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フォルクスワーゲン・パサートTDIエレガンス アドバンス(FF/7AT)

“最新”をキャッチアップ 2021.04.13 試乗記 河村 康彦 「フォルクスワーゲン・パサート」のマイナーチェンジモデルが上陸。セダンの最上級グレード「TDIエレガンス アドバンス」に試乗し、アップデートされたパワートレインや新世代インフォテインメントシステム、さらに進化した運転支援システムの仕上がりを確かめた。

7年目のマイナーチェンジ

当時の「アウディ80」とランニングコンポーネンツを共有し、エンジンとトランスミッションが縦置きレイアウトのFWDモデルとして1973年に誕生したのが初代パサート。そのデザインは、ジョルジェット・ジウジアーロ率いるイタルデザイン・ジウジアーロが手がけていた。

そこから数えて8代目となるのが、フォルクスワーゲンの横置きパワーユニット用として最新のモジュラー骨格「MQB」を採用、2014年に発表されたB8型と呼ばれる現行モデルだ。今回ステアリングを握ったのは、この4月6日に日本で発売されたばかりの、マイナーチェンジが施された最新バージョンである。

単にパサートと紹介される「セダン」に加えて、フォルクスワーゲンの流儀で「ヴァリアント」を名乗るステーションワゴン、さらにそれをベースとしながら専用デザインのバンパーやフェンダーエクステンションなどで軽くSUV仕立ての装飾を施し、シリーズ中で唯一となる4WDシャシーが与えられた「オールトラック」という3タイプで構成されるのは、マイナーチェンジ以前と同様だ。

日本仕様では、セダンとヴァリアントにはターボ付きの4気筒直噴のガソリンとディーゼルエンジンが設定され、オールトラックはディーゼルのみという設定も従来通りだが、今回のマイナーチェンジで目玉となるニュースのひとつは、ガソリンユニットの排気量がこれまでの1389ccから1497ccへとライトサイジング化されたこと。さらに、ディーゼルエンジンと組み合わされる「DSG」、すなわちデュアルクラッチトランスミッション(DCT)が、これまでの6段から新たに7段へと変更されたこともトピックのひとつである。

2021年4月6日に発売された「パサート」のマイナーチェンジモデル。今回は、2リッター直4ディーゼルエンジンが搭載された4ドアセダン「TDIエレガンス アドバンス」に試乗した。
2021年4月6日に発売された「パサート」のマイナーチェンジモデル。今回は、2リッター直4ディーゼルエンジンが搭載された4ドアセダン「TDIエレガンス アドバンス」に試乗した。拡大
2019年9月に初披露されたフォルクスワーゲンの新エンブレムは、平面的で細くシンプルなデザイン。車名のロゴが車体後部中央に配置されるのも、最新のVW車に共通する外装上の特徴だ。
2019年9月に初披露されたフォルクスワーゲンの新エンブレムは、平面的で細くシンプルなデザイン。車名のロゴが車体後部中央に配置されるのも、最新のVW車に共通する外装上の特徴だ。拡大
「TDI」の2リッター直4ターボエンジンは、従来型と変わらない最高出力190PS/3500-4000rpm、最大トルク400N・m/1900-3300rpmを発生。
「TDI」の2リッター直4ターボエンジンは、従来型と変わらない最高出力190PS/3500-4000rpm、最大トルク400N・m/1900-3300rpmを発生。拡大
新デザインのLEDテールランプが目を引く「パサート」のリアビュー。外装色は、今回の試乗車で選択されていた「パイライトシルバーメタリック」を含む全4種類の設定となる。
新デザインのLEDテールランプが目を引く「パサート」のリアビュー。外装色は、今回の試乗車で選択されていた「パイライトシルバーメタリック」を含む全4種類の設定となる。拡大
フォルクスワーゲン パサート の中古車

新デザインのロゴがポイント

今回、発売と同タイミングで試乗できたのはセダン。SUV全盛の今という時代では最も話題性が高そうなのはオールトラックだし、そうでなくても興味を持つ人がより多そうなのはヴァリアントのほうではありそう。

