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プジョー308アリュール(FF/8AT)

望外のファンカー 2022.05.10 試乗記 下野 康史 ガソリン/ディーゼル/プラグインハイブリッドと、3つのパワートレインをラインナップする新型「プジョー308」。エントリーグレードに位置づけられる1.2リッター直3ガソリンエンジン搭載モデルを郊外に連れ出し、その進化を確かめた。

がんばった価格設定

「フォルクスワーゲン・ゴルフ」級のコンパクトプジョー、308が新しくなった。308としては3代目だ。「306」「307」「308」と、プジョーはかつてモデルチェンジのたびにひと桁目の数字を増やしていたが、「309」は使えない。なつかしい「205」のノッチバックセダンですから。

9年ぶりの刷新は、ひと足先に出た「208」のモデルチェンジ手法に準じている。電動パワートレインも共用できる新型プラットフォーム(EMP2 V3)を採用し、エンジンモデルとの敷居をなくして電動モデルも選べる「パワー・オブ・チョイス」を掲げた。

ただし、電動308は今のところ1.6リッター直4のPHEV(プラグインハイブリッド車)のみでフルEVはない。そのかわり208にはない1.5リッター直4ディーゼルが揃う。

新型308はステランティス発足後初の新装プジョーになるが、内外装に付くエンブレムも生まれ変わった。デフォルメされたライオンの全身像から、ちょっとアニメっぽいライオンの横顔になった。フロントグリルのエンブレムは運転支援システム用のレーダーを透過させるために、素材はインジウムというレアメタルの積層材でできている。

今回、試乗したのは5ドアハッチバックの「アリュール」(305万3000円)。先代にもあった1.2リッター3気筒のエントリーモデルである。エンブレムひとつとっても、クルマを安くつくるのがむずかしくなっている時代、先代アリュールから8万6000円の値上げで済んでいるのは立派なものだろう。

2022年4月に日本導入が発表された新型「プジョー308」。9年ぶりのフルモデルチェンジで、308としては3代目にあたる。
2022年4月に日本導入が発表された新型「プジョー308」。9年ぶりのフルモデルチェンジで、308としては3代目にあたる。拡大
新型「プジョー308」は、ガソリン/ディーゼル/プラグインハイブリッドの、3つのパワートレインをラインナップ。今回は、1.2リッター直3ガソリンエンジン搭載の「アリュール」に試乗した。車両本体価格は305万3000円。
新型「プジョー308」は、ガソリン/ディーゼル/プラグインハイブリッドの、3つのパワートレインをラインナップ。今回は、1.2リッター直3ガソリンエンジン搭載の「アリュール」に試乗した。車両本体価格は305万3000円。拡大
新デザインのエンブレムが中央に置かれたフロントグリル。エンブレムの素材には、運転支援システムのレーダー波を阻害しないインジウムが用いられている。
新デザインのエンブレムが中央に置かれたフロントグリル。エンブレムの素材には、運転支援システムのレーダー波を阻害しないインジウムが用いられている。拡大
「308アリュール」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4420×1850×1475mm、ホイールベースは2680mm。車重は1350kgと発表されている。
「308アリュール」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4420×1850×1475mm、ホイールベースは2680mm。車重は1350kgと発表されている。拡大
プジョー 308 の中古車

凝ったインテリアデザイン

外観同様、乗り込んでも「攻めたなあ」と感じさせるのが新型308である。

ツブシの入った超小径ステアリングホイールと、横長でコンパクトな液晶メーターの「iコックピット」は、いまやプジョーの顔だが、こんどの308は一新されたダッシュボードの造形がさらにアグレッシブだ。

エッジの効いたコックピット全体がドライバーのほうを向いている。ダッシュボード上面の奥行きが右端と左端(助手席側)で違うのだ。ちょっとトリックアートの世界に迷い込んだような景色である。実用コンパクトカーでよくぞここまでデザイナーオリエンテッドを貫いたものだと感心する。

アリュールでもACC(アダプティブクルーズコントロール)やアクティブセーフティーブレーキなど、運転支援システムは標準装備。ACCの操作スイッチはハンドルスポーク左側のあるべき位置に付くようになった。8段ATのセレクターはガングリップタイプから小さなツマミに変わった。

