第4回:普通のバイクとは“一味違う”走りを満喫
三輪モーターサイクルやインポートスクーターを試す
2019.05.02
JAIA輸入二輪車試乗会2019
日本に上陸したばかりの三輪モーターサイクル「カンナム・ライカー ラリーエディション」や、スクーターの「ベスパGTSスーパー300ノッテ」「BMW C400GT」に試乗。普通のバイクとは一味違う、走る喜び、操る楽しさに触れた。
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新しいライディングファンがある!
カンナム・ライカー ラリーエディション……176万4000円
スノーモービルや水上バイク、ATVなどのレクリエーショナルビークルで知られる、カナダのBRP社が手がける三輪モーターサイクルCAN-AM(カンナム)。これまでは1330ccエンジン搭載モデルのみだったが、新たに900cc/600ccエンジンを積むライトウェイトモデル、Ryker(ライカー)が登場した。
試乗したのはロータックス製の並列3気筒エンジンを積み、オフロード走行に対応するサスペンション/タイヤを備えたラリーエディション。従来のカンナムはボディーも大柄で、金持ちのオジサンが「オラオラ」と乗り回しているイメージがあったが(個人の感想です)、このライカーはシンプルでコンパクト。そしてシートの後端がスパッと切り落とされた造形などは“未来感”がハンパない。これなら若者も「カッケー!」と憧れそうだ。
前2輪、後ろ1輪のライカーは、見るからにクルマとオートバイの“ハイブリッド”的乗りものだが、実際の運転操作もミックススタイルだ。アクセル操作は右手のグリップをひねるだけ。トランスミッションはCVTなのでギアチェンジはない。ブレーキは右足のペダルを踏み込むことで前後輪を制動する。そして最も慣れを要するのはカーブの曲がり方。二輪のようにリーン(車体を傾ける)しないので、バーハンドルを「面舵いっぱーい」とばかりに切って曲がるのだが、横Gに耐えながらのハンドル操作は意外に腕力が必要で、勢いよくコーナーに飛び込み過ぎると、「あー、飛び出す!」と焦ることもあった。
とはいえ「倒れない」というのは三輪モーターサイクルの圧倒的なアドバンテージである。クルマにしか乗ったことのない人がオートバイの感覚を味わうのには最高の乗りものだし、バイク好きが乗ってもまったく新しいライディングファンを体感することができる。
600ccモデルなら130万円台から、という従来モデルよりリーズナブルになった価格も含めて、かなり心引かれる乗りものだった。普通自動車のAT免許で乗れる、というのを魅力に感じる人もいるだろう。とはいえ駐車スペースなどのことを考えると、所有のハードルはそれなりに高いんだけど。
(文=河西啓介/写真=三浦孝明/編集=堀田剛資)
“ちょいワル”だけど、アスリート
ベスパGTSスーパー300ノッテ……71万8000円
ベスパとしては最大排気量となる、278ccエンジンを積むフラッグシップモデル「GTSスーパー300」をベースにした限定モデル。イタリア語で“夜”を表す「Notte(ノッテ)」というネーミング通り、ボディーからホイールまで全身マットブラックで統一した“ちょいワル”(古い……)仕様だ。
ベスパというと“クラシック”というイメージがあるが、実はその走りはかなりスポーティー。僕は以前、150ccの「ベスパ・スプリント」を所有していたのだが、一度箱根まで往復した際には高速道路からターンパイクの上りまでまったく痛痒(つうよう)なく走ることができ、とても感心した。東名の追い越し車線を走るベスパを見て、ビックリしていたドライバーの顔が忘れられない(笑)。
その兄貴分のGTSスーパー300なのだから、“速さ”は推して知るべし。400ccのモーターサイクルがもたもたギアチェンジしている間に、ビューン! と置き去りにしてしまうだろう。そのスピードに対応すべく、ABSやASR(アンチ・スリップ・レギュレーション)というトラクションコントロールを装備している。
飛ばしたときに唯一気になるのは、前後輪とも12インチというホイールサイズだ。最初は大きなカラダを小さい足で支えているような不安を感じるが、慣れてしまえばそのタイヤの小ささを生かし、ひらひらと軽快なハンドリングを楽しむことができる。
たっぷりとした厚みのあるシートは掛け心地がいい。タンデムも快適そうだから、時にはツーリングにも出かけたい、という人にはよいだろう。逆に街乗りメインで乗るならば、このサイズとウェイトはいささかトゥーマッチかもしれない。自分ならやっぱりスプリント150の“Notte”を選ぶかな。
(文=河西啓介/写真=三浦孝明/編集=堀田剛資)
バイエルンの便利なアーバンモビリティー
BMW C400GT……91万2000円
“中免”こと普通自動二輪免許で乗れるビーエムが「BMW C400GT」。コンベンショナルな鋼管フレームに349ccの単気筒エンジン(最高出力34ps、最大トルク35Nm)を搭載したミドルクラスのスクーターである。
左右非対称なヘッドランプを備えたアグレッシブな外観の姉妹モデル「C400X」に対して、C400GTはシンメトリーな顔つき。より大人な雰囲気だ。カウル類の造形も凝っている。ちなみに、ヘッドランプの縁が光る意匠は、四輪のビーエムゆずりですね。
厚いクッションのシートに座ると、腰の後ろにバックレスト(ウエストレスト!?)があって、乗員を支えてくれる。さりげなく、ラクチン。防風効果の高い大きなフロントスクリーンと併せ、「GT=グランドツーリング」を意識させる装備だ。フロントカウル裏には左右に小物入れが設けられ、ETC2.0を標準で装備する。
動力系は、エンジン+CVTを一体化してスイングアーム内に収める一般的な形態。スロットルを開けて走り始めても、わかりやすく「これぞビーエム!」といった感覚はなかったけれど、長めのホイールベースから来る安定性が印象的。それでいてステアリング操作に対するボディーのロールが軽やかで、スイスイ曲がる。十二分に速いうえ、鈍重なフィールはない。これなら、ロングツーリングでも飽きにくいんじゃないでしょうか。
シート下は、もちろんラゲッジスペース。感心したのは「フレックスケース」と呼ばれる、収納部が下方に延びてヘルメットをしまい込む仕組み。なるほど、ヘルメットを収めているときは停車時だから、無理なくラゲッジを広げる合理的な方法といえる。ビーエムのスクーターに試乗して、その荷室に驚くとは思わなかった(安全のため、フレックスケース使用中は、エンジンがかからない)。
街なかを「ブイブイ言わせて」(←死語)走り回っていた、“ビクスク”ことビッグスクーター大流行の記憶が薄れつつある今日。バイエルンの便利なアーバンモビリティーが、国内でどのように受け入れられるのか。興味津々。
(文=青木禎之/写真=三浦孝明/編集=堀田剛資)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。