レクサスUX200“バージョンL”(FF/CVT)/UX250h“Fスポーツ”(4WD/CVT)/UX250h“バージョンL”(FF/CVT)
値札は見るな! 2018.12.29 試乗記 レクサス初のコンパクトクロスオーバー「UX」がいよいよ日本の道を走りだした。小さなSUV系のクルマがモテる今、このニューフェイスは“買い”なのか? パワーユニットや駆動方式の異なる3モデルに試乗し、その印象を報告する。すみ分けはキッチリ
「ハッチバックとSUVのクロスオーバー」と謳うのがレクサスUXだ。Uはアーバン(urban)の頭文字。レクサスの品ぞろえで言うと、「CT200h」と「NX」を掛け合わせたような、都会的な新種のクルマ、ということだろうか。キャラクターとしては、「トヨタC-HR」のレクサス版に思えるが、そこはレクサス。価格帯は上で、中心は400万円台。上は535万円まである。
新世代プラットフォーム(車台)を採用するのはC-HRと同じだが、1.2リッター4気筒ターボと「プリウス」用1.8リッターハイブリッドを使うC-HRに対して、UXは新開発の2リッター4気筒と、それをベースにしたハイブリッドを搭載する。このエンジンはプリウス/C-HRのZR系ではなく、「レクサスES」の2.5リッターをダウンサイジングしたものである。
だが、こうした新設計のハード以上に重要なアピールポイントは内外装のデザインで、カタログもプレス用の技術資料も、まずデザインから入る。トヨタ初の女性チーフエンジニアも内装設計のスペシャリストである。
試乗会は神奈川県川崎市の湾岸地区を基地に行われた。短時間ながら、師走の首都高をメインに3台のクルマを試してみた。
見た目と違って柔らかい
最初に乗ったのは、「UX200」の“バージョンL”。ハイブリッドではない2リッターの上級モデルである。
ボディー外寸のタテヨコはC-HRよりひと回り大きいが、室内はむしろコンパクトに感じられる。後ろを振り返れば、後席空間もかなりタイトに見える。運転席のヒップポイントはC-HRより55mm低い。ダッシュボードもドライバーを囲むようなデザイン。4ドアとはいえ、スポーツクーペ的なキャビンである。
しかし、ダッシュボードの標高や、ドアのウエストラインは低い位置にあるため、視界はすごくいい。走りだすと、乗り心地はフワンと柔らかい。ハンドルなど、運転操作類のタッチも真綿でくるんだように柔らかい。そうしたせいか、まず感じたのは運転のしやすさ、取り回しのしやすさである。1840mmも車幅のあるクルマとは思えない。敷居の高いレクサスディーラーに、若い人、特に女性を呼び込むためのクルマ。そんな第一印象をあとで開発者に伝えたら、そうなるとサイコーですと応えた。
直噴/筒内ダブル噴射の新型2リッター4気筒は、最大熱効率を40%まで高めたという高効率を謳う。パワーも174psある。しかもプレミアムガソリン仕様である。期待して踏み込んだが、残念ながら特にスポーツユニットという感じはしなかった。素直な実用エンジンである。
新開発の無段変速機は 「ダイレクトシフトCVT」と呼ばれる。伝達効率の悪いロー側をベルトに担わせるのをやめて、代わりにローギアを設けた。結果としてワイドレシオでレスポンスのいい変速が実現したとされる。アクセルを踏むと、まずエンジン回転が高みに貼りつき、加速が遅れてついてくるCVT特有の“ラバーバンドフィール”の減少も狙っている。この日の使い方ではあまり大きな違いは実感できなかったが、違和感もなかった。
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
ハイブリッドの“Fスポ”がベター
次に試したのは、「UX250h“Fスポーツ”」のE-Four。後輪をモーター駆動するオンデマンド四駆のハイブリッドモデルである。
フワフワした柔らかさがあったUX200“バージョンL”から乗り換えると、まず乗り心地がスポーティーでしっかりしている。車重は110kg重いから、身のこなしにも上等な落ち着きがある。ドライブモードをS+まで上げると、電子制御ダンパーがさらに硬くなるが、ラフさはない。このあとハイブリッドの“バージョンL”にも乗ったが、UXには旦那仕様の“バージョンL”よりも“Fスポーツ”のほうが合っていると感じた。
