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ホンダN-ONEオリジナル(FF/CVT)

椀より正味 2021.03.06 試乗記 往年の名車「N360」に込められたスピリットを受け継ぐ、ホンダの軽「N-ONE」。その新型に試乗した筆者は、これまで軽乗用車に抱いてきたイメージを覆すほどの、モノとしての完成度の高さに驚かされたのだった。

世にもまれなやり方

8年ぶりのフルモデルチェンジなのに、ボディー外板を変えなかったのが、こんどのN-ONEだ。いわゆる“ビッグマイナー”チェンジではない。「N-BOX」系のプラットフォーム(車台)に切り替え、安全運転支援システムの充実を図り、「RS」に6段MTモデルを新設するなど、中身は刷新したが、外形デザインはサワらなかった。こんなフルチェンジ、よく考えると、量産車としては自動車史上初ではないか。

N-ONEはホンダ軽のベーシックモデルである。新型も立ち上がりの販売は好調だが、いまやニッポンの国民車ともいえるハイトワゴンのN-BOXほどは売れない。泣く泣くF1からの撤退を決意するような状況にあって、日本専用の軽自動車でいまあえて無理をしたくなかったということだろう。最近、ホンダのエンジニアがよく口にする「選択と集中」の結果、ボディー外板はキャリーオーバーという結論になったわけである。

今回試乗したのは、159万9400円の最廉価ベースグレード、その名も「オリジナル」。ハイトワゴンではないフツーの軽としては高いが、Honda SENSINGの内容は上級グレードと変わらない。14インチのスチールホイールは、15インチのアルミよりもこのスタイリングに合っていると思う。

2020年11月に発売された新型「ホンダN-ONE」。N-ONEらしさを追求したという「オリジナル」グレード(写真)のほか、上質感をウリとする「プレミアム/プレミアム ツアラー」グレード、スポーティーな「RS」グレードがラインナップされる。
2020年11月に発売された新型「ホンダN-ONE」。N-ONEらしさを追求したという「オリジナル」グレード(写真)のほか、上質感をウリとする「プレミアム/プレミアム ツアラー」グレード、スポーティーな「RS」グレードがラインナップされる。拡大
「N-ONE」といえば、往年の「N360」を思わせるデザインのグリル。新型のヘッドランプはLED式で、デイタイムランニングランプとポジションランプ、ウインカーの機能を兼ね備える発光リングが採用されている。
「N-ONE」といえば、往年の「N360」を思わせるデザインのグリル。新型のヘッドランプはLED式で、デイタイムランニングランプとポジションランプ、ウインカーの機能を兼ね備える発光リングが採用されている。拡大
リアコンビランプもフルLED式に。数少ない初代との識別点となっている。
リアコンビランプもフルLED式に。数少ない初代との識別点となっている。拡大
シャシーや内装を刷新しつつも、ボンネットやフェンダー、ドアパネル、ルーフといった外板は初代のものをそのまま継承。こうした手法は、クルマのフルモデルチェンジとしては珍しい。
シャシーや内装を刷新しつつも、ボンネットやフェンダー、ドアパネル、ルーフといった外板は初代のものをそのまま継承。こうした手法は、クルマのフルモデルチェンジとしては珍しい。拡大

この乗り心地で軽なのか!?

撮影が終わった試乗車を編集部Sさんからバトンタッチするとき、「どうだった?」と聞くと、これがあったら、もうほかのクルマ、いりませんね的な答えが返ってきた。チョイ乗りにしても、毎週毎月すごい数の新車に触れている自動車情報サイトの編集部員のコメントだ。

いまの軽は「これが軽!?」と驚かされることばかりだが、いまの軽のなかでも新型N-ONEが傑出しているのは乗り心地だ。ホンダには「マン・マキシマム/メカ・ミニマム」という思想がある。メカを可能な限り小さくつくって、人間に最大の空間を与えるという考え方だ。それでサスペンションをコンパクトにし過ぎた結果、昔のホンダ車は乗り心地がよくなかったりしたのだが、いまは違う。

このN-ONEオリジナルも、生意気なくらい乗り味の質感が高い。RSではサスペンションのたっぷりしたストローク感に驚かされたが、オリジナルも基本的に変わらない。アシがよく動く。ボディーはとくにフロアの剛性感が旧型より格段にアップした。街なかではしっとり落ち着いたフラットな乗り心地が印象的だ。

