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スズキ・カタナ(MR/6MT)

令和の名刀 2019.08.21 試乗記 後藤 武 2018年にドイツで発表されるや、世界中のベテランライダーをアッと驚かせた新生「スズキ・カタナ」。その走りは、「カタナ」を名乗るのにふさわしいものなのか? オリジナルにも詳しい後藤 武が、新型の仕上がりを報告する。

素材を生かして復活

世界中の多くのバイクマニアたちから注目される中で発売されたのがスズキのカタナだ。1980年代初頭にセンセーショナルにデビューし、現在でも名車といわれている初代、「GSX1100S KATANA(カタナ)」のイメージと名前を受け継いだモデルである。

往年のイメージをまとうマシンはこれまでもいろいろあって、走りやメカニズムも当時を再現したモデルもあれば、外観こそクラシックなものの、装備や走りは最新というモデルもある。カタナは後者だ。

ベースは、スポーツネイキッドの「GSX-S1000」。新しいデザインを身にまとい、足まわりやポジションなどを変更。新時代のカタナとして生まれ変わることになった。

搭載しているエンジンは、スズキのスーパースポーツの旗艦である「GSX-R1000」がベース。2005年から2008年に生産された「K5」と呼ばれるモデルのものだ。当時のスーパースポーツとしては異例なほどロングストロークのため全域で非常にトルキー。新型カタナのようなマシンにはうってつけのパワーユニットだ。

新型カタナは、1000ccもあるビッグバイクだが、取り回しで重さはさほど感じない。またシートの前の方が低く、幅も絞られているので足つき性も悪くない。このあたりはビッグバイクビギナーにとってはありがたいところ。ただ、その関係でシートの後ろが上がっているため、走りだしてしばらくはお尻が常に持ち上げられているような感じがする。慣れてしまえば気にならなくなるのだけれど、最初のうちは違和感があった。

ハンドルは大きめのアップハンドルで上体が起き上がるため、ストリートをゆっくり走っていても疲れが少ない。そしてこのハンドルを利用してマシンのコントロールもしやすい。大きなマシンを振り回すようにして乗ることも可能だ。

名車の誉れ高い1980年代のオリジナルをモチーフに復活した、新生「カタナ」。国内では2019年5月に発売された。
名車の誉れ高い1980年代のオリジナルをモチーフに復活した、新生「カタナ」。国内では2019年5月に発売された。拡大
シャープなラインを描くフロントカウルから燃料タンクにかけての造形は、刀の切先(きっさき)をイメージしたもの。
シャープなラインを描くフロントカウルから燃料タンクにかけての造形は、刀の切先(きっさき)をイメージしたもの。拡大
ライダー側シートの高さは825mm。シートそのものは幅の広いタンデムタイプだが、ライダーの足つき性に配慮し前端は絞られている。
ライダー側シートの高さは825mm。シートそのものは幅の広いタンデムタイプだが、ライダーの足つき性に配慮し前端は絞られている。拡大
フロントのブレーキキャリパーはブレンボ製。リアにはニッシンのものが装着される。
フロントのブレーキキャリパーはブレンボ製。リアにはニッシンのものが装着される。拡大
車体色は、試乗車の「ミスティックシルバーメタリック」のほか「グラススパークルブラック」もラインナップされる。
車体色は、試乗車の「ミスティックシルバーメタリック」のほか「グラススパークルブラック」もラインナップされる。拡大
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あのころのバイクの味もある

操縦性は最新バイクらしく、非常に素直で乗りやすいのだけれど、個人的に好感を持ったのは、シットリとしたハンドリング。コーナーでバイクを倒していくとき、フロントタイヤのインに切れていく感じがクイック過ぎず落ち着いている。19インチフロントタイヤの威風堂々という感じとまではいかないけれど、どことなく昔のバイクを感じさせてくれる。

スポーツバイクの場合、ライダーが積極的にバイクをコントロールしてやる必要があるのだけれど、カタナはこの安定感のおかげで、体重移動などせず、多少ルーズに乗ってもドッシリとした感じ(スポーツバイクとしては)が伝わってきて、マシン任せでも気持ちよくコーナリングしてくれる。加えて17インチラジアルタイヤのグリップ感も安心要素。今のバイクのいいところに昔のバイク的なエッセンスを加えたような印象だ。

もちろん、思いっきり攻めても峠レベルなら何の不満もないし、この安定感が、大きなバイクを操っている実感を味わわせてくれる。ハンドリングに関しては、旧車好きなテスターも好印象を持った。

エンジンはトルクが太く、3000rpmあたりからはとても力強く加速してくれる。スロットルレスポンスに対してのエンジンの反応も鋭く、回転が上がればパワーがモリモリと盛り上がってくる。この力強さはさすがトルキーなK5エンジンという感じ。