トヨタ独自の動力分割機構を使う2リッターハイブリッドも、ベースの2リッターよりありがたみが大きい。走りは力強いし、もちろん静粛性も勝る。0-100km/h加速の社内データは、FFの250hで8秒台の半ばだというから、けっこうな快速だ。
試乗会に用意されるテスト車は60~90分の枠でそれぞれの乗り手に振り回されるわけだから、燃費のよかろうはずはないが、計器盤に示されていた平均燃費は、UX200で8km/リッター台。ハイブリッドのUX250hで15km/リッター台と大差がついていた。受注の8割がハイブリッドというのは正解だと思う。ちなみに、いちばん人気の白だと、いま(2018年12月中旬)注文しても納車は来年の5月以降だそうだ。
価格に見合わぬプレミアム
後席は見た目よりも広く、大人ふたりが過不足なく座れる。だが、荷室は狭い。床の奥行きはあるものの、容積が小さい。しかしこれは、リアエンドの左右を絞った特徴的なデザインのために割り切ったところだという。まるで小さなテールフィンのように見えるリアランプもこの造形の申し子だ。ボディー全幅にわたる直線部分にはLEDを120個使い、真後ろからだとテールウイングを思わせる。
実際、見て触って乗ってみると、「ハッチバックとSUVのクロスオーバー」は、“デザインいのち”の扱いやすいシティーラナバウトという印象だった。エントリー級レクサスとして、若年層を黒塀のディーラーに呼び込むのは間違いなさそうだ。
ただし、価格はエントリークラスとはいえない。今回の試乗車は、ガソリンエンジンのUX200でもオプション込みだと500万円オーバー、ハイブリッドの2台は600万円を超す。フツーのハッチバックであるゴルフが2台買える。試乗を終えて、価格を記した仕様書を車内で見るたびに、「たか!」と思った。そこまでのプレミアム感は実感できなかったのだ。
UXの助手席グローブボックスは、開けるとフタがゆっくり下に開く。でも、閉めるときに持ち上げると、プラスチックまるだしの軽さである。ゴルフのグローブボックスにゆっくり開く仕掛けはないが、フタそのものに厚みと重さがあって、安っぽい感じはしない。UXの室内ドアハンドルは、チタンカラーでカッコよくデザインされている。しかし、握ればすぐに樹脂製とわかる。ゴルフのドアハンドルはなんてことのない四角い取っ手だが、クロームメッキされた金属製だ。金属に見える物は金属でつくるというのがフォルクスワーゲン/アウディの“方針”だ。装備品の総量や凝り方ではまったく太刀打ちできないが、高級感や高価格感ではゴルフのほうが上のような気がする。
(文=下野康史<かばたやすし>/写真=田村 弥/編集=関 顕也)
![]() |
![]() |
![]() |
テスト車のデータ
レクサスUX200“バージョンL”
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4495×1840×1540mm
ホイールベース:2640mm
車重:1540kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:CVT
最高出力:174ps(128kW)/6600rpm
最大トルク:209Nm(21.3kgm)/4000-5200rpm
タイヤ:(前)225/50RF18 95V/(後)225/50RF18 95V(ダンロップSP SPORT MAXX 050 DSST CTT)
燃費:16.8km/リッター(JC08モード)/16.4km/リッター(WLTCモード)
価格:474万円/テスト車=546万2520円
オプション装備:NAVI・AI-AVS+パフォーマンスダンパー<リア>(14万0400円)/ムーンルーフ<チルト&アウタースライド式>(10万8000円)/カラーヘッドアップディスプレイ(8万6400円)/ブラインドスポットモニター+パーキングサポートブレーキ(静止物+後方接近車両)+パノラミックビューモニター(11万8800円)/“マークレビンソン”プレミアムサラウンドサウンドシステム(22万7880円)/おくだけ充電(2万3760円)/寒冷地仕様<LEDリアフォグランプ、ウインドシールドデアイサー等>(1万7280円)
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:1314km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
![]() |
![]() |
![]() |
