スバル・フォレスターX-BREAK(4WD/CVT)
乗れば分かります 2022.02.26 試乗記 「スバル・フォレスター」はライバル車と比べていささか地味かもしれないが、悪路、特に積雪路に持ち込むとがぜん輝きを増す一台だ。スタッドレスタイヤを履かせて、スバルならではのシンメトリカルAWDの実力を試してみた。何はなくともSUV
スバルの世界販売の3本柱は「レガシィ」「インプレッサ」、そしてフォレスターだ。それぞれが年に20万~30万台売れている。国内専用の「レヴォーグ」の昨2021年の販売台数が約2万5000台。日本在住だとレヴォーグこそがスバルを代表するモデルに思えるが、3本柱はそれぞれレヴォーグの10倍売れている。なかでも最も売れるのがSUVのフォレスター。何はなくともSUVなのである。
スバルといえば悪路走破性。悪路といえば雪道。というわけで、フォレスターX-BREAKで冬山へ出かけた。新しいと思っていた現行フォレスターも登場から3年半以上たった。登場直後の試乗で、「SGP(スバルグローバルプラットフォーム)」という新しい車台を得てボディー剛性が上がり、それまでより快適な乗り心地になったなと感じたのを覚えている。
2リッター4気筒エンジン+モーターの「e-BOXER」(ハイブリッド)と、1.8リッター4気筒ターボエンジンの2種類のパワーユニットがある。いずれもトランスミッションはCVT。現行登場当初は2.5リッター4気筒エンジンもあったが、途中で消えた。CAFEのせいでひとつ、またひとつとエンジンが減っていく。
主張しないエンジン
今回の「X-BREAK」はe-BOXERを積む。試乗は高速道路から。即座にACCのスイッチに手が伸びるが、久しぶりに乗るので動力性能を確かめるべく支援なしで走らせる。細かい路面の凹凸や横風などの外乱に対し車両が前後左右に細かく揺れるのがやや気になる。もう少しビシッとした直進安定性があれば言うことなし。スタッドレスタイヤであるということは割り引いて考えなければいけないが。
最高出力145PS/6000rpm、最大トルク188N・m/4000rpmのエンジンは欠点が見当たらない。特筆すべき点も見当たらない。どこまでも普通のエンジンだ。長年取り組んできただけあって、CVTの制御は自然で好ましい。アクセル操作とエンジンの回転数が穏やかにリンクし、それでいてCVTの存在意義ともいえる、効率の高い回転数を大きく外さない制御もなされている。効率一辺倒の制御ではないので違和感がない。アクセルペダルをある程度深く、しかし全開ではない程度に踏み込んだ際には、ギアによって変速しているかのようなステップ制御が入る。これもドライバーの感性に寄り添おうとする動きだ。
組み合わせられるハイブリッドのe-BOXERシステムは、コンパクトなモーターとバッテリーによってエンジンを補完する役目を担う。トヨタの「THS」やホンダの「e:HEV」といったストロングスタイルのハイブリッドとは異なり、いわゆるマイルドハイブリッドとストロングハイブリッドの中間的な存在といえる。「40km/h以下の速度域で積極的にエンジンを停止し、EV走行するように制御する」という触れ込みだが、実際には積極的にエンジンが止まる印象はない。もちろんアクセルから足を離すと止まるが、やんわり加速させようと浅く穏やかにアクセルを踏んでもエンジンは始動しがちだ。
主張しないハイブリッド
モーターの出力は14PS程度で、バッテリー容量も最小限。モーターのみで発進することはするがごく短時間であり、エンジンによる走行を基本とし、エンジンのトルクが薄い低回転域でモーターがアシストするのが目的だ。だがそのアシストも、近ごろさまざまな電動車でリッチなモーター駆動、モーターアシストに慣れてしまったせいか、ほんのりすぎて物足りない。高速道路では2リッター自然吸気の純粋な内燃機関と変わらない。モーター出力とバッテリーが小さいということは回生できる電力もわずか。ハイブリッドらしい働きを期待しすぎると肩透かしを食らうだろう。
高速道路を降りて雪道を走行すると、スタッドレスタイヤを装着したフォレスターは途端に水を得た魚となる。一番の頼もしさは、基本はほぼFWDで走行し、前輪が滑ったら後輪にもトルクを配分するタイプではなく、スバルのフルタイム4WDが文字通り常時4輪駆動で走行している点にある。前60:後ろ40のトルク配分を基本に、加速、登坂、旋回などに合わせてリアルタイムにトルク配分が変わる。まず発進時にズルッというタイヤの嫌な回転をほとんどなくしてくれるのがよい。加減速時や旋回時、またそれらが組み合わさった動きの時に、前後の車軸のうち、より荷重がかかっている車軸にトルクを重点的に配分するのでトラクションが抜けにくい。
