月販たったの300台! それでも新型「アコード」を日本で売るワケ
2020.02.21 デイリーコラム2地域だけで絶好調
シャープな顔つきに、グッとしまったサイドのキャラクターライン。そして、従来のイメージを大きく変える流麗なシルエット。いや~、これは本当にカッコイイ!
2020年1月、千葉県内のイベントホールで新型「ホンダ・アコード」が披露されるや、筆者はじーっと見入ってしまった。で、すっかり気をよくして「これは売れそうですねぇ」なんてホンダの関係者と話をしていて、がくぜんとした。月あたりの販売計画は、たったの300台だというのだ。
それで、ビジネスとして成立するのか?
アコードは、言わずと知れたホンダの大物。1976年に初代がデビューしてから40年以上、10代にわたる歴史を持つ。クルマ好きならご存じの方も多いと思うが、北米では売れに売れている。2019年は1~11月の11カ月間で24万台。アコードのグローバルな販売台数は年46万台だから、1地域だけで半数以上を占めている。日本とは2ケタも違う。
次点はどこかといえば、中国である。同じ11カ月での販売台数は、およそ20万台。ただ、「どこをとっても平均80点でネガがない」という理由で選ばれる北米とは事情が違い、中国ではうんと高級なもの、つまり「社会的に成功した人のクルマ」として、憧れをもって見られている。かつてその頂点だった「フォルクスワーゲン・パサート」を追い落とし、いまやかの地では一番人気だ。
購入の動機は違えど、両地域での支持は圧倒的である。この2大市場が現在の需要の“ほとんど”を占めていて、わずかな残りに数えられるのが日本を含むアジア、ということになる。ちなみに、新型は欧州では販売されていない。
どうしてこうも違いが出るのか? 日本は、成熟した自動車市場という点では北米と同じだろう。アジア文化圏ということでは中国に通じるものがあるし、そもそもアコードのふるさとじゃないか。もっと人気があってもよさそうなものだが……。
その明確な分析結果はないのだけれど、日本でセダン好きが絶滅してしまったのかといえば、決してそんなことはないようだ。
ポテンシャルはきっとある
「欧州のセダンは、ちゃんと日本でも売れていますからね」。10代目アコードの開発責任者を務める宮原哲也さんも、日本市場は枯れているわけではない、市場としては希望を持てる地域であると考えている。
「日本のユーザーは、商品を見る目が鋭いです。いい意味で“厳しい市場”ともいえますね」
そんな日本市場で扱われるのはハイブリッドモデルの「EX」1種類だけ。うーむ……。それは、正しい判断といえるのか? 市場としての潜在能力があるなら1.5リッターや2リッターのガソリン車も展開してよさそうなものだが。
「私としては、ハイブリッドこそ、日本のユーザーに乗っていただきたいモデルと思っています。これまでわれわれは、単に『環境にやさしい』とか『燃費がいい』などと言うばかりで、ハイブリッドのイメージを正確に伝えてこなかった。ハイブリッドには独自の“走る楽しさ”があるし、新型アコードでは、特にその点を高めることに注力してきました。ガソリン車では味わえないよさがあるんです」
そんなアコードEXは、ドイツ勢とは違った魅力で日本のユーザーを振り向かせることができるだろうか? これはもう、ホンダの自信と期待が結果につながることを祈るしかないのだが。その点、月300台というのは、やっぱり“過小評価”じゃありませんか?
「実は社内では、台数を売ろうという議論はそんなにしていないんです。アコードはホンダにとって大切なブランドですし、世界でこれだけ愛されているクルマが日本で選べないなどという不幸があってはならない。軽が席巻、SUVが台頭という日本市場の中で、アコードはいわば体幹にあたるクルマ。そこであえて、しっかり提案していきたいという気持ちがあります」
数はともかく、期待してくれるユーザーに応えたい。その一心なのだ。
聞けば、新型はユーザーの若返りが著しく、前述の北米では、購入者の年齢は従来の50代から40代中盤へと下がったという。中国でも30台半ば~40代だったものが、30歳を下回るようになってきたそうだ。
海外では、かようにモデルチェンジの効果が表れている新型アコード。日本でも、オールドファンはもちろん、新たなユーザーを振り向かせることができるか、どうか。
(文と編集=関 顕也/写真=webCG)

関 顕也
webCG編集。1973年生まれ。2005年の東京モーターショー開催のときにwebCG編集部入り。車歴は「ホンダ・ビート」「ランチア・デルタHFインテグラーレ」「トライアンフ・ボンネビル」などで、子どもができてからは理想のファミリーカーを求めて迷走中。
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