とはいえ、ユーザー層の若返りを図ろうとあえてトリッキーなデザインを入れ込む例が少なくない最近の一部モデルに比べると、いかにも端正で無理のないセダンルックのスタイリングには、事実、得も言われぬ安心感や好感を抱くことができる。こんな落ち着けるデザインのセダンが欲しいという人々は、さほど多くはないとしても少なからず存在することは間違いないだろう。

同時に、そんな最新のパサートセダンのルックスにどこか新しさも感じられたのは、前後バンパーのデザイン刷新などマイナーチェンジによる化粧直しの効果ももとより、フロントグリルやオープナーを兼用するトランクリッド中央に配された「VW」のロゴが、「デジタルメディアとの親和性の高さも狙った」と紹介される、新デザインへと変更されていたからでもあったように思う。

もちろん、「V」と「W」の2文字をモチーフとする点には変更はなく、「書体がより平板なものへと変更されただけ」とも言えそうだ。けれども、旧ロゴが長年見慣れたものであっただけに、それが微妙に変更された効果は意外にも大きく感じられたのだ。

インテリアの雰囲気が変わったと思えたのも、ステアリングホイール中心に入るこのロゴの変更が効いていそうだ。一方で、これまで存在したダッシュボード中央の小さなアナログ時計が姿を消してしまったのは、パサートならではのインテリアのアイコンを失ったようにも思え、ちょっと残念だった。

新デザインのグリルやヘッドランプ、バンパーなどを採用し、フロントフェイスをリニューアル。右左折時の被視認性が向上するという、ダイナミックターンインジケーターも装備されている。
新デザインのグリルやヘッドランプ、バンパーなどを採用し、フロントフェイスをリニューアル。右左折時の被視認性が向上するという、ダイナミックターンインジケーターも装備されている。拡大
新デザインのステアリングホイールやタッチ式のエアコン操作パネルなどが採用されたインテリア。従来型でアナログ時計が組み込まれていたダッシュボードのセンター部分には、バックライト付きの車名ロゴとハザードスイッチが新たに配置された。
新デザインのステアリングホイールやタッチ式のエアコン操作パネルなどが採用されたインテリア。従来型でアナログ時計が組み込まれていたダッシュボードのセンター部分には、バックライト付きの車名ロゴとハザードスイッチが新たに配置された。拡大
「TDIエレガンス アドバンス」グレードの前席は電動調整機能付きで、ヒーターとベンチレーションシステムが内蔵されている。写真のナッパレザー表皮が標準仕様となる。
「TDIエレガンス アドバンス」グレードの前席は電動調整機能付きで、ヒーターとベンチレーションシステムが内蔵されている。写真のナッパレザー表皮が標準仕様となる。拡大
2790mmというロングホイールベースにより、頭上や足元に余裕を感じる「パサート」の後席。背もたれには、60:40の分割可倒機構およびスキーホールが、リアウィンドウには「電動サンブラインド」が備わっている。
2790mmというロングホイールベースにより、頭上や足元に余裕を感じる「パサート」の後席。背もたれには、60:40の分割可倒機構およびスキーホールが、リアウィンドウには「電動サンブラインド」が備わっている。拡大

滑らかな7段DCT

あれ? パサートってこんなにステアリングが軽かったっけ? と、走り始めてまず感じたのはそうした印象。それでも路面とのコンタクト感は十分濃厚で、必要な情報がしっかり伝えられるのはさすがVW車でもある。

経年変化で変速の質が低下し、特に微低速シーンでのギクシャク感が増加するなどと、一部で耐久性への不安も耳にするDSGだが、総走行距離がまだ1000km強にすぎなかったテスト車ではもちろんそうした兆候などみじんもなし。むしろ微低速時のアクセルワークに伴う滑らかさという点では、これまで乗った経験のある各社のDCT搭載モデルの中にあっても、「最上級」という感覚を覚えることとなった。

走行中の静粛性は悪くはないが、「特に静か」という印象を受けることもなかった。相対的には、自らが発するノイズよりも「サイドウィンドウを透過して届く車外からのノイズが目立つ」という傾向が強かったようにも思えた。いずれにしても、マイナーチェンジによる静粛性の向上は感じられなかったと報告しておきたい。

