KTM 1290スーパーアドベンチャーS(MR/6MT)/1290スーパーアドベンチャーR(MR/6MT)/1090アドベンチャー(MR/6MT)/1090アドベンチャーR(MR/6MT)
進化と本質 2019.05.11 試乗記 ダカールラリーで圧倒的な強さを見せるKTMがラインナップするアドベンチャーシリーズの中でも、上級モデルに位置する「1290スーパーアドベンチャー」と「1090アドベンチャー」。ブランド伝統のトレリスフレームとV型2気筒エンジンの組み合わせがかなえる走りを堪能した。豊富なラインナップを誇るKTMのアドベンチャーモデル
オーストリアの二輪車メーカーKTMは、2019年モデルとして日本に導入された「790アドベンチャー」シリーズに加え、排気量が異なる2つのアドベンチャーシリーズをラインナップしている。それが1290スーパーアドベンチャーと、1090アドベンチャーだ。
790アドベンチャーがスチール鋼管を使用したバックボーンフレームと並列2気筒エンジンという、KTMにとって新しいディテールを採用した“新世代モデル”であるのに対し、1290アドベンチャーおよび1090アドベンチャーは、スチール鋼管をハシゴ状に組み合わせたトレリスフレームとV型2気筒エンジンという、KTM製大排気量バイクの伝統を受け継ぐ“レジェンドモデル”といえる。さらに言えば、1290スーパーアドベンチャーはダカールラリーでの勝利を目指し、そして実際に勝利を手にしたKTMのラリー史におけるマイルストーンとなったマシンの直系であり、1090アドベンチャーは進化の過程で埋もれつつあったラリーマシンとしての本質に、再び焦点を当てたマシンである。
KTMがアドベンチャーシリーズを世に送り出したのは1997年。パリ‐ダカールラリーに出場するためのラリーマシン「620アドベンチャー」がそのファーストモデルである。翌1998年には排気量を609ccから625ccに拡大した「640アドベンチャー」を発売し、ラリーシーンにおけるKTMの存在を確固たるものとした。2003年には、前年のダカールで優勝したKTM初の挟角75°V型2気筒マシンをベースとした市販モデル「950アドベンチャー」を発売。そして2006年に「990アドベンチャー」を、2013年に「1190アドベンチャー」を、さらに2015年に電子制御サスペンションやコーナリングABSなどの電子制御を満載した1290スーパーアドベンチャーと、排気量を落としながら軽量な車体で純粋にオフロードや旅を楽しめる「1050アドベンチャー」をリリースした。2017年に登場した1090アドベンチャーは、この1050アドベンチャーの後継モデルにあたる。
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明確な違いを感じるライディングモードの設定
今回試乗した1290スーパーアドベンチャーシリーズは、オンロードでの走行に重心を置き、フロント19インチ/リア17インチのキャストホイールと電子制御サスペンションを装着した「1290スーパーアドベンチャーS」と、オフロードでの走破性を高めるためにフロント21インチ/リア18インチのスポークホイールと一般的な倒立フロントフォーク&モノリアショックを装着した「1290スーパーアドベンチャーR」の2モデルである。
排気量1301ccのエンジンは、KTMが熟成を続けた挟角75°のV型2気筒。158hpの最高出力を発生するが、それ以上に注目したいのがトルクだ。140Nmのピークトルクはもちろん、2500rpmという街中などを走行する際に多用するエンジン回転数で、その75%を超える108Nmを生み出すのだ。このエンジン特性はS、Rともに変わりはない。両車の走りの違いは、採用されている前後足まわりの違いである。
1290スーパーアドベンチャーSはオールラウンダーだ。エンジンの出力特性に加え、トラクションコントロールやコーナリングABSの介入度合いも変化する「スポーツ」「ストリート」「レイン」「オフロード」の4つのライディングモードに加え、電子制御サスペンションにも「スポーツ」「ストリート」「コンフォート」「オフロード」の4つのモードが存在する。そのすべての組み合わせを試すことはできなかったが、ライディングモードを変えるとアクセル操作に対する反応が明らかに変化し、モード選びによって同じ道でもスポーツ走行を楽しんだり、ゆったりと景色を眺めて走ったりと、異なる車両に乗っているかのようなフィーリングを味わうことができる。
前後ともにストロークが200mmのサスペンションはしっかりとしつけられていて、ワインディングロードでも大柄な車体をキビキビと動かす。シートは、ライダースペースとパッセンジャースペースが別体となる2ピース構造。試乗時は低シート高の860mmだったが、より長身なライダーなら高シート高の875mmも選ぶことができる。
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テールスライドも許容するオフロードモード
こうしたキャラクターのSに対し、Rは完全なるオフロードアドベンチャーモデルだ。先ほど触れたとおり、足先には衝撃吸収性に優れたスポークホイールをオフロードでの走破性を高めるフロント21インチ/リア18インチの組み合わせでセット。しかも前後サスペンションのストローク量は、Sより20mmも長い220mmとなっている。出力特性や電子制御介入度が変化するライディングモードはそのままだが、足まわりからは電子制御システムを排除。サスペンションはKTMグループのもとでオフロードシーンで実績を積んできたWP製で、リアショックにはプログレッシブダンピング機構が備わっている。
今回、Rはオフロードのみでの試乗となった。ライディングモードで「オフロード」を選択すると、ABSはフロントブレーキのみ保持され、リアは解除。トラクションコントロールもそれに適したパラメーターとなる。もちろん、そのパラメーターは独自に設定変更が可能だが、そのままの状態でも、アクセルを大きく開けてリアを少し流したり、リアブレーキでタイヤをスライドさせたりして、車体の向きを変えることができる。もちろん、これは低中回転域で大きなトルクを発生させる出力特性によるところも大きい。
軽やかな走りが身上の1090シリーズ
