ファミリア」からそのポジションを受け継ぎ、日本以外の市場では「マツダ3」と名を変えて販売されているのが「アクセラ」だ。累計販売台数は、370万台以上。いまや、全マツダ車の約3割を占めるという最量販モデルになっている。
昨今では、ヒットを当てたSUVの「CX-5」も重要な収益源になっていることは容易に想像がつく。が、このアクセラをセンターポジションとして上に「アテンザ」、下に「デミオ」と連なるこの3兄弟をマツダの基幹モデルと考えて間違いない。
人的にも資金的にもゆとりのある、さらに大きなメーカーならば、そんな基幹モデルを核としつつ、基本は変わらない派生モデルを“着回し”でもするかのように次々と生み出し、手を替え品を替えてはニッチな需要を掘り起こすという戦略が使えるかもしれない。
が、年産80数万台程度という規模のマツダの場合、そんなことをする余裕はない。だからだろうか、ひとつひとつのモデルに「失敗など許されない」という気迫が漲(みなぎ)っていうように感じられる。それは、このところ現れたマツダ車を見るたびに伝わってくる、おそらく間違いのない印象なのだ。
全幅は気にかかる
新型アクセラは、これまでと同様に「スポーツ」を名乗る5ドアハッチバックと4ドアセダンという2種類のボディーで構成されており、それぞれの全長も先代モデルと変わらない。しかし、その全幅は今回のフルモデルチェンジでさらに広げられ、とうとう1.8mの大台まであと5mmというところまできてしまった。
「フォルクスワーゲン・ゴルフ」を筆頭とする、ライバルとの関係もあるだろう。増え続けるこの数値とて、さすがにこの辺で“打ち止め”にはなるだろう。しかし、されどの1.8mだ。端的に言って、道路インフラに限りのある日本では、これでは広過ぎだと思えるシーンは少なくないし、自車だけでなく他のクルマも拡幅されるならば、駐車場の白枠に残された余裕など“倍の勢い”でなくなっていくことになる。
「衝突安全性への要求は厳しさを増す一方だし、そもそも人間の体格が大きくなっているから……」などと、増え続ける全幅についての理屈を述べる開発者は少なくない。しかし一方で、「個人的には、もう少し狭い方が使いやすいとは思いますが……」と付け加える人もまた、驚くほど多いのだ。
であるならば、拡幅などに頼らず新しい基準をクリアしていくのが“本当の技術”であろうし、同様に、拡幅などに頼らず魅惑的なスタイリングを完成させるのもデザイナーの腕の見せどころであるはず。
……などと、いまさら仕方のない事を考えながら、まずはハイブリッドモデルのドライバーズシートへと乗り込んだ。最新の「プリウス」に用いられるトヨタ製のハイブリッドシステムを、マツダ製2リッターガソリンエンジンとドッキングさせたという、名古屋系広島車(?)がコレである。
「“名古屋弁をしゃべるシステム”に、“広島弁で話すエンジン”を組み合わせるようなもので」。担当のエンジニア氏は、開発の苦労をそのように表現する。
が、その割には(?)マツダ初の量産ハイブリッドモデルとしてデビューしたアクセラハイブリッドは、どこに違和感を覚えるでもなく、“ごく普通に”走ってくれる。ちょっと拍子抜けするほどだ。
トヨタと別の完成度
シフトレバーの操作ロジックが、他のアクセラのATとは異なる――プリウスと同様に、レバーの右手前にDレンジがレイアウトされた――シフト・バイ・ワイヤ方式であるのは、「ハイブリッドシステムの一部として、ここもトヨタから供給されている」から。初めて扱う人なら誰でも「このボタンを押せばパーキングブレーキが掛かる」と思うであろうレバー前方の「Pボタン」も、プリウスと同様。単に、Pレンジを選択するだけのスイッチだ。
常用シーンでは、ハイブリッドのアクセラは、まず電気モーターでスルスルと動き出す。しかるべきタイミングで、加速の主役はエンジンへとバトンタッチ。マツダいわく「社内には、ふさわしい1.8リッターエンジンが存在しなかった」ためにプリウスより200cc大きなエンジンと組み合わされたゆえか、車両重量は同等ながら、エンジン始動後の加速感は、多少なりともプリウスより上である。自動的に行われる動力源の切り替えは、“異なる方言の持ち主同士”とは思えないほどスムーズに行われる。
昨今一部のクルマに見られる、「ハイブリッドカーというネームバリューが欲しいだけではないか?」というようなプロモーション優先の傾向は、アクセラハイブリッドには認められない。自由自在になるハンドリングの感覚や、常にフラットな姿勢を保とうとするフットワークなども含め、新型アクセラシリーズ中で、きちんと“ひとつの仕様”としての完成度の高さが見て取れるのだ。
とはいえアクセラハイブリッドは、見た目や走りで他のグレードとの顕著な差別化が図られるものではない。「燃費にフォーカスしたアクセラがご希望ならば、例えば、こんなモデルもありますよ」というスタンスだ。開発者も、「ハイブリッドモデルを推奨できるのは、年間1万kmほどの距離を乗り、トータルでも8万km程度は使っていただけるお客さまだけ」とあえて注釈を付けているし、そんな自らの思いをきちんと顧客に説明するよう、ディーラーにも働きかけているという。
自らハイブリッドモデルの開発を手掛けつつも、その盲目的な支持に対しては異議をとなえるエンジニア。そんな人に出会ったのは、初めてだ!
