アウディRS e-tron GT(4WD)
底が知れない 2021.12.29 試乗記 富士スピードウェイのレーシングコースで、アウディのフラッグシップBEV 「RS e-tron GT」をテストドライブ。646PSのシステム出力を誇る、電動4WDスポーツモデルの加速性能やハンドリングをチェックした。果たしてサーキットでの印象は?時代を象徴するスポーツEV
モータースポーツ活動やそうしたシーンへの参戦車両を含む高性能モデルの開発と生産、さらに昨今ではライフスタイル製品のプロデュースなども手がけるのが、アウディ傘下にあるアウディスポーツ社だ。
2016年11月にそれまで用いてきた“クワトロ社”の名前を改めて今日へと至る、そんなブランド謹製のスーパースポーツモデルを一堂に会した「Audi Sport Circuit Test Drive」と銘打たれたイベントが、富士スピードウェイのレーシングコースを舞台に開催されたというのは、すでに速報としてお伝えした「RS 3」のリポートでも触れたとおり。
そこにはフルモデルチェンジを受けて日本で発表されたばかりの新しいRS 3に加え、ステーションワゴンながらも4リッターのV型8気筒ユニットにツインターボを加えたことで、最高600PSの出力と最大800N・mのトルクを発生するという途方もない強心臓を搭載した「RS 6アバント」や、ミドシップレイアウトで2シーターのピュアスポーツモデルとして、現在でもブランド全体のイメージリーダー役を務める「R8」など、そうそうたるメンツが勢ぞろいしていた。
しかし、そうしたなかにあっても異彩を放っていたのが、これからの時代を暗示させ、唯一エンジンを搭載していない「e-tron GT」だ。
というわけで、ここでお伝えするのは「ポルシェ・タイカン」と車体骨格や主なランニングコンポーネンツを共有するe-tron GTの、さらに「RS」という記号が付加される高性能バージョンの印象である。
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最高出力の差は明確
とはいえRS 3のリポートでもお断りしたように、今回のテストドライブには厳しい制約があり、このモデルに触れることができたのもトータルで5分あるかないかという時間のみ。加えて、先導車に追従していく必要もあったため、ゆっくり走りながら操作系をチェックしつつ……などということもできなかったから、初試乗の機会としてはなんとも厳しい条件になってしまったことをあらかじめお断りしておきたい。
ちなみに、ペースメーカーたる先導車と当方が乗るRS e-tron GTとの間にはRSの2文字が付かない“普通”の「e-tron GTクワトロ」が挟まれていて、正確に記せば試乗車両の直前を先導したのはこのモデルだ。
空気抵抗係数=Cd値がわずかに0.24というデータを裏打ちするように、何とも流麗なプロポーションの4ドアボディーはもちろん両者で共通ながら、前後にレイアウトされる2基のモーターを合わせてのシステム最高出力は、ローンチコントロール時にはRS e-tron GTが646PS(475kW)、e-tron GTクワトロが530PS(390kW)。通常時でも598PS(440kW)と476PS(350kW)とそれなりに大きな差のあるデータが発表されている。
もちろん街乗りシーンを筆頭とした常用時であれば、そうした圧倒的な出力を全開放する場面などはあるはずもなく、事実上は「スペック表上の数字が異なるだけ」ということになるに違いないのだが、舞台を富士スピードウェイのレーシングコース上に限ってみれば、100PS以上という最高出力の差というのは、やはり明確な加速力の違いとして認識させられることになる。すなわち、フルアクセルの状態ではたちまちe-tron GTクワトロに追いつくことになったというのが、“RS”の実力でもあったのだ。
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あっけなくレーシングスピードに
RS e-tron GTで公称されている0-100km/hの加速タイムは、3.3秒という数字。これがどの位のものかというと、「いわゆるスーパーカーでも、発進時のホイールスピンによるロスのない4WDシステムの持ち主でないとマークするのはかなり困難と思われる」というほどのデータだ。
一方で、そんな4WDシステムを備えていれば、この程度の数字はおろか2秒台をマークするものも昨今珍しくないというのが、BEVを取り巻く状況。大出力モーターと大電流を引き出すことのできる駆動用バッテリーという組み合わせを備えるBEVにとって、強烈な瞬間加速力を手にするハードルがもはやさほど高くないことは、純エンジン車の場合には今になってもごく少数に限られるそんなパフォーマンスの持ち主が次々と姿を見せる現状に証明されているといっていいはずだ。
しかも、純エンジン車であれば例外なく“ごう音”を伴うに違いないそうしたフル加速のシーンが、無音とまではいかなくても飛び抜けて高い静粛性とともにあっさりと実現されてしまうのもBEVならでは。RS e-tron GTの場合ももちろん例外ではなく、あっけなくレーシングスピードに達してしまうというのがまさに異次元の感覚であった。
ちなみに、e-tron GTでは“RS”にもそうでないほうのモデルにも、電子的に合成されたデジタルサウンドを車内外に装備されたスピーカーを通じて発生させる「e-tron GTスポーツサウンド」がオプション装備として用意されるというのだが、そんなオプションの有無も不明なままヘルメット着用でスタートしてしまったゆえ、今回はその音色を確認することはならなかった。
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予想以上のダイナミズム
全高こそ1.4mを下回るものの全長はほとんど5m、全幅も1.9mを軽くオーバーという大柄なボディーに、93.4kWhという大容量の駆動用バッテリーを搭載するゆえ、車両重量は2.3tオーバーとやはり重量級。それでも、前述のごとくスーパーカーもかくやという発進加速力をマークすることができるのは、こちらもすでに紹介したように、最高出力にすればなんと650PSにも迫るという前後モーターを合計しての“力技”がモノをいった結果によるものに違いない。
一方、ほんのひと昔前の常識からすれば「素早く安定したコーナリングなどとても望み薄」とも考えたくなるそんな“重厚長大”なディメンションの持ち主が、実際に走ってみるとなんとも落ち着いて低重心感あふれるダイナミックなコーナリングを味わわせてくれたのは、そもそもロー&ワイドな基本プロポーションや、そのなかにあっても駆動用バッテリーを可能な限り低い位置に敷き詰めたレイアウト、そして前後異サイズの21インチ径シューズ(オプション)が生み出すグリップ力や、強靱(きょうじん)な制動力を生み出すブレーキシステムによる威力などが、やはり総合的にバランスされた結果ということになるのだろう。
果たしてレーシングスピードで周回を重ねたシーンではどんな事が起きるのか?(起きないのか?)。そして、さまざまなコンポーネンツを共有するタイカンとはどんな乗り味の違いがあるのか? 一瞬の“味見”をしてしまったからこそますます興味の尽きない、現時点ではある意味、最高峰に位置すると思えるスーパーなBEVのテストドライブであった。
(文=河村康彦/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
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テスト車のデータ
アウディRS e-tron GT
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4990×1965×1395mm
ホイールベース:2900mm
車重:2290kg
駆動方式:4WD
フロントモーター:永久磁石同期式電動モーター
リアモーター:永久磁石同期式電動モーター
フロントモーター最高出力:238PS(175kW)
フロントモーター最大トルク:--N・m(--kgf・m)
リアモーター最高出力:455PS(335kW)
リアモーター最大トルク:--N・m(--kgf・m)
システム最高出力:646PS(475kW)
システム最大トルク:830N・m(84.6kgf・m)
タイヤ:(前)265/35R21 101Y/(後)305/30R21 104Y XL(グッドイヤー・イーグルF1アシメトリック5)
一充電走行距離:534km(WLTCモード)
価格:1799万円
オプション装備:--
テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:4205km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:--km/kWh

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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