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ジャガーIペースHSE(4WD)

これぞ老舗の底力 2019.06.03 試乗記 欧州カー・オブ・ザ・イヤーにも輝いたジャガーのEV「Iペース」は、他のEVや従来のジャガー車とどう違う? 市街地や高速道路を走らせてわかった“エレクトリック・パフォーマンスSUV”の乗り味を報告する。

EVの時代がやってきた!?

EV(電気自動車)は過渡期の乗り物である。クルマ単体の技術的な進歩に加え、急速充電器を中心とした社会的なインフラ整備も並行して進めなければならない。

「なんとまァ、当たり前のことを……」とあきれた読者の方もいらっしゃるでしょう。その通り。でも、最新のEVモデルに乗るときは、あらためて基本的なことを確認しておかないと、もう、ひたすら褒めちぎることになってしまうので、注意が必要なのだ。

ジャガーIペースは、同社初のフルバッテリー電気自動車である。内燃機関を持たないクールなピュアEV。静止状態から100km/hに達するまでわずか4.8秒という「シビれるパフォーマンス」(カタログより)を誇り、気になる航続距離は438km(WLTCモード・国土交通省審査値)である。

他社の調査を流用して恐縮だが、日産によると、日本のガソリン車ユーザーが1日に走る距離は、その95%が200km以下だという。ちなみに、370kmで99%のユーザーをカバーできるので、400kmを超える航続距離があれば、まず“電欠”の心配はしないで済む、はずだ。

Iペースの価格は、959万~1312万円と高価だけれど、そこはジャガーだから仕方ない。むしろ伝統を誇る高級ブランドがピュアEVをリリースするくらいだから、いよいよ電気自動車の時代がやってくる! ガソリン車と遜色ない使い勝手。むしろ性能は上。EVだからといって、走れる距離を気にする必要はなくなった……そんなフレーズを目にしたら、(いまのところ)眉にツバした方がいい。そんな風に自戒しながら、ジャガーIペースの試乗に臨んだ。

2018年3月に世界初公開された「ジャガーIペース」。国内では同年9月に受注が開始された。


	2018年3月に世界初公開された「ジャガーIペース」。国内では同年9月に受注が開始された。
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液晶パネルが多用されるものの、未来的過ぎないインテリアのデザインからは安心感も得られる。
液晶パネルが多用されるものの、未来的過ぎないインテリアのデザインからは安心感も得られる。拡大
駆動用バッテリーの残量を示すイメージ。センターモニター(写真)のほか、メーターパネル上でも情報が得られる。
駆動用バッテリーの残量を示すイメージ。センターモニター(写真)のほか、メーターパネル上でも情報が得られる。拡大
「Iペース」はジャガーが初めて開発を手がけたEV。海外での評価は高く、欧州カー・オブ・ザ・イヤーをはじめとするさまざまな賞を獲得している。
「Iペース」はジャガーが初めて開発を手がけたEV。海外での評価は高く、欧州カー・オブ・ザ・イヤーをはじめとするさまざまな賞を獲得している。拡大

特別感のあるメカニズム

ジャガー自ら“エレクトリック・パフォーマンスSUV”とうたうIペース。まったく新しいEV専用プラットフォームに、(ほぼ)アルミのボディーを載せる。ボディーサイズは、全長4695mm、全幅1895mm。意外とデカい。同門の「ランドローバー・ディスカバリー スポーツ」(4610×1895×1725mm)に近い数値だが、Iペースは全高が1565mmと低いのが特徴。低く、幅広く構えるスポーティーなディメンションである。

もうひとつIペースのフォルムを決定付けるのが、2990mmと異例に長いホイールベース。前後の車軸間には、「日産リーフe+」の65kWhを上回る90kWhのリチウムイオンバッテリーが敷き詰められ、前後それぞれに車軸と一体化した(!)電動モーターが置かれる。つまりIペースは、4輪駆動車である。

おもしろいのは前後のモーターが同じスペック(200ps、348Nm)をもつことで、クルマ全体のアウトプットはそのまま2倍となる。額面上は、7リッターエンジン並みの力持ち! もちろん前後を結ぶプロペラシャフトはいらない。コーナリング時には、必要に応じて内側の車輪にブレーキをかけることでアンダーステアを低減する。まさに新世代のスポーツAWDといえよう。「Iタイプ」ことフォーミュラE(電動フォーミュラカー)由来のパワートレインというのが、ジャガーの自慢である。