非凡な走りにうなる
新型アクセラには、300万円近い価格設定で「輸入車に興味を持つ人の心もつかみたい」というディーゼルモデルも存在するが、今回は、実質的な主役としてすでに販売中(2リッターのMTモデルは2014年1月発売予定)のガソリンモデルにも乗ってみた。
セダンにしか設定されないハイブリッド、ハッチバックのみに設定されるディーゼルモデルに対して、双方のボディーに用意されるのが1.5リッターのガソリンエンジン車だ。最高で111psを発する直噴ユニットには、レギュラーガソリン仕様ながら13.0と高い圧縮比や4-2-1の排気システムといった“スカイアクティブ技術”がしっかりと盛り込まれている。
セダンの6AT車、スポーツ(ハッチバック)の6AT車、6MT車と試してみたが、いずれの走りも同様に好印象だ。「それは多分、4-2-1排気の効果ですね」と開発者に説明された2000rpm付近のトルクの膨らみは、常用ゾーンであるだけにありがたい。決して格別にパワフルというわけではないし、特に静粛性に優れるというわけでもないが、アクセル操作に対してリニアな加速感が得られる点は、昨今流行の過給機付きダウンサイジングエンジンに勝っていると報告できる。
そんな1.5リッターモデルからハッチバックにのみ用意される2リッターのAT車に乗り換えると、やはり全域で力強さが増していると感じられる。高速道路や山道を、複数人の乗車で頻繁に走る機会がある人や、多少なりともスポーティーな走りを望みたい人なら、やはり選ぶべきはこちらという印象だ。
前述のハイブリッドモデルを含め、フットワークが非凡な仕上がりなのも、新型アクセラシリーズの見どころだ。中でも、コーナリング時の、操作に対してリニアかつ自然なハンドリングの感覚、高速走行時のフラットな乗り心地は、さまざまなモデルがしのぎを削るこのクラスにあっても、しっかりと「世界で勝負ができるレベル」に仕上がっている。
一方、多少の個体差は認められたものの、サスペンションへの入力が小さい領域で、乗り心地がしなやかさに少々欠けると思われたのは、数少ないウイークポイント。さらに、理想のポジションを選んだときに、やや前に出過ぎたフロントシートのヘッドレストが頭髪に触れてしまうこと、ヘッドアップディスプレイのコンバイナーが走行中は強制的に立ち上がり、表示を行わない場合も格納できないため目障りであることなどは、気になった部分だ。
とはいえ、新型のマツダ・アクセラ。スタイリッシュなボディーも含めて、「久々に世界に誇れるモデルが日本から現れてくれたナ」というのが、偽らざる実感だ。
(文=河村康彦/写真=荒川正幸)
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テスト車のデータ
マツダ・アクセラスポーツ20S ツーリング Lパッケージ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4460×1795×1470mm
ホイールベース:2700mm
車重:1330kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:6段AT
最高出力:155ps(114kW)/6000rpm
最大トルク:20.0kgm(196Nm)/4000rpm
タイヤ:(前)215/45R18 89W/(後)215/45R18 89W(トーヨー・プロクセスT1スポーツ)
燃費:18.4km/リッター
価格:248万8500円/テスト車=267万7500円
オプション装備:CD/DVDプレーヤー+地上デジタルTVチューナー(フルセグ)(3万1500円)/Boseサウンドシステム(AUDIOPILOT2+Centerpoint2)+9スピーカー(7万3500円)/電動スライドガラスサンルーフ(チルトアップ機構付き)(8万4000円)
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:5340km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
マツダ・アクセラスポーツ15S
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4460×1795×1470mm
ホイールベース:2700mm
車重:1270kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:6段MT
最高出力:111ps(82kW)/6000rpm
最大トルク:14.7kgm(144Nm)/3500rpm
タイヤ:(前)205/60R16 92V/(後)205/60R16 92V(トーヨー・ナノエナジーR38)
燃費:19.4km/リッター
価格:184万8000円/テスト車=210万5250円
オプション装備:ディスチャージパッケージ(6万8250円)/セーフティクルーズパッケージ(8万4000円)/CD/DVDプレーヤー+地上デジタルTVチューナー(フルセグ)(3万1500円)/Boseサウンドシステム(AUDIOPILOT2+Centerpoint2)+9スピーカー(7万3500円)
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:2436km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
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アクセラハイブリッドHYBRID-S Lパッケージ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4580×1795×1455mm
ホイールベース:2700mm
車重:1390kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:99ps(73kW)/5200rpm
エンジン最大トルク:14.5kgm(142Nm)/4000rpm
モーター最高出力:82ps(60kW)
モーター最大トルク:21.1kgm(207Nm)
タイヤ:(前)205/60R16 92V/(後)205/60R16 92V(ブリヂストン・エコピアEP150)
燃費:30.8km/リッター
価格:262万5000円/テスト車=281万4000円
オプション装備:CD/DVDプレーヤー+地上デジタルTVチューナー(フルセグ)(3万1500円)/Boseサウンドシステム(AUDIOPILOT2+Centerpoint2)+9スピーカー(7万3500円)/電動スライドガラスサンルーフ(8万4000円)
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:1787km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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