No Garage, No Life! | クルマ好きの夢がカタチになった ギャラリーのようなガレージ
雰囲気はまるでギャラリー クルマも人もうれしいぜいたく空間
2020.12.07
Gear Up! 2021 Winter
阪 和明
できるかぎりお気に入りのクルマと一緒に過ごしたい。カッコいいガレージでクルマをずーっと眺めていたい。そんなクルマ好きの夢がカタチになった!
ガレージは住宅地の中にあった。袋小路にある横長の大きなアルミ製の扉が開くと、広大ではないが十分な面積の敷地に鉄筋コンクリート造りの建物が目に飛び込んできた。1階がガレージ、2階が居住スペースとなるメゾネット式の2階建て。最近話題のいわゆるガレージハウスだ。この建物には4つのガレージがあり、うち3つは賃貸用で、一番奥がこの建物のオーナー専用となる。
オーナーの名は菅佐原朝幸さん。超が付くほどのクルマ好きだ。ガレージの随所に菅佐原さんのこだわりが見て取れる。クルマ好きにとって、ある意味、理想に近いガレージであり、絵に描いたようなクルマ好きのための空間であり、趣味人の居場所であり、貴重な隠れ家なのだ。誰もが子供の頃、オモチャをはじめ自分の大好きなモノとなるべく一緒にいたいと思ったように、菅佐原さんはお気に入りのクルマと時間を共用するためのすてきなガレージを作り上げた。夢を夢で終わらせることなく、夢をカタチにしたのである。
ガレージには2台分のスペースがあり、取材当日は奥にジャガーMk.II、手前にはトライアンフ・イタリア2000がたたずみ、敷地内にはMG Aの姿もあった。この3台以外にも比較的新しいアストンマーティン・ヴァンキッシュを所有していて、菅佐原さんがイギリス車好みであることがわかる。とはいえ、イギリス車ばかりでなくドイツ生まれのスポーツカーなどにも食指を動かした経験もあり、あれこれとさまざまなクルマに心引かれてしまうのは、多くのクルマ好きとまったく同様だ。
ガレージでひときわ異彩を放っていたトライアンフ・イタリアは極めて珍しい存在である。トライアンフTR3のフレーム&シャシーにミケロッティがデザインしヴィニャーレが仕立てたエレガントなボディーをまとうクルマだ。ジャガーMk.IIもそうだが、トライアンフ・イタリアのような美しいスタイリングのクルマがこのガレージにとても似合う。いや、美しいクルマにふさわしいガレージというべきだろうか。
ご承知のとおり、ガレージにはいろいろなタイプがある。家屋にビルトインされているかどうかは別として、大ざっぱに区分するなら3種類程度になるだろうか。貴重なクルマを雨風・埃(ほこり)から守ってくれる、保管を第一に考えた単なる“箱”、クルマのメンテナンスや修理を楽しむための整備工場のような空間、そして、クルマを眺めて愛(め)でるために作られた場所である。この3番目の類いのガレージこそ菅佐原さんの狙ったものだ。目指したのはギャラリーのようなガレージ。壁に掛けられた額装のポスターやイラストと珠玉のヒストリックカーが醸し出す雰囲気はまさにギャラリーである。
ガレージの奥、吹き抜けとなるところに設置された階段で2階に上がると、ソファと簡易ベッドの置かれたリビングルーム、壁には大型の液晶モニターがある。モニターでビデオを見るもよし、テレビを見るもよし。くつろぎながら仲間とヒストリックカー談義に花を咲かせるのもアリだ。キッチンと食器棚、バスルームも備わるので宿泊も可能である。別荘として、あるいは隠れ家として使える面白さがある。
もちろん隠れ家ではなくても、菅佐原さんが実践しているように、パートナーや家族と一緒に週末をゆっくり過ごすにも最適だ。これぞガレージハウスならではの使い方である。2階片隅には氏の趣味のひとつであるミニチュアカーを愛(め)でるためのスペースがあり、時間がたつのも忘れそうだ。さらに驚かされたのがロフトも作られていること。部屋の三方がガラス張りで、ロールスクリーンを巻き上げれば、家々の屋根どころか遠く富士山も望める。北欧のまきストーブ、オーディオもあり、2階とはまた違ったくつろぎ方ができる。
このガレージハウスは菅佐原さんの実家のあった土地の有効利用と自身の趣味を両立させる企画として生まれた。ガレージハウスを実現させるまでの過程はおそらく楽しい時間の連続だったことは想像に難くないが、氏の夢がすんなりカタチになったのは、不動産・建築の企画販売などを手がける自動車趣味人の存在が大きかったようだ。着工から完成まで約1年半しか要さなかったことも、作業がスムーズかつ効率的に進んだからに違いない。同じ趣味を持ち、建築の知識と経験のある人が身近にいることのメリットを生かせた結果である。同好の士の絆は強いものだが、ガレージ作りという究極の自動車趣味においてもまた、人と人とのつながりがいかに大切なのかを教えてくれる。
(文=阪 和明/写真=加藤純也/取材協力=日本ビルディング経営企画)
住宅地の中のガレージハウス。扉が開かなければ、その存在に気づくことはないだろう。
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クルマ2台が楽に収まるスペースのあるガレージの内部は、ギャラリーのような雰囲気が漂う。敷地内にターンテーブルまで備わるのも、クルマ好きオーナーならではのこだわりのひとつ。面積は1階と2階を合わせて約71平方メートル。
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ガレージハウスのオーナー、菅佐原朝幸(すがさわら・ともゆき)さん。傍らのジャガーMk.II 3.8は新車とみまがうばかりのミント・コンディション。
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2階のリビングスペースにはソファ、テーブルはもちろん、大型の液晶モニター、簡易ベッドなど、数日過ごすには十分なだけの設備がそろう。
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キッチン、食器棚、バスルーム、トイレも完備。フローリングに設けられた、階下の愛車を眺められる2カ所のガラスの窓は、クルマ好きにはたまらない“仕掛け”。壁にはお父さまが趣味で描かれた絵画が飾られている。
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ロフトが作られているのもぜいたくさを倍加させている。
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ガラス張りの明るい部屋でクルマ談義に花が咲くこと間違いなし。気候がよければ外(屋上)に出ても楽しめそう。
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オーナーの趣味のひとつがミニカーの製作とコレクション。キットを組み上げて仕上げるのが楽しみだとか。金属フレームテーブルのガラス製天板には、趣味人にふさわしいこだわりの逸品が並ぶ。ロフトへ続く階段とガラス製の床との間にミニカーを愛でるスペースがある。
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モダンなガレージハウスの外観。1階がタイル仕上げ、2階部分はコンクリートの打ちっぱなし。シャッターは電動式だ。
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