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気づけばもうすぐ10周年! 「レクサスCT200h」長寿の秘密に迫る

2020.09.07 デイリーコラム 佐野 弘宗

再度のテコ入れにビックリ

この2020年8月21日に「レクサスCT200h」に実施された改良に、一部から驚きの声があがった。いや、その改良内容は先進安全装備のアップデートと新しい車体塗色の追加という小規模だが真っ当なもので、驚くにはあたらない。

ただ、CTは2011年1月の国内発売からすでに9年8カ月が経過している。一台のクルマが比較的長くつくられるようになった昨今でも、かなりの長寿というほかない。また、CTの国内販売は「UX」発売後に明確に下降した。たとえば、日本国内における昨2019年のCTの販売台数は2300台強。UXや「NX」、「ES」が1万台超、「RX」も9000台以上を売り上げたことを考えると、エントリーモデルとしては物足りない数字といわざるをえない。というわけで、そろそろCTの生産終了も近い……と考えていた人が「まだ改良を入れるのか!?」という意味で驚いたのだ。

もっとも、一部でCTの生産終了が近いと思われていた理由は、モデルライフの長さだけではない。2018年11月にコンパクトクロスオーバーSUVのUXが発売されたとき、「これが事実上のCTの後継機種ではないか」と報じたメディアが少なくなかったからだ。

実際、UXはクロスオーバーSUVにもかかわらず“ハッチバックそのままの走行性能”を標榜して、全高も日本の立駐対応の1.54mに抑制されており、機能的にはCTのかわりになりえる存在だ。それに、UX発売当時、レクサス関係者はそれはCTの後継車ではないとしつつも、その時点ですでに8年目となっていたCTの去就についての展望も明かさず、「当面は生産を続ける」と語るだけだった。しかも、レクサスの最大市場であるアメリカ合衆国では、2017年をもってCTの販売を終了していた。こうした状況証拠も“UX=CT後継”説の後押しをしたのだった。

レクサスのプレミアムコンパクトハッチバック「CT200h」。同ブランドのエントリーモデルとして発売されてから、9年と8カ月が経過した。写真は2020年8月に仕様変更された現行モデル。現在の価格帯は386万9000円~488万1000円となっている。
レクサスのプレミアムコンパクトハッチバック「CT200h」。同ブランドのエントリーモデルとして発売されてから、9年と8カ月が経過した。写真は2020年8月に仕様変更された現行モデル。現在の価格帯は386万9000円~488万1000円となっている。拡大
「CT200h」が発売されたのは2011年1月12日。ハイブリッド専用車という点でも特徴的だった同モデルが世界初公開されたのは2010年3月のジュネーブモーターショーで、そこからはすでに10年が経過したことになる。ちなみに、同じショーに出展された「レクサスLFA」「ホンダCR-Z」「マツダ・プレマシー」はとっくに“過去のクルマ”になってしまった。
「CT200h」が発売されたのは2011年1月12日。ハイブリッド専用車という点でも特徴的だった同モデルが世界初公開されたのは2010年3月のジュネーブモーターショーで、そこからはすでに10年が経過したことになる。ちなみに、同じショーに出展された「レクサスLFA」「ホンダCR-Z」「マツダ・プレマシー」はとっくに“過去のクルマ”になってしまった。拡大
2011年1月に行われた国内発表会に登場したのは、女優の杏さん(写真)。当時レクサスのブランドアンバサダーだった知花くららさんと森 理世さんも登壇し、ステージに華を添えた。
2011年1月に行われた国内発表会に登場したのは、女優の杏さん(写真)。当時レクサスのブランドアンバサダーだった知花くららさんと森 理世さんも登壇し、ステージに華を添えた。拡大
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続けるからにはわけがある

ただ、私のいくばくかの取材経験を踏まえていうと、こういう場合に可能性は大きく2つある。ひとつはもちろん「将来の商品計画は最高レベルの企業秘密なので、かん口令が敷かれている」というものだが、もうひとつ「本当になにも決まっていない」という可能性も、みなさんが想像するよりずっと高かったりする。

トヨタはその圧倒的な企業力から、やることなすこと「壮大なシナリオに基づいて動かされている」と、陰謀論的にかんぐられがちだが、それはさすがに過大評価というものだ(笑)。豊田章男社長がいかに優秀でも、巨大企業が手がける事業のすべてを子細に把握して、本人が直接決定を下すのは不可能だ。それに、そのように限定された視野や事前のシナリオに縛られすぎては、逆に緊急時には臨機応変に立ち回れないことも多かろう。

現在の自動車はフレキシブル生産であり、ひとつのラインで多種多様な商品を、かなり自由な比率でつくれるようになっている。よって、すでにある商品をそのままつくり続けるだけなら、少量生産でも、メーカーにとって大きな負担にはならないことも多い。実際、フェードアウト予定の商品でも、最終的に生産終了になるのは安全や環境などの法規対応で設計変更が必要になっ(て、それがコストに見合わないと判断され)たタイミングが大半だ。それまでは、ある程度の需要のあるかぎり、つくり続けられるのが普通である。

そもそも、海外を含めれば、CTの需要はわれわれ日本人が想像するより多い。レクサスにとってはアメリカに次ぐ市場規模となった中国でもCTは販売されているが、CTの存在がとくに重要なのは、その中国に次ぐ欧州市場である。欧州全体を合わせると、すでに日本より多くのレクサスが売れている。