試乗中の一日は強い北風が吹いていた。高速道路でも乗り心地はいいが、ときおり横風を感じてハンドルに力が入った。台形プロポーションを謳うN-ONEは、フツーの軽といっても「スズキ・アルト」より5cmほど背が高い。でも、これがさらに25cmノッポのN-BOXだったら、もっと横風にはシビアだろう。N-ONEのほどほどさを再認識した。

新型「N-ONE」は、ダンパーのスムーズな動きを可能にする横力キャンセルスプリングや前後スタビライザーを装備。快適で安定した走りが追求されている。
新型「N-ONE」は、ダンパーのスムーズな動きを可能にする横力キャンセルスプリングや前後スタビライザーを装備。快適で安定した走りが追求されている。拡大
初代でベンチタイプだった前席は、2代目では独立型のセパレートシートに変更。助手席足もとの空間は大幅に拡大されている。
初代でベンチタイプだった前席は、2代目では独立型のセパレートシートに変更。助手席足もとの空間は大幅に拡大されている。拡大
オープントレーのあった先代のものからデザインが一新されたインストゥルメントパネル。左右に広がる装飾パネルで開放感が演出されている。
オープントレーのあった先代のものからデザインが一新されたインストゥルメントパネル。左右に広がる装飾パネルで開放感が演出されている。拡大
モデルチェンジを機に、初代ではスタンダードだった“ハイルーフ仕様”は廃止。全高1545mm(4WD車は1570mm)のボディーに一本化された。
モデルチェンジを機に、初代ではスタンダードだった“ハイルーフ仕様”は廃止。全高1545mm(4WD車は1570mm)のボディーに一本化された。拡大

機関のデキもなかなか

自然吸気658cc 3気筒+CVTのパワーユニットは、パワーもトルクも旧型と変わっていない。58PSのパワーに対して、車重は840kgと、フツーの軽としてはかなり重いから、瞬発力には欠ける。待っているとスピードが乗ってくるタイプだ。しかし動力性能は必要にして十分である。

ACC(アダプティブ・クルーズコントロール)は渋滞追従機能付きの全車速対応型。上は135km/hまで設定できる。セットしたのを忘れて、いちど高速道路の空いた追い越し車線に出たら、全力の自動加速が始まった。ノンターボながら、けっこうがんばる。「これが軽か!?」のワンシーンだった。

約240kmを走って、燃費は16.6km/リッター(満タン法)。「フィット」や「ヤリス」のハイブリッドにはぜんぜんかなわないが、それらのノンハイブリッドモデルと同等かちょっといいくらいだろうか。センタータンクレイアウトのガソリンタンク容量は27リッター。旧型のベースグレードより3リッター減った。

しかし今回、満タンから200kmを走った時点で航続可能距離はまだ241kmあった。「ホンダe」をぶっ飛ばせ、である。燃料タンクの吹き返しはなく、簡単にクチまで満タンにできる。車載燃費計の表示(16.8km/リッター)ともほとんど差はなかった。

0.66リッター直3エンジンは、現行型「N-BOX」と同じ新世代ユニット。可変バルブ制御機構「VTEC」を採用することで、力強さと省燃費性の両立が図られている。
0.66リッター直3エンジンは、現行型「N-BOX」と同じ新世代ユニット。可変バルブ制御機構「VTEC」を採用することで、力強さと省燃費性の両立が図られている。拡大
先進の運転支援システム「ホンダセンシング」は、新型「N-ONE」全車に標準装備される。
先進の運転支援システム「ホンダセンシング」は、新型「N-ONE」全車に標準装備される。拡大
あえて異形デザインにしたという2眼式のメーター。インフォメーションディスプレイは、その右側、別枠にレイアウトされている。盤面がホワイトなのは「オリジナル」グレードのみ(他グレードはブラック)。
あえて異形デザインにしたという2眼式のメーター。インフォメーションディスプレイは、その右側、別枠にレイアウトされている。盤面がホワイトなのは「オリジナル」グレードのみ(他グレードはブラック)。拡大
今回は、240kmほどの道のりを試乗。燃費は満タン法で16.6km/リッター、車載の燃費計で16.8km/リッターを記録した。
今回は、240kmほどの道のりを試乗。燃費は満タン法で16.6km/リッター、車載の燃費計で16.8km/リッターを記録した。拡大

実のあるフルモデルチェンジ

前席のビジュアルはかなり変わった。左右席をくっつけたベンチシートふうから、センターコンソールのある通常のセパレートシートに変更された。カーナビ(オプション)のディスプレイは高い位置にきてより見やすくなった。ベーシックモデルでも、ダッシュボードなどの質感は高い。かといって、より上級車ふうに虚勢を張っている感じはない。“趣味がいい”と思う。