Iペースは、従来のジャガー車とは真逆に、キャビンが前進した、つまりボンネットが短いキャブフォワードのスタイルを採るけれど、「これが新時代のジャガーです」と言われれば、そんなもんか、と納得するデザインをまとう。見慣れたフロントフェイスに立派なグリル。張りのあるサイドパネル。四隅に配された大きなタイヤ。空力を意識して後ろまで素直に伸びたルーフラインに、スパッと切り落とされたテールエンド。人によって好き嫌いはあろうが、従来型のクルマ好きが安心して見ていられる造形だ。

短いオーバーハングに対して長いホイールベースが印象的な、「Iペース」のサイドビュー。低く伸びやかなスタイリングは、フルフラットなアンダーボディーとともに空力性能に貢献する。
短いオーバーハングに対して長いホイールベースが印象的な、「Iペース」のサイドビュー。低く伸びやかなスタイリングは、フルフラットなアンダーボディーとともに空力性能に貢献する。拡大
「プレミアムテキスタイル」で仕立てられた「IペースHSE」のシート。グレインレザーやウィンザーレザーなどの素材も選択できる。
「プレミアムテキスタイル」で仕立てられた「IペースHSE」のシート。グレインレザーやウィンザーレザーなどの素材も選択できる。拡大
身長165cmの筆者が後席に座った様子。「Iペース」では、キャブフォワードデザインとEV特有のパッケージングにより、ひとクラス大きなSUVに匹敵する室内空間が確保されている。
身長165cmの筆者が後席に座った様子。「Iペース」では、キャブフォワードデザインとEV特有のパッケージングにより、ひとクラス大きなSUVに匹敵する室内空間が確保されている。拡大
フロントデザインは、「XE」や「XF」といったジャガーのセダンを思わせる。グリルの上部にはボンネット後方へと抜けるエアスクープが設けられており、空力性能を向上させる。
フロントデザインは、「XE」や「XF」といったジャガーのセダンを思わせる。グリルの上部にはボンネット後方へと抜けるエアスクープが設けられており、空力性能を向上させる。拡大

新たな試みがちらほら

この印象は室内に入っても同様で、ステッチの入ったソフトレザーのシート、ウッドパネルも選べるトリム類、10インチと5インチのタッチスクリーンにフローティングタイプのセンターコンソール。デジタル化されたデバイスは数あれど、総じて「なるほど、21世紀のジャガーだ」と思わされる、カーデザインの文法にのっとったインテリアである。

Iペースのドライブフィールは、重い物体を、スムーズに、かつすばらしい加速感を伴って動かす電気自動車のそれ。速い。凡百のスポーツカーは道を譲るハイパフォーマンスだけれど、その静かな走りは、直接的にはドライバーの興奮をかきたてない。「エンジンサウンドがないと、どうも盛り上がらない……」という守旧派に配慮してか、Iペースには「アクティブ・サウンド・デザイン」という機能が採用された。スイッチひとつで、シルキーなストレート6か重厚なダブルシックスのサウンドが選べ、アクセル操作に合わせて音量が上下する……というのは筆者の願望で、実際にはハウリングのような低周波サウンドが、設定されたボリュームに合わせて控えめに響くだけ。なんとも中途半端な気がしたが、ここらへんは顧客の反応を探るアドバルーンといったところだろう。

試乗車は、オプションのエアサスペンションを装着していた。最低地上高を、通常の走行状態、乗降時(-40mm)、オフロード時(+50mm)と調整可能。Iペースは、水深500mmまでの渡河能力を持つという。

Iペースの乗り心地は、重量物を低い位置に持つEVらしい落ち着いたもので、路面からの入力は、頑強なフロアがあっさりはね返す。車重は2250kg(パノラマルーフ装着車)とやや重い。なろうことなら、かつてのデイムラーのような、重めの上屋をしなやかにストロークする足まわりで支える、品よく穏やかなフィールを再現してもらいたい……というのは、後ろ向きに過ぎましょうか。

