そんなに急いで大丈夫? 国連の環境会議「COP26」に見る長期的視座の必要性
2021.11.26 デイリーコラム極端な規制は技術革新を止めるだけ
2021年11月13日、国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)が無事に終了しました。今回のCOPでは、石炭火力発電の扱いに関して、EUとインド&中国が対立し、最終的に「段階的廃止」が「段階的削減」にトーンダウンしたのが最大のポイントでした。日本はほとんど蚊帳の外にあり、ヘンな団体から化石賞を贈られることもありませんでした。よかったです。
今回ひたすらやり玉にあげられたのは石炭で、ハイブリッドを含むICE(内燃エンジン)車が議題に上ることはありませんでした。EUを中心とした環境派にとって、ICE車はすでに過去のもの、という認識なのかもしれませんが。
それにしてもCOPを見ていると、毎回つるし上げ大会のようで、気分がよくないです。今回非難された石炭だって、石炭が悪いわけじゃない。悪いのは二酸化炭素(CO2)でしょ? トヨタ自動車の豊田章男社長も、「敵は炭素で、内燃機関じゃない」と吠(ほ)えましたが、石炭だって、アンモニア混焼などの技術革新によってLNGより効率がよくなる可能性はある。今回対象になった石炭火力発電は、「排出削減対策が講じられていない発電設備」のみが対象なので、日本の石炭火力は全滅ではないですが、すでに新規の投資はできない状況なので、実質的には「早く全廃しろ!」ですよね。
内燃エンジンだって、e-fuelが実現すれば、トータルで電気自動車(EV)よりCO2を出さなくなるかもしれない。十把ひとからげで「アレはダメ!」と決めつけるのは、技術革新を止めるだけじゃないだろうか。それがEUの狙いなのかもしれませんが。
でもまぁ、石炭火力発電が標的にされたことで、EV化は、発電の脱炭素化と並行してやらないと意味がないことだけは、はっきりしたと思います。とにかく結果を出せば誰も文句はないわけなので、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、日本もがんばらないといけません。それすら超絶イバラの道なので、今後のCOPで「もっと前倒ししろ」とか言われても、それは絶対ムリ! ヘタすりゃ停電でいっぱい人が死にますよ!
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長期的な視座で地球を見てみると……
私は脱炭素化には賛成ですが、EU各国が主張するように、死ぬほど先を急ぐ理由はないと思っています。というより、彼らの論調は、近視眼的すぎると思います。
CO2が増加していることは間違いなく、それによって温暖化が進んでいることも確かです。ただ、この議論に関しては、産業革命以降ばかりがクローズアップされている。つまり、たかだか数百年だ。数百年なんて、地球史46億年から見たらあまりにも短すぎる! 顕微鏡で宇宙を観測するようなものです。
実際、少し長い目で見ると、地球は確実に寒冷化するタイミングです。氷期と間氷期が繰り返すサイクルは、約258万年前から顕在化し、80万年前から現在まで、約10万年周期になっています。主な原因は地球の公転軌道の離心率、地軸の傾斜角、地軸の歳差運動の周期的変化。それによって陸地面積の多い北半球高緯度の夏の日射量が変動して引き起こされているというのが、ミランコビッチ仮説です。私はそのあたりに関して、グレタさんより長期的視野を持っております。
このサイクルで注目すべきは、氷期に比べると間氷期が非常に短いことです。氷期が9万年くらい続いたあとに、ひょっこり間氷期が1万年ちょい現れて、また氷期がやってくる。つまり、仮に人類がCO2を大量放出していなければ、あと100年後か3000年後かわかりませんが、地球は確実に寒冷化し、氷期がやってくることになったはず。しかし幸いにも人類が大量のCO2を放出したため、それを防ぐことができたのです! それを評価する人が誰もいないのは無念(笑)。
ただし、このまま放出が続くと気温は上昇を続け、最終的には白亜紀みたいに平均気温が10℃くらいアップ。海水面が何十mも上がってしまう。それを止めよう! とCOPで議論しているわけですよね。それはとても大事なことだけど、カーボンニュートラル実現までの10年20年の時間差なんて、長い目で見ればミクロではないでしょうか。
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無意味に焦りすぎるのは禁物
さらに長い目で見ると、CO2の濃度は、地球誕生から現在まで、傾向としては一貫して減少を続けており、10億年後にはゼロになると予測されています。原因は生物がCO2を取り込んで有機物をつくり、それが海底に沈殿して、プレートテクトニクスによって少しずつマントル内に取り込まれ、大気中に再放出されなくなるからです。CO2がゼロになると、植物は全滅します。植物が全滅すると動物も全滅です。地球温暖化よりはるかに恐ろしい結末です。
さすがに10億年後の大ピンチをいま考えてもしょうがないのですが、この先1000年くらいのスパンで考えても、ひとまず今世紀内にカーボンニュートラルを実現できれば、とってもいいことが起きるらしいです。来るはずの氷期が来ずに、地球が今より少しあったかい状態で、かなり長期間(人類の尺度で)安定するのです! これは私の希望的観測ではなく、専門家がシミュレートした結果です。
とはいうものの、未来のことは誰にもわかりません。過去100万年間に、海水面の大きな上昇と下降は12回は起きていて、その高低差は200mにも達しているのです。1m上がったらタイヘンだと騒いでいる人類は、本当にちっぽけな存在です。気候をコントロールするのは、大地震を止めるのと同じくらい、難しいんじゃないでしょうか。
われわれ日本人は、「自然には勝てない」という諦観(ていかん)を持っています。そのせいもあって、「一分一秒でも早くカーボンニュートラルを!」というのは、無意味な焦りすぎに思えて仕方ないのです。
今回のCOP26で採択された「グラスゴー気候合意」は、自動車業界に新たな影響を及ぼすような内容はありませんでしたが、すでに約束した以上、日本も2050年までにカーボンニュートラルを実現せねばならないことに変わりはありません。そのためにも日本の自動車業界は、EUの脅しに負けず、EV一辺倒ではなく、多様な選択肢の研究を続けていただきたいものです。
(文=清水草一/写真=フォルクスワーゲン、ダイムラー、トヨタ自動車/編集=堀田剛資)
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清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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