第638回:京都で最新EV「ポルシェ・タイカン」と歴代クラシックポルシェに触れる

2021.01.16 エディターから一言
京都にある世界遺産の仁和寺に並べられたポルシェミュージアム所蔵のクラシックモデルと、最新のEV「タイカン」。車両は左から1956年の「356A 1600クーペ」と1967年の「911」、そして「タイカン ターボS」と「タイカン4S」。
京都にある世界遺産の仁和寺に並べられたポルシェミュージアム所蔵のクラシックモデルと、最新のEV「タイカン」。車両は左から1956年の「356A 1600クーペ」と1967年の「911」、そして「タイカン ターボS」と「タイカン4S」。拡大

最新のフルEV「ポルシェ・タイカン」の登場に合わせ、ドイツ・シュトゥットガルトのポルシェミュージアムから貴重な3台のクラシックモデルが日本上陸。幸運にもタイカンとともに、冬の京都を舞台に試乗するチャンスに恵まれた。

1956年の「356A 1600クーペ」(左)とピュアEV「タイカン ターボS」(右)。
1956年の「356A 1600クーペ」(左)とピュアEV「タイカン ターボS」(右)。拡大
1948年7月4日に発表された、ポルシェの名を初めて冠した記念すべきモデルが「356-001」。残念ながら、今回日本に上陸したミュージアムカーの中には含まれていない。
1948年7月4日に発表された、ポルシェの名を初めて冠した記念すべきモデルが「356-001」。残念ながら、今回日本に上陸したミュージアムカーの中には含まれていない。拡大
「356A 1600クーペ」は、通称“プリA”と呼ばれる初代「356」の後継モデルとして1955年に登場。1959年まで生産された。今回試乗できたのは、ポルシェミュージアムが所蔵する外装色「ラーゴグリーン」の1956年モデル。
「356A 1600クーペ」は、通称“プリA”と呼ばれる初代「356」の後継モデルとして1955年に登場。1959年まで生産された。今回試乗できたのは、ポルシェミュージアムが所蔵する外装色「ラーゴグリーン」の1956年モデル。拡大
外装色に合わせたグリーンのインストゥルメントパネルにブラウンのシートやドアパネルが組み合わされた「356A 1600クーペ」のインテリア。ステアリングホイールやスイッチ類、シフトレバーはアイボリー色でコーディネートされている。
外装色に合わせたグリーンのインストゥルメントパネルにブラウンのシートやドアパネルが組み合わされた「356A 1600クーペ」のインテリア。ステアリングホイールやスイッチ類、シフトレバーはアイボリー色でコーディネートされている。拡大

ポルシェの源流

一見、最新のフルEVとクラシックモデルの間にはなんの脈絡もないと感じられるかもしれない。確かに「ラーゴグリーン」に塗られた1956年の「ポルシェ356A 1600クーペ」とタイカンに共通する点は、ノーズのエンブレムと丸みを帯びたルーフラインくらいしかない。

1948年、戦火を逃れてオーストリアのグミュントに疎開していたフェリー・ポルシェらポルシェ設計事務所の面々は、「フォルクスワーゲン・ビートル」の空冷フラット4エンジンを使ったスポーツカーの製作を企画する。

こうして生まれたのが、コンパクトなフラット4を生かした鋼管スペースフレームシャシーのミドシップ2シーターオープンスポーツ「356-001」だ。

かつて2018年に356-001をドライブさせてもらったことがあるのだが、そこで1つ重要な欠点があるのに気がついた。コンパクトにまとめられた素性のいいミドシップスポーツではあるものの、フロントの燃料タンクと2人が十分に乗れるコックピット、そしてスペアタイヤも収納するリアのラゲッジスペースを確保するために車体中央の隔壁の間に押し込まれたフラット4は、涼しいヨーロッパの夏でも簡単にオーバーヒートを起こしてしまうのだ。

そこで彼らは実用的な2+2の室内とフロントのラゲッジスペース、そして生産性を考慮して、ビートルのような強固なフロアパンシャシーのリアオーバーハングにフラット4ユニットを搭載したパッケージングを採用するのである。

剛性の高いコンパクトな車体に最高出力60PSの1.6リッター空冷フラット4を積む356は、今でも十分に実用に耐えうるスポーツカーだ。ノンサーボの4輪ドラムブレーキこそ踏力を必要とし、慣れるまで心もとないかもしれないが、バランスがよくハンドリングも良好でRRゆえの気難しさもまったくない。

戦後からわずか3年余りでこの“解答”を導き出したポルシェの技術力には、あらためて驚きを感じずにはいられなかった。

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