レクサスUX250h“Fスポーツ”
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4495×1840×1540mm
ホイールベース:2640mm
車重:1650kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:146ps(107kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:188Nm(19.2kgm)/4400rpm
モーター最高出力:109ps(80kW)
モーター最大トルク:202Nm(20.6kgm)
タイヤ:(前)225/50RF18 95V/(後)225/50RF18 95V(ダンロップSP SPORT MAXX 050 DSST CTT)
燃費:25.2km/リッター(JC08モード)/21.6km/リッター(WLTCモード)
価格:504万円/テスト車=617万5080円
オプション装備:NAVI・AI-AVS+パフォーマンスダンパー<リア>(14万0400円)/ルーフレール(3万2400円)/三眼フルLEDヘッドランプ<ロー・ハイビーム>&LEDフロントターンシグナルランプ+アダプティブハイビームシステム+ヘッドランプクリーナー+寒冷地仕様<LEDリアフォグランプ、ウインドシールドデアイサー等>(18万6840円)/アクセサリーコンセント<AC100V・1500W フロントセンターコンソールボックス後部、ラゲッジルーム内>(4万3200円)/“Fスポーツ”専用本革スポーツシート<運転席・助手席ベンチレーション機能、ヒーター付き>(24万8400円)/カラーヘッドアップディスプレイ(8万6400円)/ブラインドスポットモニター+パーキングサポートブレーキ(静止物+後方接近車両)+パノラミックビューモニター(11万8800円)/“マークレビンソン”プレミアムサラウンドサウンドシステム(22万7880円)/おくだけ充電(2万3760円)/ITS Connect(2万7000円)
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:1402km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
![]() |
![]() |
レクサスUX250h“バージョンL”
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4495×1840×1540mm
ホイールベース:2640mm
車重:1620kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:146ps(107kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:188Nm(19.2kgm)/4400rpm
モーター最高出力:109ps(80kW)
モーター最大トルク:202Nm(20.6kgm)
タイヤ:(前)225/50RF18 95V/(後)225/50RF18 95V(ダンロップSP SPORT MAXX 050 DSST CTT)
燃費:27.0km/リッター(JC08モード)/22.8km/リッター(WLTCモード)
価格:509万円/テスト車=602万5280円
オプション装備:ボディーカラー<ブレージングカーネリアンコントラストレイヤリング>(16万2000円)/NAVI・AI-AVS+パフォーマンスダンパー<リア>(14万0400円)/ムーンルーフ(10万8000円)/アクセサリーコンセント<AC100V・1500W フロントセンターコンソールボックス後部、ラゲッジルーム内>(4万3200円)/カラーヘッドアップディスプレイ(8万6400円)/ブラインドスポットモニター+パーキングサポートブレーキ(静止物+後方接近車両)+パノラミックビューモニター(11万8800円)/“マークレビンソン”プレミアムサラウンドサウンドシステム(22万7880円)/おくだけ充電(2万3760円)/寒冷地仕様<LEDリアフォグランプ、ウインドシールドデアイサー等>(2万4840円)
