レクサスCT200h“Fスポーツ”(FF/CVT)
充実のマイナーチェンジ 2014.04.16 試乗記 「LS」「HS」と、マイナーチェンジで劇的なまでにクルマを進化させてきたレクサス。プレミアムコンパクト「CT」はどこまでの変貌を遂げたのか。その実力をチェックした。これぞ本物のスピンドルグリル
2011年1月12日にレクサス初、もちろんプレミアムコンパクトクラス初となるハイブリッド専用モデルとして登場した「CT200h」。当時の「IS」や「GS」など、正直お値段が高め(ブランド戦略もあるのでこの部分はしょうがないのだが)のラインナップにおいて、300万円台中盤から購入できる点、ハイブリッドによる低燃費、さらにレクサスならではの上質感などもあって、同ブランドの最量販モデルになったことはご存じのことだろう。
レクサスブランドが立ち上がった時、将来のマイナーチェンジについて聞いてみたところ、とある車種の担当者から「レクサスにはマイナーチェンジなどといった、既存の国産車にある概念はありません。その時々に合わせて適正な改良を行っていくだけです」と軽くたしなめられた記憶がある。確かに旧型ISは毎年(年次)改良を行っており、細かい部分で確実に商品力を向上させていった点に感心させられた。もちろんこのCTにしても、2012年8月にはサスペンションのセッティングを変更(改良前は足を固めすぎの感があった)する小変更がなされている。
……と言いつつ、とあるタイミングから私が使ってたしなめられた(恨んでいるわけではありませんので)「マイナーチェンジ」という言葉を使うようになったレクサス。CTもデビューから丸3年のタイミングで大幅変更を行うことになった。すでに2013年の東京モーターショーなどでその姿はお披露目されており、いろいろな印象を持たれた方がいるだろう。
今日のレクサス車に共通の「スピンドルグリル」はGSから採用されているが、それに近いデザイン自体は、すでにデビュー時のCTから使われていた。「どう見ても、これもスピンドルグリルだろ!」と騒いでいた同業者がいたが、マイナーチェンジ後のフロントマスクを見ると「あれはやっぱりスピンドルグリルではなかったのね」ということがわかる。自戒もこめて「思い込みは危険」ということで反省しましょう。
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どっしりとした落ち着きをプラス
内外装の改良に関しては定石通りというか、前述したスピンドルグリルの採用と同時にフロント&リアバンパーの意匠変更、アルミホイールもデザインを変えることで、見た目の印象はかなり変わっている。マイナーチェンジ前はどちらかといえば品のある中にも軽快さが感じられるものだったが、変更後は「しっかり地に足のついた」感じ。もともと全高が高いクルマではないうえに、より低重心感が強調されたと言っていいだろう。
エクステリアとインテリアのカラーコーディネートに関してはもはやセンスの問題なので、センスのない筆者がとやかく言う話ではないが、欧州車を中心に最近では日本の軽自動車でも人気のツートンカラー(ブラックルーフ)を“Fスポーツ”に設定するなど、トレンド(もはや死語か)をしっかり押さえている。またインテリアは内装色やシートマテリアルなどの選択幅を拡大。約80通りの組み合わせのなかから選べるようになっており、LSから導入された「L-Select」のようなオートクチュール感覚が味わえる。「自分だけの一台」を作り上げることができる点も、レクサスのクルマを購入しようと考えている人にとっては大きなセリングポイントとなる。
革の使い方は欧州車に軍配?
