ルノー・メガーヌ ルノースポール(FF/6AT)
今ここにある最良のホットハッチ 2021.04.19 試乗記 ルノー自慢のホットハッチ「メガーヌ ルノースポール(R.S.)」がマイナーチェンジ。トップモデル「R.S.トロフィー」譲りの高性能パワーユニットと「シャシースポール」と呼ばれる足まわりが織りなす新たな走りを、ワインディングロードで味わった。日本のあなたが支えている
日本はルノーのお得意さまである。無論、販売台数というわけではない。2020年のルノーの販売台数はコロナ禍の影響でやはり減少してざっと6000台といったところで、上位を占めるドイツ勢に比べると桁が違うが、本国が一目置くのは全体的な数の割には熱いこだわりエンスーが多いことが理由だ。趣味性の強いニッチなモデルが売れるマーケットなのである。
何しろ、いわば貨客車の「カングー」が毎年1000台以上も一堂に会するミーティングが開催されている国などほかにはないし、メガーヌの標準モデルを差し置いてホットモデルであるR.S.のほうに人気が集中、しかも、なかでも一番硬派なR.S.トロフィーを選ぶ人が大半だというマーケットも珍しいのである。
日常使用も考えるならば、トロフィーほど硬くない足まわり(シャシースポール)を持つスタンダード(といっても十分にホットだが)のR.S.が常識的な選択だが、R.S.は足まわり以外にもトロフィーに比べてエンジンのチューンレベルが低いという違いがあった。
せっかくなら一番高性能なモデルを、という気持ちも分からないではないが、そんな硬派な日本のファンのためにルノー・スポールがまたもメガーヌR.S.をバージョンアップしてくれた。日本のため、というのは大げさに聞こえるかもしれないが、実際に今やこの種の高性能スポーツハッチは欧州ではますます厳しい立場に追いやられている。
皆さんご存じの通り、EU圏内では企業別平均CO2排出量規制(既定値を超えたぶんだけメーカーがペナルティーを支払う)が存在するが、それに加えて購入者も高額な排出税を支払わなければならないという。国によって差はあるもののR.S.の場合、欧州ではざっと100万円というから(もちろん付加価値税などは別立て)、若者には、いやオジサンだっておいそれとホットハッチには手を出せない。今や日本がメガーヌR.S.の一番のお得意さまなのである。
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R.S.にも300PSユニット
メガーヌR.S.は、ご存じルノーのCセグメントハッチバックであるメガーヌの高性能版であり、現行型はR.S.としては3世代目(メガーヌでは4代目)にあたる。2018年に登場した標準型R.S.と、2019年にカタログモデルとして発売されたさらに硬派な足まわりを持つR.S.トロフィーという2本立てだが、前述の通りトロフィーにはよりパワフルなエンジンが搭載されていた。
トロフィー用M5P型1.8リッター直4直噴ターボエンジンは、標準型R.S.用より21PSと30N・m増しの最高出力300PS(221kW)/6000rpm、最大トルク420N・m(42.8kgf・m)/3200rpm(6段MT仕様では400N・m)を発生。さらにツインスクロールターボの軸受けベアリングには、フリクションロスを減らすためにスチール製に代えてセラミック製を採用していた。
今回のマイナーチェンジでは、R.S.およびR.S.トロフィーにアダプティプクルーズコントロールなど現代的な運転支援システムを搭載したほかに、さまざまな装備がバージョンアップされているが、一番のトピックはスタンダードのR.S.にもトロフィーと同じエンジンが搭載されたことである。
日本仕様のR.S.は「EDC(エフィシェントデュアルクラッチ)」と称する6段DCTのみ。R.S.トロフィーにはこれまで通り6段DCTと6段MTの両方が設定されている。今回、トロフィーは試乗車が間に合わず、ということで主役はEDCのR.S.である。
痛快無比
従来の279PSユニットでも中間域のトルクは強力だったから、通常走行ではその差を感じ取るのは難しく、実用上の不満もなかったが(0-100km/h加速でも従来型R.S.が5.8秒なのに対しR.S.トロフィーは5.7秒とほぼ差がなかった)、やはりスペックが低いというだけで“ルノースポールに乗ろう”というスポーツドライバーは納得できなかったのかもしれない。ちなみにまだ試せてはいないが、改良型ではトロフィーの6段MTにもローンチコントロールが備わった。
