第427回:日本の危機感さらにアップ!? 衝撃のソウル・モーターショー2011
2011.04.18 小沢コージの勢いまかせ!第427回:日本の危機感さらにアップ!?衝撃のソウル・モーターショー2011
一体なにが凄いのか? 韓国!
いやはや自分の勉強不足を痛感しましたわ。そ、先日4月頭に初めて行った我が隣国、韓国のソウル・モーターショー!
他にもアジア取材の予定は目白押しで……なぜって、震災の余波で、いまだにヒマなんですね。試乗会は打診はあるけど、まだ行われてないし、精神的にもこの騒ぎの影響は大きい。前回も書いたが日本の自動車産業がしばらくスロー化するのは必至で、トヨタもホンダも日産も工場が再開したとはいえ、稼働はピークの約5割だというし、パーツメーカーの完全復旧にはもうちょい時間がかかる。そんな中、いま急速に伸びてる韓国のチェックは急務なわけです。
実際、現地では予想外に日本語が飛び交ってて、聞けば「今回の訪問が初めて」という人がほとんど。ある意味、韓国をナメてたんですわ。まだまだ日本の自動車には追いつけないと。ところが今回の地震の影響もあり、結構ヤバイのでは? と。やはり人を動かすのはプレッシャーであり、恐怖なんですな。それと、メーカー関係者は前々からソウルに行ってて、エンジニアレベルでは既に日本から韓国に人や技術が流出してます。
しかし、韓国は勢いありますよ。今回行ったのはソウルから電鉄3号線で1時間ぐらいのところにあるコンベンションセンター「KINTEX」。総面積は6万平方メートル弱で幕張メッセのメイン会場とほぼ同じかデカいくらいだけど、今年9月に完成予定の「第2KINTEX」が誕生すると総面積10万平方メートル以上。広州、バンコク、再び中国の青島に続き、世界4番目の大きさとなる。これだけでも韓国の驚異が感じられてくるでしょ?
数字が語る事実
ソウルショーは中国の上海&北京ショーと同様に、釜山と1年ごとの交互開催で、今回で8回目だからざっと今から15年前の95年に1回目が行われたことになる。比べると、上海は1980年代に自動車ショーが始まってるから、実はその歴史は中国より短いわけだ。
そして現在の韓国自動車市場はざっと年間200万台弱。落ちたとはいえ日本が500万台だから3分の1程度。一時、日本のレクサスも売れてたとはいっても年間1000台レベルだし、韓国はマーケットという意味ではまだまだ。しかも2009年にはヒュンダイの乗用車部門が日本市場からは撤退してったこともあり、ついつい我々も必要以上に油断しちゃったんですな。
とはいえ、知ってる人は知ってるが、韓国の海外攻勢は凄くて、特にナンバーワンメーカーの現代・起亜グループは韓国市場の8割を占めるだけでなく、2010年にはグローバルで574万台を売り、ついに日産どころかフォードを抜いて世界4位のメーカーに成長した。
855万台のトップ、トヨタに比べるとまだ開きはあるけど、2009年に比べると2割以上の成長率。恐ろしいスピードなわけですよ。実際、既にヨーロッパ市場においては、現代・起亜グループはトヨタ(含レクサス)を台数で抜いてるしね。北米市場ではまだまだとはいえ……。
エコカー技術もハイレベル
だから今回は行ったかいありましたわ。勢いを肌で感じることができましたよ。
まずそれは一連のコンセプトカー群で、今回のソウルショーにおけるワールドプレミアは5台。市場規模は小さいんでこれが多いか少ないかは議論が分かれるところだけど、内容的には時流を行ってて、まず最大メーカー現代自動車は燃料電池コンセプトの「HND-6」を、傘下の起亜自動車はEVコンセプトの「Naimo KND-6」を発表。
中国同様、韓国はEVにも力を入れてて、ルノーサムスンは「SM3 Z.E.」を、サンヨンは「KEV2」を発表。どちらも電気自動車だ。特に「SM3 Z.E.」は、中身は同じグループの「ルノー・フルーエンスZ.E.」だが、実はバッテリーが交換式でその気になれば3分でフル充電にすることが可能。これはなかなかだ。
それと気になる電池だが、一応ルノー傘下の日産とNECの合弁会社オートモーティブエナジーサプライのリチウムイオン電池を搭載しているそうだが、まことしやかに「将来韓国製の電池も考えてるらしいよ」と言う人もいた。ウワサレベルだが十分ありうる話だ。
それからなんといっても韓国市場初導入のハイブリッドカー「ヒュンダイ・ソナタハイブリッド」&「起亜K5ハイブリッド」だよね。これは、今年すでに北米市場に出回っているもので、なんとトヨタ方式に抵触しない1モーター式ハイブリッドを採用。中身は169psの2.4リッターエンジン+40psのモーターで、モーターパワーは大したことないが、燃費を北米基準で測定するとトヨタの「カムリハイブリッド」や「日産アルティマハイブリッド」をしのぐ。
実際乗ってみないとその凄さはわからないが、数値的には完全に追いついてきてるのだ。
それと個人的には起亜のエクステリアデザインだよね。このK5だけでなく、SUVの「ソレント」にしろ明らかにカッコ良く、実はチーフデザイナーに元アウディのペーター・シュライアー氏が就任してて、明らかに肉感的かつキレがある。「アジアのアウディ」と呼びたいほどだ。
コンパニオンの可愛さとスタイルの良さにも、目を見張るものあり。まさに『KARA』や『少女時代』も顔負けのクオリティ……。
日・韓・中で協力する日がくる!?
