第676回:一生に一度は見てみたいクラシックカーイベント5選
2022.02.14 エディターから一言![]() |
いまだ終息の気配をみせないコロナ渦において、自分の趣味のために観光旅行をすることなどは誠に不謹慎と言われそうだが、こういうときこそ自由に旅行ができるようになった際に、どこを訪ねてみたいのかをじっくりと妄想……いや、考えることができる。そこで今回は、いつか一度は行ってみたいカーマニア必見の「世界のクラシックカーイベント」を5つ紹介する。
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伝統と格式の「ペブルビーチ・コンクールデレガンス」
「ペブルビーチ・コンクールデレガンス」は、1950年の第1回開催から、2022年で70回以上の開催を続けてきた伝統のコンクールイベント。会場となるのはアメリカのカリフォルニア州ペブルビーチにある、ゴルフのUSオープンでも有名なペブルビーチゴルフリンクスだ。
カリフォルニアのモントレー周辺では、毎年8月半ばの約1週間にわたって各種のクラシックカーイベントが多数開催されることから、いつしかそのイベントがある週は「モントレーカーウイーク」と呼ばれるようになった。そのモントレーカーウイークの最後を飾るのがペブルビーチ・コンクールデレガンスである。
イベントは実際にコンクールデレガンスにエントリーしたモデルが公道を走行するツアーデレガンスと、日曜日にペブルビーチゴルフリンクスの18番ホールをステージとし、クラス別に姿をそろえるコンクールデレガンスに大別されており、その年ごとにフィーチャーされるブランドやモデルがあるのも大きな特徴だ。
全世界から貴重な車両がこのステージに運び込まれ、それを目当てに毎年欠かさずこのイベントだけは観覧するというファンもいるほど。世界で最も格調高く権威あるコンクールデレガンスといわれており、訪れる価値は大いにあるだろう。
新車発表の場としても注目の「ザ・クエイル・ア・モータースポーツ・ギャザリング」
「ザ・クエイル・ア・モータースポーツ・ギャザリング」はモントレーに隣接するカーメルにあるゴルフリゾート、クエイルロッジで開催される格調高きクラシックカーイベントである。しかし、このイベントを訪ねるのはかなりハードルが高い。
なにしろ入場チケットは、毎回即日完売という人気ぶり。あとはキャンセル待ちをするしかないのだが、なにしろチケットの総数自体が数千枚しかないうえに、そのプライスは600ドル以上もする。チケットがこれだけ希少で高価なのは、できるだけゆったりとした雰囲気の会場で、クエイルロッジ自慢のランチとクラシックカーの世界を楽しんでほしいという主催者の意向が反映されているからだ。
最近ではこのイベントを、ニューモデルの発表の場とするスーパーカーやプレミアムカーメーカーも増え始めた。記憶に新しいところでは、2021年はランボルギーニが台数112台の限定モデル「カウンタックLPI800-4」をここで世界初披露した。そのアンベールの瞬間を見たければ、チケットの壁だけはどうしてもクリアしなければならない。
チケットのなかにはヘリコプターでの遊覧飛行付き4名分で1万5000ドルというものもあるから、それを狙うのも作戦としては悪くはない。ちなみにここで発表されたニューモデルは、その後週末に行われるペブルビーチ・コンクールデレガンスへと運ばれ、あらためて展示されるのが定番のパターンになりつつある。
このモータースポーツ・ギャザリングも、さまざまなクラス分けがあるが、そのなかにはスーパーカークラスなど、現代のモデルがテーマとなるクラスがあるのも特徴。じっくりと展示車両を鑑賞していると、時間があっという間にたってしまい、毎回それに驚かされるのも定番のパターンになりつつある。
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往年のマシンがガチで競い合う「ラグナセカ・モータースポーツ・リユニオン」
モントレーの中心部から約30分。名物コーナーのコークスクリューでおなじみのラグナセカレースウェイが舞台となるクラシックカーレースが、この「ラグナセカ・モータースポーツ・リユニオン」だ。プログラムはモントレーカーウイークの木曜日に始まり、日曜日の夕方まで連日続くから、モータースポーツ好きのマニアには見逃せないイベントだろう。
