第756回:【Movie】捨て身の“クラッシュテスト”も敢行! これがイタルデザインのアルミ容器だ
2022.05.12 マッキナ あらモーダ!あの「グニャッ」よサヨウナラ
例年のように2022年もイタリアは、5月中旬からいきなり夏模様になりそうだ。屋外で食事を楽しむ機会が増える季節である。今回は、そうしたときに活躍する商品を紹介する。あのイタルデザインによる食品用ホイルコンテナ、つまりアルミ箔(はく)容器だ。
イタルデザインといえば自動車のデザインおよび設計開発企業として有名である。イタリア・トリノを本拠とする同社は、1981年以来クルマ以外のプロダクトデザインも手がけている。彼らによれば「自動車部門とアイデアを共有することによるシナジー効果」が強みという。
工業デザインに詳しい読者ならご存じのように、日本のニコンやセイコーウオッチ、そしてオカムラもクライアントとして名を連ねている。実際、彼らのために数々の秀逸な製品を生み出してきた。
創立者のジョルジェット・ジウジアーロは、2015年にイタルデザインを後にしている。2022年現在プロダクトデザイン部門を率いているのは、ニコラ・グエルフォだ。創設期から携わってきた生え抜きメンバーである。
ホイルコンテナ「ウルトラフォルツァ」は2013年、同じくトリノを本拠とするクキ社のためにデザインされたものだ。クキは1958年設立の食品包装容器ブランドである。
開発にあたりイタルデザインは、均質な熱の拡散性や焦げ付きにくさに挑戦。さらに、従来製品と同じアルミの使用量で、20%もの強度向上を実現した。
クキが一定の業界シェアを確保していることもあり、今日イタリアでウルトラフォルツァは、スーパーマーケットや日用品店で目にする機会が多い。ただし、6人前用・2枚入りの実勢価格が1.5ユーロ(約210円)と、他社製品の2倍以上だ。そのバリューがあるかどうかを含めて読者諸氏に製品を想像していただくため、動画を作成した。製品クオリティーの判断材料になるかはかなり怪しいが、筆者が実施した“勝手にクラッシュテスト”もご高覧いただきたい。
イタリアでは屋外レジャー以外にも、近所同士でのおすそ分けやパーティーへの一品持ち寄りなど、料理を運搬する機会が多い。ウルトラフォルツァは、運んでいる途中で突如「グニャッ」となる、従来品でたびたび経験した恐怖から解放されそうだ。加えてわが家の場合、作った料理の味がそこそこでも、容器の質感で“映え”が向上しそうなのが何ともありがたい。
【ウルトラフォルツァを試す!】
(文=大矢アキオ<Akio Lorenzo OYA>/写真=Akio Lorenzo OYA/動画=Akio Lorenzo OYA、大矢麻里<Mari OYA>/編集=藤沢 勝)
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大矢 アキオ
Akio Lorenzo OYA 在イタリアジャーナリスト/コラムニスト。日本の音大でバイオリンを専攻、大学院で芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとしてシエナに在住。NHKのイタリア語およびフランス語テキストや、デザイン誌等で執筆活動を展開。NHK『ラジオ深夜便』では、24年間にわたってリポーターを務めている。『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり』(コスミック出版)など著書・訳書多数。近著は『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』(三樹書房)。イタリア自動車歴史協会会員。
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