ボディーサイズは先代よりひとまわり大きくなり、とくに1850mmの全幅はこのクラス最大級である。実際、車内でも窓側のショルダースペースにゆとりを感じる。

しかし走りだすと、幅広になった308はとびきりのドライバーズカーだった。

小径ステアリングホイールの上からデジタルメーターを見るように設計されたプジョー独自の「iコックピット」は、「ハイベント」と呼ばれる乗員のフェイスレベルにエアコンの吹き出し口を配置するデザインに一新された。
小径ステアリングホイールの上からデジタルメーターを見るように設計されたプジョー独自の「iコックピット」は、「ハイベント」と呼ばれる乗員のフェイスレベルにエアコンの吹き出し口を配置するデザインに一新された。拡大
ACCの操作系は、ステアリングポストに備わっていた従来のレバー式からハンドルスポーク左側のスイッチ式に変更。ステアリングホイールから手を離さすに操作できるようになった。
ACCの操作系は、ステアリングポストに備わっていた従来のレバー式からハンドルスポーク左側のスイッチ式に変更。ステアリングホイールから手を離さすに操作できるようになった。拡大
小さなトグルスイッチ型のATセレクターを採用。その周囲に、エンジンのスタート/ストップスイッチやドライブモードセレクターがコンパクトに配置されている。
小さなトグルスイッチ型のATセレクターを採用。その周囲に、エンジンのスタート/ストップスイッチやドライブモードセレクターがコンパクトに配置されている。拡大
「308アリュール」のボディーカラーは、写真の「パールホワイト」(8万2500円の有償色)を含む全3色から選択できる。
「308アリュール」のボディーカラーは、写真の「パールホワイト」(8万2500円の有償色)を含む全3色から選択できる。拡大

かろやかな乗り心地

とくにスポーツモデルではない、どころか、アリュールというベーシックグレードなのに、この308は望外のファンカーである。

ファーストタッチの瞬間から好印象だったのは“低重心感”だ。“地べた感”といってもいい。こういう“感じ”、最近では新型「シビック」の1.5リッターにもあった。308のハンドルは小さいだけでなく、操舵力も軽いから、手元のわずかな動きでクルマが機敏に動く。それもまたスポーティーな低重心感に拍車をかける。

かろやかな乗り心地も美点だ。猫足的な柔らかさはないものの、ストローク感が豊かでフラットだから、荒れた路面でもアゴを出さない。とくに高速域でのフトコロの深さはシビックを上回る。

先代からキャリーオーバーしたガソリンエンジンは1.2リッター3気筒ターボのピュアテックユニット。130PSの最高出力をはじめ、アウトプットの数値も変わっていない。もとよりバカヂカラのあるエンジンではないが、相変わらず滑らかで静かだ。小さいものが回っている感じが気持ちいい。

ただひとつ、停車に向けて減速してくると、8段ATの変速が躊躇するのか、ロックアップのオンオフの問題なのか、停止直前にギクシャクしがちなのが気になった。

パドルシフトやドライブモード切り替えを装備するのに、ふつうのタコメーターが出ないのも残念だ。デジタルメーターのデザインは何パターンか選ぶことができるが、いちばん親切なタコメーターは回転数の直接表示で、5600、5700、5800なんていう4桁の数字が高速で切り替わっても、読めません。

