ニッポンの税負担は本当に重い? 納税の季節に自動車税制の在り方を思う
2020.05.15 デイリーコラム「世界的に見ても税負担が重い」は本当なのか
自動車税の納付書が送られてくる季節。複数台所有(3~4台)を続けております私も、毎年この季節は憂鬱(ゆううつ)です。
しかし、調べてみれば、日本の自動車ユーザーの税負担は、トータルではそれほど重くない。少なくとも欧州よりは軽いのです。なぜなら欧州は付加価値税がおおむね20%で、日本の消費税の2倍。クルマを買う時をはじめとして、あらゆる出費にかかる税率が10%違う。これが積み重なると相当な額になる。
燃料税も日本よりずっと高い。だいたい日本の2倍だ。日本はその分、自動車税や重量税などの「保有しているだけでかかる税金」が高いけど、トータルでは欧州のほうが少し高い、という構図になっております。
日本自動車連盟(JAFのことね)や日本自動車工業会は、日本の自動車保有税が高いことだけを取り上げて、負担軽減運動を続けておりますが、それは商店街を一角だけを望遠レンズで撮影して「三密だ」と言うのにも近く、公正ではないと考えております。日本は高速道路料金が世界一高いので、それも含めると欧州といい勝負でしょうかね。ただし高速道路料金は税金じゃない(消費税分を除く)。
拡大 |
日本の軽自動車とアメリカのピックアップトラック
もちろん、アメリカよりはぜんぜん高いですよ。アメリカは消費税はないし保有税も安いし、有料道路もごく一部しかない。そして燃料税もウルトラ安い! でも、アメリカはあまりにも特殊な国。世界最大の産油国と比較しても意味がありません。
しかもですね、実はアメリカにも州ごとに動産税(自動車税みたいなもの)や小売売上税(州によっては最大で10%)があって、それなりに取られるのですが、私が調べたところ、日本で軽自動車に乗っているのとアメリカでピックアップトラックに乗ってるのでは、税負担がだいたい同じになるのです。軽とアメリカンピックアップを比べんな! と言われりゃそうだけど、国土の広さを考えると、移動の道具としてはそんなに違わないんじゃないか。日本の軽、室内メチャ広いし。
つまり、「日本の自動車ユーザーの税負担は世界一重い」というのは、実は間違った情報だと考えております!
ただ、保有税と走行税のバランスには、問題はあるかもしれない。以前、私は日本も欧州並みに保有税を安くして、その分走行税(=燃料税)を高くすべきだ、そのほうが環境負荷的に正しい! と考えておりました。しかし、近年はそうも言えなくなりました。
拡大 |
減らした分をどこから持ってくるの?
なぜって、このご時世、燃料税を上げられないでしょう。日本では特に軽油の税額が安いんだけど、それを上げたら、今でも悲鳴のトラック業界が大変なことになる。ますますドライバーの賃金にしわ寄せがいって、ドライバー不足に拍車がかかっちゃう!