着座した際のポジションは、基本、マイナーチェンジ前と同じ。わざわざ“基本”と書いたのは、シート表皮の違いで座り心地は微妙に異なるからだ。もともと“Fスポーツ”には専用の本革シートがオプション設定されているが、後日販売店で見た“バージョンC”用の新素材「L tex」の肌触りもなかなか捨てがたい。こうしたグレードごとの差別化はウエルカムで、むしろこれらがオプション扱いというのが、後述するレクサスの泣き所なのだ。ただ、この“Fスポーツ”専用本革シート、特に横方向の張り具合が強すぎる。もちろんレクサスの厳しい基準に異を唱えているわけではないし、体のホールド感も良好だ。しかし、シート表皮は長期にわたって所有されるクルマにおいて乗員に最も多く触れられる部分。初期のこの張り具合がそのまま維持できるとは思えない。これはマイナーチェンジ前から感じていたことで、すでに所有しているユーザーからも「ヘタリが早くないか」という声が聞かれるほどだ。見た目に「ピンピン」に張って高級感を演出するのも大事だが、使い込むうちに風合いが出てくるのも革独自の特性のはず。こういったところは、まだまだ欧州車には届いていないのでは? と感じさせる。
ステアリングに関しては、直径370mmのISと同タイプのものに変更。握り心地もまずまず良好だし、ステアリングスイッチの操作性も向上している。またメーター内に搭載されるMID(マルチインフォメーションディスプレイ)は4.2インチとスマホ並みの大きさ(少なくとも「iPhone 5S」よりはデカイ)。そこから得られる情報はドライブには有益なはずだ。と言いつつ、この便利な装備が“Fスポーツ”と“バージョンL”にしか設定されないのがこれまた惜しい! 何もこんな所でグレードの差別化をしなくてもいいのに……と思うのは筆者だけだろうか。
顕著なNV性能の向上っぷり
パワーユニットは1.8リッター直4とハイブリッドシステム「THS II」の組み合わせを継続採用。例によって「プリウスと同じ」と書くと、CTユーザーからお叱(しか)りを受けること間違いなしだが、駆動電圧を500Vから650Vに昇圧させることでよりパワフルな走りが楽しめる「SPORTモード」は、構造は同じでもプリウスの「パワーモード」よりメリハリが利いている。まあその分、VSCなどの制御の度合いやタイヤサイズの違い等々もあって、カタログ燃費はプリウスから大きく下がるわけだが、このクルマを選ぶ人はそこにはあまりこだわらないだろう。
今回の改良のキモは走行フィールの大幅な向上にある。正直に言わせてもらえば、これは誰が乗ってもわかるくらいに進化している。ボディーに関してはスポット溶接の増し打ちや構造用接着剤技術の採用(これが個人的にはかなり利いていると思う)などにより剛性がアップ。剛性が上がればサスペンションのチューニングにも幅が生まれるわけで、新型ショックアブソーバーの採用やリアスタビライザーの径の見直しといったパーツ自体の変更に加え、やはり“料理人の味付け”も確実に変わっている。
同時に変更を受けている電動パワーステアリングも、中立時のクニャクニャした感じが減り、切りはじめ、もっと言えば戻した際の手応えなどは、電動系のそれとしてはかなり煮詰められていると感じた。
要するに、運転していて背中に一本芯が入ったような正確なトレース性が感じられる。ステアリングを切り込んだ際に、リアサスペンションがクルマの旋回する動きをうまくサポートしているのが分かるのだ。
従来モデルからの買い替えもアリ
そして何よりも評価したいのが静粛性の向上だろう。ただ静かになっただけではない。プリウスでも「カムリ」でも、THS IIを積むクルマにどうしても付きまとうあのキュイーンという独特の音、これをかなり遮断した点が見事なのである。確かに前述したSPORTモードでは“電気ターボ”の利きとともにノイズも増えるのだが、不快さを感じる周波数の音をカットすることで印象がかなりよくなっている。
2012年のLSにせよ、最近ではエクステリアの意匠を大胆に変更したHSにせよ、レクサスのマイナーチェンジは期待以上の結果を残してくれている。HSと比べるとエクステリアの変更度が少ないCTだが、中身が大きく進化している点は高く評価したい。この原稿を書く前に知人のCT、それも“Fスポーツ”に好意で乗らせてもらったのだが、正直その差は顕著だった。今ならまだ下取りも期待できるはずで、要は「従来型のユーザーが買い替えてもOK!」というくらいの内容に仕上がっている。