「308」のプラットフォームは、「EMP2(エフィエントモジュラープラットフォーム2)」の進化版となる「EMP2 V3」。多彩なパワーユニットへの対応が自慢だ。
「308」のプラットフォームは、「EMP2(エフィエントモジュラープラットフォーム2)」の進化版となる「EMP2 V3」。多彩なパワーユニットへの対応が自慢だ。拡大
「308アリュール」のエンジンルーム。最高出力130PS、最大トルク230N・mの1.2リッター直3ガソリンターボエンジン「EB2」に、8段ATを組み合わせる。
「308アリュール」のエンジンルーム。最高出力130PS、最大トルク230N・mの1.2リッター直3ガソリンターボエンジン「EB2」に、8段ATを組み合わせる。拡大
10インチサイズのデジタルヘッドアップインストゥルメントパネルは、表示モードの切り替えが任意に行えるほか、選択されたドライブモードに合わせて背景や文字などのカラーが切り替わる。
10インチサイズのデジタルヘッドアップインストゥルメントパネルは、表示モードの切り替えが任意に行えるほか、選択されたドライブモードに合わせて背景や文字などのカラーが切り替わる。拡大
「308アリュール」の荷室容量は412リッター。後席の背もたれを前方に倒すことで1323リッターにまで拡大できるが、床面に段差が残り完全にフラットにはならない。
「308アリュール」の荷室容量は412リッター。後席の背もたれを前方に倒すことで1323リッターにまで拡大できるが、床面に段差が残り完全にフラットにはならない。拡大

ガソリン車ならではの魅力

約330kmを走って、燃費は10.2km/リッター(満タン法)だった。無鉛ハイオク指定でもあるし、1.2リッターターボならもう少し走ってくれてもよさそうだが、CO2削減ならPHEV、燃料費削減なら、軽油の安い日本ではディーゼルがある。それがパワー・オブ・チョイス、意訳すると「お好きな原動機でどうぞ」戦略の意図するところだろう。

だが、今回このクルマに乗って、あらためて“素”のガソリンモデルはいいなあと痛感した。車重は1350kg。PHEVだとひと声310kgも重くなる。ディーゼルでも70kgノーズヘビーになる。どちらにもまだ試乗したことはないが、かろやかで機敏な身のこなしはおそらくガソリンアリュールならではの魅力だと思う。

新型308は本国でもすべてのグレードでATが標準装備になった。向こうの人はそれで納得しているのだろうか。せめてこのベーシックモデルくらいMTを用意してもらいたい。というか、MTでこそ味わいたいクルマである。そうすれば、先述のギクシャクも味わわずに済む。パワー・オブ・チョイスより、トランスミッション・オブ・チョイスのほうが好きだ。

(文=下野康史<かばたやすし>/写真=花村英典/編集=櫻井健一)

今回の試乗車は標準装備となる17インチホイールに、225/45R17サイズの「ミシュラン・プライマシー4」タイヤが組み合わされていた。
今回の試乗車は標準装備となる17インチホイールに、225/45R17サイズの「ミシュラン・プライマシー4」タイヤが組み合わされていた。拡大
「308アリュール」のシート表皮はテップレザー/ファブリックのコンビネーションが標準仕様で、グリーンのステッチが入る。
「308アリュール」のシート表皮はテップレザー/ファブリックのコンビネーションが標準仕様で、グリーンのステッチが入る。拡大
前席と同じテップレザーとファブリックの表皮が採用される後席。背もたれには60:40の分割可倒機構と、スキーホールが備わっている。
前席と同じテップレザーとファブリックの表皮が採用される後席。背もたれには60:40の分割可倒機構と、スキーホールが備わっている。拡大
かぎ爪をモチーフとした「GT」グレードのリアコンビランプとは異なり、「アリュール」グレードには、点灯部分が水平基調となる専用デザインが採用される。
かぎ爪をモチーフとした「GT」グレードのリアコンビランプとは異なり、「アリュール」グレードには、点灯部分が水平基調となる専用デザインが採用される。拡大

テスト車のデータ

プジョー308アリュール

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4420×1850×1475mm
ホイールベース:2680mm
車重:1350kg
駆動方式:FF
エンジン:1.2リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:130PS(96kW)/5500rpm
最大トルク:230N・m(23.4kgf・m)/1750rpm
タイヤ:(前)225/45R17 94V/(後)225/45R17 94V(ミシュラン・プライマシー4)
燃費:17.9km/リッター(WLTCモード)
価格:305万3000円/テスト車=314万6170円
オプション装備:ボディーカラー<パールホワイト>(8万2500円)/ETC(1万0670円)

テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:1190km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:332.0km
使用燃料:32.4リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:10.2km/リッター(満タン法)/11.4km/リッター(車載燃費計計測値)

プジョー308アリュール
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下野 康史

下野 康史

自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。

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