モーガンやケータハムだけじゃない!
イギリスに息づく小規模コンストラクターたち
2018.11.28
デイリーコラム
拡大 |
大手メーカーの大半が、外国メーカーやコンソーシアムのコントロールを受けるイギリスの自動車業界ではあるが、それでも各社ともにイギリス独自のキャラクターをしっかりと打ち出し、魅力的なクルマの数々を世に送り出している。しかし、この国の自動車生産を担っているのは大メーカーだけではない。自宅の裏庭からスタートした「バックヤードビルダー」に代表される有名無名の小さなメーカーたちもまた、独自の技術と個性で異彩を放っている。
今回は、そんな英国の小メーカーをいくつか選び出して、紹介させていただくことにしよう。
伝統を守る者と受け継ぐ者
今なお英国民族資本が保たれている小規模メーカーの中で、わが国でも最も有名なものといえば、今年から新たなインポーターのもとで日本に正規導入されることになった“モーガン”だろう。1909年に創業したモーガンは、今なおモーガン家による家族経営。第2次大戦前からの基本を継承したスポーツカーを21世紀の現在も生産し、全世界の愛好家から敬愛されている。
また、もとはといえば1957年に登場した「ロータス・セブン」の生産設備を継承して73年に創業。今なお超絶的に進化した「スーパーセブン」の数々を上梓(じょうし)する“ケータハム”も、世界的な人気ブランドといえよう。
その傍ら、英国内での名声は高いが、日本での知名度はイマイチと思われる“ブリストル”は、同名の航空機メーカーの自動車部門として1945年に創業。当初はBMW由来の自製6気筒エンジンを、1960年代以降は北米クライスラーV8を搭載した超高級GTを製作してきたほか、21世紀に入ると「ダッジ・バイパー」のコンポーネンツを使用したスーパーカー「ファイター」で話題を集めるも、2011年に経営破綻。しかし現在ではスイス企業の支援を受けつつ、BMW製V8エンジンを搭載する次世代モデル「ビュレット」の生産準備を推し進めている(らしい)。
そして英国のお家芸、ライトウェイトスポーツカーの世界では老舗といわれる“ジネッタ”も忘れてはなるまい。ウォークレット兄弟により、まさにバックヤードビルダーとして1958年に誕生したのち、「G4」などの名作を生み出したジネッタは、その後かなりの波乱万丈に巻き込まれ、経営権が譲渡された。しかし、現在でも市販スポーツカーやレーシングカーの製作を続けている。
一方、経営体制が目まぐるしく変わりつつも、そのブランドネームが引き継がれているメーカーの代表格が“TVR”である。1947年にトレヴァー・ウィルキンソンが創業、1960年代に最初の隆盛を得たのち、中興の祖ピーター・ウィラーの手で90年代に2度目の全盛期を迎えつつも、ロシア人実業家に経営権が譲渡されたのちに破綻。しかし現在では、かのゴードン・マーレイ設計による新型車とともに復活を果たしつつある。
また、往年の二輪車メーカーの屋号を引き継いだ“アリエル”は、ボディーデザインの一部となる鋼管スペースフレームに、ホンダ製4気筒エンジンなどを搭載した超軽量・超高性能スーパースポーツ「アトム」を2000年から販売。今なお進化を続けつつ、サーキット志向の強いスポーツドライバーから根強い支持を得ている。
さらに、1950年代後半にジャガーのコンポーネンツを流用したレーシングスポーツカーとともに、同時代の耐久レースで大活躍。社名を引き継いだ新体制で復活した1990年代以降は「ジャガーXJS」をもとに、原型の見る影もないほどの改造を施した「ストーム」を製作した“リスター”も、現在では「ジャガーFタイプ」をベースとするコンプリートチューンドカーで気を吐いているのである。
スパルタンを極めたライトウェイトスポーツたち
イギリスの小規模メーカーには、老舗ブランドやその継承者だけにとどまらず、新興勢力も続々と現れている。その多くが、走りに特化したエクストリーム&スパルタンなライトウェイトスポーツカーである。
例えば、LMPレーシングマシンを公道も走行できるスポーツカーに仕立て直したような“ラディカル”は、1999年に開始されたワンメイク用レースカーから発展。2001年に初のロードカー「SR3」を発売したのち、現在まで進化を続けている。
また、近年ではライトウェイトスポーツから一歩踏み出し、大排気量スーパーカーの領域へと足を踏み入れた“ノーブル”(1998年~)。シングルシーターの鋼管スペースフレームにカーボン製ボディーパネルを組み合わせた、公道走行が可能なフォーミュラマシンのごとき超高性能ライトウェイトスポーツ「MONO」を少量生産する“BAC”(2009~)など、エキセントリックなスポーツカー専業メーカーが次々と台頭してきているのだ。
このように、イギリスでおびただしい数の小規模メーカーが誕生してきたことには、しかるべき理由がある。
全世界のモータースポーツ産業の中核でもあるこの国では、鋼管スペースフレームはもちろん、アルミ合金やカーボンモノコックまで製作するフレーム専門業者やサスペンションのスペシャリスト、あるいはFRPやアルミニウム、スチールでボディーを製作するコーチビルダーも、今なお数多く存在する。エンジンについても定番の英国フォードに加えて、アメリカンV8を搭載するものも少なくない。自社設計の小排気量V8エンジンを製作・供給するエンジンサプライヤー企業も存在する。