室内幅は限られるが、高さに余裕があるので狭苦しさはない。後席の足もとは広い。だが、黒のシート表皮は薄く簡素で、ツートーンの前席とは差をつけている。

後席を畳むと、荷物を積む性能はステーションワゴン並みだ。テールゲートの開口部に敷居はほとんどない。リアシートと荷室のアレンジも多彩だ。そんな美点はもちろんキャリーオーバーされている。

社内にデザイナーがいるのだから、余裕があれば、モデルチェンジでカタチもチェンジしたいに決まっている。だが今回は外形デザインやボディーの金型にはお金を使わず、浮いた予算でできること、やりたいことをやった。実際、乗ってみると、モデルチェンジ感は十分高かった。

「N-ONEは“たまたま軽規格におさまっているマイクロカー”という感じで、プロダクトとして粋な印象を受けます。初代『スマート』やいまの『フィアット500』に通じるような……」

これは前述の編集部Sさんがくれた感想メール。同感なので、原文のままコピペしました。

(文=下野康史<かばたやすし>/写真=田村 弥/編集=関 顕也)

プラチナホワイトの前席とは表皮の色が異なる後席。前後のスライド機能はないものの、広々としたニールームが確保されている。
プラチナホワイトの前席とは表皮の色が異なる後席。前後のスライド機能はないものの、広々としたニールームが確保されている。拡大
50:50分割式の後席は、座面のチップアップが可能。例えばベビーカーや、ホームセンターで購入した大きな荷物も容易に積める。
50:50分割式の後席は、座面のチップアップが可能。例えばベビーカーや、ホームセンターで購入した大きな荷物も容易に積める。拡大
燃料タンクを前席の下に配置するセンタータンクレイアウトのおかげで、後席を倒した際には、床面が低くフラットなラゲッジスペースがつくり出せる。
燃料タンクを前席の下に配置するセンタータンクレイアウトのおかげで、後席を倒した際には、床面が低くフラットなラゲッジスペースがつくり出せる。拡大
今回試乗した「オリジナル」グレードの場合、写真の「フレームレッド」を含む6色のボディーカラー(単色)がラインナップされる。ホワイトルーフを採用したツートーン仕様も4種類選べる。
今回試乗した「オリジナル」グレードの場合、写真の「フレームレッド」を含む6色のボディーカラー(単色)がラインナップされる。ホワイトルーフを採用したツートーン仕様も4種類選べる。拡大

テスト車のデータ

ホンダN-ONEオリジナル

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3395×1475×1545mm
ホイールベース:2520mm
車重:840kg
駆動方式:FF
エンジン:0.66リッター直3 DOHC 12バルブ
トランスミッション:CVT
最高出力:58PS(43kW)/7300rpm
最大トルク:65N・m(6.6kgf・m)/4800rpm
タイヤ:(前)155/65R14 75S/(後)155/65R14 75S(ダンロップ・エナセーブEC300)
燃費:23.0km/リッター(WLTCモード)/28.8km/リッター(JC08モード)
価格:159万9400円/テスト車=187万4400円
オプション装備:なし ※以下、販売店オプション Gathersナビゲーションシステム<8インチプレミアムインターナビVXU-217NBi>(20万9000円)/ドライブレコーダー<16GB>(3万9600円)/フロアカーペットマット<プレミアムタイプ>(2万6400円)

テスト車の年式:2020年型
テスト開始時の走行距離:2618km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:242.3km
使用燃料:14.6リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:16.6km/リッター(満タン法)/16.8km/リッター(車載燃費計計測値)

ホンダN-ONEオリジナル
ホンダN-ONEオリジナル拡大
「オリジナル」グレードのホイールは14インチサイズのスチール製。クラシカルなデザインのディッシュホイールが組み合わされる。
「オリジナル」グレードのホイールは14インチサイズのスチール製。クラシカルなデザインのディッシュホイールが組み合わされる。拡大
運転席と助手席の間には、カップホルダーや小物入れが配置される。その前方には、3つのUSBコネクターとスマートフォンが差し込めるポケットも用意。
運転席と助手席の間には、カップホルダーや小物入れが配置される。その前方には、3つのUSBコネクターとスマートフォンが差し込めるポケットも用意。拡大
4人乗車時の荷室はご覧の通り。後席の背もたれは荷室側からも倒すことができる。
4人乗車時の荷室はご覧の通り。後席の背もたれは荷室側からも倒すことができる。拡大
荷室のフロア下には、予備の収納スペースも確保されている。
荷室のフロア下には、予備の収納スペースも確保されている。拡大
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