トヨタの本格SUV「ランドクルーザー」が14年ぶりにフルモデルチェンジ
2021.08.02 自動車ニュース![]() |
トヨタ自動車は2021年8月2日、新型「ランドクルーザー」を発表。同日、販売を開始した。
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世界中で支持される“陸の巡洋艦”が新型に
ランドクルーザーは、トヨタがラインナップするSUVの最上級モデルであり、信頼性や耐久性、悪路走破性の高さから、世界中で高い支持を獲得。派生車種を含め、170の国と地域で累計1060万台が販売されてきた(2021年6月末時点)。また、1951年登場の「トヨタジープBJ型」を起源とする、日本車のなかでも特に長い歴史を持つモデルでもある。
今日では「ランドクルーザー」「ランドクルーザープラド」「ランドクルーザー70シリーズ」の3系統に分かれているが、今回フルモデルチェンジするのは旗艦モデルのランドクルーザー。2007年に従来型の「200シリーズ」がデビューして以来、実に14年ぶりに新型が登場することとなった。
ラインナップと価格は以下の通り。
- GX(ガソリン車・5人乗り):510万円
- AX(ガソリン車・7人乗り):550万円
- VX(ガソリン車・7人乗り):630万円
- ZX(ガソリン車・7人乗り):730万円
- GRスポーツ(ガソリン車・7人乗り):770万円
- ZX(ディーゼル車・5人乗り):760万円
- GRスポーツ(ディーゼル車・5人乗り):800万円
生産は、フレームの製造がトヨタ自動車の本社工場で、車両の組み立てがトヨタ車体の吉原工場で行われる。
悪路走破性を高めつつオンロードでの快適性も改善
「300シリーズ」と呼ばれる今回の新型は、ランドクルーザーの本質である信頼性や耐久性、悪路走破性を進化させるとともに、「世界中のどんな道でも運転しやすく、疲れにくい走り」を追求。エンジンやプラットフォームなど、車両を構成するすべての要素が全面刷新された。
特に車両構造については、従来モデルから耐久性の高さを特徴とするボディー・オン・フレーム方式を踏襲しつつ、「GA-F」と呼ばれる全く新しいプラットフォームを採用。ラダーフレームは設計の変更と新しい溶接技術の導入により、従来比+20%の高剛性化と軽量化を実現した。また、架装されるボディーについても高張力鋼板の採用を拡大したほか、ボンネットやルーフ、すべてのドアパネルをアルミニウム化。車両全体では、実に約200kgもの軽量化を果たしているという(「ZX」グレード同士の比較)。さらに車体上部の軽量化は低重心化にも寄与しており、パワートレインの搭載位置変更(後方へ70mm、下方へ28mm移動)とも相まって、ドライバビリティーが改善したと説明されている。
一方、足まわりについても、前:ダブルウイッシュボーン式、後ろ:トレーリングリンク車軸式というサスペンション形式は踏襲しつつ、設計を全面変更。リアダンパーのレイアウトを見直して乗り心地と操縦安定性を改善したり、サスペンションアームの配置変更によってブレーキング時の安定性を高めたりと、オンロードでの快適性の向上を図っている。もちろん従来モデルよりホイールアーティキュレーション(1輪が段差に乗り上げても、他の3輪が浮き上がらない限界の高さ)を改善するなど、悪路走破性の強化も抜かりはない。さらに、こうしたジオメトリーに関する改良に加え、4つのダンパーの減衰力を個別に調整する電子制御サスペンション「AVS」には、より素早く反応するリニアソレノイド式のバルブを採用。操縦安定性と乗り心地の改善を図っている。(「ZX」と「GRスポーツ」に採用)
このほかにも、操舵システムには油圧のパワーステアリングに加えてコラムに電動アクチュエーターを備えた「操舵アクチュエーター付きパワーステアリング」を設定。過酷な使用に耐えうる耐久性を保ちつつ、「レーントレーシングアシスト」などの操舵支援機能を追加できるようになった。加えてこの電動アシスト機構は、低速時の取りまわし性の向上や、悪路走行時のキックバックの低減、よりすっきりしたステアリングフィールの実現にも寄与しているという。またブレーキにも、よりリニアな制動特性を実現するべく、ペダルの操作量をセンサーで検出して最適な制動力を油圧で発生させる、電子制御ブレーキシステムを導入している。(ともに「VX」以上の上級グレードに採用)
燃費性能はディーゼル車で9.7km/リッター