泥濘(でいねい)路、圧雪していないフカフカの雪道、凍結路などでスタックするかしそうになった場合、車両が特にきめ細かい駆動制御を行うことで脱出をアシストする「X-MODE」。今回は使う場面に出くわさなかったが、以前泥濘路で試した際、オンのほうがエンジンをうならせることなくスムーズに脱出できた。ヒルディセントコントロールとも連動している。
スバル車の強みを求めるのなら
「アイサイト」といえば先進運転支援装備の先駆者であり、当然ながらひととおりの装備が備わる。面白いのはドライバー監視カメラ。よそ見をすると「前方注意」と警告が出て、下を向くと「居眠り注意」と警告が出る。わずらわしいと感じる機会がないわけではなかったが、それによってよそ見をしない運転習慣が身につくのではないだろうか。このカメラを使ってドライバーを認識し、登録した人が乗るとシートポジションなどが自動的に調整される機能もある。
車線中央維持アシスト付きACCの挙動は自然。先行車が車線変更して車間が大きく開いた際、新たな先行車との車間距離の詰め方をエコ、コンフォートなどから選べる。エコだとやや時間がかかり過ぎで、どんどん割り込まれる。コンフォートがちょうどよかった。
フォレスターはライバルに比べ見た目の華やかさに欠けるため、目立つクルマではない。“乗ってみるとよいクルマ”の代表的存在だ。歴代モデルを通じて多くの項目で2番目か3番目の評価だが、“悪路走破性”という項目で1位を譲らない。保険的意味合いが強く日常的なご利益に乏しい悪路走破性に加え、アイサイトという毎日ありがたい予防安全と運転支援を備えることで、商品力を維持している。
ただし燃費のよさまで求めるとなると、ハイブリッド性能は物足りず、このクルマの立場はつらくなる。スバル車の強みを求めてフォレスターを選ぶなら、1.8リッター4気筒ターボエンジンを搭載した「スポーツ」を選び、これで最後と思って混じり気のない純粋な内燃機関の走りを楽しむのがよいと思う。
(文=塩見 智/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
スバル・フォレスターX-BREAK
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4640×1815×1715mm
ホイールベース:2670mm
車重:1660kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター水平対向4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:145PS(107kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:188N・m(19.2kgf・m)/4000rpm
モーター最高出力:13.6PS(10kW)
モーター最大トルク:65N・m(6.6kgf・m)
タイヤ:(前)225/55R18 98Q/(後)225/55R18 98Q(ヨコハマ・アイスガードG075)
燃費:14.0km/リッター(WLTCモード)
価格:308万円/テスト車=363万4840円
オプション装備:パワーリアゲート+<運転席&助手席8ウェイパワーシート、運転席シートポジションメモリー機能、リバース連動ミラー、ドアミラーメモリー&オート格納機能>+ドライバーモニタリングシステム&運転席シート自動後退機能+アイサイトセイフティプラス<運転支援>&緊急時プリクラッシュステアリング(26万4000円) ※以下、販売店オプション DIATONEサウンドビルトインナビ(25万4760円)/ETC2.0車載器(3万6080円)
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:4304km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(7)/山岳路(2)
テスト距離:773.9km
使用燃料:77.9リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:9.9km/リッター(満タン法)/10.4km/リッター(車載燃費計計測値)

塩見 智
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