トヨタRAV4ハイブリッドG(4WD/CVT)
王の帰還 2019.06.24 試乗記 約3年のブランクを経て「トヨタRAV4」が日本市場に帰ってきた。とはいえその主戦場が、日本とは桁違いの台数が販売されているアメリカであることは明らか。新型は、日本にクロスオーバーSUVブームをもたらした初代のようなポジションに返り咲くことはできるのだろうか。不遇からの復活
2019年4月10日に発売された新型RAV4は、1カ月で約2万4000台の受注があったそうだ。月販目標が3000台だから、8倍ということになる。好評とは聞いていたが、これほどまで人気が爆発するとは思わなかった。何しろ、日本国内での販売が3年も中断されていたモデルである。かつての不人気車が、華々しい復活を遂げたのだ。
「ホンダCR-V」も、2年の販売休止の後に戻ってきた。いずれも北米が販売の中心となり、国内の需要とはマッチしなくなったと考えられていたモデルである。急激なSUV人気の盛り上がりに押され、不遇から抜け出して中心的存在に返り咲いた。
SUV人気というが、そもそもSUVとは何か。Sport Utility Vehicleの略称なので、新聞などでは「スポーツ用多目的車」と注釈が付けられる。意味不明だ。どこがスポーツで、どこが多目的なのか。背が高くて重いクルマをスポーティーだとは言いたくない。どうやら誤訳が広まってしまったということらしく、Utility Vehicleとは商用車のことなのだ。そこに娯楽という意味のSportがくっついた形で、直訳すれば娯楽用商用車ということになる。
起源はともかくとして、アメリカではピックアップトラックの荷室部分にボディーをかぶせて乗用車化したクルマのことを指していた。転じて語義が広がり、4WD機構を持つクロスカントリー車がSUVと呼ばれるようになる。それだけならオフロード好きのためのマニアックなクルマにとどまったはずだが、セダンと変わらない居住性能と乗り心地を持つカジュアルなSUVが登場する。先駆けとなったモデルのひとつが、1994年にデビューしたRAV4だった。1997年には「トヨタ・ハリアー」が発売され、フレームを持たないモノコック構造のオフロード風車両がクロスオーバーSUVと呼ばれるようになっていく。
ハイブリッド4WDは最上級グレード
RAV4という名前には意味があり、もともとは「Recreational Active Vehicle 4 Wheel Drive」の略称とされていた。しかし、新型は違う。「Robust Accurate Vehicle with 4 Wheel Drive」が開発コンセプトなのだというのだ。Robustは三菱が自社のブランドメッセージとしてよく使っている言葉で、堅牢(けんろう)で頑丈であることを示す。そこにAccurate(正確な)をプラスしたのが新型RAV4のイメージなのだ。レクリエーションだと軽いが、もう少し硬派な雰囲気を出したいのだろう。用途が変わったことでDVDが「Digital Video Disc」から「Digital Versatile Disc」になったのと同じである。
それはともかく、RAV4の場合は新旧どちらにも4 Wheel Driveというフレーズが含まれていて、4WDであることがアイデンティティーである。FF車もあるが、発売1カ月時点で受注した約9割が4WDモデル。それも当然で、RAV4には3種類もの4WDシステムが用意されている。そのうちガソリンエンジン車には2種類。前後駆動配分50:50の「ダイナミックコントロール4WD」と、走行状況に応じて後輪へのトルク伝達を左右独立で制御する世界初の4WDシステム「ダイナミックトルクベクタリングAWD」である。
ハイブリッド車には新型「E-Four」を採用。モーターで駆動する後輪のトルクを強化したもので、前後輪トルク配分を100:0から最大20:80まで変更可能にした。試乗したのは、「ハイブリッドG」というグレード。ハイブリッド4WDモデルの上級グレードで、シリーズの中で一番高い381万7800円。本気の人はダイナミックトルクベクタリングAWDを選ぶだろうから、どちらかというとダンナ仕様のグレードと言っていいだろう。
ガソリン車の4WDにはオフロードの走行支援を「MUD&SAND」「NORMAL」「ROCK&DIRT」の3つから選べるマルチテレインセレクトが装備されているが、ハイブリッド4WDにはスタックから脱出するための「TRAIL」ボタンがあるだけ。今回の試乗ではオフロードを走る機会はなかったが、雪道などの滑りやすい路面では自動的に最適な前後トルク配分を行ってくれるはずだ。
おおらかでアメリカン
リアスタイルに少々武骨な印象が残るものの、見た目は都会派SUVである。オンロード走行は快適だ。街なかでゆっくり走っている分にはEVモードが持続し、恐ろしく静か。必要な時にはエンジンとモーターが協力して十分なパワーをもたらす。ボディーのしっかり感は高く、収まりがよくて段差の乗り越えでも腰に響くようなことはない。
ワインディングロードでもフラフラせずに走れるが、コーナリングではハンドルを切ってから少し遅れて曲がっていく感じがある。ロールは少なく、思いのほか活発に走る。前方の見晴らしはいいので、運転のしやすさは上々だ。ただ、同じトヨタのSUVである「C-HR」やハリアー、ホンダの「ヴェゼル」あたりのキビキビした走りと比べると、明確な違いを感じる。その3台がスポーティーさを前面に出しているのに対し、RAV4はどこかおおらかでアメリカンな感覚なのだ。同じSUVというジャンル名でくくるのはちょっと苦しい。