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:972km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター

下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
-
ランボルギーニ・ウルスSE(4WD/8AT)【試乗記】 2025.9.3 ランボルギーニのスーパーSUV「ウルス」が「ウルスSE」へと進化。お化粧直しされたボディーの内部には、新設計のプラグインハイブリッドパワートレインが積まれているのだ。システム最高出力800PSの一端を味わってみた。
-
ダイハツ・ムーヴX(FF/CVT)【試乗記】 2025.9.2 ダイハツ伝統の軽ハイトワゴン「ムーヴ」が、およそ10年ぶりにフルモデルチェンジ。スライドドアの採用が話題となっている新型だが、魅力はそれだけではなかった。約2年の空白期間を経て、全く新しいコンセプトのもとに登場した7代目の仕上がりを報告する。
-
BMW M5ツーリング(4WD/8AT)【試乗記】 2025.9.1 プラグインハイブリッド車に生まれ変わってスーパーカーもかくやのパワーを手にした新型「BMW M5」には、ステーションワゴン版の「M5ツーリング」もラインナップされている。やはりアウトバーンを擁する国はひと味違う。日本の公道で能力の一端を味わってみた。
-
ホンダ・シビック タイプRレーシングブラックパッケージ(FF/6MT)【試乗記】 2025.8.30 いまだ根強い人気を誇る「ホンダ・シビック タイプR」に追加された、「レーシングブラックパッケージ」。待望の黒内装の登場に、かつてタイプRを買いかけたという筆者は何を思うのか? ホンダが誇る、今や希少な“ピュアスポーツ”への複雑な思いを吐露する。
-
BMW 120d Mスポーツ(FF/7AT)【試乗記】 2025.8.29 「BMW 1シリーズ」のラインナップに追加設定された48Vマイルドハイブリッドシステム搭載の「120d Mスポーツ」に試乗。電動化技術をプラスしたディーゼルエンジンと最新のBMWデザインによって、1シリーズはいかなる進化を遂げたのか。
-
NEW
BMWの今後を占う重要プロダクト 「ノイエクラッセX」改め新型「iX3」がデビュー
2025.9.5エディターから一言かねてクルマ好きを騒がせてきたBMWの「ノイエクラッセX」がついにベールを脱いだ。新型「iX3」は、デザインはもちろん、駆動系やインフォテインメントシステムなどがすべて刷新された新時代の電気自動車だ。その中身を解説する。 -
NEW
谷口信輝の新車試乗――BMW X3 M50 xDrive編
2025.9.5webCG Movies世界的な人気車種となっている、BMWのSUV「X3」。その最新型を、レーシングドライバー谷口信輝はどう評価するのか? ワインディングロードを走らせた印象を語ってもらった。 -
NEW
アマゾンが自動車の開発をサポート? 深まるクルマとAIの関係性
2025.9.5デイリーコラムあのアマゾンがAI技術で自動車の開発やサービス提供をサポート? 急速なAIの進化は自動車開発の現場にどのような変化をもたらし、私たちの移動体験をどう変えていくのか? 日本の自動車メーカーの活用例も交えながら、クルマとAIの未来を考察する。 -
新型「ホンダ・プレリュード」発表イベントの会場から
2025.9.4画像・写真本田技研工業は2025年9月4日、新型「プレリュード」を同年9月5日に発売すると発表した。今回のモデルは6代目にあたり、実に24年ぶりの復活となる。東京・渋谷で行われた発表イベントの様子と車両を写真で紹介する。 -
新型「ホンダ・プレリュード」の登場で思い出す歴代モデルが駆け抜けた姿と時代
2025.9.4デイリーコラム24年ぶりにホンダの2ドアクーペ「プレリュード」が復活。ベテランカーマニアには懐かしく、Z世代には新鮮なその名前は、元祖デートカーの代名詞でもあった。昭和と平成の自動車史に大いなる足跡を残したプレリュードの歴史を振り返る。 -
ホンダ・プレリュード プロトタイプ(FF)【試乗記】
2025.9.4試乗記24年の時を経てついに登場した新型「ホンダ・プレリュード」。「シビック タイプR」のシャシーをショートホイールベース化し、そこに自慢の2リッターハイブリッドシステム「e:HEV」を組み合わせた2ドアクーペの走りを、クローズドコースから報告する。