【F1 2018 続報】第15戦シンガポールGP「またも王者の貫禄勝ち」
2018.09.17 自動車ニュース![]() |
2018年9月16日、シンガポールのマリーナベイ・ストリートサーキットで行われたF1世界選手権第15戦シンガポールGP。前戦イタリアGPではフロントロー独占から2-4フィニッシュとメルセデスに完敗を喫したフェラーリは、またもふがいないレースで連敗。メルセデスとルイス・ハミルトンは、再び王者の貫禄を見せつけることとなった。
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フェラーリに新進気鋭の若手、元王者は古巣へ
シンガポールGP目前の9月11日、キミ・ライコネンが今季限りでフェラーリを離れ、古巣ザウバーに戻ることが明らかになった。さらに今年ザウバーでデビューしたシャルル・ルクレールがその後釜におさまり、セバスチャン・ベッテルのチームメイトになることもあわせて発表された。
来月39歳になる現役最年長ドライバーのライコネンが、ついにトップチームのシートを失うことになった。その最大の理由は、期待以上のリザルトを残せなかった点に尽きるだろう。ライコネンとフェラーリの関係は、2007年から2009年の“第1期”と、2014年から今シーズンまでの“第2期”に分けられるのだが、フェラーリドライバーとしてのライコネンのピークは2007年。移籍初年度にルイス・ハミルトン、フェルナンド・アロンソを打ち破り晴れてチャンピオンとなったのだが、その後ライコネンはF1(特に政治的な面)に嫌気が差して、ラリーなど他カテゴリーへ転向してしまう。2012年、ロータス(現ルノー)でF1にカムバックし、その2年後に再び赤いマシンを駆ることとなったが、コース上でのパフォーマンスは元王者にしては物足りないものだったと言わざるを得ない。
2015年からのチームメイト、ベッテルと比較すると戦績の差は一目瞭然だ。ベッテルが移籍からこれまでの4年間で13勝しているのに対し、ライコネンの最後の優勝はロータス時代の2013年開幕戦までさかのぼらなければならず、フェラーリ第2期の5年間で勝利はない。今シーズンはメルセデスに比肩する速いマシンを手に入れたものの、14戦してチームメイトがポールポジションと優勝をそれぞれ5回記録しているのと比べ、ライコネンはといえば前戦イタリアGPでようやくポールを1回獲得できたのみにとどまる。表彰台回数でこそベッテルをひとつ上回る9回を数えているものの、ドライバーズランキングでは2位ベッテルに62点も差をつけられ3位と大きく水をあけられている。マシンの開発能力には定評があり、さらにGP随一の人気者でもある“アイスマン”だが、元チャンピオンにしては十分な働きをしていないと見られても仕方がない状況だった。
一方、ライコネンに代わってフェラーリ入りを果たすルクレールは、新人ながら高い評価を得ている弱冠20歳のモナコ人。歴史的にみてベテランしか乗せない最古参チームでは、1960年代のリカルド・ロドリゲスに次ぐ若さでの大抜てきとなった。今年ザウバーでは、先輩格のマーカス・エリクソンを相手に予選で11対3と勝ち越し、ポイントでもエリクソン(6点)の倍以上となる13点を稼ぎ出している。速さに加え、落ち着いたレース運びでも高い評価を得ている彼は、フェラーリのドライバーアカデミー出身。フェラーリでの将来的な活躍が期待されており、7月に他界したフェラーリ前CEOセルジオ・マルキオンネも一番に推していたという。
フェラーリにとっては、万一ルクレールが来季期待通りに走れなかった場合は、アルファ・ロメオ、つまりはフェラーリの血が入ったザウバーから、ライコネンを引き戻すという選択肢もあるかもしれない。また大ベテランのライコネンと違い、2年目の若手ルクレールなら、状況に応じてベッテルのサポート役を任せやすくもあるだろう。2001年にデビューした古巣ザウバーに戻るライコネンには、テールエンダーからの脱却を図るチームの、リーダーとしての活躍も期待できるはずだ。
将来を見据えて世代交代にかじを切ったフェラーリだが、今年のタイトル争いはまだ終わっていない。地元イタリアでは、フロントロー独占から2-4フィニッシュとメルセデスに完敗を喫したことで、ポイントリーダーのハミルトンとランキング2位ベッテルの差は今季最大の30点にまで開いた。今シーズンも残り7戦、近年フェラーリのテリトリーとして知られるシンガポールは、絶対に落とせないレースとなったのだが……。
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ハミルトン、スーパーラップで今季7回目のポール
GP最多となる23ものコーナーを配したマリーナベイ。昨年の展開を振り返っても、このタイトでツイスティーなコースではフェラーリが優勢、メルセデスは苦戦するだろうと予想された。実際、予選直前のフリー走行3回目はベッテル、ライコネンの1-2に終わり、フェラーリが順調にマシンを仕上げているかに見えたのだが、予選に入ると、一番やわらかく扱いづらい予選用ハイパーソフトタイヤの影響もあり、トップ3チームが入り乱れての混戦となった。