一方、兄弟モデルの1090アドベンチャーシリーズにも、1290シリーズと同じく、オンロードでの走行に重心を置いてフロント19インチ/リア17インチのキャストホイールを装着した「1090アドベンチャー」と、オフロードでの走破性を高めるためにフロント21インチ/リア18インチのスポークホイールを装着した「1090アドベンチャーR」がラインナップされている。
LEDヘッドランプまわりのデザインが特徴的な1290シリーズに対し、1090シリーズは前モデルの1050アドベンチャーから受け継いだハロゲンヘッドランプとLEDデイライトを組み合わせたフロントフェイスを採用。エンジンも1050と同じ排気量1050ccの挟角75°V型2気筒だが、セッティングの変更などで最高出力と最大トルクを向上させるとともに、低中回転域でのトルクの向上と滑らかな回転フィールも実現している。またクラッチ操作を軽くすると同時に、シフトダウンなどで駆動系に大きな減速トルクが掛かった際に起きるリアタイヤのホッピングを抑制し、減速時の車体を安定させるアシストスリッパークラッチも搭載している。
1090アドベンチャーシリーズの特徴は、やはりその“軽さ”だ。実際、コンパクトなエンジンとシンプルな車体構成により、1290アドベンチャーシリーズより10kg軽量なのだが、細身のタンクとシート、前モデルよりパワー&トルクを高めた出力特性によって、数字以上に車体が軽く感じられる。それはアドベンチャーもアドベンチャーRも同じだ。
KTMアドベンチャーの“核”を感じさせる
フロント19インチ/リア17インチホイールを履くアドベンチャーは、やはり街乗りやワインディングロードでの軽快感が際立っている。17インチホイールを履くスポーツバイクやネイキッドバイクのような神経質さはなく、それでいて狙った走行ラインをしっかりとトレースしてくれる。これなら旅を楽しみつつ、その途中で出くわすワインディングも十分に堪能できるだろう。フロント185mm/リア190mmというサスペンションストロークにより、オフロード走行も十分に許容する。
一方、前後サスペンションをグレードアップし、より悪路走破性を高めたRは、オフロード好きのライダーなら日本の林道でも十分に楽しめるポテンシャルを持っている。軽量でスリムな車体はもちろん、今回試乗したようなコースも受け入れる前後サスペンションによって、ライダーの意のままにオフロードに分け入っていけるのだ。
伝統のトレリスフレームとV型2気筒エンジンの組み合わせは、まさにKTMの名を世界に知らしめたコンビネーションだ。その車体をベースに、電子制御技術を駆使した1290スーパーアドベンチャーが、進化したKTMアドベンチャーの世界を見せてくれるバイクだとしたら、シンプルに造り込んだ1090アドベンチャーは、その核となる部分を感じさせるバイクといえるだろう。
(文=河野正士/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)
テスト車のデータ
KTM 1290スーパーアドベンチャーS
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=--×--×--mm
ホイールベース:1560mm
シート高:860mm/875mm
重量:215kg(乾燥重量)
エンジン:1301cc 水冷4ストロークV型2気筒DOHC 4バルブ
最高出力:158hp(118kW)/8750rpm
最大トルク:140Nm(14.3kgm)/6750rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:5.52リッター/100km(約18.1km/リッター、WMTCモード)
価格:199万9000円
KTM 1290スーパーアドベンチャーR
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=--×--×--mm
ホイールベース:1580mm
シート高:890mm
重量:217kg(乾燥重量)
エンジン:1301cc 水冷4ストロークV型2気筒DOHC 4バルブ
最高出力:158hp(118kW)/8750rpm
最大トルク:140Nm(14.3kgm)/6750rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:5.52リッター/100km(約18.1km/リッター、WMTCモード)
価格:215万円
KTM 1090アドベンチャー
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=--×--×--mm
ホイールベース:1560mm
シート高:850mm
重量:205kg(乾燥重量)
エンジン:1050cc 水冷4ストロークV型2気筒DOHC 4バルブ
最高出力:123hp(92kW)/8500rpm
最大トルク:109Nm(11.1kgm)/6500rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:5.61リッター/100km(約17.8km/リッター、WMTCモード)
価格:158万円
KTM 1090アドベンチャーR
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=--×--×--mm
ホイールベース:1580mm
シート高:890mm
重量:207kg(乾燥重量)
エンジン:1050cc 水冷4ストロークV型2気筒DOHC 4バルブ
最高出力:123hp(92kW)/8500rpm
最大トルク:109Nm(11.1kgm)/6500rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:5.61リッター/100km(約17.8km/リッター、WMTCモード)
価格:178万円

河野 正士
フリーランスライター。二輪専門誌の編集部において編集スタッフとして従事した後、フリーランスに。ファッション誌や情報誌などで編集者およびライターとして記事製作を行いながら、さまざまな二輪専門誌にも記事製作および契約編集スタッフとして携わる。海外モーターサイクルショーやカスタムバイク取材にも出掛け、世界の二輪市場もウオッチしている。
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