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【スペック】全長×全幅×全高=4910×1860×1470mm/ホイールベース=2970mm/車重=1920kg/駆動方式=FR/4.4リッターV8DOHC32バルブターボ(520ps/5500rpm、72.9kgm/3000-4750rpm)/価格=1495万円(テスト車=1717万1000円)

アルピナB5ビターボ リムジン(FR/8AT)【試乗記】

大人のスーパーセダン 2011.03.04 試乗記 青木 禎之 アルピナB5ビターボ リムジン(FR/8AT)
……1717万1000円

最新の「BMW5シリーズ(F10)」をベースに、さらにパフォーマンスを高めたという「アルピナB5ビターボ」。その実力や、いかに?
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値段に見合う華やかさ

「アルピナB5ビターボ リムジン」のドアをあけたとたん「しまった!」と思った。ちょっと居心地が悪い。赤みが強いウッドパネルに合わせた、洒落たブラウンの革シート。透過式のブルーのメーター。やはり青でステッチが入れられた革巻きハンドルは、握り心地がしっとりしている。バイエルンの華やかさを体現したようなインテリアに囲まれて、「今日、ユニクロのフリースでよかったんでしょうか?」とひとり恐縮する。

ただでさえ速い「BMW550i」の4.4リッターV8ツインターボを、407psから520psにまでチューンしたアルピナB5ビターボ。車両本体価格1495万円からと、550iより400万円ほどお高い。しかしそんな情報を知らなくとも、裕福なオーナーを納得させ、懐の寂しいライターを萎縮させるに十分豪華な内装である。BMWのインテリア自体、クールなアウディと比較するとずっとアクティブな印象を与えるものだが、アルピナのそれは、さらに目の前がパッと明るくなるような優雅さにあふれている。

ちなみに、この日の試乗車は右ハンドル仕様だったが、これは39万7000円のオプションだそう。追加装備を選んでいくと、すぐに軽自動車を超える金額になってしまうのは、このクラスのクルマではよくあること。むしろお金に頓着せず自分色に染めるくらいでないと「買う意味がない」といえるのかもしれない。アルピナのラインが入ったスペシャルペイントは、ブルー、グリーンとも、プラス55万円となっている。

 
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シート表皮は本革張り。テスト車にはオプションのパイピングが施されている。
シート表皮は本革張り。テスト車にはオプションのパイピングが施されている。 拡大
ホイールは標準で20インチを履く。タイヤサイズは、フロント:255/35ZR20、リア:285/30ZR20だ。
ホイールは標準で20インチを履く。タイヤサイズは、フロント:255/35ZR20、リア:285/30ZR20だ。 拡大
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「M5」もたじたじ!?

新しいBMW5シリーズの日本導入から1年を待たず、5シリーズベースのアルピナB5ビターボの販売が始まった。もともと5シリーズのチューンで名をなしたアルピナだけに、最新モデルのモディファイも手慣れたものだ。

「アルピナ」と聞くと、地を擦らんばかりのエアダムと大径ホイール、そしてバブル時代の喧噪(けんそう)を思い浮かべる人も多いと思う。「バブル時代の喧噪」はともかく、やはりニューB5ビターボも、大きなフロントスポイラーと薄いゴムを巻いた20インチホイールで特徴づけられる。抜き去った相手に見せつけるリアは、トランクリッドに控えめなスポイラーが装着され、マフラーは4本出しとなる。スポーティなルックスはだてではなく、高速走行時に、フロントで60%、リアで30%も、車体の浮き上がりを防ぐ効果があるとアルピナは主張する。

B5ビターボの目玉であるV8エンジンは、89.0×88.3mmのボア×ストロークはそのままに、ターボの過給圧を上げることで、4.4リッターの排気量から520ps/5500rpmの最高出力と72.9kgm/3000-4750rpmの最大トルクを絞り出す。本家BMW550iのそれは、407psと62.2kgmだから、そのチューンのほどがわかろうというもの。ターボとNAユニットを比較するのもなんだが、アルピナの520psは、5リッターV10を積んだ先代「M5」のピークパワー、507psをも凌駕(りょうが)している。