もちろん、北米市場を見る限りは相変わらずアジア勢はトヨタがトップを行ってて、現代・起亜グループもようやっと日産に追いついたレベルで、ホンダには追いついてないし、まだまだ日本勢有利な部分もある。
震災の話に戻ると、東北地方のパーツメーカーには専門の資金援助も決まり、俺は「雨降って地固まる」じゃないけど、ますますニッポン自動車産業はこれから鍛えられて強くなってくれると信じている。
実際、いくつかメールがあったんですよ。前回の原稿を書いてから「日本の自動車産業をナメるな」と。
ただし、今回思ったのは韓国メーカーが急速に日本をキャッチアップしてきているのは事実だし、そのベースに日本の技術、マインドが入ってることは間違いない。いろんな意味で両者の自動車作りは似ている。
だから、これからはますます正しいライバルとして切磋琢磨(せっさたくま)し、世界でのしていければいいと思ったんですな。単純に単独で欧米に追いつけ追い越せではなく、韓国、中国、そして日本でともにがんばれないのか、と。
そこはまだまだビジョンが出来てないけど、道を探っていけないか? と思った次第ですわ。
(文と写真=小沢コージ)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
-
第454回:ヤマダ電機にIKEAも顔負けのクルマ屋? ノルかソルかの新商法「ガリバーWOW!TOWN」 2012.8.27 中古車買い取りのガリバーが新ビジネス「WOW!TOWN」を開始。これは“クルマ選びのテーマパーク”だ!
-
第453回:今後のメルセデスはますますデザインに走る!? 「CLSシューティングブレーク」発表会&新型「Aクラス」欧州試乗! 2012.7.27 小沢コージが、最新のメルセデス・ベンツである「CLSシューティングブレーク」と新型「Aクラス」をチェック! その見どころは?
-
第452回:これじゃメルセデスには追いつけないぜ! “無意識インプレッション”のススメ 2012.6.22 自動車開発のカギを握る、テストドライブ。それが限られた道路環境で行われている日本の現状に、小沢コージが物申す!?
-
第451回:日本も学べる(?)中国自動車事情 新婚さん、“すてきなカーライフに”いらっしゃ〜い!? 2012.6.11 自動車熱が高まる中国には「新婚夫婦を対象にした自動車メディア」があるのだとか……? 現地で話を聞いてきた、小沢コージのリポート。
-
NEW
BMWの今後を占う重要プロダクト 「ノイエクラッセX」改め新型「iX3」がデビュー
2025.9.5エディターから一言かねてクルマ好きを騒がせてきたBMWの「ノイエクラッセX」がついにベールを脱いだ。新型「iX3」は、デザインはもちろん、駆動系やインフォテインメントシステムなどがすべて刷新された新時代の電気自動車だ。その中身を解説する。 -
NEW
谷口信輝の新車試乗――BMW X3 M50 xDrive編
2025.9.5webCG Movies世界的な人気車種となっている、BMWのSUV「X3」。その最新型を、レーシングドライバー谷口信輝はどう評価するのか? ワインディングロードを走らせた印象を語ってもらった。 -
NEW
アマゾンが自動車の開発をサポート? 深まるクルマとAIの関係性
2025.9.5デイリーコラムあのアマゾンがAI技術で自動車の開発やサービス提供をサポート? 急速なAIの進化は自動車開発の現場にどのような変化をもたらし、私たちの移動体験をどう変えていくのか? 日本の自動車メーカーの活用例も交えながら、クルマとAIの未来を考察する。 -
新型「ホンダ・プレリュード」発表イベントの会場から
2025.9.4画像・写真本田技研工業は2025年9月4日、新型「プレリュード」を同年9月5日に発売すると発表した。今回のモデルは6代目にあたり、実に24年ぶりの復活となる。東京・渋谷で行われた発表イベントの様子と車両を写真で紹介する。 -
新型「ホンダ・プレリュード」の登場で思い出す歴代モデルが駆け抜けた姿と時代
2025.9.4デイリーコラム24年ぶりにホンダの2ドアクーペ「プレリュード」が復活。ベテランカーマニアには懐かしく、Z世代には新鮮なその名前は、元祖デートカーの代名詞でもあった。昭和と平成の自動車史に大いなる足跡を残したプレリュードの歴史を振り返る。 -
ホンダ・プレリュード プロトタイプ(FF)【試乗記】
2025.9.4試乗記24年の時を経てついに登場した新型「ホンダ・プレリュード」。「シビック タイプR」のシャシーをショートホイールベース化し、そこに自慢の2リッターハイブリッドシステム「e:HEV」を組み合わせた2ドアクーペの走りを、クローズドコースから報告する。