VW車の中にあって、かねてパサート系で好んで用いられてきたパンクを補修するシール材入りタイヤの採用は今回も踏襲。タイヤ内面にあらかじめ特殊なシール材を塗布しておくことで、くぎ踏みなどトレッド面の小さな穴あきに対して、それを瞬時にふさいでくれるテスト車のタイヤはピレリ製だった。注意喚起のためのセブラ舗装が施された路面などにおける振動のダンピングは今ひとつの印象で、ややバタつき感が目立つことになったのは、あるいはそんな特殊タイヤの影響があってのことかもしれない。

一方で、スペアタイヤはもちろん、パンク修理剤などの搭載も不要になるので、ただでさえ広大なトランクルームのボリュームをさらに拡大する効用が確認できたことは言うまでもない。

「パサートTDIエレガンス アドバンス」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4790×1830×1470mm、ホイールベースは2790mm。車重は1560kgとなっている。
「パサートTDIエレガンス アドバンス」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4790×1830×1470mm、ホイールベースは2790mm。車重は1560kgとなっている。拡大
ディーゼルエンジン搭載の「TDI」モデルでは、「DSG」と呼ばれるデュアルクラッチトランスミッション(DCT)が、従来の6段から7段に変更された。
ディーゼルエンジン搭載の「TDI」モデルでは、「DSG」と呼ばれるデュアルクラッチトランスミッション(DCT)が、従来の6段から7段に変更された。拡大
「パサートTDIエレガンス アドバンス」では、スプリットデザインの10本スポーク18インチアルミホイールが標準装備のアイテムとなる。今回の試乗車には235/45R18サイズの「ピレリ・チントゥラートP7」タイヤが組み合わされていた。
「パサートTDIエレガンス アドバンス」では、スプリットデザインの10本スポーク18インチアルミホイールが標準装備のアイテムとなる。今回の試乗車には235/45R18サイズの「ピレリ・チントゥラートP7」タイヤが組み合わされていた。拡大
荷室容量は586リッター。旅行用の大型スーツケースも余裕で積載でき、通常サイズのゴルフバッグなら4個まで積み込めるという。挟み込み防止およびイージーオープン機能付きパワーテールゲートも標準装備されている。
荷室容量は586リッター。旅行用の大型スーツケースも余裕で積載でき、通常サイズのゴルフバッグなら4個まで積み込めるという。挟み込み防止およびイージーオープン機能付きパワーテールゲートも標準装備されている。拡大

運転支援システムは一線級

今回、パサートのマイナーチェンジにおける目玉が、VW車として初採用がうたわれた2つの運転支援システムの標準採用である。そのひとつが32個のLEDを個別にオン/オフすることで、最適な配光を可能にしたと紹介されるLEDマトリクスヘッドランプ「IQ.LIGHT(アイキューライト)」。そしてもうひとつが、これまで用いてきた渋滞時追従支援システム「トラフィックアシスト」を進化させた「トラベルアシスト」だ。

日本語では同一車線内全車速運転支援システムと紹介されるトラベルアシストは、実際のドライビング中にすこぶる使いやすかった。それはこの機能が、ステアリングホイール上のスイッチ操作ひとつですぐに起動するというロジックになっていたからでもある。

他社の同類システムではほとんど場合、作動前の準備段階としてまずメインスイッチを押し、システムを立ち上げる必要がある。もちろんそこに「より安全性を高めたい」という理由があることは理解できるのだが、実際にはそんな“ひと手間”が使い勝手を著しく低下させていると常々感じていた。

ところが、そこをスキップできるパサートのロジックは、使うたびに手軽さと快適さを実感。そもそも、ブレーキペダルをわずかでも踏めば機能は瞬時に解除される仕組みなので、むしろ操作が煩雑化して分かりにくくなる準備段階を設けることは、「安全の理念に反する」とさえ思えることになった。

