トヨタが3冠を達成した2021年の世界ラリー選手権を大総括! 来季の見どころを解説する
2021.12.03 デイリーコラムフタを開ければトヨタが完勝
節目となる2021年の世界ラリー選手権(WRC)、イタリア・モンツァが舞台となった最終戦ラリー・モンツァでは、トヨタ(TOYOTA GAZOO Racingワールドラリーチーム)のセバスチャン・オジェ/ジュリアン・イングラシア組が優勝。彼らにとって8回目となるシリーズチャンピオンの獲得とともに、オジェのフル参戦終了と、イングラシアの引退に花を添えました。さらにトヨタは、今シーズンのマニュファクチャラーズタイトルも獲得。「セリカ」時代の1994年以来となる、マニュファクチャラー、ドライバー、コドライバーのタイトル3冠を達成することとなりました。
シーズン開始前は「例年通り、トヨタとヒュンダイ(ヒュンダイ・シェル・モービス・ワールドラリーチーム)の争いになるだろうな」と思っていたのだけれど、フタを開けるとヒュンダイが予想外に苦戦。トヨタはオジェ、エバンスに加えて、成長著しいロバンペラの活躍で終始ライバルをリードし続けました。毎度のことながら野球で例えると、1985年の阪神タイガースの新ダイナマイト打線のような布陣。ベテランと若手がうまくかみ合い、かつ「ヤリスWRC」の熟成もあっての結果といえるでしょう。
今シーズンからフル参戦を開始した勝田貴元も、負傷や家庭の事情による2度のコドライバー交代などがあったものの、直前に参戦を取りやめたギリシャを除けば、全12戦中リタイアは2戦のみ。サファリでは念願の2位ポディウムを獲得するなど、着実に成長を見せました。
ポイント圏内での完走も多く、ドライバーズチャンピオンシップで7位を獲得。もともとはレーシングドライバーだったタカだけに、ハイスピードステージでの対応力は申し分なく、一発の速さも兼ね備えています。あとは3日間を通してミスを減らして走り切れれば、リザルトはおのずとついてくると思います。
それにしても、当初は取材に行くつもりでいたサファリラリー。感染症の影響で日本から誰も取材に行けず、彼の初ポディウムを現場でお祝いできなかったのが残念で仕方ありません。来年こそは!
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最後のワールドラリーカー規定とともに歩んだ5年間
ところで、冒頭で「節目となる2021年のWRC」と述べましたが、なぜわざわざこんな書き出しにしたかというと、2021年が現行のワールドラリーカー規定で行われる最後のシーズンだからです。
大幅なパフォーマンスアップが話題となったこの規定が導入されたのは、2017年のこと。ヤリスWRCはそれに合わせてデビューしました。初陣のラリー・モンテカルロでは、ヤリ=マティ・ラトバラ/ミーカ・アンティラ組が2位となり、いきなりのポディウムフィニッシュで周囲を驚かせ、続く第2戦スウェーデンでは、同じくラトバラ/アンティラ組が優勝。復帰初年度とは思えないスタートに周囲の期待も高まりました。ただ、その後はマシントラブルが頻発する結果となり、最終的にはマニュファクチャラーズランキング3位でシーズンを終えています。
以降、5シーズンにわたり続けられてきた現行規定でのWRC。全戦取材していたわけではないけど、ボクが行くたびにトヨタが好成績を挙げるので、勝手に勝利の女神(おっさんだけど)を名乗っていた次第です。トヨタの活躍ぶりに、これは日本でも空前絶後のラリーブーム到来か? ……と期待したのですが、そんなものが起きることもなく、ボクのお財布も特に恩恵に浴すことはありませんでした(笑)。それでも、ケータリングはいつもごちそうさまでした! おいしくていつもいっぱい食べてすみません。ちなみに、ヒュンダイのケータリングもおいしくて、なかでもデザートが絶品です。
さて、2017年からトヨタ、ヒュンダイ、Mスポーツ(Mスポーツ・フォード・ワールドラリーチーム)と3つのチームが走らせてきたワールドラリーカーですが、来年からはいよいよ新規定のラリー1へとスイッチすることになります。その特徴を簡単に、ズバッと、ひとことで言うと、ハイブリッドカーになります。スペースフレームシャシーに、1.6リッターガソリンエンジンとモーターを組み合わせたパワートレインを搭載するんですね。
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新しいマシンに新しいドライバーの顔ぶれ
このラリー1マシンですが、車重が増えるため、条件によっては下位カテゴリーのラリー2より遅くなることも予想されます。しかし、そこはやはりトップカテゴリーのワークスマシンなので、順位で負けるなんてことはないでしょう。トヨタは「GRヤリス」、ヒュンダイは「i20」、Mスポーツが「フォード・プーマ」で参戦すべく、各チームともテストを繰り返しているところです。この規定を初めて知ったとき、「ハイブリッドになったら、あの爆音や排ガスの香りともおさらばか。つまらんな」と思ったのですが、動画サイトにアップされた各チームのテスト風景を見る限り、それは杞憂(きゆう)に終わりそう。ちゃんとラリー車らしい排気音を奏でていました。さすがにニオイまではわからないけど。
そんなラリー1マシン、長年のファンからしたら、ぶっちゃけ「どこが速そうなの?」って疑問もおありでしょう。はい、ボクもわかりません。現状ですと(超個人的な印象ですが)Mスポーツのプーマがめちゃくちゃカッコいい! ということ以外、判明している事実はありません。SUVがベースでこんなにカッコよくなるなんて、反則ですよ。
さらにMスポーツネタをひとつ紹介すると、まだ未確定ながら、プーマのテストに参加しているセバスチャン・ローブがチームに加入するとのウワサも。こうなると、ドライバーの布陣がいまひとつだったMスポーツが、来年は大化けする可能性もあります。他のチームに目をやると、トヨタはエサペッカ・ラッピが復帰し、オジェとマシンをシェア。ヒュンダイはヌービル、タナックが残留し、ソルドとマシンをシェアするかたちで若干20歳のオリバー・ソルベルグを起用するとしています。これは、トヨタのロバンペラとの若手対決も見どころになりそう。
そんなこんなで、ハイブリッドになってもやっぱりラリーはラリー。楽しみな話題がいっぱいです。心配なのは、世界を揺るがす例の感染症。もう名前を口にするのもイヤになるぐらいです。ボクも開幕戦のモンテカルロには行くつもりでいるけど、果たしてどうなることやら。早く世界が落ち着くことを願います。
(文=山本佳吾/写真=TOYOTA GAZOO Racing、Red Bull Content Pool、Ford Motor Company/編集=堀田剛資)
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山本 佳吾
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