人工的な走行音を作り出す「アクティブ・サウンド・デザイン」の設定画面。基本的に無音で走れるEVならではの機能といえる。
人工的な走行音を作り出す「アクティブ・サウンド・デザイン」の設定画面。基本的に無音で走れるEVならではの機能といえる。拡大
センターコンソールには、ボタン式のシフトセレクターや走行モードの選択スイッチが並ぶ。液晶パネルと一体になった空調のスイッチが特徴的。
センターコンソールには、ボタン式のシフトセレクターや走行モードの選択スイッチが並ぶ。液晶パネルと一体になった空調のスイッチが特徴的。拡大
「Iペース」が0-100km/h加速に要する時間は4.8秒。最高速度は200km/hと公表される。
「Iペース」が0-100km/h加速に要する時間は4.8秒。最高速度は200km/hと公表される。拡大
グロスブラックに塗られた20インチホイール。試乗車にはグッドイヤーの「イーグルF1」タイヤが装着されていた。
グロスブラックに塗られた20インチホイール。試乗車にはグッドイヤーの「イーグルF1」タイヤが装着されていた。拡大

油断しなけりゃ不安なし

今回のジャガーIペースの試乗距離は、146.6kmだった。借り出し時にバッテリー残量は100%で、返却の際には55%になっていたから、航続距離を単純計算すると、約325km。ガソリン車とまったく同じに扱っての結果である。

Iペースは日本の急速充電器(CHAdeMO規格)に対応している。50kWの充電器の場合、85分で80%までの充電が可能だ。残念ながら、試乗の時点では、「日本の急速充電器とのマッチングを確認中」だったため、バッテリーを使い切るような電費テストは実施できなかった。

とはいえ、300km超の航続距離があれば、日常使いに不安はないだろう。通勤や子供の送り迎えといった、定型的な使用なら問題ないと思う。一方で、Iペースのような高性能車を所有する醍醐味(だいごみ)、長距離のドライブや、ふと思い立って知らない土地に足を向けるような場合は、注意が必要だ。

例えば高低差がある高速道路を、速い流れに乗っていいペースで走ると、バッテリーの消耗は思いのほか早くなる。事故渋滞にでもハマれば、いかに高効率なヒートポンプ式のエアコンディショナーでも、着実に電気を食っていく。

頼りにしていた急速充電器が休止中だったり、故障していたり、すでに別のEVが充電していることもある。せっかく急速充電を始めても、設置されていたのが古い機種で、期待したほどバッテリー残量が増えないといったことも起こり得る。

以上、実際に体験したことなので、各社のEVのステアリングホイールを握るたび、そのドライブフィールに大いに感心しつつ、手放しで褒めることには抵抗があるのだ。

「別にIペースに限ったハナシではないのでは?」とあきれた読者の方もいらっしゃるでしょう。その通り。でも、ジャガーといえども、ニッポンのインフラストラクチャーから超然としていることはできない。そうした基本的なことを確認したうえでまとめます。

バッテリーがある状態のIペースは、すばらしいクルマだ。見ても乗っても、「さすがはジャガー」と安心させられる。そこが、規格外れの斬新さにビックリしつつ、でも「アンタ、どこの子?」という戸惑いを隠せない新興メーカー、テスラとの大きな違いだ。ジャガーIペースは、わかりやすい高級ピュアEVである。

(文=青木禎之/写真=郡大二郎/編集=関 顕也)

12.3インチのフル液晶式メーターパネルには、カーナビのマップや給電データのほか、さまざまな情報が表示できる。
12.3インチのフル液晶式メーターパネルには、カーナビのマップや給電データのほか、さまざまな情報が表示できる。拡大
左フロントフェンダーにある急速充電用の給電口。普通充電の給電口は右側のフロントフェンダーに設けられている。
左フロントフェンダーにある急速充電用の給電口。普通充電の給電口は右側のフロントフェンダーに設けられている。拡大
荷室のフロア下には、充電用のマルチファンクションケーブルを装備。出先のさまざまな充電スポットで電力が補給できる。
荷室のフロア下には、充電用のマルチファンクションケーブルを装備。出先のさまざまな充電スポットで電力が補給できる。拡大
前席の背もたれ背面やセンターコンソールの後端には、後席のパッセンジャーが使うUSBソケットが備わる。
前席の背もたれ背面やセンターコンソールの後端には、後席のパッセンジャーが使うUSBソケットが備わる。拡大
「Iペース」には、車両登録日から8年以内または走行16万km以下でバッテリー容量が70%を下回った場合を対象にした保証制度が付帯する。
「Iペース」には、車両登録日から8年以内または走行16万km以下でバッテリー容量が70%を下回った場合を対象にした保証制度が付帯する。拡大

