フォルクスワーゲン・アルテオン シューティングブレークTSI 4MOTION Rライン アドバンス(4WD/7AT)
プレミアムワーゲン 2021.09.29 試乗記 フォルクスワーゲンの5ドアクーペ「アルテオン」から派生した、スタイリッシュなワゴン「アルテオン シューティングブレーク」。そのステアリングを握った筆者は、従来のブランドイメージからは想像できなかった仕上がりに衝撃を受けたのだった。スタイリッシュなだけじゃない
ゲゲッと、その太巻きずしの海苔(のり)みたいに薄いタイヤサイズにまずは驚愕(きょうがく)した。245というトレッドもさることながら、このクラスにして20インチの35である。すっかり忘れていたけれど、日本仕様のアルテオンは2017年に上陸してからというもの、このウルトラ超偏平タイヤを標準で装着しているのだ
しかし、あらためて見てみると、う~む、これはいくらなんでもやりすぎでしょう。
と思いつつ走りだしたら、これまたビックリ。平滑な路面、今回試乗した千葉・館山自動車道みたいなところだと、けっこうイケる。イケるどころか、飛ばすほどに快適になる。ああ、これぞ20世紀の夢。アウトバーンの速度無制限区間に合わせたかのような高速セッティングなのだ。フォルクスワーゲンが「グランツーリスモ」と呼ぶのも納得である。
フォルクスワーゲンの旗艦アルテオンは、横置きモデュラープラットフォームのMQBを使った、オシャレな4ドア+リアゲートのクーペである。サイズは「パサート」に近いけれど、パサートよりもワイド&ローで、ホイールベースは45mm長い。
ただスタイリッシュなだけではなくて、室内は大人が後席にもちゃんと乗れる広さが確保されている。おまけに、リアゲートを開けると、大きな荷室が現れる。容量はVDA方式で563リッター。後席の背もたれを倒せば1557リッターに広がる。これはアウディのワゴン「A4アバント」の495リッター/1495リッターと比べると、いかにも広い。
そのアルテオン、本国では2020年に4年目のマイナーチェンジを受けて、内外装をリフレッシュ。内装では従来のアナログのメーターに代わり、フルデジタルメータークラスターが採用されている。エアコンのスイッチもタッチ式に変更。運転支援システムも最新版を標準装備するなど、4年分のアップデートが施されている。
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パワーユニットも官能的
もちろん、一番わかりやすい目玉は新しいボディー、シューティングブレークを名乗るワゴンが新たに加わったことだ。ここで紹介するのは、オリンピックが始まろうかという2021年7月某日に国内発売となった最新型アルテオンの「シューティングブレークTSI 4MOTION」の高いほうのモデル「Rライン アドバンス」である。同じ644万6000円で「エレガンス」 という仕様もあり、Rラインがダッシュボードにアルミのパネルを採用しているのに対して、ウッドのパネルとブラウンのシートが組み合わせられたりする。Rラインがモダン、エレガンスはトラッドと分類できる。
シューティングブレークも、これまでのファストバックのアルテオン同様、パワートレインは2リッター直4直噴ターボと7段DSGのみ。駆動方式はフルタイム4WDとなる。この4WDシステムは、前後トルク配分を100:0~50:50の範囲で制御する。普段は燃費を稼ぐためにFWDに徹し、発進・加速時には後輪へのトルク配分を増やすことにより、車両の安定性を担保している。
エンジンは回すほどに快音を発する。ああ、日本に速度無制限区間があったら……。フロントに横置きされるガソリンの直4直噴ターボは排気量1984ccにして、最高出力272PSと最大トルク350N・mを発生する。いまどき貴重なピュア内燃機関で、リッターあたり136PSの高性能を誇る。フォルクスワーゲンブランドなのに、「アウディA4」の45 TFSIユニットの249PSを上回っているのだから、革命的といってもよいかもしれない。
細かいことを申し上げると、最大トルク370N・mのアウディはよりトルク重視のチューニングということになるけれど、フォルクスワーゲンアルテオンの2リッター直噴ターボも最大トルクが20N・m劣るだけで、中低速トルク重視であるところは変わらない。80km/hでDSGは7速、1500rpm。60km/hに速度が落ちると、自動的に6速に落ちて、やっぱり1500rpmで静かに回っている。エンジン回転を極力抑えて、燃費を稼ごうとしているわけである。
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ブランド価値を高める一台
乗り心地は、低速で路面が悪いと、さすがにそれなりに揺れる。それでも、そのときドライバーの脳裏に浮かぶのは、あ、それほどでもないじゃん、というもので、“35”というウルトラ・ロー・プロファイルでも、まぁまぁ、成立している。DCC(アダプティブ・シャシー・コントロール)と、開口部の広い5ドアなのに強固なボディーのおかげだろう。
ルーフを延ばしてワゴンにした恩恵で、荷室はますます広くなっている。VDA方式による数字だと、普段は565リッター、後席の背もたれを倒して1632リッターだから、ファストバックのアルテオンの563リッター/1557リッターとさほど違わないようにも思えるけれど、かさばるものを積むなら断然、シューティングブレークである。
もっとも、ファストバックの荷室だって、VDA方式だと、前述したようにA4アバントより広いのである。そのファストバックのアルテオンより広い空間を手に入れて、なにをするのか? そこは使い手の器量が問われるところである。筆者なんぞはたぶん、持て余す……。
スタイリッシュで、ヴァーサティリティー(多機能性)と両立させているところがアルテオンで、それはシューティングブレークでも変わらない。変わらないどころか、ますます多機能性の幅を広げている。アルテオン シューティングブレークを見ていると、1980年代のアウディ アバントの再来のようにも思える。フォルクスワーゲンはアルテオンで確実にプレミアム市場への進出を狙っており、シューティングブレークの追加により、その悲願の達成は着々と近づいているように見える。
アウディ客の受け皿になる!?