予選Q3、最初のアタックで圧巻の最速ラップを決めたのはハミルトン。0.319秒遅れで2位につけたのは、この週末ルノーのパワーユニットの不調に悩まされていたレッドブルのマックス・フェルスタッペンだった。フェラーリはベッテルがトップから0.613秒差の3位、バルテリ・ボッタスのメルセデスを間に挟み、ライコネンは5位。結局、2度目のアタックでこの順位は変わらず、ハミルトンが今季7回目、通算79回目のポールポジションを獲得した。ポールタイムは、昨年のベッテルの記録を3秒以上短縮、9年前にハミルトン自身がたたき出した最速タイムと比べると11秒以上も速いスーパーラップだった。
予選6位はレッドブルのダニエル・リカルド。7位にはレーシングポイント・フォースインディアのセルジオ・ペレスがつけた。8位はハースのロメ・グロジャン、9位にもう1台のレーシングポイント・フォースインディア、エステバン・オコン、そして10位にはルノーのニコ・ヒュルケンベルグが入った。
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ベッテル、2位に上がるもピット作戦失敗で後退
2008年に始まった元祖ナイトレース、シンガポールGP。2時間になんなんとする過酷な61周レースが幕を開けると、ハミルトン先頭、ベッテルがフェルスタッペンに並びかけるもオーバーテイクならず、2位フェルスタッペン、3位ベッテル、4位ボッタス、5位ライコネンの順位でターン1に進入していった。何としてもここで優勝したいベッテルは諦めず、オープニングラップのターン7で再びレッドブルに仕掛け、2位奪取に成功した。その直後にセーフティーカーが出動。後方集団でフォースインディア同士が接触し、オコンがウオールにヒットしてクラッシュしたためだ。
5周目にレース再開。トップのハミルトンは、デリケートなハイパーソフトタイヤをいたわるべく抑えたペースで周回し、2位ベッテル、3位フェルスタッペンがそれぞれ1秒間隔で追う展開に。しかし13周を過ぎるとメルセデスがスパートをかけ、一気に2秒以上のギャップができた。
こうしたメルセデスの動きに反応したフェラーリが、15周目にベッテルをピットに呼び、ハイパーソフトから、1ランク硬めのウルトラソフトタイヤに替えて7位でコースに戻した。翌周にはメルセデスがハミルトンをピットインさせるのだが、こちらは一番硬いソフトタイヤを選択、5位で復帰させた。
17周目にボッタス、18周目にフェルスタッペンと、次々とタイヤを交換していったが、いずれもハミルトンと同じソフトタイヤを装着。フェラーリは、もう1回ストップが必要かもしれないウルトラソフトで、ベッテルをトラフィックの中に放ち、そのおかげでフェルスタッペンに2位の座を奪われるという失態を演じてしまった。
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ベッテル&フェラーリ、2戦連続の完敗で40点差に
22周目にライコネンがソフトタイヤに、また27周までスタートタイヤで引っ張ったリカルドはウルトラソフトにそれぞれ履き替え、上位陣のピットストップが一巡すると、1位ハミルトン、4秒後方に2位フェルスタッペン、トップから7秒離され3位ベッテル、以下ボッタス、ライコネン、リカルドと、レース折り返し地点でグリッド通りの順位に戻った。
3位を走るベッテルの敵は、もはや前を行くハミルトンやフェルスタッペンではなく、後ろの4位ボッタス。最後まで持つかわからないウルトラソフトタイヤの様子を見ながらの終盤戦となったが、ボッタスのペースが上がらなかったこと、また5位の僚友ライコネンがボッタスを猛追していたことが幸いし、ベッテルはトップから40秒遅れながら表彰台を守ることができたのだった。
しかし、ベッテルがハミルトンから勝利を奪えたかどうかは別としても、パワーユニット不調のフェルスタッペンに2位を取られたのは痛すぎた。「全体的にわれわれは速くなかった。序盤にアグレッシブに攻めようとしたのだが、うまくいかなかった」とは、肩を落とし気味のベッテルのコメント。2戦連続の完敗で、ハミルトンとベッテルのポイントギャップは40点にまで拡大してしまった。
マシンから降り、クルーと喜びを分かち合った後に地面にへたり込んだ勝者ハミルトン。「タフなレースだったよ!」と、暑く長いレースの疲労を訴えている表情は明るく、やりきった充足感に満ちているように見えた。
21戦の長いシーズンも残り6レース。秋に入ってからの王者ハミルトン&メルセデスの貫禄勝ちに、挑戦者ベッテル&フェラーリは、いよいよ後がなくなってきた。仮にベッテルが6戦全勝、ハミルトンが全戦2位になった場合、ベッテルはわずか2点差でタイトルに手が届くことになる――不可能とはいえないが、逆転には運も奇跡も必要になってきている。
次戦ロシアGP決勝は、9月30日に行われる。
(文=bg)
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