逆に、狭い道などで車線を示す白線に触れるとステアリングホイールに補正トルクが介入するため、あえて「レーンキープアシスト」を解除しても、次回のエンジン始動時には必ずそれが復帰してしまうロジックには閉口させられることに。あるいは、回避する設定があったのかもしれないが、限られた試乗時間内にそれを発見することはできなかった。

eSIMの内蔵で常時通信が可能になるなど、進化がうたわれたコネクティビティーの機能も、やはり試乗時間内にその優位性を実感するまでには至らず。それでも、「ナビの地図更新がOTAによるオンライン方式で可能になった」と聞けば、ありがたみは増す。

デビューから丸6年が経過して、その間の世の中の進歩をキャッチアップ──要はそのように理解できるリファインが行われた最新パサートである。

(文=河村康彦/写真=花村英典/編集=櫻井健一)

フロントカメラで対向車や先行車を検知し、ヘッドランプに内蔵された32個のLEDを個別に制御するヘッドライトシステム 「IQ.LIGHT(アイキューライト)」が「パサート」全モデルに標準装備されている。
フロントカメラで対向車や先行車を検知し、ヘッドランプに内蔵された32個のLEDを個別に制御するヘッドライトシステム 「IQ.LIGHT(アイキューライト)」が「パサート」全モデルに標準装備されている。拡大
ステアリングホイールの左スポーク部分に配置された、同一車線内全車速運転支援システム「トラベルアシスト」の操作スイッチ。ステアリングホイールには静電容量式センサーが採用されており、スポーク部分に軽く手を添えるだけで、同システムの継続的な作動が可能となる。
ステアリングホイールの左スポーク部分に配置された、同一車線内全車速運転支援システム「トラベルアシスト」の操作スイッチ。ステアリングホイールには静電容量式センサーが採用されており、スポーク部分に軽く手を添えるだけで、同システムの継続的な作動が可能となる。拡大
9.2インチのタッチ式モニターに組み込まれた、常時接続の新世代インフォテインメントシステム「ディスカバープロ」が、「パサートTDIエレガンス アドバンス」に標準装備されている。連携する新オンラインサービスの「ウィーコネクト」で、渋滞や駐車場状況などといったナビゲーション関連のオンラインサービスに加え、スマホで車両ドアの開錠/施錠操作も行える。
9.2インチのタッチ式モニターに組み込まれた、常時接続の新世代インフォテインメントシステム「ディスカバープロ」が、「パサートTDIエレガンス アドバンス」に標準装備されている。連携する新オンラインサービスの「ウィーコネクト」で、渋滞や駐車場状況などといったナビゲーション関連のオンラインサービスに加え、スマホで車両ドアの開錠/施錠操作も行える。拡大
「パサート」のペダル配置。右端は、同一車線内全車速運転支援システム「トラベルアシスト」作動時などにアクセルペダルの操作から解放された右足が置けるようなフットレスト形状になっている。
「パサート」のペダル配置。右端は、同一車線内全車速運転支援システム「トラベルアシスト」作動時などにアクセルペダルの操作から解放された右足が置けるようなフットレスト形状になっている。拡大
「パサートTDIエレガンス アドバンス」のWLTCモード燃費値は16.4km/リッター。今回の試乗では満タン法で17.1km/リッターを記録した。
「パサートTDIエレガンス アドバンス」のWLTCモード燃費値は16.4km/リッター。今回の試乗では満タン法で17.1km/リッターを記録した。拡大

テスト車のデータ

フォルクスワーゲン・パサートTDIエレガンス アドバンス

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4790×1830×1470mm
ホイールベース:2790mm
車重:1560kg
駆動方式FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:190PS(140kW)/3500-4000rpm
最大トルク:400N・m(40.8kgf・m)/1900-3300rpm
タイヤ:(前)235/45R18 94W/(後)235/45R18 94W(ピレリ・チントゥラートP7)
燃費:16.4km/リッター(WLTCモード)
価格:534万9000円/テスト車=538万2000円
オプション装備:なし ※以下、販売店オプション フロアマット<テキスタイル>(3万3000円)

テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:1022km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(6)/山岳路(1)
テスト距離:224.4km
使用燃料:13.1リッター(軽油)
参考燃費:17.1km/リッター(満タン法)/16.7km/リッター(車載燃費計計測値)

フォルクスワーゲン・パサートTDIエレガンス アドバンス
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河村 康彦

河村 康彦

フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。

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