明らかなのは、300PSユニットを積んだ新型R.S.のトップエンドに向けての吹け上がりがさらにシャープに、切れ味鋭くなっていること。しかもATレバーを倒してMTモードを選び、「ルノーマルチセンス」というドライブモード選択機能で「レース」モードに入れれば、レブリミットの7000rpm(6500rpmからゼブラゾーン)近辺まで自動シフトアップなしにきっちり使えるようになった。これでよほどのこだわり派でなければMTを選ぶ必要がなくなったといえるだろう。
EDCによる電光石火のシフト、たくましいトルクとプンプン活発に回るエンジンもさることながら、メガーヌR.S.の魅力はその痛快無比なハンドリングである。60km/hを境に(レースモードでは100km/h)低速では逆位相、高速では同位相に切れる後輪操舵システム「4コントロール」を標準装備しており、おかげでタイトなコーナーでスパッと回り込む鋭さと高速コーナーでの安定性を両立させている。さらに立ち上がりでパワーを与えても、前輪が外に逃げるどころかグイグイとフロントが引っ張ってくれるのが頼もしい。
こんな場面の食いつきはトルセンLSDを備えるトロフィーが上回るが(R.S.は「R.S.デフ」という電子制御ブレーキングLSDとなる)、たとえ最後にはジリジリッと外側にはらんでも限界まで接地感を失わないタフな足まわりが自慢である。
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孤軍奮闘のホットハッチ
さらに締め上げられた足まわりを持つトロフィーでも一般道の乗り心地は心配するほどスパルタンではなかったが、R.S.は明らかにしなやかだ。4本のダンパーに内蔵されるルノー自慢の「HCC(ハイドロリックコンプレッションコントロール)」の効果もあるはずだが、ルノーは昔から荒れた路面でも顎を出さない頑健さが特長だ。
ご存じのようにHCCとはシトロエンで言う「PHC(プログレッシブハイドロリッククッション)」と基本的に同じくバンプラバーの代わりにセカンダリーダンパーを内蔵するもので、ダンパーを大容量化したのと同じ効果を持ち、常用域の設定を必要以上に固めなくても済むという。おかげでタイヤが一瞬空転するようなギャップでも安心して踏んでいける。このままラリーに出場しても上位に食い込めるのでは、と思うほどだ。
新しいR.S.は、ストップ&ゴー機能付き(EDC仕様のみ)ACCや歩行者検知機能付きエマージェンシーブレーキなど、現代的で実用的な安全装備も充実した。そのぶん値段は464万円と少々上がったけれど、FF車最速の座を争ってきた「シビック タイプR」がもう手に入らない今(英国スウィンドン工場は閉鎖が決まっている)、ニュル最速FF車の看板はルノースポールが預かったままだ。今やメガーヌR.S.は孤高のホットハッチである。
(文=高平高輝/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
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テスト車のデータ
ルノー・メガーヌ ルノースポール
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4410×1875×1465mm
ホイールベース:2670mm
車重:1480kg
駆動方式:FF
エンジン:1.8リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:300PS(221kW)/6000rpm
最大トルク:420N・m(42.8kgf・m)/3200rpm
タイヤ:(前)245/35R19 93Y/(後)245/35R19 93Y(ブリヂストン・ポテンザS001)
燃費:11.8km/リッター(WLTCモード)
価格:464万円/テスト車=486万4900円
オプション装備:ボディーカラー<オランジュ トニック メタリック>(16万円) ※以下、販売店オプション フロアマット(3万3000円)/エマージェンシーキット(3万1900円)
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:1518km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

高平 高輝
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