つまりメーカー側では企画・開発を行い、あとはパワーユニットのアレンジさえめどが立てば、自社ブランドのクルマの製作・販売についても一応の格好がついてしまうのは、自動車製作に乗り出すためのハードルが他国に比べて格段に低くなる重要な要因と思われる。さらに、かつての英国では税制上有利なキット販売方式が隆盛を極めたことも、小規模メーカーが跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)してきた大きな理由といえるだろう。
そしてこの状況は、21世紀の現代においても収束するどころか、さらに広まる可能性も予見されている。電動車両のためのはん用パワーユニットが普及するであろう今後は、20世紀初頭と同様に雨後のタケノコのごとくチャレンジャーが続々と出現し、新たなる群雄割拠が巻き起こることが大いに予想されるのだ。
とはいえ、この種の英国小規模メーカーの多くは、現れたと思ったらいつの間にやら消滅し、消えたと思ったらどこかで出資者を見つけて復活し……、などというドタバタ劇をしばしば繰り返しているのも事実。
それでも、イギリスの“しぶとい”小規模メーカーたちの未来は、決して暗くなどないと考えるのである。
(文=武田公実/写真=CGライブラリー、ノーブルカーズ、webCG/編集=藤沢 勝)

武田 公実
-
さらば青きe-BOXER! スバル・マイルドハイブリッドに贈る別れの言葉NEW 2026.7.10 スバルのMHEVがついに販売終了に! 彼らが初めて手がけた電動化ユニットには、どんな特徴があり、どんな役割を果たしてきたのか? 派手な存在ではなかったけれど、13年にわたり頑張ってきたいぶし銀のパワートレインに、独自性を重んじるスバルの矜持を見た。
-
スバルが北米生産の3列シートSUV「アセント」の導入を検討 日本のスバリストに受け入れられるのか? 2026.7.9 スバルが米国で生産するSUV「アセント」の日本導入を検討中だ。「エクシーガ クロスオーバー7」以来となる3列シートSUVの復活にスバルファンは歓迎ムードだが、サイズや左ハンドル仕様といった懸念材料も。スバリスト玉川ニコはこう考える。
-
5種類のパワーユニットを1つのシャシーに 5代目「BMW X5」の進化点を読み解く 2026.7.8 BMWが第5世代となる新型「X5」を発表した。「ノイエ・クラッセ」のデザイン言語で仕立てられたエクステリアも新しいが、真に注目すべきは1つのシャシーで実に5種類ものパワートレインを設定しているところだ。先代モデルからの進化ポイントを解説する。
-
夢の実現まであと一歩!? 進化する自動運転技術と“世界共通のルールづくり”の重要性 2026.7.6 日本が議長を務める国際機関が、自動運転のルールづくりで合意! 自動運転や先進運転支援システム(ADAS)が急速に進化を続けるなかで、この合意にはどのような意義があるのか? まもなく日本でも実装される、最新ADASの詳細とともにリポートする。
-
あの『ナイトライダー』が現実に!? 開発が進む「パートナーのようなクルマ」の今を知る 2026.7.3 最新の「メルセデス・ベンツSクラス」には、クルマがパートナーのように寄り添うAI技術が盛り込まれているというのだが……その到達点は? 他メーカーの例も交え、先進技術が可能にするクルマの今と近未来を考える。
-
NEW
ベンダ・ナポレオンボブ250(6MT)
2026.7.10JAIA輸入二輪車試乗会2026個性的なバイクがそろうJAIA輸入二輪車試乗会の会場でも、ひときわ強烈な存在感を放っていた「ベンダ・ナポレオンボブ250」。中国からやってきた250ccクラスのクルーザーには、他のこのセグメントのバイクにはない“こだわり”が存分に注ぎ込まれていた。 -
NEW
さらば青きe-BOXER! スバル・マイルドハイブリッドに贈る別れの言葉
2026.7.10デイリーコラムスバルのMHEVがついに販売終了に! 彼らが初めて手がけた電動化ユニットには、どんな特徴があり、どんな役割を果たしてきたのか? 派手な存在ではなかったけれど、13年にわたり頑張ってきたいぶし銀のパワートレインに、独自性を重んじるスバルの矜持を見た。 -
ホンダ・フィット
2026.7.9画像・写真本田技研工業は2026年7月9日、マイナーチェンジした「フィット」を発表した。2020年2月のデビューから6年。グレード体系の見直しや内外装のブラッシュアップなど多岐にわたる変更が行われた最新モデルを写真で詳しく紹介する。 -
第291回: あの衝撃的なラストシーンは2CVで撮影されていた!? 『ヌーヴェルヴァーグ』
2026.7.9読んでますカー、観てますカー1959年のパリで、ゴダールが『勝手にしやがれ』の撮影を開始。脚本もなく演出はその場で指示するという型破りのスタイルに、俳優もスタッフも困惑し現場は混乱を極める。はたして映画は無事に完成するのか……。 -
第969回:裏地に『大脱走』! ピッティ・イマージネ・ウオモと自動車模様
2026.7.9マッキナ あらモーダ!イタリアで開催された世界屈指の紳士モード見本市「ピッティ・イマージネ・ウオモ」を、現地在住の大矢アキオが取材。自動車にまつわるアパレルの最新トレンドを探り、新興ブランドのひたむきさと、老舗の刻んできた年輪に触れた。 -
第59回:待望の2代目「日産キックス」は「ヴェゼル」や「カローラ クロス」に勝てるのか!? 小沢コージが嗅ぎまわる
2026.7.9小沢コージの勢いまかせ!! リターンズ日産が満を持して「キックス」の新型を発表した。新世代の「e-POWER」を搭載したほか、各部の質感もデザインも先代モデルから大幅に進化しているが、大事なのはライバル車に勝てるかどうかだ。小沢コージが開発リーダーを直撃した。