 
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左右両出しのマフラーエンドとディフューザーが強力なパフォーマンスを主張する。
左右両出しのマフラーエンドとディフューザーが強力なパフォーマンスを主張する。 拡大
エンジンは、「BMW550i」のそれをベースにアルピナがチューンしたもの。本家(407ps、62.2kgm)をはるかにしのぐ520ps、72.9kgmを発生する。
エンジンは、「BMW550i」のそれをベースにアルピナがチューンしたもの。本家(407ps、62.2kgm)をはるかにしのぐ520ps、72.9kgmを発生する。 拡大
車重1920kgの「アルピナB5ビターボ リムジン」が0-100km/h加速に要する時間は、4.6秒。最高速度は307km/hに達する。
アルピナB5ビターボ リムジン(FR/8AT)【短評】

アルピナらしい高性能

ハンドルを握って走り始めてまず感じるのは、「ボディ、大きいなぁ」ということ。車体自体の寸法はアルピナにとっていかんともしがたいことだが、4910mmの全長と1860mmの全幅のなかには、初代「7シリーズ」がすっぽり入るのである。そのうえ大人ふたりが乗れば2トンを超える車重だから、ドライバーに「スポーツセダン」を実感させるのは、なかなか難しいことだろう。ことにアルピナは「ハイスペック」と「日常の使い勝手」を高い次元でバランスさせるのがウリだから……と考えているそばから、BiTurboことツインターボの加速にうっとりした。

アクセルペダルを軽く踏んで動き出せば、大排気量の自然吸気エンジンのような、過給機付きを感じさせないスムーズな発進。そして右足にわずかに力を入れれば、穏やかな、緩い二次曲線的なアウトプットを示し、ターボ特有の浮遊感を伴ってB5を運んでゆく。

ドライバーは、シフトレバー傍らのスイッチで走行モードを選択可能。各モードにはアルピナ独自のセッティングが施される。
(写真をクリックすると走行モードの設定画面が見られます)
アルピナB5ビターボ リムジン(FR/8AT)【短評】

5シリーズベースのB5には、もちろん「サスペンション」「スロットル開度」「ステアリングのパワーアシスト」などを統合制御する「ダイナミック・ドライブ・コントロール」が搭載される。BMWの「ノーマル」「スポーツ」「スポーツ+」に加え、「コンフォート」を選べるのがアルピナらしい。
ただ、乗り心地がソフトな「コンフォート」では、カーブの際に、ボディの傾き方で上屋の重さを感じることがあった。試乗コースが路面のいい高速道路中心だったせいもあろうが、個人的には「ノーマル」もしくは、やや硬めの「スポーツ」が好ましいと思った。前35/後30という超扁平なタイヤを履いていることをすっかり忘れてしまうスムーズな、しかし路面の情報をしっかり伝える乗り心地だ。アルピナB5は、高速道路をまっすぐ走っているだけでも嬉しいクルマである。

トランスミッションは8段AT。B5はハンドルの裏にシフト用のパドルを備えるが、ちょっとしたスポーツ走行でも「D」レンジのままで不満がないので、出番はあまりないかもしれない。

【テスト車のオプション装備】
右ハンドル仕様=39万7000円/スペシャルペイント(ALPINAグリーン)=55万円/電動ガラスサンルーフ=17万円/ソフトクローズドア=9万3000円/アダプティブドライブ=21万2000円/リアビューカメラ=9万6000円/アルピナ・アイデンティティ&パイピング=59万8000円/クライメート・コンフォート・ガラス=4万円/ルーフライニング(アンソラジット)=6万5000円
アルピナB5ビターボ リムジン(FR/8AT)【短評】

優雅で快適なドライブフィールに油断をしていると、ずいぶんな速度に達していることもあるアルピナB5ビターボ リムジン。500ps超、0-100km/h=4.6秒、最高速度307km/h……。そうしたスーパーなスペックを、大人のほほ笑みに隠したスポーツセダンである。

(文=青木禎之/写真=荒川正幸)

青木 禎之

青木 禎之

15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。

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