パワートレインも刷新しており、3.5リッターV6ツインターボ ガソリンエンジン(最高出力415PS/5200rpm、最大トルク650N・m/2000-3600rpm)と、3.3リッターV6ツインターボ ディーゼルエンジン(最高出力309PS/4000rpm、最大トルク700N・m/1600-2600rpm)の2種類を設定。燃費は前者が7.9~8.0km/リッター、後者が9.7km/リッターとなっている(WLTCモード)。
トランスミッションはいずれもトルコン式10段ATで、エンジンに合わせて変速制御などを最適化。駆動方式は全車共通で副変速機付きのフルタイム4WDだ。また、ドライブトレインでは「ZX」へのトルセンLSD(リア)の採用も新型の特徴となっており、旋回加速時には左右後輪の荷重に応じて駆動力を最適配分。高いコントロール性を実現しているという。
オフロード走行時のサポート機能も進化しており、走行モードに応じて駆動力やサスペンション、ブレーキ油圧などを統合制御する「マルチテレインセレクト」には、「DIRT」「SAND」「MUD」「DEEP SNOW」「ROCK」に加え、路面状況に応じてシステムが自動で走行特性を最適化する「AUTO」モードを設定。さらに副変速機がローレンジ(L4)のときだけでなく、ハイレンジ(H4)のときにも利用できるよう作動範囲を拡大し、より広範なシチュエーションでマルチテレインセレクトが使用できるよう設定を変更した。
このほかにも、自車周辺の映像をモニターに表示する「マルチテレインモニター」には、車体下部前方の透過映像に加えて、後輪周辺をクローズアップして大きく表示する新しいビューを追加。12.3インチディスプレイには、傾斜計やデフロックのオン/オフ、アクセル/ブレーキワークなどを大画面に表示して車両の状態把握をサポートする「オフロード情報表示画面」を新設している。
セキュリティーに指紋認証を採用
動力性能関連以外の装備も、従来型から大きく拡充が図られた。特にユニークなのがトヨタ車としてこれが初採用となる「指紋認証スタートスイッチ」だ。車両に登録された指紋情報とスタートスイッチを押す指の指紋が一致しないとエンジンがかからないセキュリティーシステムで、最大で7人・10本の指の指紋を登録できる。
予防安全・運転支援システムも進化しており、先進機能を追加した最新の「Toyota Safety Sense」を搭載。オプションで路車間通信や車車間通信技術を活用し、死角に位置するクルマや歩行者の存在を検知したり、緊急車両の接近をドライバーに知らせたりするほか、よりスムーズなクルーズコントロールの追随走行を可能にする「ITS Connect」も用意している。
このほかにも、快適装備として最大3人分の車両設定(ドライビングポジション、エアコン等の室内設定、メーター等の表示設定)を記憶させられる「マイセッティング」機能や、車内の空気を清浄に保つ「ナノイーX」などを採用。オプションで保冷機能も用意される運転席・助手席間のセンターコンソールボックスは、2列目シートからでもアクセスできるようフタが横開きに変更された。
また、インテリアではシート配置の見直しもトピックとなっており、フロント着座位置を後方に移動しつつセカンド/サードシートの構造や配置を見直すことで、各席の居住性や荷室容量を向上させつつ衝突安全性も改善。3列シート仕様の乗車定員を8人から7人に変更し、快適性の向上も図っている。また3列目シートについては、左右跳ね上げ式だった格納方法を電動格納・展開機能付きの床下収納式に変更。大開口の一体式テールゲート(従来型は上下2分割式)とも相まって、ラゲッジスペースの利便性が大幅に改善している。
高性能グレード「GRスポーツ」を新設定
さらに新型ランドクルーザーでは、新グレード「GRスポーツ」の設定も大きなトピックとなっている。
同車は、ダカールラリーに参戦するドライバーの意見をフィードバックしたという高性能モデルであり、電子制御でスタビライザーの利きを変化させ、市街地での走行安定性と悪路走破性を同時に高める「E-KDSS(Electronic-Kinetic Dynamic Suspension System)」や、それに合わせた専用チューニングのAVS、フロント/リアの2つの電動デフロックなどを標準装備。さらに内外装のデザインでも、他のグレードとの差異化を図っている。
トヨタは2023年以降、ダカールラリーにこの「GRスポーツ」をベースとしたランドクルーザーの競技車両を投入。ラリー参戦を通じて車両のポテンシャルをさらに進化熟成させ、市販車へとフィードバックする取り組みを続けていくとしている。
(webCG)