デビューから1年半後の2012年8月には初の仕様変更。サスペンション変更により、一段としなやかな乗り味が追求されたほか、装備の充実が図られた。
デビューから1年半後の2012年8月には初の仕様変更。サスペンション変更により、一段としなやかな乗り味が追求されたほか、装備の充実が図られた。拡大
デビューからちょうど3年後の仕様変更(2014年1月)では、レクサスのデザインアイコンとなった“スピンドルグリル”が採用され、顔つきが大きく変わった。ボディー剛性を強化するとともに、吸音材/遮音材の改良などにより静粛性も向上。インテリアのカラーパターンは80通りにまで拡大された。なお、この新しい顔のCTは、重要な市場である中国(広州ショー)において2013年11月に先行公開されている。
デビューからちょうど3年後の仕様変更(2014年1月)では、レクサスのデザインアイコンとなった“スピンドルグリル”が採用され、顔つきが大きく変わった。ボディー剛性を強化するとともに、吸音材/遮音材の改良などにより静粛性も向上。インテリアのカラーパターンは80通りにまで拡大された。なお、この新しい顔のCTは、重要な市場である中国(広州ショー)において2013年11月に先行公開されている。拡大
2017年秋のマイナーチェンジでは、グリルやランプをさらに化粧直し。センターモニターを10.3インチへと大型化し、予防安全パッケージ「Lexus Safety System +」を採用するなど、時代に合ったリファインが施された。
2017年秋のマイナーチェンジでは、グリルやランプをさらに化粧直し。センターモニターを10.3インチへと大型化し、予防安全パッケージ「Lexus Safety System +」を採用するなど、時代に合ったリファインが施された。拡大

2021年はいよいよ!?

「メルセデス・ベンツAクラス」や「アウディA3」「BMW 1シリーズ」といった例を出すまでもなく、高級Cセグメントハッチバックが市場にしっかりと根づいている欧州では、昨年(2019年)も5300台前後のCTが売れた。欧州におけるCTの年間販売台数は全盛期でも1万台前後だったそうだし、発売直後のUXが欧州で売れた台数が1年間で2万台強である。そう考えれば、10年選手の古参モデルであるCTの販売は今も大健闘中といっていい。それに欧州では企業別平均CO2排出基準がどんどん厳しくなっているから、CTのようなコンパクトな低燃費モデルの重要性はさらに高まってすらいる。

これらの状況を総合すれば、UXうんぬんは関係なく、CTの生産を続けるメリットは十分にあるといえるだろう。そして、UX発売当時は本当に「CTの将来については様子見中」だったとしても不思議はない。

そうこうしているうち、UXではない本来のCT後継レクサスの情報が、欧州メディアを中心にささやかれるようになった。現在流れている関連情報を総合すると、現行CTのハードウェアはこのままあと1年ほど販売が続けられて、来る2021年中に、次期CTにあたる新しいコンパクトレクサスがデビューする予定らしい。

その骨格設計は「GA-C」プラットフォームが有力。現行CTはいわば3代目「プリウス」のレクサス版だから、現行プリウスと同じGA-Cプラットフォームを使うという点では、次期型のポジショニングも現行型を踏襲することになる。ただ、パッケージングやパワートレインについてはいまだに諸説ある。エクステリアはUXよりさらに小さいクロスオーバースタイルになるとの予測もあるし、ハイブリッドだけでなく、純電気自動車版も用意されるという説もある。

いずれにしても、CTは10年以上という長寿をまっとうして、きちんと次期型にバトンタッチすることになるようだ。考えてみれば先代「LS」は大幅改良をはさみつつ最終的に11年間つくられたし、今の「IS」もデビュー7年で同じく大規模改良を受けて、今秋に再出発予定だから、最終的には10年前後はつくられるだろう。考えてみれば、CTにかぎらず、レクサスには意外に長寿モデルが多いのだ。

(文=佐野弘宗/写真=トヨタ自動車、webCG/編集=関 顕也)

2018年11月に発売された、レクサス初のコンパクトクロスオーバー「UX」。これが事実上の「CT」後継モデルという予想もあったが、その見方に反してCTの販売は継続された。
2018年11月に発売された、レクサス初のコンパクトクロスオーバー「UX」。これが事実上の「CT」後継モデルという予想もあったが、その見方に反してCTの販売は継続された。拡大
次期「CT200h」に使われるとうわさされるプラットフォームは、現行型「プリウス」と同じ「GA-C」。同プラットフォーム採用のハッチバック車としては「カローラ スポーツ(写真の北米仕様車の名はカローラ ハッチバック)」が挙げられる。
次期「CT200h」に使われるとうわさされるプラットフォームは、現行型「プリウス」と同じ「GA-C」。同プラットフォーム採用のハッチバック車としては「カローラ スポーツ(写真の北米仕様車の名はカローラ ハッチバック)」が挙げられる。拡大
「CT200h」はいよいよフルモデルチェンジを迎え2代目へと移行するのか、それとも……。写真は、「レクサス車の国内累計販売台数50万台達成」を記念して2018年8月に発売された特別仕様車「CT200h“Black Sequence”」。
「CT200h」はいよいよフルモデルチェンジを迎え2代目へと移行するのか、それとも……。写真は、「レクサス車の国内累計販売台数50万台達成」を記念して2018年8月に発売された特別仕様車「CT200h“Black Sequence”」。拡大
佐野 弘宗

佐野 弘宗

自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。

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