驚きの販売台数に注目! トヨタは旧型「カローラ」の販売をいつまで続けるのか?
2021.10.13 デイリーコラムモデルライフは10年目
去る9月6日、トヨタの「カローラ アクシオ」と「カローラ フィールダー」が一部改良を受けた。改良内容は安全装備の強化で、自動ブレーキシステムに歩行者検知機能を追加したほか、この10月から義務化された「コンライト」(=オートライト)も標準装備となった(同時に2015年3月以降に販売されたアクシオ/フィールダーが対象のソフトウエアアップグレードキットも登場)。今回の改良によって、安全性が高まったのはもちろん、新たにサポカー補助金対象になったのもメリットだそうだ。
それにしても、アクシオとフィールダーがいまだに販売されていたことに驚く向きもあるかもしれない。ご承知のように、これらはもともと11代目カローラとして2012年に発売されたモデルである。現在のカローラの主役はいうまでもなく、2018年6月にハッチバックが、2019年に9月にセダンとワゴンが国内発売となった12代目だが、「法人のお客さまを含めた幅広いニーズにも対応」するという理由から、12代目登場以降もアクシオ/フィールダーが継続販売されてきた。
こうして先代にあたるカローラが今も残っている最大の理由は、12代目カローラの全幅が5ナンバー枠を超えたことと、売れ筋のハイブリッドが1.8リッターとなって自動車税が上がってしまったことが大きい。3ナンバー化も自動車税アップも、それによって燃費が大幅に向上するとか、仕事の生産性が明確に上がるなどの目に見えるメリットがなければ、法人需要では受け入れられにくい。
これに似た例として、2009年5月の「プリウス」のフルモデルチェンジが思い出される。このとき新発売された3代目プリウスでも、パワートレインがそれまでの1.5リッターから1.8リッターに拡大された。これを受けて、従来型の2代目が法人向けに特化した「プリウスEX」として継続販売されたのだ。プリウスEXは最終的に2012年3月まで3年近くも生産が続けられた。そんなプリウスEXがお役御免となれたのは、1.5リッターハイブリッドを積んで、さらに車体サイズも5ナンバー枠におさまる「アクア」が2011年末に登場したからだ。
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「CX-30」よりも売れていた
アクシオ/フィールダーにおける今回の改良は、やむにやまれぬ法規制対応というよりは、この夏に期間延長が発表されたサポカー補助金の駆け込み需要を含む商品性向上の側面が大きい。そんなアクシオ/フィールダーの最新カタログをあらためて見てみると、さすがに装備グレードは「EX」の一択だが、売れ筋の1.5リッターハイブリッドのほか1.5リッターの純ガソリン車もいまだにある。しかも、その純ガソリン車ではCVTとMT、4WD(はCVTのみ)が選べる! 車体色も典型的な営業車カラーである白と銀のほかに黒もあり、加えてアクシオ専用に「ブロンズメタリック」、フィールダー専用に「ダークブルーマイカ」の各4色……という充実ぶり。つまり、アクシオ/フィールダーには“まだまだ現役感”が色濃くただよっているのだ。
実際、アクシオ/フィールダーは、われわれ外野が想像する以上に売れている。たとえば、9月に12代目のカローラセダンとツーリングが発売された2019年の年間販売(=国内新規登録台数)は合計5万2290台。この年の(新旧合わせた)カローラ全体の年間販売は10万4406台だったから、半分の台数をモデル最末期だったアクシオ/フィールダーが稼いだことになる。モデルチェンジもなんのその(もしくは、販売終了を危惧した駆け込み?)の人気だった。
続いて完全に新旧併売となった2020年の年間販売は合計2万7770台。同年はカローラ全体で11万8726台だったから、アクシオ/フィールダーのシェアはじつに23%。しかも、同年の国内販売ランキングでいうと、アクシオ/フィールダーだけで26位の「スズキ・スイフト」と27位の「マツダCX-30」の間に割って入るほどの台数である。スイフトやCX-30とちがってアクシオ/フィールダーは日本専用車だが、開発費を回収し終えた(?)商品がまだこれだけ売れるのだから、十二分にビジネスになっていると思われる。
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希少な5ナンバーセダン
車体サイズと自動車税の都合だけなら、アクシオ/フィールダーの需要はアクアが吸収できるはずなのだが、いまだにこれだけの台数が売れているのは、アクアではすくいきれない需要が少なからずあることを意味する。そんなアクシオ/フィールダーの需要について、トヨタ広報部は「法人のお客さまを中心に購入いただいております。業種でいうと、医薬品関係、医療機器関係、保険会社、住宅ホーム系などが多いようです」と語る。
医薬品や医療機器メーカーの営業車には、キャビンとトランクが独立した3ボックスセダンが伝統的に使われてきた。人命に関わる製品や貴重なサンプルをあつかうことから、それを積むトランクには最大限のセキュリティーや安全性が必要とされたからだ。また、保険会社を含む金融業や不動産業でも、営業車はセダンと決めている企業は今もある。信用が第一の業種であることと、後席に顧客を乗せる機会もあるために、サイズや価格を問わずにフォーマルなクルマであるべきとの判断だろう。
とくに5ナンバーで1.5リッター以下のセダンは、いまや掛け値なしにアクシオしか選択肢はない。「日産ラティオ」は2016年末に、「ホンダ・グレイス」は2020年7月(教習車のみ2021年夏まで生産)にそれぞれ国内販売を終了した。同じトヨタにあった長寿5ナンバーセダン「プレミオ/アリオン」も、この2021年3月についに生産終了となった。
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ジャンル自体は縮小傾向
フィールダーのような小型ステーションワゴンにも根強い法人需要があるという。「トヨタ・プロボックス」や「日産AD」などの商用4ナンバー車は車検の有効期間が1年(初回は2年)となるうえに、自賠責保険料が乗用車より高い。さらに任意保険料も4ナンバーのほうが高くなる傾向にあるため、あえて5ナンバーを選ぶ企業も少なくない。それなのに日産の「ウイングロード」は2018年3月に販売終了。以降、フィールダーに対抗できるのは「ホンダ・シャトル」の1台だけだ。
このように、アクシオ/フィールダーが根強く売れるいっぽうで、他社競合車が次々と撤退しているのは、このジャンルそのものの需要がやはり減少傾向にあるからだろう。実際に前記の業種でも、これまでのしばりを解いて、アクアやプリウス、12代目カローラ、あるいは「日産ノート」や「ホンダ・フィット」を営業車に使う企業が増えている。まあ、購入する企業側からすれば「ここまで選択肢が減らされれば、やむをえない」という理由も間違いなくあるはずで、これもまた、いつものように“ニワトリとタマゴ”の議論を呼びそうではある。
もっとも、昨今のクルマ業界を取り巻く環境を考えると、現行のアクシオ/フィールダーも需要の自然減、あるいは法規制などの外的要因のどちらかによって継続販売が困難になった時点で、次のモデルが用意されないまま姿を消す可能性が高そうだ。なにはともあれ、5ナンバーセダン/ステーションワゴンよ、永遠なれ!?
(文=佐野弘宗/写真=トヨタ自動車、光岡自動車/編集=藤沢 勝)
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佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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