テスト車のデータ

ジャガーIペースHSE

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4695×1895×1565mm
ホイールベース:2990mm
車重:2250kg
駆動方式:4WD
モーター:交流同期電動機
フロントモーター最高出力:200ps(147kW)/4250-5000rpm
フロントモーター最大トルク:348Nm(35.5kgm)/1000-4000rpm
リアモーター最高出力:200ps(147kW)/4250-5000rpm
リアモーター最大トルク:348Nm(35.5kgm)/1000-4000rpm
システム最高出力:400ps(294kW)/4250-5000rpm
システム最大トルク:696Nm(71.0kgm)/1000-4000rpm
タイヤ:(前)245/50R20 105V/(後)245/50R20 105V(グッドイヤー・イーグルF1)
一充電最大走行可能距離:438km(WLTCモード)
交流電力量消費率:224Wh/km(WLTCモード)
価格:1162万円/テスト車=1342万9800円
オプション装備:4ゾーンクライメートコントロール(13万4000円)/空気イオン化テクノロジー(1万9000円)/電子制御式エアサスペンション(23万6000円)/アダプティブダイナミクス(16万5000円)/グローブボックス<クーラー&ロック付き>(2万6000円)/20インチ5スポークスタイル“5068”<グロスブラックフィニッシュ>(6万7000円)/ブラックエクステリアパック(6万2900円)/ヘッドアップディスプレイ(10万0900円)/固定式パノラミックルーフ(22万4000円)/プライバシーガラス(7万2000円)/トレッドプレート<メタル、イルミネーション機能&JAGUARスクリプト付き>(6万6000円)/コンフィギュラブルアンビエントインテリアライティング(4万2000円)/アクティビティーキー(6万円)/カーペットマット(1万8000円)/アダプティブサーフェイスレスポンス<AdSR>(14万2000円)/トリムフィニッシャー<モノグラムアルミニウム>(4万1000円)/クリック&ゴー<ベースユニット>(1万2000円)/ラゲッジスペースストレージレール(2万3000円)/ヘッドライニング<ライトオイスター、スエードクロス>(20万6000円)/ボディーカラー<コリスグレー>(9万3000円)

テスト車の年式:2019年型
テスト開始時の走行距離:990km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(7)/山岳路(0)
テスト距離:146.6km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:25.2kWh/100km<約4.0km/kWh>(車載電費計計測値)

ジャガーIペースHSE
ジャガーIペースHSE拡大
暗がりでは、イルミネーションに彩られたインテリアが楽しめる。カラーは好みのものに変更可能。
暗がりでは、イルミネーションに彩られたインテリアが楽しめる。カラーは好みのものに変更可能。拡大
大きな固定式パノラミックルーフは、22万4000円のオプション。赤外線を吸収するラミネート構造により、車内への紫外線や熱の侵入を防ぐ。
大きな固定式パノラミックルーフは、22万4000円のオプション。赤外線を吸収するラミネート構造により、車内への紫外線や熱の侵入を防ぐ。拡大
フロントにも27リッターのラゲッジスペースが確保される。フロントアクスル用のモーターは、その奥に搭載されている。
フロントにも27リッターのラゲッジスペースが確保される。フロントアクスル用のモーターは、その奥に搭載されている。拡大
「Iペース」の荷室容量は、5人乗車時で656リッター。エアサスペンションを装着した試乗車は18リッター少ない638リッターとなる。写真は後席の背もたれを倒して容量を最大化した状態。
「Iペース」の荷室容量は、5人乗車時で656リッター。エアサスペンションを装着した試乗車は18リッター少ない638リッターとなる。写真は後席の背もたれを倒して容量を最大化した状態。拡大
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