年式や排気量、あるいはフィーチャーされるメイクスなどによって15ほどにクラス分けされたこのイベントは、走行会ではなく、あくまでも勝負をかけたレース。過去には「フェラーリ250GTO」クラスなどという驚異のレースもあった。
特にここアメリカでは、IMSAやCan-AM、そしてストックカーレースなどの人気が高く、かつてさまざまな栄光を獲得したマシンが現在でも全開で走る姿を見るのは懐かしく、そしてもちろん楽しい。
ちなみに「ブガッティ・ヴェイロン」が、世界で初めてその走行シーンを披露したのは、このイベントの前身である、ロレックス・クラシックカーレース。BMWが創立100周年を記念して、2002年に「2002オマージュ」をワールドプレミアしたのもまた、このイベントであった。
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栄光の競技車両が走る「ルマン・クラシック」
世界一過酷なレースともいえるルマン24時間。その伝統と歴史を現代に復活させてくれているのが、2年に一度、実際の24時間レースと同じコースを使用して開催される「ルマン・クラシック」だ。
参加車はもちろん実際にルマン24時間レースに参加した経歴があるモデルとその同型車に限られるが、一切の改造は許されないなどエントリーが認められるまでの道のりは非常に険しい。それだけにコースを疾走するモデルや、パドックに並ぶモデルを見るのは大いに価値のあることともいえる。
現在のルマン・クラシックは、時代ごとに7つのクラス(プラトー)に分けて開催されている。例えば最も古いプラトー1は1923年から1939年まで、逆に最も新しいクラスは2016年の開催から、1982年から1993年までのグループCモデルの参戦が可能になった(ただしグループCによるレースは1回のみ)。
そしてほかの6クラスが交代しつつ3回ずつのレースを走り、24時間後のフィニッシュを目指すのだ。当然ルマン・クラシックも夜は眠らない。
英国屈指のイベント「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」
南イングランドのサセックス州チチェスター、ここに1万2000エーカーもの広大な私有地を有するのがリッチモンド伯爵家だ。その敷地には一族が暮らすセンターハウスのほかに、牧場やゴルフコースなどさまざまな施設が点在している。ここにサーキットを作ったのは第9代リッチモンド伯爵。その孫にあたる第11代リッチモンド伯爵は、幼少の頃からカーガイたる祖父の影響を強く受け、現在にまで続く「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」のタイトルを掲げたモータースポーツイベントを、1993年に初開催するに至ったという。
グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードが初開催された年、その観客数は1万人をわずかに超えた程度だったとされているが、人気は年々高まり、また2012年からは木曜日から日曜日までの4日間開催となったことなどもあり、最近ではエントラントや観客を含め20万人以上がこのイベントに足を運ぶようになったという。
ここでのメインイベントは、伯爵家、すなわちセンターハウスの前もコースの一部となるヒルクライムだ。クラシックカーはもちろんのこと、最新のスポーツカー、あるいは開発中のプロトタイプまでもが全開でタイムを競う様子は、それを眺めているだけで近い将来の自動車像が想像できて楽しい。
出走を待つ参加車両用のパドックは、一般にも開放されている。憧れのマシンをじっくりと見てサウンドを聞くことができるのもまた、このイベントの魅力である。
今回は、再び自由に旅行ができるようにとの願いを込めて、自動車好きならぜひ訪れてほしい世界屈指の5つのイベントを紹介してみた。晴れて旅立てる日が来るまで、今はこの時間を利用してひたすら情報収集に励もうではないか。
(文=山崎元裕/写真=Newspress/編集=櫻井健一)
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山崎 元裕
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