ホンダCR-Vや「スバル・フォレスター」はRAV4に似たポジションである。サイズも似通っていて、比較されるケースは多いだろう。いずれも4WD性能に重きをおいていて、カッコだけのシティー派SUVとは一線を画しているというアピールが強い。CR-Vのハイブリッド4WDモデルでは雪道を走ったことがあるが、条件の悪い圧雪路でも不安なく走ることができた。
RAV4ハイブリッドは2.5リッターエンジンとモーターの組み合わせなので、高速道路では強力な加速を楽しめる。巡航状態では風切り音も少なくて静かだ。ACCを用いてイージードライブ中に雨が降ってきたが、しばらくは問題なく走行。ただ、途中で激しい土砂降りになったらシステムが停止してしまった。夏のゲリラ豪雨の中では使えないかもしれない。
一番活気のあるSUVのジャンル
燃費モニターは、高速道路巡航だとリッター20km近い値を示す。山道では10km程度に落ちるが、車両重量を考えれば優秀である。パワーと燃費が高いレベルで両立している。このハイブリッドシステムは「カムリ」と同じもので、プラットフォームもカムリのものをベースにしている。ただし、当然ながら乗っていて共通点を感じることはない。
カムリは低重心プラットフォームを利した、スポーティーな運転感覚のセダンである。そのチーフエンジニアである勝又正人氏は、「セダンは一番優秀なボディータイプ」であり「背の高いSUVでもしっかり走るのなら、同じ技術を使ってセダンを作れば、もっと操縦安定性のいい、もっと乗り心地のいいクルマが作れる」と話していた。その意気やよしだが、アメリカでは通用してもSUV人気が突出している日本ではこの言葉は説得力を持ちにくい。
コンパクトなSUVとして誕生したRAV4は次第にボディーが大型化し、日本には向かないクルマとしてフェイドアウト。それが今はもてはやされているのだから、クルマの流行というのはよくわからない。SUVというジャンルが主流になったことで多種多様なモデルが登場し、その中ではやりすたりがある。1990年代に猛威をふるった「三菱パジェロ」の生産終了が決まったように、諸行無常、盛者(じょうしゃ)必衰なのだ。
RAV4は、今一番活気のあるSUVのジャンルに属しているのだろう。FFしかない、なんちゃってSUVには飽き足らず、「スズキ・ジムニー」や「トヨタ・ランドクルーザー」のような本格派はムリという人にちょうどいい。CR-Vやフォレスターはそういった需要に応えていたが、元祖かつ本命のモデルが現れてしまった。王の帰還が熱狂的に迎えられているのは、出来栄えを見れば納得せざるを得ない。
(文=鈴木真人/写真=荒川正幸/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
トヨタRAV4ハイブリッドG
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4600×1855×1685mm
ホイールベース:2690mm
車重:1690kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.5リッター直4 DOHC 16バルブ
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:178ps(131kW)/5700rpm
エンジン最大トルク:221Nm(22.5kgm)/3600-5200rpm
フロントモーター最高出力:120ps(88kW)
フロントモーター最大トルク:202Nm(20.6kgm)
リアモーター最高出力:54ps(40kW)
リアモーター最大トルク:121Nm(12.3kgm)
タイヤ:(前)225/60R18 100H/(後)225/60R18 100H(ダンロップ・グラントレックPT30)
燃費:20.6km/リッター(WLTCモード)/25.0km/リッター(JC08モード)
価格:381万7800円/テスト車=424万9260円
オプション装備:デジタルインナーミラー(4万3200円)/ハンズフリーパワーバックドア<挟み込み防止機能+停止位置メモリー機能付き>(1万6200円)/アクセサリーコンセント<ラゲッジ内AC100V/1500W、非常時給電システム付き>(4万3200円) ※以下、販売店オプション T-Connectナビ 9インチモデル(23万9760円)/カメラ一体型ドライブレコーダー(2万1060円)/ETC車載器<ビルトイン/ナビ連動タイプ[光ビーコン付き]>(3万2400円)/フロアマット<ラグジュアリー>(3万5640円)
テスト車の年式:2019年型
テスト開始時の走行距離:2552km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:551.7km
使用燃料:33.9リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:16.2km/リッター(満タン法)/16.5km/リッター(車載燃費計計測値)

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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