試乗車のRライン アドバンスの644万6000円という車両価格は、なんとアウディA4の「アバント45 TFSIクワトロ アドバンスト」、609万円よりも高いのである。アルテオンはホイールベース2835mm、A4は2820mmで、ほぼ同じサイズと見てよい。パワートレインは、縦置きと横置きの違いがあるとはいえ、ほぼ同じだとすると、フォルクスワーゲンがアウディより高いわけだから、これはもう大事件だ。
ちなみに、個人的に気になるタイヤサイズだけれど、A4は「45 TFSI」の「Sライン」でも245/40R18、Sラインでなければ、225/50R17と、アルテオンよりはるかにまっとうなサイズを選んでいる。つまり、フォルクスワーゲンはかなりトンガったことをやっている。そうすることで、これまでVWマークに関心のなかったマーケットからトンガった顧客をゲットしようという作戦をとったわけである。
アウディは2021年の6月に「2026年から発表する新型車は電気自動車のみ、2033年までに内燃機関の生産を原則、終了する」と宣言している。ここからは筆者の想像ながら、フォルクスワーゲンとしては、アウディがEVに専念することで生まれるガソリン車のマーケットを頂戴しよう、と考えているのではあるまいか。
内燃機関をあきらめる人がいて、内燃機関をあきらめた人のマーケットに進出しようとする人がいる。と空想を膨らませてみる。同じグループだから、ちゃんと打ち合わせはしているだろう。それでも100年に一度の大変革期なればこそ。乱世なればこそである。フォルクスワーゲンのプレミアムブランド化。その2歩目がアルテオン シューティングブレークだとすると、3歩目は、このシューティングブレークの最低地上高をちょっと上げた、「ポルシェ・タイカン クロスツーリスモ」みたいなのが出てくる……というのが筆者の予言です。
(文=今尾直樹/写真=郡大二郎/編集=関 顕也)
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テスト車のデータ
フォルクスワーゲン・アルテオン シューティングブレークTSI 4MOTION Rライン アドバンス
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4870×1875×1445mm
ホイールベース:2835mm
車重:1750kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:272PS(200kW)/5500-6500rpm
最大トルク:350N・m(35.7kgf・m)/2000-5400rpm
タイヤ:(前)245/35R20 95Y/(後)245/35R20 95Y(ピレリPゼロ)
燃費:11.5km/リッター(WLTCモード)
価格:644万6000円/テスト車=685万3000円
オプション装備:ボディーカラー<キングズレッドメタリック>(3万3000円)/ラグジュアリーパッケージ<プレミアムサウンドシステム+電動パノラマスライディングルーフ>(29万7000円) ※以下、販売店オプション フロアマット<プレミアムクリーン>(7万7000円)
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:2981km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:302.8km
使用燃料:27.0リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:11.2km/リッター(満タン法)/11.2km/リッター(車載燃費計計測値)

今尾 直樹
1960年岐阜県生まれ。1983年秋、就職活動中にCG誌で、「新雑誌創刊につき編集部員募集」を知り、郵送では間に合わなかったため、締め切り日に水道橋にあった二玄社まで履歴書を持参する。筆記試験の会場は忘れたけれど、監督官のひとりが下野康史さんで、もうひとりの見知らぬひとが鈴木正文さんだった。合格通知が届いたのは11月23日勤労感謝の日。あれからはや幾年。少年老い易く学成り難し。つづく。
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