ただ、そのフィーリングはよくも悪くも最新の水冷エンジン。空冷のカタナは、重々しいフィーリングでスロットルを開けた瞬間、地響きを伴うかのような迫力ある吹け上がりをしたが、もちろん、新型カタナにそんなフィーリングはない。空冷時代は大きく重いフライホイールマスや負圧式キャブレターによって、ある意味おおらかでマッタリとした回り方だったが、新型カタナはスロットルを開ければ瞬時に回転が上がる。

新型「カタナ」は、3段調節式のトラクションコントロール機能を標準装備。高揚感のある加速と快適なライディングを両立させたという。
新型「カタナ」は、3段調節式のトラクションコントロール機能を標準装備。高揚感のある加速と快適なライディングを両立させたという。拡大
107N・mの最大トルクを発生する1リッター直4エンジン。低回転域からの力強さがセリングポイントとなっている。
107N・mの最大トルクを発生する1リッター直4エンジン。低回転域からの力強さがセリングポイントとなっている。拡大
スイングアームは、スズキ車として初めて、ウインカーおよびリアフェンダーとの一体型とされた。
スイングアームは、スズキ車として初めて、ウインカーおよびリアフェンダーとの一体型とされた。拡大
メーターパネルは液晶タイプ。速度やエンジン回転数のほか、燃費や走行可能距離、水温、ギアポジションなどが表示される。
メーターパネルは液晶タイプ。速度やエンジン回転数のほか、燃費や走行可能距離、水温、ギアポジションなどが表示される。拡大
タイヤサイズは、フロントが120/70 ZR17 M/C 58Wで、リアが190/50ZR M/C 73W。試乗車にはダンロップの「スポーツマックス ロードスポーツ2」が組み合わされていた。
タイヤサイズは、フロントが120/70 ZR17 M/C 58Wで、リアが190/50ZR M/C 73W。試乗車にはダンロップの「スポーツマックス ロードスポーツ2」が組み合わされていた。拡大

単なるオリジナルのマネじゃない

ライバルとなるカワサキの「Z900RS」は、サウンドチューニングなどで、昔のバイクをイメージさせる力強いフィーリングと排気音を作り込んでいた。新型カタナの場合、サウンドなどにこだわってはいるのだけれど、方向性がカワサキとは若干違っている。

エンジンに関しては、当時をほうふつさせるのではなく、傑作といわれたGSX-R1000 K5のよさを引き出すのだと割り切ってセットアップが行われたのだろう。昔の雰囲気を求めたら物足りないかもしれないけれど、これはこれで魅力的だ。

ベースとなったGSX-S1000も併売されているけれど、サスペンションやポジションが違うため、乗ってみると印象は異なる。同時に乗り比べていないから記憶を手繰り寄せての感想だが、以前GSX-S1000に試乗したときは、最新のスポーツネイキッドらしい、鋭さがあった。さまざまな使い方に対応できるくらい扱いやすかったが、基本的にはスポーティーな性格が強いように感じた。対して新型カタナは高性能なだけではなく、実用域での乗りやすさが増している。

ストリートでノンビリ走っているだけでも楽しめる。いろいろな使い方をしたい人には、とてもよくできていて魅力的に映るはず。カタナの名を受け継ぐのにふさわしいマシンである。

(文=後藤 武/写真=荒川正幸/編集=関 顕也)

小ぶりなバイザーとヘッドランプが、往年の「GSX1100Sカタナ」のイメージと重なる。
小ぶりなバイザーとヘッドランプが、往年の「GSX1100Sカタナ」のイメージと重なる。拡大
コンパクトさが特徴的なマフラー。ブラック塗装を施すことで、一段と引き締まった外観を演出している。
コンパクトさが特徴的なマフラー。ブラック塗装を施すことで、一段と引き締まった外観を演出している。拡大
新型「カタナ」は、発進時や低回転走行時にエンジン回転数の落ち込みを抑える「ローRPMアシスト」を搭載。渋滞およびUターンの際に安心感が得られるとアピールされる。電子制御式ABSも標準装備。
新型「カタナ」は、発進時や低回転走行時にエンジン回転数の落ち込みを抑える「ローRPMアシスト」を搭載。渋滞およびUターンの際に安心感が得られるとアピールされる。電子制御式ABSも標準装備。拡大

【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2130×835×1110mm
ホイールベース:1460mm
シート高:825mm
重量:215kg
エンジン:998cc 水冷4ストローク直列4気筒 DOHC 4バルブ
最高出力:148PS(109kW)/1万rpm
最大トルク:107N・m(10.9kgf・m)/9500rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:23.8km/リッター(国土交通省届出値)/19.1km/リッター(WMTCモード)
価格:151万2000円

スズキ・カタナ
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後藤 武

後藤 武

ライター/エディター。航空誌『シュナイダー』や二輪専門誌『CLUBMAN』『2ストマガジン』などの編集長を経てフリーランスに。エアロバティックスパイロットだった経験を生かしてエアレースの解説なども担当。二輪旧車、V8、複葉機をこよなく愛す。

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