CTには「BMW 1シリーズ」や「メルセデス・ベンツAクラス」など、輸入ブランドのライバルが結構多い。しかし、やはりレクサスはレクサス。ましてやハイブリッド王国のクルマなわけで、そもそも競合させることはあまり意味を持たない。品質、環境性能、そしてもはや死語(?)になりつつある「おもてなし」の心を販売店で満喫できるのがレスサスの強みのはずだ。あのホスピタリティーを一度でも味わうと、そこから抜け出すのはなかなか難しい。それゆえに私は輸入ブランドとの比較より、マイチェン前のCTユーザー、または「クラウン」など高級セダンからのダウンサイザーなどにオススメしたいのである。
装備面に改善の余地あり
カーAV系の装備についても、ナビの記憶媒体をHDDからSDに変更するなど、IS同様にメディアの低価格化、動作スピードの高速化、コストの改善といった、時代に合わせた進化が見られる。ただ、トヨタは最近ビッグデータの活用を積極的に推し進めている。ユーザーにも、よりそれが見えるような仕掛け、細かく言えば「G-Link」ならではの新しいサービスが欲しいところである。
またオーディオでは、いつもであればオプションの「マークレビンソン」を手放しでオススメするのだが、今回は標準装着の10スピーカーにも注目してほしい。パナソニックが開発した「竹ブランドオパール樹脂振動板」を使ったシステム、これがかなり音の抜けがよく、聴いていて非常にスッキリとした“いい気分”になれるのだ。標準装備でこれだけ音の味付けが明快とは、初代ISでパイオニアと共同開発したDSP搭載オーディオ以来のインパクトがある。
音に厚みがあり、音像定位もしっかりとしたマークレビンソンは確かに捨てがたいのだが、価格は22万1400円高。ましてや“Fスポーツ”の場合は前述した本革シートとセットでなければ選ぶことができない。この領域は感性が大きく作用する、要は好みの問題だが、販売店に行くときにはCDでもiPhoneでもお気に入りの楽曲を持って行って、実際に視聴してみることをオススメする。
あと最後にこれだけは言っておきたい、というかお願いしたい。これだけ中身を煮詰めてレベルアップしたCTだが、あいかわらずの先進安全装備類はメーカーオプションのまま。「プリクラッシュセーフティーシステム&レーダークルーズコントロール」が15万1200円高(“Fスポーツ”の場合)って、もはや先進安全装備は標準で付いているからこそ商売にもなることは他社が証明済みだ。「安全技術もレクサスの商品のうちなのです」と胸を張って言うためには、標準装備化はマストのはず。このクルマを買う人はこの程度の価格アップ分は気にしませんから。その分、マイカーのブランド価値が上がると思えば安いもんです。ハイ。
(文=高山正寛/写真=荒川正幸)
テスト車のデータ
レクサスCT200h“Fスポーツ”
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4350×1765×1460mm
ホイールベース:2600mm
車重:1440kg
駆動方式:FF
エンジン:1.8リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:99ps(73kW)/5200rpm
エンジン最大トルク:14.5kgm(142Nm)/4000rpm
モーター最高出力:82ps(60kW)
モーター最大トルク:21.1kgm(207Nm)
タイヤ:(前)215/45R17 87W/(後)215/45R17 87W(ヨコハマdB E70)
燃費:26.6km/リッター(JC08モード)
価格:433万286円/テスト車=516万2966円
オプション装備:“Fスポーツ”専用ブラックルーフ(7万5600円)/プリクラッシュセーフティーシステム+レーダークルーズコントロール(15万1200円)/クリアランスソナー&バックソナー(4万3200円)/“Fスポーツ”本革シート+雨滴感応式間欠フロントワイパー+オート電動格納式ドアミラー(26万5680円)/ステアリングヒーター(1万800円)/アクセサリーコンセント(6万4800円)/“マークレビンソン"プレミアムサラウンドサウンドシステム(22万1400円)
※価格はいずれも8%の消費税を含む。
テスト車の年式:2014年型
テスト車の走行距離:2775km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(6)/高速道路(4)/山岳路(0)
テスト距離:269.7km
使用燃料:16.9リッター
参考燃費:16.0km/リッター(満タン法)/16.1km/リッター(車載燃費計計測値)
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高山 正寛
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