もうひとつ、燃料税を上げると、方向性としては、地方住民により負担が行くことになる。都市部ではクルマがなくても生活できるし、持ってても毎日乗る人はまれだけど、地方じゃクルマは毎日のゲタだから。
燃料税を上げずに保有税を下げるとしたら、すなわちドライバー優遇になりますね。そりゃドライバーだから自分が払う税金を下げてほしいのは山々だけど、その分どっから取ればいいのか。あるいはどの支出を削るべきか、それを言わないで「下げろ下げろ」は無責任だ。
もしも自分が総理大臣だったら、無責任に「ドライバーの税負担を下げます!」なんて絶対約束できない。なかでも痛税感の高い自動車税は地方税。地方自治体にとっては猛烈に貴重な自主財源だ。それを下げるとなると、いったいどうやってそれを補塡(ほてん)すればいいのか見当もつかない。「金持ちや大企業から取れ!」なんて主張は、あまりにも安易ではないだろうか。
結局解決策がまったく見えないまま、今年も黙々と自動車税を払う私なのでした。
(文=清水草一/編集=堀田剛資)
拡大 |

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
-
日本で売れるクルマはあるのか!? 最新の“アメリカ産ニホンシャ”を清水草一が検証する!NEW 2026.1.19 アメリカからの外圧による制度変更で、北米生産モデルの国内導入を決めたトヨタ。同様に、今後日本での販売が期待できる「海外生産の日本車」には、どんなものがあるだろうか? 清水草一が検証してみた。
-
新生ノートンがいよいよ始動! 名門の復活を担う次世代モーターサイクルの姿に迫る 2026.1.16 英国のモーターサイクル史にあまたの逸話を残してきた名門、ノートンが、いよいよ再始動! その数奇な歴史を振り返るとともに、ミラノで発表された4台の次世代モデルを通して、彼らが思い描く未来像に迫った。
-
市街地でハンズオフ運転が可能な市販車の登場まであと1年 日産の取り組みを再確認する 2026.1.15 日産自動車は2027年に発売する車両に、市街地でハンズフリー走行が行える次世代「ProPILOT(プロパイロット)」を搭載する。その発売まであと1年。革新的な新技術を搭載する市販車の登場は、われわれにどんなメリットをもたらすのか。あらためて考えてみた。
-
30年の取材歴で初めてのケースも 2025年の旧車イベントで出会った激レア車 2026.1.14 基本的に旧車イベントに展示されるのは希少なクルマばかりだが、取材を続けていると時折「これは!」という個体に遭遇する。30年超の取材歴を誇る沼田 亨が、2025年の後半に出会った特別なモデルを紹介する。
-
東京オートサロンでの新しい試み マツダのパーツメーカー見学ツアーに参加して 2026.1.13 マツダが「東京オートサロン2026」でFIJITSUBO、RAYS、Bremboの各ブースをめぐるコラボレーションツアーを開催。カスタムの間口を広める挑戦は、参加者にどう受け止められたのか? カスタムカー/チューニングカーの祭典で見つけた、新しい試みに密着した。
-
NEW
ベントレー・コンチネンタルGTアズール(4WD/8AT)【試乗記】
2026.1.19試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」のなかでも、ウェルビーイングにこだわったという「アズール」に試乗。控えめ(?)な680PSのハイブリッドがかなえる走りは、快適で満ち足りていて、ラグジュアリーカーの本分を感じさせるものだった。 -
NEW
第327回:髪もクルマもナイスファイト!
2026.1.19カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。日産の新型「ルークス」で夜の首都高に出撃した。しっかりしたシャシーとターボエンジンのパワフルな走りに感心していると、前方にスーパーカーの姿を発見。今夜の獲物は「フェラーリ・ローマ」だ! -
NEW
日本で売れるクルマはあるのか!? 最新の“アメリカ産ニホンシャ”を清水草一が検証する!
2026.1.19デイリーコラムアメリカからの外圧による制度変更で、北米生産モデルの国内導入を決めたトヨタ。同様に、今後日本での販売が期待できる「海外生産の日本車」には、どんなものがあるだろうか? 清水草一が検証してみた。 -
フェラーリ12チリンドリ(後編)
2026.1.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「フェラーリ12チリンドリ」に試乗。前編では伝家の宝刀であるV12エンジンを絶賛した山野。後編ではコンビを組むシャシーの印象を余すところなく聞いてみた。 -
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】
2026.1.17試乗記BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。 -
新生ノートンがいよいよ始動! 名門の復活を担う次世代モーターサイクルの姿に迫る
2026.1.16デイリーコラム英国のモーターサイクル史にあまたの逸話を残してきた名門、ノートンが、いよいよ再始動! その数奇な歴史を振り返るとともに、ミラノで発表された4台の次世代モデルを通して、彼らが思い描く未来像に迫った。



