「メガーヌ アルピーヌ」が誕生!? ルノーの新戦略で人気の高性能モデルはどうなる?
2021.06.11 デイリーコラムすべてをアルピーヌの名の下に
現行「メガーヌR.S.」に代表される、ルノーの市販スポーツモデル(と、それを使った参加型モータースポーツ事業)を手がけてきた「ルノースポール・カーズ」が、2021年5月1日付で「アルピーヌ・カーズ」になったそうだ。同じく、2011年からルノースポール名義で活動してきたF1チームも、この2021年シーズンから「アルピーヌF1」になっているのはご承知のとおりである。
それだけではない。以前からのアルピーヌ(=スポーツカーと世界耐久選手権<WEC>)に、ルノースポール・カーズ、ルノースポールF1チーム……と、これまでは各ビジネスユニットそれぞれにマネージングディレクターを置いていたが、この2021年1月11日にローラン・ロッシ氏がアルピーヌのCEOに就任。今後はこれら3事業をまとめて、アルピーヌとしてロッシCEOが統括することになった。
これらの一連の動きを、ロッシCEOは「ルノーグループ全体のブランド再構築の一環であり、われわれの価値や理想を実現するためには、アルピーヌの名の下ですべてをひとつのビジネスユニットに結合させることは不可欠な決断だった」と説明している。
ただし、これらアルピーヌにまつわる改変内容は、現時点では名義やマネジメントにかかわるものが大半で、定評のある現場の活動には基本的に手が入っていない印象が強い。
現場の仕事はこれまでどおり
実際、今回のアルピーヌ・カーズ設立についてのプレスリリースにも「レジュリスを本拠とするチームのノウハウや情熱はアルピーヌ戦略の核心として残される」と明記されている。
レジュリスとはパリ中心部から南西20km強に位置した比較的新しい町で、多くの企業がオフィスや工場を置く。ルノースポール・カーズは前身となった「ルノースポール・テクノロジーズ」の時代から、このレジュリスを本拠地としており、それはアルピーヌ・カーズになっても変わらない。……というか、現在販売されている「アルピーヌA110」のもともとの開発チームも、実体はルノースポール・テクノジーズ~ルノースポール・カーズそのものだった。
たとえばA110のチーフエンジニアを務めるジャン-パスカル・ドース氏もルノースポール・テクノロジーズ時代からレジュリスに籍を置いており、以前は「フォーミュラ・ルノー」や「クリオカップ」などを手がけるコンペティション部門のディレクターだった。そして、A110の味つけを担当したテスターも、レジュリスの顔として何度も来日しているロラン・ウルゴン氏である。
このアルピーヌ・カーズ以外の現場も、ひとまずは大きな変化はないように見える。F1チームは今も相変わらず英国エンストン(旧ベネトン~ロータスF1)に本拠を置くし、F1パワーユニットの開発もこれまでどおりヴィリー・シャティヨン(もともとは旧ゴルディーニ用に設立)でおこなわれている。そして、WECを走るアルピーヌのチーム運営も、これまでどおり「シグナテック」が請け負う。
この体制が今後どこまで維持されるかは分からないが、今回のアルピーヌ名義への統一は、現時点では優秀な人材を抱える各現場を、大幅にイジるものではなさそうだ。今まであまりにバラバラだった各ユニットの現場を、ブローニュ・ビヤンクール(=ルノー本社)にいるロッシCEOがアルピーヌの名の下で理路整然とした運営をする。そうやってスポーツカーとモータースポーツ、あるいはF1とWEC……をイメージと技術の両面で、より緊密にリンクさせることが今回最大の目的なのだろう。われわれ一般のファンとしても、そのほうが分かりやすいといえば分かりやすい。
原点回帰と解釈すれば……
今の欧州では、次世代スポーツカーは電気自動車(EV)になるしかない……という風潮である。今回の発表でも、次世代のアルピーヌEVがほかでもないレジュリスで開発中であり、そこにF1やWECなどのレーシングチームも助言役として協力していると公表された。また、その新型アルピーヌEVのアーキテクチャー≒プラットフォームが英ロータスとの共同開発であることも、以前から公言されている。
考えてみれば「小型軽量」「パワートレインよりシャシー」「スチールよりアルミや樹脂が得意」といった開発思想や技術的傾向においては、アルピーヌとロータスで似たところが多い。また、現行A110にしても、企画当初はF1つながりでケータハムに開発委託する予定だったことは、広く知られるとおりだ。こうした経緯を見れば、英仏スポーツカー連合は自然な成り行きに思えてくる。
いずれにしても、「ルノースポール=R.S.」は今後、ブランド名としては使われなくなる。となると、メガーヌR.S.や欧州の一部車種のグレード名として使われている「R.S.ライン」も現行モデルかぎりで終了か、どこかのタイミングで改名されると思われる。
現在のメガーヌR.S.が改名するか、もしくは次期型があるとすれば、それは「メガーヌ アルピーヌ」になると考えるのが自然だ。これは若い皆さんには新鮮な響きかもしれないが、50代以上の中高年マニアであれば、初代「5(サンク)」のホットハッチ仕様が「5アルピーヌ」「5アルピーヌ ターボ」と呼ばれていたことを懐かしく思い出すことだろう。
懐かしさついでにいえば、ルノースポールという名称が使われはじめたのは、独立メーカーだったアルピーヌをルノーが傘下におさめた1976年のことである。その年からアルピーヌ本社のあったディエップを拠点として、当時すでにルノー傘下にあったゴルディーニとともにルノーのモータースポーツ活動を一任したのが、ルノースポールのはじまりである。で、それをアピールするために開発された商品が前出の5アルピーヌなのだ。
……といった歴史を振り返ると、今回のルノースポールからアルピーヌへの名義変更、そしてロータスとのEV共同開発は「原点回帰」にして「繰り返される歴史」と理解することもできなくはない。そういうことであれば、メガーヌR.S.は明日にでもメガーヌ アルピーヌへと改名すべきだし、来るべきアルピーヌEVに搭載される高性能電動パワートレインが「e-ゴルディーニ」とでも名乗ってくれたら、マニアとしてはさらに気分がアガる?
(文=佐野弘宗/写真=グループ・ルノー、webCG/編集=関 顕也)
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佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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