第3回:意外なほど取っ付きやすい!?
やんちゃなオフロード&モタードを駆る
2019.04.30
JAIA輸入二輪車試乗会2019
“ギア感”たっぷりのデザインに、高さのあるシート。見るからに乗り手を選びそうなオフロード&モタードバイクだが……? モト・グッツィとアプリリアが提案する2台は、誰にでも薦められる楽しいオートバイだった。
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80年代が香り立つアドベンチャー
モト・グッツィV85 TT……142万5600円
2018年のインターモト(ドイツで開催される国際二輪車ショー)で発表されたモト・グッツィのニューモデル。クルマ業界におけるSUV的存在とでも言おうか、とにかく二輪メーカーは今、どこもかしこも「アドベンチャー」である。
そこでこの「V85 TT」だ。「グッツィよ、お前もか」と言いたくなるが、なんだか見た目からして毛色が違う。白と黄色に塗り分けられた燃料タンクに赤いフレーム、どことなく“80年代”の香りが漂う。気になって調べてみると、なるほど、グッツィは80年代にパリ・ダカールラリー参戦のためのマシンを製作していて、このV85 TTのカラーリングはそれをモチーフとしたものなのだ。
「完全新設計」とうたうエンジンが、853ccの空冷VツインOHV(!)なのもグッツィらしい。最新のOHVエンジンなんてめちゃくちゃエンスーだ。V85 TTはアドベンチャーモデル初のネオレトロ(?)モデルなのだ。
試乗しての印象は、グッツィらしいところ、グッツィらしからぬところが、それぞれ感じられた。グッツィらしいのは、アドベンチャーにしてはコンパクトでスリムな車体による取っ付きやすさ、そして適度なパワーと柔らかい乗り心地。V85 TTの乾燥重量は208kgと、アドベンチャーとしてはかなり軽量だ。シート高も830mmに抑えられていて、身長173cmの僕なら両足のつま先を無理せず着くことができる。
グッツィらしからぬ、と感じたのは、Vツインエンジンのお行儀のよさ。アクセルをあおると車体がグラっと左右に揺れる、縦置きVツイン特有のアクションはほとんど感じられない。スロットルレスポンスがよく、回転はスムーズで振動もよく抑えられている。
結果として、グッツィ独特の“味”は少々薄まっているが、とはいえ縦置きVツインの鼓動は残っているし、歓迎すべき正常進化だと感じた。見た目の「80年代レトロ」なテイストが、柔らかな乗り味とうまくマッチしている。
加えて、LEDヘッドランプ、「Road/Rain/Off-road」という3つのマッピングを切り替えられるライディングモード、カラー液晶メーターなど、最新のモーターサイクルとしてあるべきものはきちんと備わっている。
そう考えると142万5600円(単色モデルは2万7000円安)という価格は、とても競争力があると思う。グッツィスタはもちろん、アドベンチャーモデルが欲しい、と考えている人なら、一度乗ってみることを勧めたい。
(文=河西啓介/写真=三浦孝明/編集=関 顕也)
粋なスポーツコミューター
アプリリアSX125……41万0400円
「アプリリアSX125」は、オフロードモデル「RX125」をオンロードユースにしたモタード版。RXの、前21インチ、後ろ18インチのタイヤを、前後とも17インチに変えている。
「シート高:880mm」というスペックにいきなり心が折れそうになるが、「この手のオフロード系はサスペンションが柔らかいので、ひとたび座ればガッツリ沈むはず」と自らを励ましてシートにまたがると、なるほど、シート位置はググッと低くなって、身長165cm(短足)のライダーは、めでたく両足ツマ先立ち。
いざ走り始めると、コレが楽しい! 細身だけれど、意外と膝になじむボディーサイドがスポーティー。134kgと軽量なうえに、最高出力15ps、最大トルク11.3Nmと適度なアウトプットを発生させる125ccユニットは、単気筒らしく低回転域でもよく粘る一方、1万rpm超までブン回すのも可。6段MTを駆使して速度を上げていくと、SX125は元気いっぱいに走る。
前240mm、後ろ220mmのホイールトラベルを持つ足まわりは、柔軟至極。バイクの挙動が手に取るように分かって、自由自在に操れる……ような気になる。タイトカーブを想定して、あえて左右に大きくボディーを傾けて走るのも、また楽し。オンロード走行に合わせて、フロントブレーキはRX125の260mmから300mmに強化されている(リアは200mmでABS付き)。
国内では「ゲンニ」こと原動機付自転車ニ種に分類される手軽で便利なモデル。オフロードモデルに乗りなれている方、足の長さに余裕がある御仁は、粋なスポーツコミューターとして検討してみてはいかがでしょう? クルクルと小回りが利いて、街なかでもきっと楽しい、はず!
(文=青木禎之/写真=三浦孝明/編集=関 顕也)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。