決定! ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー2019
“グローバルなクルマの賞”から見えること
2019.04.23
デイリーコラム
ローカルな賞とはいろいろ違う
世界の2つ以上の大陸で販売されている最新モデルを対象に、「走りのパフォーマンス」や「エモーショナルさのアピール度合い」、さらには「安全性」や「環境性能」などを勘案。その結果を踏まえて、世界24カ国86人の選考委員が、直近1年を代表するにふさわしいモデルを選出する――そんな「ワールド・カー・アワード」のイベントで、今年、最高賞に相当するワールド・カー・オブ・ザ・イヤーに輝いたのは「ジャガーIペース」だった。その授賞式は例年通り、ニューヨーク国際オートショーの会場で行われた。
ジャガー初の量産型ピュアEVであるこのモデルは、同時にワールド・カー・デザイン、そしてワールド・グリーン・カーという部門賞も獲得。3部門を同時に受賞したのは、ワールド・カー・アワード15年の歴史で初の快挙である。
“カー・オブ・ザ・イヤー”を称するイベントは世界のさまざまなマーケットに存在するものの、ワールド・カー・オブ・ザ・イヤーはそれらの上位にあるというわけではなく、あくまでも独立した賞典だ。世界の全市場が対象であるだけにノミネート車数が膨大になるというのが、このイベントの大きな特徴なのだが、各選考委員はテストドライブの経験があるモデルにのみ投票が許されることで公平性が保たれている。これも、各市場のローカルな賞とは大きく異なるポイントである。
そんなワールド・カー・アワードのプログラムでジャガーが賞を獲得するのは、2017年の「Fペース」に続いてこれが2回目。過去15回の国別の受賞回数で見ると、ドイツ車が8回と最も頻度が高く、「レクサスLS」や「マツダ2(デミオ)」、「マツダ・ロードスター」など、日本車も複数回の実績がある。ピュアEVとしての受賞は、初代「日産リーフ」に続き、今回のIペースが2度目となっている。
もうEVに頼るしかない!?
ところで、今回の結果で興味深かったのは、ワールド・アーバン・カー部門を「スズキ・ジムニー」が制したという日本人にとってうれしいニュース。もうひとつは、大賞を獲得したIペースに僅差の次点で迫ったのが、これまたピュアEVの「アウディe-tron」だったということだ。
実は、このところ、欧州では地球温暖化に対する危機感が高まっており、その主要因とされるCO2の排出量削減へのムーブメントも、これまでにないほど高まっているのだ。
もはや「燃料を燃やすことは悪!」とさえ言われかねないような、そうした状態の中にあって、「次世代のパワーユニットはEV一択!」という雰囲気も急に強くなってきた。今回の投票結果には、そんな時代の空気感というものが色濃く映し出されていることが、何とも印象深かった。
実際、欧州議会と欧州連合理事会は、「2030年までに60g/kmにする」というCO2排出量の目標値についてすでに合意に至っている。それは75g/kmの現行「トヨタ・プリウス」ですらクリアできない極端に厳しい値であり、それが守れない場合多額の罰金が科せられるということになれば、乗用車を販売しようというメーカーは「ピュアEVに頼るしかない」という状況なのだ。
すなわち、このまま時がたてば、スポーツカーはおろかごく普通のエンジン車すら生き残るすべはないという“瀬戸際”にまで追い込まれるも同然。今回、ワールド・カー・オブ・ザ・イヤーの上位2車がピュアEVだったという結果からは、そんな未来像も垣間見えるのだ。
このように“世界カー・オブ・ザ・イヤー”には、日本のカー・オブ・ザ・イヤーなどとはまったく異なる、グローバルなイベントの価値が見えてくる。世界各国のカー・オブ・ザ・イヤーの結果と見比べて、それが意味するところを考えるのも興味深い。
(文=河村康彦/写真=ジャガー・ランドローバー・ジャパン、アウディ ジャパン、トヨタ自動車、日産自動車/編集=関 顕也)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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