バイクブームの“熱”を体感! モーターサイクルショーにリアルイベントのパワーを見た
2022.04.08 デイリーコラムイベントを盛り上げた国内4社の展示
この3月19日~21日に大阪で、3月25日~27日に東京で、実に3年ぶりとなるモーターサイクルショーが開催された。コロナ禍ということもあり、来場者数だけを見ると前回にあたる2019年開催時から大きく数字を落としているが、実際には、両会場の盛り上がりはすごいモノがあった。特に人気モデルを多く展示した国産4メーカーのブースは、滞留人数をコントロールするために入り口を制限していたこともあり、「(入場にかかる)待ち時間は90分」なんて立て札が出るほどだった。
それを後押ししたのは、ホンダの市販予定車「ホーク11」「ダックス125」の世界初公開であり、ヤマハの電動バイク「E01」のお披露目であり、また「カワサキ・ニンジャH2 SX SE」や「スズキGSX-S1000GT」という、ツーリング人気をさらに加速させるような、既存のアドベンチャーモデルとは違うスポーツツーリングモデルの新型車だった。これまで約2年間、大規模なバイク系イベントはことごとく中止となり、それを経て開催された日本最大級の“バイクの祭典”に、出展社の気合も来場者の期待度も高まっていたのだ。
用品メーカーやインポーターに話を聞いても「来場者の反応は非常にポジティブ」とのことで、ここでしっかり盛り上げたマインドを購入へとつなげる試みを強化するとともに、リアルなイベントやオンラインを駆使した情報提供など、“コト”を絡めた横展開への試みも加速させたいと鼻息が荒い。
マーケットの勢いを反映した会場の活気
そもそも、2020年が明ける前からバイク市場は回復傾向にあった。そこで起こったのがくだんのパンデミックだが、それがまた「外に出て楽しむ」「個々人が独立している」という“3蜜”とは対極にあるバイク遊びの特性を際立たせ、市場をさらに活気づかせた。その結果、国内外の二輪車完成車ブランドのディーラーでは、納車作業にてんてこ舞いの状態が慢性化。モデルによっては発表されたばかりのものでも、「納車は半年以上も先になる」なんて話もあるほどだ。加えて昨今の半導体不足、パンデミックによるサプライヤーを含めた製造現場の混乱などが重なり、今もバックオーダーの問題は先が見えない状況にある。それにしびれを切らした多くのユーザーが中古車へと流れ、中古車市場でもタマ不足、そして価格高騰が起こっている次第だ。
そんななか、ニューモデルおよびバイク関連アイテムの新製品が一堂に会するお祭りが戻ってきたのだから、会場がトランス状態になるというのは容易に想像がつくことだった。
思い起こされるのが2021年11月にイタリアで行われたEICMAで、完成車メーカーの参加の退潮に、国際的なモーターサイクルショーというコンテンツの意義を考え直すタイミングが来たと強く感じた。そしてそのとき、大阪および東京で開催される新車発表・展示会としてのモーターサイクルショーも、その存在意義を考え直すときなのではないか? と思ったのだ。
しかし両会場の盛り上がりを見て、お祭り的に二輪関連メーカーが一堂に会するイベントの価値も、まだまだ大きいと考え直した。
イベントのパワーをもっと活用しよう!
たとえニューモデルの世界初公開といった赤札がなくても、両ショーは同様の盛り上がりをみせたに違いない。高価格帯の趣味材という側面を持つバイクやバイク関連アイテムでは、ブランド認知という“最初の一歩”においても、購入に至る“最後の一押し”としても、実物を直接見て、それに直接触れることはとても重要だ。モーターサイクルショーは間違いなく、その最適な場所であると再確認した。
一方で、二輪業界がこのイベントをどこまで活用できたかについては、いささか不十分に感じられる。東京ショー閉幕の数日後、燃料大手のENEOSとホンダ、カワサキ、スズキ、ヤマハの全5社が、新会社Gachaco(ガチャコ)を設立するというニュースが報じられた(参照)。電動二輪車に使う共通仕様バッテリーのシェアリングサービス提供と、そのインフラ整備を目的とする合弁会社を立ち上げるという、業界にとって転換点となるような大ニュースである。なぜその発表の場として、両モーターサイクルショーが選ばれなかったか? それを考えると、モヤモヤするのだが……。
確かに製品展示会の色合いが濃いモーターサイクルショーだが、世相が急速に、劇的に変化するなかにあって、社会や経済との関わり方もカタチを変えていくべきだろう。しかし今は、モーターサイクルショーの開催とともに春のバイクシーズンがスタートを切るという、久しぶりの“通常運行”をよろこびたいと思う。
(文=河野正士/写真=webCG/編集=堀田剛資)

河野 正士
フリーランスライター。二輪専門誌の編集部において編集スタッフとして従事した後、フリーランスに。ファッション誌や情報誌などで編集者およびライターとして記事製作を行いながら、さまざまな二輪専門誌にも記事製作および契約編集スタッフとして携わる。海外モーターサイクルショーやカスタムバイク取材にも出掛け、世界の二輪市場もウオッチしている。
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